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特集:外国人材と働く香川県で海外関連事業を担う高度外国人材

2019年3月26日

ジェトロ香川は高松市で2月25日、高度外国人材の採用・育成・定着を進めるため、「グローバル人材フェア」を開催した。香川県では、人手不足から外国人技能実習生を雇用する企業が増加しているが、高度外国人材を受け入れている企業はまだ多くない。今回のフォーラムに登壇した県内企業2社の高度外国人材の活用事例について紹介する。

香川県では人手不足の状況が続いており、外国人材を活用する事業所が増えている。香川県労働局によると、2018年10月末に県内事業所で働く外国人の数は8,703人で、前年同月比11.2%増加した。国籍別では、中国が最多の2,918人で、外国人労働者全体の33.5%を占め、次いで、ベトナム2,258人(同25.9%)、フィリピン1,223人(同14.1%)となっている。

在留資格別では、「技能実習」が5,222人で最も多く全体の60.0%を占め、高度外国人材にあたる在留資格の「専門的・技術的分野」は637人(7.3%)にとどまり、いまだ多くはないのが現状だ。そうした状況下、県内では、輸出や海外投資などの海外展開事業を行う企業や、新たな顧客層となる訪日外国人客が増加しており、高度外国人材に新たな海外関連事業を担う人材としての期待が高まっている。

中国人材を活用し、海外顧客数が大幅に増加

香川県まんのう町で精密セラミックス部品の製造販売を行う長峰製作所は、今回のフォーラムで中国人社員の活躍を紹介した。同社は、ミクロの技術に強みがあり、電子機器に活用される超精密成形加工品など、他社では製造が難しいオンリーワン商品を有していた。しかし2009年には、リーマンショックによりIT関連機器向けの需要減少の影響を大きく受けた。長峰考志社長は「一時期、当社は週休5日となった。その後も、ファーウェイ(華為技術)やサムスンといった中国・韓国の電子機器メーカーの台頭によって、製品納入先である日本大手企業のシェアは下がり、さらに競合品まで出てきたため、当社の売り上げは半減してしまった」と、苦しい時期を振り返った。

こうした状況の改善のため、海外販路拡大を急務と認識した同社は、英語、中国語版のウェブサイトを作成。海外からの引き合いに対応できる人材を求め、県内の大学や専門学校を回って留学生の紹介を依頼した。その結果、2013年4月に中国人留学生1名を採用し、1年間の製造現場での実務研修を経て、海外営業を担当してもらうことにした。当時、中国は、PM2.5をはじめとする大気汚染が問題となっていたため、長峰社長は、排ガスを浄化する自動車触媒用ハニカム金型に商機を見いだしていた。同社員は社長とともに定期的に中国へ出張し、展示会への出展、現地自動車フィルターメーカーとの商談に同席した。中国企業からの注文は、現地で製造できない難易度が高いものばかりで、言い値が通りやすい半面、求められる品質やスピード感は日本以上。一筋縄ではいかない交渉が続く中、商談の立ち会いを続けたことで営業力を付けていった。そうした取り組みにより、2013年に2社だった海外顧客数は、2019年には30社まで増加した。


長峰製作所による事例紹介(ジェトロ撮影)

長峰社長は「今では相手方と中国語で商談を進め、私の出番は価格に関する部分くらいです」と、同社員の仕事ぶりを高く評価した。同社は現在、技能実習生を含め6人の中国人を雇用している。長峰社長は「中国人は定着しにくいというイメージがあるかもしれないが、そんなことはない」と説明した上で、中国出身の社員あってこそ現在があることを強調した。

特定プロジェクトにインターンを活用

香川県三豊市で業務用冷凍トンカツを主力製品とするサヌキ畜産フーズは、タイ人をインターンとして3カ月間受け入れた経験を紹介した。石川敬二総務部長は「国内では多くの納入先を抱えるが、海外への販売は経営方針の1つとして掲げられていたものの、自社製品の輸出に対する継続的かつ活発な活動がない状況が続いていた」と説明。ジェトロが経済産業省から受託した「国際化促進インターンシップ事業」を通じてインターンを受け入れたのは、「将来に向けて海外との接点を作り、外国の文化・習慣や、外国人ならではの発想を取り入れようという狙いがあった」と述べた。

同社は、インターンに担当してもらう主な業務として、「新商品のレシピ(規格書)を一緒に作成し、製造工程に落とし込むこと」と決めた。その目的に沿って、インターンの実施事務局から提示された3人の候補者から、日本語力はあまり高くはないものの食品企業で勤務しているタイ人を受け入れることを決めた。石川部長は「インターンが来日した後、彼女が所属する企業はタイでは知らない人がいないくらい有名企業だと分かりました。品質管理への取り組みの違いなど、同業者ならではの指摘もありました」と、思わぬメリットがあったことを紹介した。


フォーラムで講演するサヌキ畜産フーズの石川部長
(ジェトロ撮影)

サヌキ畜産フーズでは、インターンとともに、日本でも人気のあるタイ料理、ガパオライス用具材の商品化に取り組んだ。同社にとって、本格的な味付けについて現地の意見を聞ける機会は貴重であり、それらを工場の製造に組み込むことに開発メンバーの苦労はあったが、石川部長が心配したインターンと社員との言語の壁はそれほど高くなかった。石川部長は「お互い片言の英語と日本語で行うので効率は良くないが、インターンの明るいキャラクターのおかげで、楽しみながらできているようだった」と振り返った。用意していた小型翻訳機が使われたのは、受け入れ当初と、伝えるのが難しい細かいニュアンスくらいだったという。石川部長は「この事業の目的である『知見構築・社内意識改革・体制整備』について、全て達成できたとは言えないが、関わった社員たちは良い経験ができて成長したと信じている」と講演を締めくくった。

高度外国人材の活用への関心が高まる中、香川県内でも関連セミナーの開催が増えている。講演者や参加者の双方から、「優秀な外国人材に来てもらうのは難しいと思っていたが、採用してみたら良い人材に恵まれた」といった感想が多く寄せられている。また、今回のフォーラムに登壇した2社についても、優秀な外国人材が確保できたのは偶然というわけではなく、採用にあたり中国市場の開拓や新商品の開発など本人への期待と担当業務が明確に示されたことを要因に挙げている。また、そのことが外国人材のやる気と知識を吸収する意欲にもつながったようだ。外国人材は、企業名ではなく、自身の力を発揮できる職場かどうかを重視する傾向がある。こうした点を十分に認識した上で、外国人材を受け入れることが大切だ。

執筆者紹介
ジェトロ香川 所長代理
福山 豊和(ふくやま とよかず)
2004年、ジェトロ入構。ジェトロ・リヤド事務所(2007~2010年)、途上国貿易開発部途上国開発課(2010年~2013年)、ものづくり産業部ものづくり産業課(2014~2016年)を経て現職。

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