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特集:外国人材と働く日本のものづくりの精神や匠の技を知ってもらいたい(岐阜)
コロナ禍で重要性が増す外国人材の採用と活用

2021年4月23日

岐阜県では、2020年10月の時点で外国人材を雇用している事業者が4,669カ所あり(注)、その数は前年同月比で300カ所以上増加している。雇用される外国人材のうち、40%以上は技能実習という在留資格で就労する人々で、人口比別にみると、岐阜県の外国人技能実習生・研修生数は47都道府県の中で1位となっている。

縫製業などの労働集約的な仕事が多い当地において、技能実習生が積極的に受け入れられる一方で、就労年数に制限があることから長期的な観点での人材育成・活用が難しい、という課題を抱えている。

そこで、昨今注目されているのが、日本や海外で高等教育を受けた高度外国人材の採用・活用である。企業の基幹要員として、日本人社員と変わらない処遇で雇用される高度外国人社員に、ビジネスを展開するための重要な任務を託す企業が増えているのだ。

伝動・制御・位置決め・ハンドリングのための機械要素部品の開発・製造・販売を行う鍋屋バイテック会社(本社:岐阜県関市)も、そんなグローバルなビジネス展開を外国人社員と共に推進する企業の1つだ。

今回は、海外営業部で活躍する中国遼寧省出身の陳曦氏と、陳氏の上司である海外営業部部長の杉山匡志氏に高度外国人材の採用と活躍の現状を聞いた(2021年3月23日)。

言語・文化的背景を生かし、中華圏の顧客との信頼関係を構築

質問:
日本に留学した理由と専攻は。
答え:
(陳氏)
両親の薦めもあり名古屋大学大学院に入学した。中国では起業する人が多いが、自分自身も子供のころから会社経営に興味があり、経済研究科で経営戦略を学んだ。
質問:
鍋屋バイテック会社に就職を決めた理由は何か。現在の仕事内容と併せて教えてほしい。
答え:
(陳氏)
岐阜県の鉄鋼メーカーに1年勤めた後、当社に転職した。海外と関わる仕事がしたいと思っていたところ、アジアで活躍する第2次新卒を求める当社の求人を見つけ応募した。
現在は、台湾と香港向けの海外営業を担当している。台湾の代理店とともに顧客を訪問し、現場で入手した情報を本社の開発部などに共有しながら、受注までをフォローする仕事を行っている。
質問:
今の仕事でどんな時にやりがいや難しさを感じるか。
答え:
(陳氏)
顧客と直接中国語で会話できることが、信頼関係の構築に役に立っていると感じている。もちろん通訳を介せば内容は理解できるが、気持ちは十分に伝わらない。また、台湾人は食事を共にしながらコミュニケーションを取ることを好むが、その点は中国人と似ているのでとてもなじみやすい。新しいことを学ぶには顧客と直接話すことが大事。自分の知識を積み上げることがこの仕事のやりがいである。 一方で、日本に来て長期になるが、いまだに日本語特有の言い回しの理解に時間がかかることがある。上司からは日本語力は十分だと言われるが、自分ではまだまだだと感じている。
質問:
貴社で外国人が働きやすいと感じるポイントは。
答え:
(陳氏)
福利厚生が素晴らしく、有給休暇を取りやすい職場である。「良い環境が良い製品を生む」という考え方があるため、しっかりと休みを取ることを推奨している点が外国人社員には魅力的な職場として共感を得られると感じる。
質問:
日本人と中国人の仕事のやり方に違いを感じるか。
答え:
(陳氏)
日本人の真面目さは肌で感じている。事前のプランニングからアクションに移るまで何度も試行する点には当初驚いた。一方で、中国はスピード重視。当社でも中国工場の納期は、全般的に日本より早い。品質に対する責任や細かさは大変重要だが、時代の移り変わりとともにスピードを加速させていくことも必要。プロセスのきめ細やかさとスピードのバランスが取れるポイントを探すことが、両方の文化を理解している自分だからこそできることではないかと考えている。

鍋屋バイテック会社 海外営業担当の陳曦氏(左)(ジェトロ撮影)

日本は報酬面で国際的な市場競争力をつける必要も

質問:
岐阜県で働くことに関してどう感じているか。岐阜県が外国人にとって住みやすく、働きやすい街になるには。
答え:
(陳氏)
山や川に恵まれ、自然の風景が素晴らしい。車さえあればどこにでも行けるので、生活が不便だとは感じない。
県内には名所がたくさんあり、観光地としても魅力はあるはずなのに、外国人へのPRが十分ではないと感じる。もっと外国に岐阜の良さをアピールしたほうがよい。
国際的な仕事をしたい人は東京や大阪を選ぶ人が多いが、自身が当社で働く上で、岐阜県に本社があることがデメリットであると感じることはない。岐阜県にいても、グローバルなビジネスに取り組むことができる。
質問:
世界の優秀な人材をもっと日本に呼び寄せ、就労してもらうためにどんな工夫が必要か。
答え:
(陳氏)
日本製がどれだけ素晴らしいのかを、もっと外国人に対してアピールすべき。ものづくりの精神や匠(たくみ)の技を知ってもらえたら、日本のプレゼンスはもっと上がると思う。一方で、かつて日本の報酬水準に優位性があったが、昨今、中国との給与の差異が縮まっており、給与の面での日本の魅力は薄れている。日本は報酬面で国際的な市場競争力をつけることも必要。

コロナ禍のビジネスモデルの変化によって増す外国人材の重要性


鍋屋バイテック会社 海外営業部部長 杉山匡志氏(同社提供)
質問:
現在の外国人社員の雇用状況および最初に外国人材を採用するに至った理由は何か。
答え:
(杉山氏)
現在、3人の中国人が本社に在籍しており、今春には、海外営業部にマレーシア人留学生が入社の予定。
最初は、外国人材を意識して採用したわけではなく、新卒採用時にたまたま優秀な外国人留学生が応募してきたので採用した。その後、中国現地法人を立ち上げ、中国の顧客が増えてきたので、中国人材の雇用を推進しなければということで採用した。結果的に中国や台湾での営業活動が強化できた。
質問:
新型コロナの感染拡大によってビジネスの流れが変わったか。それによって外国人材の雇用と活用に関する考え方に変化はあったか。
答え:
(杉山氏)
直接、NBK(鍋屋バイテック会社)ブランドを伝えていくことの重要性が増した。新型コロナの影響により、出張による顧客との関係構築や代理店へのサポート体制の提供ができなくなり、代理店経由を重視していた販売戦略が変わってきた。代理店を活用しつつも、当社が顧客に直接アプローチする方法も推進し、NBK自身のプロモーションと代理店サポートを融合していかなければならないという危機感を抱いている。
代理店に任せず直接顧客と交渉をする上で、外国人材は欠かせない。顧客との距離感を縮め、人的ネットワークを広げるには、外国人材が持つ語学力や土地勘を必要としている。現在市場が伸びているASEAN地域の拡販のためにも、4月に入社するマレーシア人の新入社員に期待している。
質問:
外国人社員を雇用して変わったことはあるか。
答え:
(杉山氏)
当社の売り上げ比率は大部分を国内が占めるが、成長市場は海外なので、近年会社のリソースを海外営業にも投入している。一方で、会社全体にグローバルな意識が根付いているわけではない。社内に外国人が増えることで、当社がグローバル企業の仲間入りをしていることを、会社全体が認識できるようになることを期待している。
質問:
外国人社員と日本人社員の特徴の違いをどう感じるか。外国人社員が実力を発揮する瞬間は。
答え:
(杉山氏)
岐阜の本社にいる外国人社員は元留学生なので、ある程度、日本式の考え方が身に付いている。自己表現をしっかりするタイプというよりは協調性があり、日本人に近いので、あまり大きな違いは感じない。
しかしながら、同じ事象でも見方は異なる。例えば対中関係や台湾の立ち位置について、日本のメディアから入手した情報だけで判断することなく、現地の見方も認識しており、多角的な判断ができることは、外国人社員の強みであり、彼らに期待することである。
外国人材が力を発揮する瞬間を感じるのは、当然だが海外での営業の時だ。代理店やエンドユーザーと日本人の営業担当者が英語でコミュニケーションを行うと、どうしても距離感ができるが、現地語を駆使する外国人材はその意図を容易にくみ取ることができ、コミュニケーションが円滑になる。ビジネスを獲得するまでの最短距離で進むことができる点が大きい。
質問:
岐阜県の企業がもっと外国人社員の受け入れに積極的になるには。
答え:
(杉山氏)
現場(その国)を知ることが大切。また、販路拡大や現法拠点を設立する際に、その国の人々と接して理解していくプロセスも必要だ。
質問:
外国人とともに働くメリットは。
答え:
(杉山氏)
日本以外の新しい市場を知ることができること。自分流の営業手法などはあるのだが、海外の人のやり方を知ることで新しい学びがある。ビジネスの規模感によっても、海外ビジネスではスケールが大きく、グローバルマネジメントの手法を学ぶことができる。

鍋屋バイテック会社の海外営業部員の皆様(ジェトロ撮影)

取材後記

新型コロナの影響により、世界が劇的に変化する中で、鍋屋バイテック会社もビジネスモデルの変容が求められている。その潮流の中で外国人材を活用し、グローバルビジネスを加速するというミッションに向かって、目標を着実に達成している姿が大変印象に残った。

今まで同社では、中部地方の大学に在籍する留学生を採用していたこともあり、当地への愛着や縁が深い外国人材を雇用していたが、今春初めて首都圏の大学院を卒業した留学生が入社する。全国から優秀な人材が集まり、世界を舞台に活躍する高度外国人材活躍企業としての同社の取り組みから今後も目が離せない。


注:
厚生労働省 岐阜労働局「外国人雇用状況」の届け出状況について(令和2年10月末現在)。
執筆者紹介
ジェトロ名古屋 高度外国人材活躍推進コーディネーター
今村 由美(いまむら ゆみ)
自動車用品メーカー、外資系コンサルティング会社および銀行系シンクタンクで人事制度構築や組織風土改善に従事。 2020年4月から現職。
執筆者紹介
ジェトロ岐阜
渡邉 敬士(わたなべ たかし)
2017年、ジェトロ入構。海外調査部アジア大洋州課(2017年~2019年)にて東南アジア・南西アジアの調査業務に従事。
専門はフィリピン・スリランカ。 2019年7月より現職。

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