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特集:外国人材と働くオール愛媛による留学生の就職支援の取り組み

2019年6月19日

愛媛県では、海外進出企業の増加に伴い、海外ビジネスにも対応できる外国人材の需要は高まっている。こうした状況下、愛媛大学が中心となり、地元自治体や企業・経済団体などと連携した外国人留学生の就職支援体制を整備し、地域を挙げて積極的に留学生の就職支援に取り組んでいる。今回は、愛媛大学を中心とした「オール愛媛」としての留学生の就職支援について紹介したい。

“オールえひめ”による留学生支援体制を整備

愛媛大学では、文部科学省が2008年に策定した「留学生30万人計画」に沿って、「国際性豊かな人材を輩出する大学」「世界から人が集う大学」の創造を目的として、2009年に大学内に国際連携推進機構を設置し、留学生の就職支援を開始した。

愛媛大学は、2007年度から2010年度まで、経済産業省と文部科学省の共同事業である高度実践留学生育成事業「アジア人財資金構想」を受託し、産学でコンソーシアムを形成し、企業ニーズに応じて、専門教育や日本語研修、また、インターンシップなどの就職支援を既に開始していた。同事業が2010年度に終了した後も、同様の支援を大学独自のプログラムとして継続実施することとした。2007年から2017年までの10年間 で121人の学生がプログラムを受講し、国内就職者数は69人(うち県内就職者45人、地元就職率65.2%)に達するなど成果を上げている。

こうした実績が高く評価され、2017年には文部科学省「留学生就職促進プログラム」に、中四国初の実施拠点として採択された(全体では全国27機関からの申請があり、愛媛大学を含む12機関が採択された)。本プログラムは、国内外から愛媛県に優秀な留学生を呼び込み、大学入学から卒業までの一貫した「キャリア教育」と「ビジネス日本語教育」「インターンシップ・プログラム」などにより、留学生の日本企業、とりわけ愛媛県内企業への就職の一層の増大を図ることを狙いとしている。愛媛大学が中心となり、地元企業や自治体・関係団体などとも連携し、留学生の就職支援に「オールえひめ」として実施する体制が整備されている(図参照)。

図:“オールえひめ”による協働実施体制
愛媛大学は、「留学生就職促進プログラム」を実施するにあたり、地元企業・経済団体・地方公共団体などの県内関係機関と連携して、“オールえひめ”の実施体制を構築しました。・この“オールえひめ”体制は、コンソーシアムを形成する各機関と連携して、国内外から優秀な留学生を愛媛県へ呼び込み、入学から卒業まで一貫したキャリア教育と就職支援を行い、愛媛をはじめとする日本の企業へ送り出すという愛媛県全体で取り組む外国人材育成構想の実現を目標にしています。

出所:愛媛大学 留学生就職促進プログラムウェブサイト

留学生と日本人学生がチームとして活動を展開

愛媛大学では、地元での外国人材活用について、企業が抱える課題としては、(1)外国人材採用に対する心理的・経済的負担への戸惑い、(2)外国人社員の早期離職などを挙げており、これらに対応するため、以下の取り組みを展開している。

1つ目は、企業が外国人を受け入れやすくするため、 「学生と社員が共に学び合うための企業の参加機会を増やす」ことである。具体的には、「学生と社員の協働ワークショップ」「外国人材活用フォーラム」などを開催し、企業に外国人を身近に感じてもらう取り組みを行っている。

2つ目は、外国人社員の早期離職を減らすため、 「日本企業・日本人を理解し、日本人との働き方を考える学習と支援を充実させる」 ことである。具体的には、課題解決型インターンシップ教育、入社後のフォローアップ、日本企業に就職した留学生OB・OGとの交流会など、入社後の定着につながる取り組みを行っている。

これらのプログラムの実施にあたっては、留学生が単独で活動するのではなく、留学生と日本人学生がチームとなり、ワークショップやインターンシップなどの協働を行うことにより、「留学生」「日本人学生」、さらには「指導担当社員」が互いに視点や発想の違いを実感することができるようにデザインされている。

関係者から高い評価

キャリア教育の一環として、2018年度後期に開講された「留学生と日本人学生が共に学ぶ地域ビジネス戦略入門」には、東南アジア、南米、ヨーロッパ、アフリカなどからの留学生11人と日本人9人が参加し、愛媛県内の企業から提示された課題に取り組んだ。参加したA社からは、「海外の視点に立った客観的なアイデア提案で、外国人ターゲットの店舗の参考となった」「留学生と日本人学生が意見を出し合うのは、国際社会で働く上でいい模擬体験になると感じた。各自の個性も垣間見えたことは、企業側の採用活動にとってもメリットだと感じた」などのコメントがあった。

また、留学生からは、「最も学んだのは、異なる考え方を持つ人との議論の楽しさだ。さまざまな国・年齢・立場の人がいて、一人一人違う考えを持っており、自分では思いつかない発想にもたくさん出会えた」、日本人学生からは、「英語と日本語の能力もアップでき、また自分の強みも明らかになった」などの意見が寄せられた。

さらに、2017年度から2年間開講された、中国の留学生と日本人学生がペアを組み、地方銀行と地場産業の関わりを学ぶことを目的とした合同インターンシップ事業に参加したB社からは、「留学生をインターンシップで受け入れることで、採用後にどんな仕事をしてもらうか想定することができた」「留学生と日本人学生のペアで研修する場合、研修担当社員も落ち着いて指導できるという安心感が大きかった」などの意見があった。

留学生からも「地銀でのインターンシップを通して、銀行と地域産業との関わりを知り、感動した。地域の人の温かさや産業へのこだわりを知り、将来は愛媛で就職しようと思った」、日本人学生からは「留学生と2週間一緒にインターンシップをして、日本で頑張っている姿に刺激を受け、自分ももっと外国語を頑張ろうと、真剣に勉強を始めた」などのコメントがあり、留学生、日本人学生、社員のいずれからも同プログラムを高く評価する意見が数多く寄せられている。


企業におけるキャリア教育の
授業の様子(愛媛大学提供)

留学生と日本人学生の共同での
インターンシップ報告(愛媛大学提供)

日本における外国人留学生の就職者数は、日本学生支援機構の調査結果によると、2016年の1万4,493人から2017年には1万6,242人と増加傾向ではあるが、日本における外国人留学生全体に対して占める割合は3割程度にとどまっている。このような状況下、愛媛県においては、愛媛大学の高度外国人材育成プログラムが功を奏し、着実に実績を上げている。

地域においては少子化が進む中で、外国人材の獲得は必須であり、先述の外国人材採用に対する心理的・経済的負担への戸惑い、外国人社員の早期離職などの課題の克服に向けて、さらなるプログラムの充実が期待されている。愛媛大学国際教育支援センターの伊月知子・准教授は「プログラムを通じて、世界から優秀な学生を留学生として呼び込み、卒業後に地域社会へ送り出し、愛媛全体の活性化につなげたい。県内留学生へのキャリア教育やインターンシップには、本学のほかに自治体・企業・他大学にも参加・協力いただき、留学生の中に愛媛ファンを作り、卒業後は愛媛の企業で長く働きたいという気持ちを育てたい」と今後の抱負を語った。

なお、愛媛県国際交流課によると、同県の在留外国人数は、1万1,745人(うち留学生は596人、2017年12月時点)と前年同月比6.6%増で過去最高となっている。国別内訳では、中国が4,226人(36%)と最も多く、次いでベトナム2,323人(19.8%)、フィリピン1,651人(14.1%)となり、これら3カ国で全体の約7割を占めている。同県では、2014年以降、在留外国人数は前年実績を大幅に上回るペースで増加を続けており、外国人材の活用は企業だけではなく、地域活性化を図る上でも、重要な課題となっている。

執筆者紹介
ジェトロ愛媛 係長
石川 晶一(いしかわ しょういち)
2014年、ジェトロ入構。ビジネス情報サービス部ビジネス情報サービス課(2014~2015年)、お客様サポート部オンライン情報課(2015年~2016年)を経て現職。

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