第2次トランプ政権下の新潮流を読み解く米企業の大型投資が台頭
トランプ政権下テキサスの投資動向(1)
2026年3月2日
2025年は米企業による大型投資案件が牽引
トランプ政権2期目の発足後、さまざまな政策転換が行われる中、特に日本企業は北米市場の動向、今後の政権運営の行方を注視する傾向が強かった。振り返ると、米国内企業を中心に、テキサス州への投資案件は、発表されているものだけでも数百億ドル規模にのぼり、政権交代に起因する様子見、鈍化の傾向は現時点では見られない。特に、半導体、人工知能(AI)、データセンター、クリーンエネルギー〔水素・合成燃料(e燃料)〕関連の投資案件が台頭し、それぞれ数十億~数百億ドル規模の大型投資案件が目立った。以下に紹介する。
半導体・ハイテク製造関連
テキサス州のグレッグ・アボット知事は2025年9月、韓国電子機器製造大手サムスン電子のテキサス州テイラーにおける半導体製造施設への投資に対し、同州の半導体支援助成金プログラム「テキサス州半導体イノベーション基金(TSIF)」から2億5,000万ドルを助成すると発表した。同社の投資は現時点で370億ドル以上に及び、連邦からの助成金は最大47億4,500万ドルが確定している。2021年の発表当初は2024年に完成予定とされていた同事業の建設工事が遅れ、さらなる遅延がささやかれていたが、現在は2026年の完成見込みと報道されている。
また、2025年に米国の基板半導体製造における史上最大規模の投資を発表したテキサス・インスツルメンツ(TI)は、約400億ドルを投じたテキサス州シャーマンにある同社製造施設「SM1」を2025年12月17日に正式に稼働した。建設中の「SM2」のほか、将来的には「SM3」と「SM4」の計4工場の建設を計画している。このほかにも、全米に複数年にわたる600億ドル規模の投資を計画しており、同州リチャードソンやユタ州でも製造拠点への投資を進めている(2025年12月22日付ビジネス短信参照)。
クリーンエネルギー関連
独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が三菱商事と協調して出資しているインフィニウム(Infinium、本社:カリフォルニア州サクラメント)は2025年5月、米国で2番目(注1)のe燃料生産拠点「プロジェクト・ロードランナー」の建設を、テキサス州リーブス郡ペコス近郊で開始すると発表した。投資額は非公開としつつも、同規模の施設要件を考慮すると数十億ドル規模と推測される。稼働すれば世界最大級のe燃料生産施設となり、年間2万3,000トン(760万ガロン)の持続可能な航空燃料(eSAF)およびその他のe燃料製品を生産し、アメリカン航空やIAG(ブリティッシュ・エアウェイズ、エアリンガスなどを傘下に持つ航空グループ)といったグローバルな航空業界の顧客に供給する予定だ。
データセンター・人工知能(AI)関連
第2次トランプ政権発足直後に発表された、オープンAI、ソフトバンクグループ、オラクルが共同で、全米で5,000億ドル規模の出資を行うAI関連のインフラプロジェクト「スターゲート」では、同計画の旗艦拠点としてテキサス州アビリーンに10棟のデータセンターを建設中だ。9月にはさらに、米国内での5件のデータセンター新設が発表された。これには同州シャックルフォード郡とミラム郡の拠点が含まれる。全てのデータセンターが完成すれば、7ギガワット(GW)のAI関連データ・クランチング(大量データの処理・加工)が可能となる(2025年10月3日付ビジネス短信参照)。
テキサス州シャックルフォード郡(ダラス・フォートワース地域の西)では、バンテージ・データ・センターズ(Vantage Data Centers、本社:コロラド州デンバー)が8月に、同社最大規模となる投資額250億ドル、1.4GW規模の「フロンティア・キャンパス」を建設中と発表した。敷地面積1,200エーカー(約486万平方キロメートル)の用地には、10棟、総面積370万平方フィート(約34.3万平方メートル)のデータセンターを構える。250キロワット(KW)以上の超高密度サーバーラックに対応し、液冷技術を導入して次世代GPUの負荷に耐えられる設計だ。水使用を最小限に抑える液冷技術である、高効率のクローズドループチラー方式を採用して、年間で数十億ガロンの節水を見込む。2026年後半に完成予定だ。
フェイスブック、インスタグラム、ワッツアップを運営するメタが2025年10月、テキサス州エルパソ北東部に大規模なデータセンター複合施設を建設するため、15億ドル以上を投資すると発表した。AIワークロードに最適化された約120万平方フィート(約11.1万平方メートル)のキャンパスを整備する。
グーグルは11月、テキサス州での事業に、州単位で米国内最大の投資額となる総額400億ドルを投資すると発表した。同事業には、同州アマリロ近郊のアームストロング郡やダラス・アビリーン近郊のハスケル郡にデータセンター3棟を新設する計画や、クラウドやAIインフラの強化、エネルギー供給能力とコストの改善を目的としたプログラム、州内の人材育成などが含まれる。
ダラスとオースティンの中間に位置するマクレナン郡ウェイコ地域では、 新興データセンター建設会社であるインフラキー(Infrakey、本社:テキサス州プレイノ)が11月、投資額約100億ドルの大規模データセンター建設計画を発表した。約520エーカー(約2.1平方キロメートル)の土地に、1.2GW規模のガス火力発電所やサブステーションを併設する。一般家屋30万軒の電力供給量に相当し、同地域史上最大規模の産業投資であるとともに、AI関連需要に対応する拠点として注目されている。
AI向け大規模・次世代電力網の開発を進めるフェルミ・アメリカ(本社:テキサス州アマリロ)が開発主体となって、同州北部のパンハンドル地域(注2)に、世界最大級のエネルギー・データ複合キャンパス「プロジェクト・マタドール(Project Matador)」を建設予定だ。投資額約5,000億ドルとされる同プロジェクトでは、韓国の現代建設(Hyundai Engineering & Construction)やテキサス工科大学らと提携する。総発電容量約11GWの「エネルギーアイランド」構想で、原子力・天然ガス・再生可能エネルギー・蓄電池などを組み合わせた、AI時代の電力需要に応える新しいインフラモデルを開発する。敷地面積は1,800万平方フィート(約1.7平方キロメートル)に及ぶ。同事業に対し、テキサス州環境品質委員会(TCEQ)は11月、6GWの天然ガス発電フェーズの予備承認を付与。今後、開発が進行すれば、新たな大型投資案件として注目されるだろう。
蓄電関連
再生可能エネルギー開発事業者のエンフィニティ・グローバル(Enfinity Global、本社:フロリダ州マイアミ)が2025年1月、テキサス州内での2つの新規プロジェクトにおいて、バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)のポートフォリオを拡大すると発表した。2025年第2四半期と第4四半期中に建設開始となり、今後数年間で、BESS分野だけでも70億ドルを上回る投資を予定している。
医薬品関連
米国製薬大手のイーライリリー(Eli Lilly、本社:インディアナ州インディアナポリス)が65億ドル以上を投資し、テキサス州ヒューストンに約100万平方フィート規模の原薬(API)製造施設を建設すると発表した。同施設では、開発中の肥満・2型糖尿病治療薬「GLP-1受容体作動薬 (主成分:オルフォグリプロン、Orforglipron)」が主要製品となる。同製品は経口薬のため従来の注射剤と比較して服用しやすい利点がある。世界保健機関(WHO)の統計では、2022年時点で全世界の18歳以上の43%が肥満で、16%が糖尿病である現状から、今後の需要増加が見込まれる。
こうした動向を見渡すと、テキサス州はエネルギー資源、土地、電力供給力などの優位性を背景に、トランプ政権が推進する国内製造回帰の流れを追い風として、米国内最大級の投資をひきつけている。半導体、AI、電力、クリーンエネルギーなどの「次世代インフラ」が集積することで、州内の産業同士が互いに勢いを高め合い、企業の追加投資やサプライチェーン再構築がさらに進む好循環が生まれつつある。2026年以降も、これら大型プロジェクトの建設・稼働が進むにつれ、テキサス州は米国の産業競争力を牽引する中心地としてその存在感をさらに高めることが予想される。
トランプ政権下テキサスの投資動向
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- 執筆者紹介
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ジェトロ・ヒューストン事務所
キリアン 知佳(きりあん ちか) - 2022年9月からジェトロ・ヒューストン事務所勤務。
- 執筆者紹介
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ジェトロ・ヒューストン事務所
笹川 佐季(ささがわ さき) - 2020年、ジェトロ入構。本部スタートアップ課にて、日系スタートアップの海外展開支援事業に従事。主に、東南アジア、中東、アフリカへの進出支援を担当。2025年5月から現職。






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