高度外国人材を輩出する大学、その最前線に迫る拡大する日本企業との連携
北東インドIITグワハティ校(2)

2026年2月24日

インド工科大学グワハティ校(IITG)(注1)は、伝統ある「Old IITs」の一角でありながら、その中では最も新しく、伝統的な強みと先進的な技術領域への柔軟性を併せ持つ大学だ。大都市圏のキャンパスとは異なり、北東インドに位置する同校は、地理的・文化的な近接性から「アクト・イースト政策(旧・ルック・イースト政策)」(注2)を推進し、日本との連携に極めて意欲的である。

本連載の第2回では、ジェトロが2025年11月19日に実施した現地意見交換(ヒアリング)の内容を中心に、日本語教育の導入やインターンシップの拡大、そして岐阜大学との長年にわたる連携など、IITGにおける対日協力の最前線を紹介する。

「アクト・イースト政策」と高い親和性

今回のヒアリングで、大学側からは日本企業との連携強化に向けた積極的な姿勢が確認された。その背景にあるのが、インド政府が推進する「アクト・イースト政策」だ。IITGの教授陣によると、欧米諸国のビザ政策が厳格化する中、地理的・文化的に近い東アジア諸国との連携強化は大学の重要方針となっている。

特に日本文化への親和性は高い。現地教授は「インドには年長者を敬う文化や社会階層など、日本と非常によく似た文化がある。日本はインドを〔もっと規律正しく、清潔にした〕場所のようで、初めて訪日した際も〔家〕にいるように感じた」と独特の表現で親近感を語る。また、意見交換に同席した学生たちからは、日本のアニメが人気を博していることがうかがえ、学生の日本に対する心理的な障壁は決して高くはないようだ。

日本語教育の導入と言語・文化の習得支援

日本企業への就職促進に向けた具体的なアクションとして、IITGは2026年よりキャンパス内での日本語教育を開始する。担当教授によると、多くの日本企業が採用要件として日本語力を重視している現状を踏まえ、日本語教師を招へいするという。そして、学生には言語だけでなく日本の商習慣やマナー(時間の正確さなど)を学ぶ機会を提供する計画だ。「学内には既に、台湾文化センターから派遣された中国語(マンダリン)の教師が在籍している。半導体分野などで学生が台湾や韓国へ進出し始めているからだ。同様に、日本へ行く学生にも言語と文化を学ばせることで、現地でより快適に、自信を持って働けるようにしたい」と教授陣は語る。

同校では、東アジアへの人材輩出に向け、言語習得という実務的なプログラムを通じて、その実現を具体的に後押ししているようだ。

岐阜大学との長年にわたる連携実績

IITGと日本の大学との連携で特筆すべきは、岐阜大学との強固なパートナーシップだ。ヒアリングの中で、大学担当者は岐阜大学を「長期的なパートナー」と呼び、その実績を強調した。現在、両大学間では3つの「ジョイント・ディグリー・プログラム(共同学位プログラム)」(注3)が実施されているほか、学生の短期訪問プログラムではこれまでに100人以上の学生が行き来しているという。また、産学連携の取り組みとして「IITG-岐阜大学JDPプラットフォームによる日本-NER産学技術協力シンポジウム」を数年前より毎年開催しており(注4)、IITGが主導するかたちで、インド北東地域の全学術機関によるコンソーシアムの設立も検討しているという。日本側からは岐阜大学が主導し、筑波大学などのパートナー校も参画する予定だという。こうした大学間連携の積み重ねが、IITGの親日的な土壌を育んでいるといえる。

インターンシップの拡大

日本政府との連携事業も加速している。IITGは、2025年度に経済産業省(METI)が主導する「日印人材育成・交流事業(India-Japan Talent Bridge Project)」において、連携対象となるインド側の8機関(うち5校がIIT)の1つに選定された。この枠組みを通じ、インターンシップの実績が拡大している。プレースメント担当者によると、今シーズンだけで24人の学生が選抜され、全額資金援助(Fully Funded)による2週間の日本インターンシップに参加する予定だという。また、学内で開催された企業交流イベント「ジャパン・デー(Japan Day)」には、日本から7社・計25人の幹部が来校した。当日は約850人もの学生が参加して熱心に情報を収集し、自動車部品大手のデンソーなどの日本法人がこのイベントを通じて、既に採用やインターン生の確保を完了させているという。

プレースメント担当者は「今年は特に日本に焦点を当てたため、人数が増えている。以前から交流はあったが、今は明らかに増加傾向にある」と語っており、日本企業に対する学生の関心が「数」として表れ始めていることが分かる。

スタートアップ協業と今後の展望

IITGは、インド北東部におけるスタートアップ・ハブとしての機能も強化している。キャンパス内には「Technology Incubation Center (TIC)」や「BioNest」などのインキュベーション施設に加え、卒業生らが創設したスタートアップの事業を継続するための「リサーチパーク」も整備されている。ヒアリングでは、日印の学生がチームを組んで共同創業する「日印混合スタートアップ」構想も語られた。「インドの学生は日本の市場を知らず、日本の学生はインドの市場を知らない。両者が組むことで、互いの市場に即したイノベーションが生まれる可能性がある」と大学側は期待を寄せた。

現在、日本とは経済産業省やジェトロ、国際協力機構(JICA)といった公的機関との連携が先行している。今後はこれを土台に、民間レベルでの「共同研究」「採用」「事業共創」といった具体的な連携事例の積み上げが期待される。エンジニア採用やR&D、さらには東南アジア・東アジア市場へのゲートウェーという地理的特性もあり、IITグワハティ校は、日本企業にとって新たな連携の選択肢となるだろう。


IITG関係者および日本に関心のある学生たち(ジェトロ撮影)

注1:
日本との関係構築に前向きなインド73大学などをまとめたジェトロの「海外大学ディレクトリー」13ページ参照。日本企業は、IITGなど、同ディレクトリー掲載校とオンラインで面談が可能。詳細は「海外大学コネクションデスク」参照。 本文に戻る
注2:
インド政府は1991年にルック・イースト政策を開始、2014年よりアクト・イースト政策へと強化。日本との連携によるインド北東部開発がその柱となっている 本文に戻る
注3:
岐阜大学グローカル推進機構「ジョイント・ディグリー・プログラム外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」参照。 本文に戻る
注4:
岐阜大学グローカル推進機構のリリース「2025年12月12日付記事外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」参照。 本文に戻る

北東インドIITグワハティ校

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執筆者紹介
ジェトロ知的資産部高度外国人材課
大滝 靖子(おおたき やすこ)
2025年、ジェトロ再入構。高度外国人材活躍推進コーディネーター。