高度外国人材を輩出する大学、その最前線に迫る北陸の産学官金が連携し地域の高度外国人材を輩出:金沢大学

2026年4月8日

北陸3県の大学・企業と連携し地域で働く外国人材を輩出:金沢大学

金沢大学(金沢市)は、北陸地域の主要な国立大学の1つとして長年にわたり地域に優秀な人材を輩出してきた。これは、日本人に限らず外国人留学生も同様だ。同大学は2017年より他大学との共同プロジェクトを進めてきた。現在は、北陸の産官学金が連携した「留学⽣キャリア形成・地域定着促進プロジェクト『Link KAGAYAKI』」を率い、北陸地域に根差した支援で留学生が地元に定着できるような就職支援を行っている。今回は、その取り組みの背景や成果について、同大学学長補佐(キャリア形成支援・リスキリング教育担当)でありLink KAGAYAKI座長でもある猪熊孝夫氏と、国際基幹教育院特任教授である副座長の鈴木政勝氏に話を聞いた。(2025年11月18日取材)


Link KAGAYAKI座長 猪熊孝夫氏(金沢大学提供)
質問:
在学留学生の特徴は。
答え:
金沢大学は、1862年に創設された国立総合大学。学士課程8,216人、修士・博士前期、博士・博士後期課程合わせて2,536人の学生が在籍する(2025年5月時点)。
留学生は、修士・博士前期課程の2割弱、博士・博士後期課程の約3割を占める。日本全体では修士課程における留学生割合が約1割であることを考えると、留学生数は比較的多い。留学生は約半数が理系で、中でも自然科学研究科の博士前期課程、博士後期課程に多い。さらに、大学院に在籍する留学生のうち約5割は英語のみで修了できるコースに在籍している。出身国は中国が最も多く、2番目はインドネシア。加えて、ベトナム、タイ、バングラデシュの出身者も多い。
大学院に在籍する留学生のうち約5割は英語のみで修了できるコースに在籍していることもあり、日本語レベルは学生によってさまざまだ。
質問:
留学生の国内就職における課題は。
答え:
留学生側の課題としては、大学で必要な日本語能力は有しているものの、ビジネスの現場では十分に通用しないことや、日本企業や企業文化についての知識が不足していることが挙げられる。また、企業側の課題としては、地域企業に外国人受け入れ体制が整っていないこと、就職活動をする留学生からの認知度が低いことなどが挙げられる。高い日本語能力を重視する企業も多いが、日本語能力試験などの結果だけでは、日本語のコミュニケーション能力は必ずしも測れない。実際に留学生に接する機会が少ないことも課題だ。

産学官金の共同体を組成し、地域留学生と企業との接点を創出

質問:
これらの課題から立ち上がった「北陸未来共創フォーラム(Link KAGAYAKI)」とは。
答え:
2017年から活動した「『かがやき・つなぐ』北陸・信州留学生就職促進プログラム」の後継として、2022年に「留学生キャリア形成・地域定着促進プロジェクト『Link KAGAYAKI』」が発足した。「Link KAGAYAKI」は、北陸地域が連携し、取り組みを高度化することで、地域に根付く高度外国人材を輩出することを目的とする。構成メンバーは、 産(北陸経済連合会、ジェトロ)、学(富山大学、金沢大学、北陸先端科学技術大学院大学、金沢星稜大学、北陸大学、福井大学)、官(富山県、石川県、福井県)、金(北陸銀行、CCIグループ〔旧北國フィナンシャルホールディングス〕、福井銀行)から成る。活動は「地域への就職・定着支援」「地域との連携強化」「大学間での協働・情報共有」「教育プログラムの運用」の4つの分野にわたり、ジョブフェアや企業見学会、企業向けセミナーの開催、ビジネス日本語や日本の企業文化を学ぶ授業など、さまざまな取り組みを行っている。
2025年度には以下のイベントを実施した。中でも、2025年12月に金沢市内で実施した北陸3県ジョブフェアは今年度で4回目だった。北陸3県に拠点を持つ企業41社が出展し、金沢大学のほか、富山大学、北陸先端科学技術大学院大学、北陸大学、福井大学から100人近くの留学生が参加した。そのほか、留学生が地域企業を訪問する企業見学会や交流会を開催し、企業と留学生との接点や留学生が企業の魅力を発見するきっかけを創出している。
表:「Link KAGAYAKI」の2025年度実施イベント
No 時期 開催場所 イベントの
種類
内容
カッコ内は主催者
1 9月 石川 企業見学 いしかわ⾦沢学/いしかわ企業⾒学CAMP(金沢大学)
2 9月 石川 インターンシップ 「Link KAGAYAKI」夏期留学生インターンシップ(金沢大学)
3 10月 石川 セミナー&交流会 北陸企業留学⽣採⽤実例報告会および留学⽣との交流会(北陸経済連合会)
4 10月 福井 展示会見学&交流会 北陸技術交流テクノフェア⾒学バスツアー&福井県内企業との交流会(福井⼤学、福井県⽴⼤学、福井県グローバル⼈材基⾦)
5 12月 石川 合同企業説明会 留学⽣北陸3県ジョブフェア(金沢大学)
6 12月 石川 セミナー コンソーシアムイベント︓留学⽣と企業を“つなぐ”
マッチング事例報告(金沢大学)
7 1月 富山 セミナー 高度外国人材活躍セミナー(北陸銀行)
8 2月 福井 企業見学 外国人留学生のための福井県内企業見学会(福井大学)
9 2月 福井 ジョブフェア 福井県外国人留学生と県内企業の合同企業説明会(福井銀行)

出所:金沢大学


北陸3県ジョブフェアの様子(金沢大学提供)

福井県内企業見学会の様子(福井大学提供)
質問:
Link KAGAYAKIの成果は。
答え:
留学生OBOGの授業への登壇に加えて、インターンシップやジョブフェアにて大学と企業が多角的・継続的に接点を持てることで、つながりが強くなったことを実感している。実際、プロジェクトに継続的に参加した企業が2~3年かけて採用に至った事例がある。実績を見ても、金沢大学の留学生の国内就職は堅調に伸びており、卒業・修了した留学生の日本における就職率は、2024年には過去最高の29.2%に到達した。今後の展望として、立ち上げ当初は順調に増加したものの近年鈍化傾向にある北陸地域内の就職率の向上を目指し、引き続きジョブフェアや企業見学会などを通じた接点を創出していきたい。

環境に馴染んでいる地域留学生を採用するメリットは大きい

地域での就職支援の取り組みの効果や地域の留学生を採用するメリットについて、「Link KAGAYAKI」コンソーシアムの会員企業としてジョブフェアなどに参加した北陸電気工事(富山市)の部長・向井博氏と人事課・大澤柊也氏に話を聞いた。同社には5人のインドネシア出身の高度外国人材が在籍しており(うち1人は内定者)、金沢大学や富山大学、富山県立大学の留学生を採用している(2025年11月27日取材)。

質問:
地域での就職支援の取り組み効果は。
答え:
地域の大学に拘らず採用していく方針ではあるが、日ごろからジョブフェアや授業への登壇などプロジェクトに参加していることで接点を持っているからこそ、金沢大学をはじめとしたキャリアセンターの職員が丁寧に学生を紹介してくれている。そのため、採用・定着につながっている。
質問:
北陸地域の留学生を採用することのメリットは。
答え:
環境変化が少ないのはいいことだと思う。特に北陸地域の雨と雪事情には学生時代から慣れている人材であれば心配がない。また、学生の頃から所属するコミュニティーを維持できる点で仲間が近くにいると安心するはず。宗教上の理由から食べられるものが限定的で、普通のスーパーで酒や肉、調味料などが買えない社員も、学生時代から知った行きつけがあると便利だ。

外国人社員とその家族で国内旅行を楽しむ様子(北陸電気工事提供)

ジェトロでは、高度外国人材の活躍推進による中堅・中小企業の海外展開促進や地域経済の活性化を目的に、高度外国人材活躍地域コンソーシアム事業」を実施している。全国6地域(北海道・東北・北陸・関西・中国・九州)で産学官が連携して合同企業説明会やインターンシップ、セミナーを行う。北陸地域では、前述の金沢大学が主導する「留学⽣キャリア形成・地域定着促進プロジェクト(Link KAGAYAKI)」とも連携している。

執筆者紹介
ジェトロ横浜
浦野 桃華(うらの ももか)
2024年、ジェトロ入構。知的資産部高度外国人材課を経て2025年12月から現職。
執筆者紹介
ジェトロ知的資産部高度外国人材課
安藤 彩加(あんどう あやか)
2015年、ジェトロ入構。企画部、プノンペン事務所、ジェトロ沖縄、イノベーション部などを経て、2024年8月から現職。