高度外国人材を輩出する大学、その最前線に迫るベトナム南部屈指の工業集積地域を支える人材輩出:ラクホン大学

2026年4月21日

ラクホン大学は、ベトナム南部のドンナイ省およびその周辺地域における工業化の発展に伴い、高度な技術や知識をもつ人材の育成を目的に1997年に設立された。設立当初は情報技術、電子通信、建設工学、経済学などの分野において学生募集を開始し、その後、学部・学科を順次拡大し、現在は35学科を有する総合大学となった。


ラクホン大学の概観(同大学提供)

同大学は、ドンナイ省および周辺地域の工業団地・輸出加工区に高度人材を継続的に輩出するとのミッションのもと、「理論教育60%、実践および自主学習40%の融合」を教育理念としている。また、優秀な成績をおさめた学生には、専門分野を学習させるとともに、企業から依頼されたプロジェクト(機械製造や電気製品の組み立て)に参加させることで、学生の技術能力の向上を図っている。本学の教育理念や現状について、グエン・ヴ・クイン副学長に取材した。


グエン・ヴ・クイン副学長(大学提供)
質問:
大学の成り立ちと特徴を教えてください。
答え:
ラクホン大学は1997年に私立大学として、国の工業化・近代化に貢献できる能力と資質を備えた人材を育成するために設立された。現在では、教育水準や研究成果が世界的に認められたことで、The World University Rankings for Innovation(WURI)(注1)が発表した「世界トップ100イノベーティブ大学」に第85位で選出された。また、工学分野の教育の質を保証する国際的な指標となっている、米国の非営利の工学教育プログラムの認定機関であるABET(注2)から、2024年に2つのプログラム「情報技術工学」と「電気電子工学技術」で認定を受けた。ロボコン分野においては、ベトナム国内大会で10回、アジア・太平洋大会で3回の優勝と輝かしい実績を残した。加えて、日本語学科では2024年にホーチミン市人文社会科学大学で開催された「第7回南部地域大学日本語スピーチコンテスト」で優勝を果たした学生がおり、語学教育の成果も高く評価されている。
質問:
現在の学部の構成・学生数、修士課程・博士課程などを教えてください。
答え:
本学に在籍する学生・研修生の数は、2025年9月時点で1万2,000人を超える。現在、10の専門学部を基盤とし、工学、経済、言語、医療学科など、35の学科を設置している。修士課程には、経営管理、金融、IT、建設技術、電気工学、自動車工学、英語学などの11のプログラムがある。また、博士課程はコンピュータサイエンス専攻、経営学専攻の2つのプログラムがある。
質問:
インターンシップや、企業との関わり、産学連携の状況などを教えてください。
答え:
2016年から2025年までの10年間で、日本の大企業も含めた253社との協力覚書(MOU)を締結した。技術移転プロジェクトは2018年から現在までの実績が209件、総額は約216億7,320万ドン(約1億3,000万円、1ドン=約0.006円)にのぼる。また、卒業生が日系企業に就職できるように、理系学生を対象に日本語コースを設置し、現在まで累計約433人の学生が受講した。
質問:
日本語教育の状況を教えてください。
答え:
日本語学科は2003年に設立され、22年以上の教育実績がある。本学科では、設立以来、教育内容およびカリキュラムの継続的な改善に取り組んできた。例えば、日本語能力の向上のため、学生に対し、4技能の育成(聴解、会話、読解、作文)に加え、会話の機会を増やすため、日本語スピーチコンテストなどに参加するクラブを設置し、日本の大学生との交流活動を設けている。こうした日本語学習以外にも、英語、オフィス情報処理、ビジネス日本語、翻訳・通訳技能、秘書実務など、実務的なスキルの習得にも力を入れている。さらに、日本の大学・企業との連携を強化し、日本企業での就業経験の共有、面接スキル、学術研究、人工知能(AI)活用に関するセミナーを定期的に開催することで、インターンシップや就職機会の一層の拡充を図っている。
質問:
日本語学科の学生は、日本企業および現地日系企業に対して、どのような関心を持っていますか。また、大学としては企業との連携をどのように進める予定ですか。
答え:
日本語学科や越日プログラム(注3)の学生の多くは、ベトナム国内、特にドンナイ省に進出している日系企業への就職に強い関心を持っている。また、日本での就職を期待する学生も増えている。大学としては、日本でのインターンシップの機会を拡大させたい。そのため、本学科では日本企業の企業文化、価値観、業務プロセス、採用基準、ビジネスマナーなどへの理解を深めることを目的に、企業との交流を積極的に行い、会社見学、説明会、セミナーなどを順次開催している。この数年で、採用活動、技術連携、各種支援などにおいて協力してきた日系企業は累計で79社にのぼる。
質問:
日本企業との連携状況について、教えてください。
答え:
本学は多くの日本企業や各種団体と連携協定を締結しており、研修、技術移転、人材採用の分野で協力している。さらに、ラクホン大学の学生にとどまらず、ドンナイ省内の大学・短期大学と連携し、学生と同省の日系企業との交流や人材マッチングのイベントも開催している。ドンナイ省に進出しているある日系企業は、自社で採用するだけでなく、2015年より奨学金も提供し、学生を支援している。奨学金を受けた学生数は約300人にのぼる。また、40社以上の日本企業と協力覚書(MOU)を締結し、引き続き、積極的に学生のインターンシップや就職の機会を提供していきたい。

注1:
World Universities Rankings for Innovation (WURI):教育機関の「革新性」を評価するランキング。 本文に戻る
注2:
ABET(Accreditation Board for Engineering and Technology):米国における非営利団体の技術者教育認定機関。 本文に戻る
注3:
越日プログラム:2024年より開始され、情報技術、メカトロニクス専攻、電気・電子工学技術、制御・自動化工学技術、自動車工学技術、食品工学の各専攻があり、1年生から3年生までは専攻に加えて500コマの日本語コミュニケーション(N4相当)を学ぶ。4年生では、日本で4~6カ月間のインターンシップを受けて、卒業までに日本語能力でN3相当を目指す。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ・ホーチミン事務所 次長
川崎 美奈子(かわさき みなこ)
1999年、ジェトロ入構。イノベーション部プロモーション課やシドニー駐在を経て、2024年3月から現職。
執筆者紹介
ジェトロ・ホーチミン事務所
ダン・ティ・ゴック・スオン
2011年よりジェトロ・ホーチミン事務所に勤務。