注目度高まる北米グリーン市場、その最前線は太陽光発電が急拡大、全米1位も視野に
テキサスで進むエネルギー転換(3)

2023年9月27日

本シリーズ・第3回となる本稿では、石油ガス産業の中心であるテキサス州で進む、エネルギー転換の状況を概観する。

急成長する風力・太陽光発電

記録的な猛暑が続いた今夏、テキサス州で熱い期待と注目を集めた発電源が太陽光発電だ。州内9割の電力系統運用を行う機関「アーコット」(ERCOT)は2023年8月後半、猛暑やガス、原子力、石炭などの電源不足を受けて、電力使用の節約を連日呼びかける事態に至ったが、長い日照時間を逆手に、太陽光資源をフル活用した。「かつてないほど、ピーク時においてより再生可能エネルギー(再エネ)に頼る必要が出てくる」(アーコット)という。

テキサス州の再エネ電源と言えば、これまでは風力が主役だった。2000年代以降、州西部に進んだ風力発電施設の建設ラッシュと、西部から東部への送電網の建設が相まって、風力発電容量が全米1位の州になった(2021年5月24日付地域・分析レポート参照)。アーコットによると、総発電量に占める風力発電の割合は2008年の4.9%から、2013年(9.9%)、2018年(18.6%)、2023年1~7月に26.7%と急拡大した。

今、これを猛追するのが太陽光発電だ。州の総発電量に占める太陽光発電容量の割合は、10年前の2013年は0.05%、5年前の2018年でも0.9%にとどまっていたが、この数年で急増し、2023年(1~7月)で7.3%に上る。太陽光発電の場合、火力発電所や原子力発電所と比較して、設備投資費用は少なく、冷却水は不要、速やかに建設が可能なこと、大気質許可を取得する必要がないことなどのメリットがある。現状、特に太陽光が最も強い午後に電力需要を満たす上で重宝する。州内の太陽光発電関連雇用は2022年だけで900人以上増え、州内雇用は合計1万1,000人以上に上り、州経済への影響も大きくなってきた。日本の大阪ガスも2023年5月、テキサス州での太陽光発電所開発に着手した(表参照、2023年5月16日付ビジネス短信参照)。

表:テキサス州における大型太陽光発電プロジェクト事例 (-は値なし)
地域 プロジェクト名 関係企業 所在 運用開始時期
(予定含)
発電容量(MW) 備考
西部 ローズロック・ソーラー・ファシリティ サザンパワー(米国)、リカレント・エナジー(カナダ) ペコス郡 2016年 160 オースティンエネジー社が同発電所の電力および再エネクレジットを20年購入契約
アップトン2 ルミナント(米国) アップトン郡 2018年 180 10MWのリチウムイオン蓄電池を併設
バックソーン・ソーラー NRG(米国) ペコス郡 2018年 202
ロードランナー・ソーラー+ストレージ・プロジェクト エネル(イタリア) アップトン郡 2019年 497 テキサス州内で稼働中では最大規模の発電所
ホルスタイン・ソーラー・プロジェクト デューク・エナジー(米国) ノーラン郡 2020年 200 ゴールドマンサックス系商品取引企業向け12年間の売電契約。
東部 カットラス・ソーラー エネオス、芙蓉総合リース(日本)、アドバンスド・パワー(スイス) ヒューストン近郊のフォート・ベンド郡 2023年1月 約140 敷地面積約700エーカー(約2.8平方キロ)、米国におけるENEOS初の太陽光発電事業
アバングリッド(米国) ダラス近郊フォールズ郡 2025年 240 メタのデータセンター向けに電力を供給
北東部 サムサン・ソーラー・エナジー・センター インベナジー(米国) 2023年 1,310(約200~300MWの5区画からなる) 年間30万軒への電力供給能力を有する。AT&Tやホンダ、マクドナルド、グーグル、ホームデポ、テキサスA&M大学などと長期売買契約締結。
モッキンバード・ソーラー・センター オーステッド(デンマーク) ラマ―郡 2024年 471 年間8万軒以上への電力供給能力を有する。
州内 オオサカ・ガスUSA(OGUSA、日本)、ヨーロピアン・エナジー(EENA、デンマーク) 州内 2025年7月 350 EENAが開発中の発電所の全持ち分をOGUSAが取得。大阪ガスグループが主体となって海外での再エネ電源を開発する初めての案件。
アポロ・ソーラー・プロジェクト EDFリニューアブルズ・ノース・アメリカ(英国) 州内 2025年 332 マクドナルド向けに15年間の売電契約。1,200店に電力を供給。

出所:各事業主体ウェブサイトおよび報道などを参考にジェトロ作成

米国の年間平均降水量は30.38インチ(約772ミリメートル)と、日本の約1,700ミリメートルの半分以下だが、その米国の中でも特にテキサス州は雨量が少なく(注1)、晴天の日が多い。

テキサス州公共事業委員会が公表している、今後整備予定の発電容量(2023年1月時点)をみると、太陽光発電が占める割合は55.7%と風力発電(19.1%)を大きく上回る(図参照)。

現在のペースで太陽光発電の整備が進めば、現在1位のカリフォルニア州を抜いて、全米1位の太陽光発電州になる日もそう遠くない(注2)。

図:テキサス州における発電容量の拡大実績と今後の予定
バイオマス、石炭、天然ガス、原子力、太陽光、蓄電池、風力、その他があり、このうち1995年以降では天然ガス(5万MW)、風力(3万5,000MW)、太陽光(9,500MW)、蓄電池(2,000MW)の順に多い。今後の予定は太陽光(2万4,000MW)、風力(8,000MW)、蓄電池(6,900MW)、天然ガス(3,800MW)、の順に多い。

出所:テキサス州系統運用機関アーコットのデータからジェトロ作成

税額控除が後押しする蓄電池拡充

アーコットのパブロ・ベガス最高経営責任者(CEO)は、先進的な蓄電池の拡充こそが、太陽光を含む再エネの信頼性向上につながるという。フィンランドの海事・エネルギー大手バルチラは2023年3月、米国インフラ投資大手エオリアンが所有する、テキサス州南部のエネルギー貯蔵施設の商業運転を開始したと発表した(2023年4月5日付ビジネス短信参照)。蓄電池の容量200MW(メガワット)は商業用蓄電池では世界最大級で、インフレ削減法の独立型の蓄電池システムに対する投資税額控除(ITC)対象になるという。これまでのITCの対象は、太陽光発電所に接続していることなどの要件が厳しく、独立型の蓄電池は対象外だったため、蓄電池投資拡大の阻害要因になっていた。

テキサス州では今後も、このような蓄電池投資が活発化する見込みだ(図参照)。アーコットによると、今後、テキサス州内で予定されている蓄電池の拡張容量は6,949MWで、1995年からの28年間に建設された2,040MWの3.4倍に上る。

エネルギー情報局(EIA)によると、テキサス州では現状、太陽光発電量の9%が、供給過多による出力抑制で無駄になっている。今後、対策を講じない場合、出力抑制は19%まで増えてしまうという。太陽光発電所の容量拡大に加えて、前述のとおり蓄電池への投資、さらに送電網の整備、需要地に近いところへの適切な規模の発電所の建設などの課題もあるが、再エネ発電の環境整備は着実に進んでいる。


注1:
テキサス州ペコス郡の年間降水量は8.94インチ(約227ミリメートル)、アップトン郡は8.79インチ(約223ミリメートル)。
注2:
米国エネルギー情報局(EIA)のデータを基に、2018年から2021年にかけてのテキサス州、カリフォルニア州の太陽光発電容量増加率が仮に今後も同じペースで続くと仮定し試算すると、テキサス州の太陽光発電容量は2027年にもカリフォルニア州に追いつくことになる。
執筆者紹介
ジェトロ・ヒューストン事務所長
桜内 政大(さくらうち まさひろ)
1999年、ジェトロ入構。ジェトロ・ニューヨーク事務所〔戦略国際問題研究所(CSIS)日本部客員研究員〕、海外調査部北米課、サービス産業部ヘルスケア産業課などを経て、19年10月から現職。編著書に「世界の医療機器市場―成長分野での海外展開を目指せ」など。

この特集の記事