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特集:高度人材の宝庫ロシア:魅力と課題研究開発拠点としてのロシアのポテンシャルを評価
日本のスタートアップのロシア展開とロシア人高度人材の活用

2021年3月25日

デジタル化の進展により、大容量データの送受信を可能とする技術への需要が高まっている。これに応えているのが、福岡市に拠点を構えるユニゾンシステムズ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます だ。主に日本国内の放送局向けに大容量データ転送サービスを提供しているが、近年ではゲーム会社や病院などにも対象を拡大している。また、同社はロシアの技術力の高さを評価しており、実際にロシア人を雇用した経験がある。今後、さらなる技術開発に向けてロシア企業との連携に意欲を見せる。ロシアのIT技術ポテンシャルやロシア人高度人材の活用について、R&D本部副本部長の木村文彦氏に話を聞いた(2021年2月1日)。


ユニゾンシステムズ R&D本部副本部長 木村文彦氏(同社提供)
質問:
会社の概要および事業内容について。
答え:
当社の設立は1991年。福岡市に拠点を置いており、従業員は84人だ。放送局向けに番組・CMなどの情報や関連業務の一元的な管理を可能にするシステムや、大容量データ転送技術を活用したソフトウエアの開発・販売を行っている。前者は、昨今、世界中のニュース映像の交換が頻繁に行われるようになったことや、映像プロダクションやCG制作会社を交えた映像制作の業務管理が複雑化したことを受け、これらを効率的に行うシステムである。後者は、データ量の大きい映像を扱う業界向けの大容量データ転送サービスだ。放送局をはじめ、CG映像を用いるゲーム会社や手術映像を扱う病院などで活用されている。
直近では、「新型コロナ禍」により放送局からの引き合いが増えている。リモートワークに対応するべく、クラウド技術を使って映像制作や字幕作成を行うことのできるシステムの需要が高まっているためだ。
質問:
貴社の海外展開の状況は。
答え:
現時点の海外展開は、主に日本の放送局の海外事業向けだ。日本の放送局の海外支局に当社システムが導入されており、現地で撮影されたニュース動画を日本に転送する際に活用されている。2014年に開催されたロシア・ソチ冬季五輪や2018年のサッカー・ワールドカップ・ロシア大会の際には当社のシステムが活躍した。このほか、海外の最新技術動向に関する情報収集にも注力しており、ロシアを含む海外への視察会やカンファレンスに積極的に参加している。
質問:
ロシアとのビジネスに興味を持ったきっかけは。また、ロシアとの連携のメリットは。
答え:
2018年11月に行われた、総務省主催のロシア視察プログラムに参加したことがきっかけだ。本プログラム以外にも、2回ロシアを訪問している。現地ではピッチイベントへの参加や、ロシアのスタートアップ企業との意見交換などを行っている。スタートアップ支援機関や企業との面談を通して興味深く感じたことは、欧米や日本では法規制により実施が困難な実証実験がロシアでは可能である点だ。これについては、例えば、患者に対し、自身の症状の治療が可能な医者を紹介するマッチングサービスや、監視カメラを活用した個人情報収集などが挙げられる。こういった分野はロシア政府も力を入れており、欧米諸国の関係者に比べ、知見が豊富であるという印象を持った。こういった点はロシアと連携する魅力であり、加えて、現地の高度人材を活用した研究開発拠点候補先としても捉えている。

ロシア企業に向けて自社を紹介(同社提供)
質問:
研究開発拠点の設置先はどこを想定しているか。
答え:
サンクトペテルブルク市を想定している。当社とコンタクトのある日本人コーディネーターが同市の大学とつながりがあり、高度人材の獲得が容易であるためだ。また、福岡市がサンクトペテルブルク市と提携関係にあり、福岡市内企業であれば、サンクトペテルブルク市のインキュベーション施設に無料で入居などが可能となる、といった恩典の存在も挙げられる。
質問:
ロシア企業およびロシア人ITエンジニアの技術レベルをどう評価するか。
答え:
ロシア企業については、上述とおり欧米では法規制の関係で実施が困難な実験を通じた知見を有する点は魅力であるが、同時に玉石混交でもある。世界のどこかにすでに存在している製品・サービスに類似したものを作ろうとする、独創性の低い企業も多い。ロシア人エンジニアについては、学校での基礎教育レベルが高いという印象だ(2020年3月17日付地域・分析レポート参照)。当社でもロシア人材を雇用したことがあるが、プログラミング言語に関して豊富な知識を有しており、また前職ではインフラエンジニア(注)として活躍していたため、即戦力として当社でも実力を発揮した。
質問:
前述のロシア人のような、高度な技術やスキルを持つ外国人材を雇用したり、インターン生として受け入れたりするメリットは。
答え:
最大のメリットは、日本人社員の意識向上だ。外国人社員はモチベーションが高く、総じてスキルも高いため、日本人社員への良い刺激になる。デメリットは特にない。外国人社員を抱えることで発生しやすいコミュニケーション面の負荷については、当社はこれまでに長年、海外企業へのアウトソーシングを行ってきたこともあり、外国人にも容易に理解できるよう作業指示を明確化することに慣れているため、業務遂行上の支障とはなっていない。このため、日本企業が直面しやすい「日本人にとっての当たり前は、外国人にとっての当たり前ではない」といった意思疎通の齟齬(そご)は特に発生していない。
質問:
ロシア以外の国・地域の高度人材を雇用あるいはインターンとして受け入れているか。また彼らとどのように接触するのか。
答え:
現在はインド人とセネガル人の2人を正社員として雇用している。インド人社員は、人材サービス会社を通じて対象国を限定せずに募集したところ、応募があったもの。インドの大学でエンジニアリングを学び、またソフトウエアエンジニアとしての就業経験もあり非常に優秀であったことから採用に至った。現在は研究開発分野のエンジニアとして活躍している。一方で、セネガル人社員は、バスケットボールの選手として高校生の時に来日した人間で、顧客からの紹介があり採用した。入社後に営業を経験し、現在はエンジニアのポジションに就いている。実業団とスポンサー契約している選手としても活躍している。
質問:
今後の海外事業の計画や、高度外国人材の採用方針は。
答え:
海外事業については、クラウドサービスで製品の販売を行う可能性はあるが、海外に販売支社を作る予定はない。一方、「新型コロナ禍」終息後には高度外国人材の受け入れを積極的に行いたい。例えば、サンクトペテルブルク市の大学からの学生インターン受け入れといったことを想定している。このほか、「新型コロナ禍」によりプロジェクトがストップしている状況だが、ロシアにおける研究開発拠点設立も進めていきたいと考えている。

注:
ITのインフラ(ネットワーク、パソコン、サーバーなどのハードウエア、ハードウエア上で動作するOSなど)の設計構築および保守運用を担うエンジニアを指す。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部欧州ロシアCIS課
宮下 恵輔(みやした けいすけ)
2019年4月、ジェトロ入構。海外調査企画課を経て現職。

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