特集:高度人材の宝庫ロシア:魅力と課題ロシアを含む外国での採用活動に注力
ロシア人高度人材活用企業インタビュー

2020年12月4日

ロシア人高度人材の日本企業における活用は従来、貿易・マーケティングや通訳・翻訳業がメインだったが、現在ではホテルやIT分野など国内事業に特化した分野にも広がっている。日本各地でリゾートホテルを運営する大和リゾート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます もその1つだ。同社は海外での高度人材採用活動に注力している。営業本部人財採用部人財採用グループの竹内杏里リーダーに、ロシア人を含む外国人従業員の雇用状況や、外国人社員の受け入れ・定着に当たってのポイント、留意点などについて聞いた(9月9日)。

大和リゾート営業本部人財採用部人財採用グループの
竹内杏里リーダー(大和リゾート提供)

モスクワでの採用説明会の様子(大和リゾート提供)
質問:
御社の概要と外国人従業員の雇用状況について。
答え:
当社は1973年に設立された大和ハウスグループでリゾートホテル運営事業を担う会社。売上高462億5,200万円(2020年3月)で従業員数は1,952名。日本全国28カ所にリゾートホテルを有する。海外拠点は支社を台湾と韓国、オーストラリアに設置。インバウンド向けのPRを主要業務としている。
9月1日時点の外国人社員数は112人で、国籍数は28カ国・地域。内訳はベトナム、ネパール、台湾、ロシア、イタリア、ハンガリー、韓国、ミャンマー、インドネシア、ポーランド、オーストラリア、米国、スペイン、タイ、バングラデシュ、フランス、ウズベキスタン、ドイツ、ラトビア、リトアニア、ラオス、オランダ、英国、タジキスタン、香港など。
外国人社員が取得している在留許可は、全て「技術・人文知識・国際業務」だ。外国人社員の業務は主にフロントだが、レストランでの通訳や宿泊予約管理も担当する。在留許可で業務範囲が定められているため、逸脱しないよう気を付けている。
質問:
外国人社員を採用したきっかけは。
答え:
東京五輪・パラリンピック開催に伴う海外インバウンド需要の拡大を見込んで、経営目標を当社社長が掲げたことだ。具体的には、(1)訪日外国人対応を可能な体制にする、(2)社内の真のグローバル化を図り世界基準で物事を考えていける会社になると、いうもの。採用を開始したのは2016年で、競合他社よりも早かった。
質問:
外国人の採用基準は。
答え:
海外で採用活動を行う際、最低限、(1)大卒以上、(2)日本語を話すことが苦でない、(3)明るい性格でコミュニケーション能力が高い、(4)日本への渡航経験がある、(5)清潔感がある、(6)観光・ホテル業に関心がある、という6つを満たす必要がある。(1)については在留許可取得の必須要件、(2)は日本人が多い職場であり、日本語に毎日接するため。(4)は日本への興味・関心度の強さを図るためで、単に日本に行ってみたいという応募者を除外するためだ。(5)は人並みであれば可としている。日本語運用能力については、具体的な基準は設けていない。敬語が不得意でも笑顔であいさつできればとよいと考えているが、入社時点で日本語能力試験(JLPT)N2(2級)程度の能力を有する社員が多い印象だ。
一方、日本で外国人(主に留学生)を採用する場合には、母国で大学を卒業していること、もしくは日本の専門学校以上を卒業していることを条件に、数学、言語、適性検査の試験を実施している。
質問:
日本企業の多くは、日本在住の外国人を求人のターゲットにする。御社が外国で採用活動を行う理由は何か。また、活動状況は。
答え:
海外で行う理由は、国内で採用活動を行う以上に良い人材を獲得できるため。日本国内の留学生も採用しているが、海外で採用活動を行った方が多くの優秀な候補者を集めることができる。
海外での採用活動は大きく2つに分かれる。まず、大規模ジョブイベントへの参加だ。米国で開催されるボストン・キャリア・フォーラムのほか、韓国や台湾、米国、オーストラリア、英国のイベントに出展している。大規模イベントが開催されない国では、各国に配置しているコーディネーターを活用して個別に採用説明会を開催する。ロシア、ハンガリー、ポーランド、イタリア、シンガポール、タイ、ミャンマー、ネパールではこの形態で採用活動を行う。現地の日本語学校で会社説明会を開くのが一般的だ。
日本国内での採用活動では、留学生向けのジョブフェアなど外国人学生が集まるイベントへのブース出展がメイン。
他社との差別化のため強調しているのは、(1)大和ハウスグループであるため健康保険や厚生年金など福利厚生が充実している点、(2)全国に展開するホテルで経験ができる点、(3)宿泊業以外にも、例えば、各地の地場食材をオンライン販売するといったプロジェクトがあり、さまざまな仕事に従事することができる点、だ。
イベントや説明会の折には、候補者に履歴書の持参だけ依頼し、会社説明を聞いた後で、氏名や自身の長所・短所、入社希望理由に関するエントリシートを手書きで記入してもらう。面接は2回。1回目は現地で当社社員が対面面談し、2回目は社長がオンラインで行うかたちだ。
質問:
ロシアで採用活動を行う理由と、活動状況について。
答え:
日本語を真剣に学んでいる学生が多いためだ。2016年に初めてモスクワとウラジオストクで採用活動を行い、2019年まで毎年ロシアで実施している。これまでに採用した人数は9人で、内訳は男性3人、女性6人。
イベントの際には就職意欲の高いが方が集まってくる印象だ。新卒学生というよりは、日本語に関係のある職歴を有する方が多く、日本で働くチャンスがあることに魅力を感じて面接を受けに来たというケースが一般的。日本に留学した経験のある人、日本語を使う仕事に従事している人は、特に日本語運用能力が高く、コミュニケーションを取るのがスムーズだった。
質問:
ロシア人社員の印象は。
答え:
真面目で、明るく、おしゃべりで陽気な人が多いというイメージだ。物静かな人もいるが、そういう人は意志が固く、しんがしっかりとしていて、仕事を一生懸命やってくれる。能力面では日本語力を重視していることもあり、英語ができない人もいる。勤務地を東京に限定したいという人はあまりいない。
質問:
外国人従業員の待遇・人事制度は。
答え:
一律に新卒入社扱いだ。経験者採用という扱いにはしていない。初任給は日本人と同じだ。配属希望先は事前にヒアリングし、できる限り本人の希望に合わせるようにしている。配属先によっては自動車免許がないと生活ができない場所もあるためだ。また在留許可は、就労先のホテルが決まってから申請する必要がある。そのため、入社時点で配属が決まっている。
人事異動は多くない。1年に1度、人事調書の提出を従業員に課しているが、異動希望の場合、社内公募に手を挙げるというかたちが一般的だ。昇進の際にはやる気と実績を重視している。当社の仕事に対して熱意があるかどうか、実績を上げているかどうかをみている。
当社には日本に旅行した際に体験した「おもてなし」に感動し、それを自分でやってみたいという勤勉な外国人社員が多い。
質問:
福利厚生や定着支援は。
答え:
当社は寮と社宅を提供している。勤務先のホテルの近くに設置しており、毎月の自己負担額は5,000円~1万円程度。外国人社員には就職に当たっての渡航費を提供している。引っ越し旅費は赴任旅費として一定額を支給している。社内には資格取得に伴う祝い金制度があり、JLPT N1(1級)取得時には報奨金を渡している。
外国人社員の受け入れと必要な支援は、各ホテルの総務担当者が担う。具体的には、在留許可の更新作業や郵便局での口座開設、役所での転入届などだ。加えて、先輩社員や外国人社員同士がサポートするケースもある。各ホテルにはなるべく2人以上外国人を配属している。
質問:
離職率は。「新型コロナウイルス禍」による影響はあったか。
答え:
外国人社員の離職率は日本の新卒社員と同じで、3年で3割程度だ。離職は本人の意向や家族の状況などさまざま。本人が「辞めたい」と言い出した際には、その理由をヒアリングしている。外国人社員はキャリアアップ意欲が高く「現状の仕事では満足できない」という内容が多い。ちなみにその場合は、ホテルの中で新たにできそうなことを考えるという対応をとっている。他方、本人の能力や勤務態度が一定水準に達していないのに、主張だけ繰り返す社員もおり、そういったケースでは、本人が十分にできていないことやステップを説明して、それをまずは達成してからという説得をしている。
給与を理由に退職する者はみられない。家賃補助があったり、自動車を先輩から譲り受けたりするなど、実質的に可処分所得が高いためだ。
「コロナ禍」では、外国人社員の本人の意思を尊重した。緊急事態宣言が発動された4~5月には特別休暇を与えたこともあった。この時に約半数が一時帰国したが、現在までに全員戻ってきている。航空便が運航されない中、船を乗り継いで日本に帰還したつわものもいる。
質問:
外国人社員に対する研修体制は。気を付けていることは何か。
答え:
研修は日本人と同じで、外国人向けには特別な内容は用意していない。就業規則だけは英語で説明しているが、それ以外の講義は日本語。さまざまな社内部署を回るプログラムがある。
外国人社員に対する教育で気を付けていることは、意見を否定しないことだ。当社としては、さまざまな文化・バックグランドを有する人材を尊重している。外国人社員からは、日本のルールでここはおかしいという意見もあり、日本人が至らない点もある。
意見が合理的であれば、社内ルールを変更した例も実際にある。例えば、規則を緩和して、髪の色やネイル、髭はおしゃれであれば許容することにした。特に髭については、あるイタリア人社員が母国では髭は男のステータスであるため剃りたくないと主張したことに端を発したものだ。しかし、ひげが日本人のような無精ひげでなく、きちんと整っている「カイゼルひげ」だったため許可した。日本の社会ルールや文化に対して、さまざまな意見が出されるのは良いことと捉えている。
質問:
今後の展開について。
答え:
当社の総従業員数は、約2,000人だ。そのうち外国人社員は112人で、5%程度にすぎない。しかし外国人社員にはやる気の高い人が多いこともあり、引き続き積極的に採用していく予定だ。今後は海外にホテルを設置する可能性もあり、その際には大和リゾートのDNAを持って経営に取り組むことができる外国人社員を派遣したいと考えている。
執筆者紹介
海外調査部欧州ロシアCIS課 課長代理
齋藤 寛(さいとう ひろし)
2007年、ジェトロ入構。海外調査部欧州ロシアCIS課、ジェトロ神戸、ジェトロ・モスクワ事務所を経て、2019年2月から現職。編著「ロシア経済の基礎知識」(ジェトロ、2012年7月発行)を上梓。

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