特集:中東・アフリカの新型コロナの影響と展望人工呼吸器やマスクの国産化と輸出に成功(モロッコ)
農業と食料供給でアフリカのハブを目指す

2020年7月31日

モロッコの新型コロナウイルス感染者数は、7月26日時点で1万9,645人だ(Our World in Data)。3月2日に国内で初の感染症例が確認された後、3月15日に国際旅客フライトの運航停止を発表。3月20日には、衛生緊急事態・隔離令を敷いた。このように、政府は感染拡大を防ぐべく対応措置を講じてきた。

国内の官民の事情に精通するアミン・ラヒジ氏に、新型コロナ禍の現状について聞いた。ラヒジ氏は、モロッコ無形資本・経済委員会会長。モロッコ輸出業者協会副会長も兼ねている。


アミン・ラヒジ氏(本人提供)
質問:
新型コロナは国内経済と産業にどのような影響を及ぼしているか。
答え:
世界的に新型コロナの感染拡大が始まった当初、多くの国が、苦労して救命用品の調達・輸入に走った。例えば、医薬品やマスク、消毒ジェル、検査キット、人工呼吸器といった救命用品・機器などだ。しかし、モロッコは冷静に効果的な対策を模索した。その結果、国内全人口をカバーできる救命用品の生産に成功した。国際基準を満たす人工呼吸器やコスト競争力のあるマスク(単価0.07ドル)の生産についても、同様だ。
モロッコはこれら救命用品を世界の4大陸に輸出した最初の非アジア国となった。輸出先は、北米やメキシコ、南米(ブラジル)、欧州(スペイン、ポルトガル、フランスなど)、アフリカ(アルジェリア、セネガル、モーリタニアなど)、中東(サウジアラビアなど)といったところだ。
また、食料の安全確保も、世界の関心事だ。モロッコは、短期間のうちに国内需要を満たすだけの食料を確保した。食料輸出の伸びは、アフリカ地域で最も高い。主な輸出品目は、生鮮野菜や果物、水産物・水産加工品だ。これは、農業・食料の専門知識、生産・輸出の維持・強化のため、数十年にわたる長期的な戦略と投資によるものだ。すなわち、長年、生産物の多様化と生産性向上、地域開発を目指してきた成果と言える。
質問:
ポスト・コロナに向けた再興の動きは。
答え:
自身のチームが2年間にわたり取り組んだ調査・研究がある。この成果は、2019年11月にギニア・コナクリで、アフリカの経済開発に関連する賞を受けた。アフリカ大陸での持続可能な開発・発展、国の安定、社会やジェンダーの格差解消、地方の収入増加、モロッコの対アフリカ輸出入の品目多様化に、農業が大きく影響を及ぼすというのが、その内容だ。
この研究では、モロッコがアフリカの(ひいては世界の)農業と食料供給のハブになると予測した。モロッコが(1)アフリカの農業生産・質の向上に貢献すること、(2)アフリカから世界への輸出を促進し、生産者が世界各国のバイヤーとつながるよう支援すること、(3)アフリカ大陸と周辺国で食料の安全保障の確立に寄与すること、を目指す考えに立つものだ。アフリカで生産した食料や農産物を「購買および流通センターとしてのモロッコ」を通じて国際的な需要に結びつける。この中でモロッコは、農業・漁業と国際的な食品バリューチェーンの統合、工業化・国際取引のハブとして機能することになる。新型コロナ禍の下、モロッコが周辺各国への医療用品や食料の供給国となったことで、信頼に足る研究予測であることを証明した。モロッコは、より安全で速く、近く、信頼性の高い調達先・生産地になる――欧州、アフリカ、さらには米州の多くの国々が、今ではそう考えるようになった。モロッコが投資先としての魅力を増し、今回のパンデミック後、世界的なバリューチェーンで中心的な役割を果たせる可能性を示している。
質問:
新型コロナ禍で、政府や企業にはどのような活動、動きがあったか。
答え:
モハメッド6世国王の指示の下、6月、モロッコ製の医療・医薬関連品、マスク(800万個)、防護バイザーなどをアフリカ15カ国に提供した。各国首脳は、公式の場でモロッコの支援に感謝の意を示した。
国王は、アフリカが新型コロナと闘うため、汎アフリカ・イニシアチブの設立を提唱した。今回のインタビューに先立つ4月13日のことだ。このイニシアチブは、アフリカのニーズに応じた実用的で具体的な枠組みを期すものだ。これには、全アフリカ議会や国際社会から賛同を得ている。
新型コロナ感染が世界で広がる中、モロッコはアフリカ各国に積極的に関与し、アフリカの繁栄や自立、安全を築くという長年来のコミットメントに取り組む。モロッコのことわざに、「真の友人は苦難の際に分かる(It is in times of hardship that true friends are known)」というものがある。
モロッコの外交的な成功は、国内での新型コロナ対応の成功を反映したものだ。国王の指示の下、モロッコ人と同国を訪れる投資家や観光客、学生などの生命の保護を最優先した。国内初の新型コロナ感染者が確認されて以来、対応を迅速に進めてきた。例えば、医療支援・地域支援、セキュリティー対応、各種基金の設立、必要な病院の建設(7日以内で建設)などだ。産業の再編には引き続き取り組み続けている。100パーセントモロッコ製の人工呼吸器、外科用・保護用マスク、消毒ジェル液体の生産も進めている。
執筆者紹介
ジェトロ・ラバト事務所長
石橋 洋一郎(いしばし よういちろう)
1999年、ジェトロ入構。本部、ジェトロ愛媛、ジェトロ・パリ事務所に勤務し、2018年7月から現職。

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