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特集:動き出したアジアのスマートシティ構想自然環境や社会にも配慮した持続的な成長に沿った開発を模索(ラオス)

2019年8月30日

ラオスではスマートシティ推進の国家戦略はまだ策定されておらず、政府は方向性を検討している段階にある。一方で、民間セクターによる取り組みは先行しており、タイ企業や中国企業はスマートシティ推進に向けて可能性調査を始めるなどしている。ラオスでは近年、交通渋滞や環境問題をはじめとした都市問題が顕在化しており、こうした課題の解決に期待がかかる。

スマートシティ政策を構築へ

ラオスでは2018年に、首都ビエンチャンおよびルアンパバン市の2都市がASEANスマートシティネットワーク(ASCN)に参画した(2018年11月26日付ビジネス短信参照)。ラオス政府の体制としては、中央政府では外務省経済局および公共事業運輸省住宅都市計画局を中心とし、ビエンチャン、ルアンパバンの地方自治体が共同してスマートシティ推進を行う。一方で、現時点ではラオスにおける国家戦略は未策定の初期段階で、方向性を検討している。

スマートシティ担当官として任命されている住宅都市計画局のビエンナム副局長によると、2020年をめどに都市計画を改定し、その中にスマートシティを組み込む見込みで、2021年に採択される「第9期国家社会経済開発5カ年計画(2021~2025年)」に具体的に盛り込まれる予定という。それまでに、ラオスの全体構想を、先行する国の政策や成功例を手本としつつ、同国での必要性を考慮しながら構築する意向だ。現在、1つの方向性として挙がっているのは、「持続的なグリーン成長戦略(注)」に沿ったスマートシティの推進である。これは、ラオス政府が第8期国家社会経済開発5カ年計画(2016~2020年)において初めて提唱したもので、経済成長が進むにつれて、環境や社会への配慮を高めるというものだ。

タイや中国などの民間セクターによる事業が先行

民間では、大手外資企業によるスマートシティへの取り組みが先行している。2017年末には中国の通信機器メーカーのファーウェイ・テクノロジーズと首都ビエンチャン政府の間でスマートシティの可能性調査が開始された。詳細は不明だが、工業団地で情報通信技術(ICT)を活用した徴税などのパイロット事業を行うと発表している。また、タイの大手工業団地デベロッパーのアマタ・コーポレーションはラオス北部のルアンナムター県およびウドムサイ県において、アマタ・スマート&エコシティ・プロジェクトの可能性調査を2018年から開始している。特に、中国ラオス鉄道の物流拠点の1つとなるナトゥイ地区を中心として、スマート化を推進する計画のようだ。そのほか、2019年3月に中国国境地域であるボーテン・デンンガーム経済特区(SEZ)(2019年4月11日付地域・分析レポート参照)で、中国鉄塔のラオス子会社である東南亜鉄塔公司がSEZ内のスマートシティ化に向けた基礎ネットワークの構築を推進すると発表しているが、詳細は不明である。

都市部では交通渋滞や環境問題が顕在化

総人口がわずか701万のラオスでは、首都ビエンチャンが1平方キロ当たり231人、ルアンパバン市では128人(2018年)と、人口密度が比較的低い。このため、アジア各国の都市部でみられる後述のような社会問題は、これまでは多くなかったと言える。ただし、近年は地方から都市部への人口流入の加速や個人所得の増加などの影響で、交通渋滞や環境問題が顕在化してきている。二輪車および自動車の累積登録台数は、首都ビエンチャンでは2000年は41万台であったが、2017年には90万台へと増加したほか、違法駐車などにより交通渋滞が発生するようになった。交通事故は急増しており、全国の交通事故死者数は2010年の775人から2018年には995人に達した。うち、首都ビエンチャンでは238人の死者を出した。

また都市環境では、国内に下水道インフラがなく、一般廃棄物や産業廃棄物も増加し、処理施設の能力を超えてきている。大気汚染についても、2019年3月には、主に焼き畑や山火事に起因するPM2.5(微小粒子状物質)がラオスの各都市で問題となった。近年では、高層ビルやニュータウンの開発が進んでいる一方、管理監督ルールの整備が追いついていないなど、他国との程度の差こそあれ、都市問題が顕在化している状況にあり、これらの問題への取り組みは政府の大きな課題となっている。


朝のラッシュアワーの渋滞の様子(ジェトロ撮影)

注:
ラオス政府は「第9期国家社会経済開発5カ年計画(2021~2025年)」では、名称を「国家グリーン拡大戦略」に変更する見込み。
執筆者紹介
ジェトロ・ビエンチャン事務所
山田 健一郎(やまだ けんいちろう)
2015年より、ジェトロ・ビエンチャン事務所員

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