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インド初のスマートシティー「GIFTシティー」の今
急ピッチで整備進むも、土地収用問題などが浮上

2019年5月10日

インド初のスマートシティープロジェクトとして、グジャラート州で開発が進められてきた「グジャラート国際金融テックシティー(通称:GIFTシティー)」は、900エーカーのうち260エーカーを金融オフショア取引の経済特区(SEZ)に充て、金融分野やIT関係企業を呼び込み、ロンドンやニューヨーク、香港、シンガポールのような国際金融ハブ化を目指す計画だ。良好なアクセスやインフラ整備を武器に投資を呼び込む。他方、土地収用や財務面での課題が表面化し、プロジェクトを不安視する声も上がっている。

GIFTシティー、良好なアクセスで投資を呼び込む

グジャラート国際金融テックシティー(通称:GIFTシティー)構想は、2007年にナレンドラ・モディ・グジャラート州首相(当時)が同州投資誘致会議「バイブラント・グジャラート」で提案したもので、インド都市開発省が進めるスマートシティーミッションの第1期で選定された。総投資額は約7,000億ルピー(約1兆1,200億円。1ルピー=約1.6円)を見込む。GIFTシティーは、デリーからムンバイに走る国道8号線沿いにあり、アーメダバード国際空港から約12キロ、州都ガンディナガルから約8キロとアクセス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます が良い(地図参照)。総面積900エーカー(約360万平方メートル)のうち260エーカーは金融オフショア取引の経済特区(SEZ)に充てられており、金融分野やIT関係企業を呼び込み、ロンドンやニューヨーク、香港、シンガポールといった国際金融ハブ化を目指す計画だ。

図:GIFTシティー周辺マップ
北西部に州都ガンディナガル、南部にアーメダバード国際空港、 その南西部にはアーメダバード市街地がある。

出所:GIFTシティーCo.社資料を基にジェトロ作成

最先端のインフラとインド国際取引所も完備

GIFTシティーでは2012年に建設が本格始動し、現在はインドで4カ所目となるティア4データセンター(注)として、2棟の地上28階建て高層オフィスビルが完成した。世界貿易センタービルの建設用敷地も整備中だ。ビジネス向けの施設だけでなく、小学校も完成しており、居住地区、ホテル群、娯楽施設、病院などの建設も進んでいる。また、電力や飲料水供給、冷暖房、電気通信、ゴミ処理などの共用施設は一元的な集中管理体制が敷かれている。

GIFTシティーの経済特区(SEZ)内に入居している企業向けに、外貨での資金調達、資産運用、証券取引の仲介が可能で、物品サービス税(GST)の免除などの税制優遇措置も設けられている。2017年にSEZ内に設立されたインド国際取引所(India INX)では、S&P BSE センセックスやIndia50といったインドを代表する株式指数のデリバティブ取引のほか、金、銀、銅などのコモディティーや107銘柄の株式、債券も取り扱うなど、総合的な取引所として機能している。取引所は1日22時間開設しており、幅広いタイムゾーンの市場参加者がアクセスでき、取引情報はブルームバーグのターミナルからもアクセス可能だ。インドにありながら、オフショア市場として取引可能である点も魅力的だ。

2014年にGIFTシティーへの入居が開始されて以降、すでに200社超の企業がエリア内(SEZを含む)でビジネスを展開しており、雇用人数は8,200人を超える。ただし、現時点では、日系金融機関や建設業者などによる本プロジェクトへの参画は表明されていない。

土地収用問題が発生、プロジェクトの将来性を不安視する声も

他方、GIFTシティーは現在、いくつかの問題に直面していると報道されている。グジャラート高裁は3月19日、40人を超える農民が州政府による土地収用は無効だと州政府を提訴した事案で、農民側の主張を認める判決を出し、州政府に対し、(1)GIFTシティー~チローダハイウェイ間の道路拡張に係る土地を保有していた農民に新たに補償金を支払うこと、(2)土地の評価額は2013年に改正された新土地収用法に基づき算定すること、(3)補償金の支払いは6カ月以内をめどに行うことなどを命じた。2011年時点での評価額は1平方メートル当たり83~86ルピーが提示されていたが、新土地収用法では、1平方メートル当たり2,150~2,800ルピーに値上がりする見込みだという(「タイムズ・オブ・インディア」紙、3月20日付)。

また、財務面でも不安を抱える。本プロジェクトは、地場金融会社インフラストラクチャー・リーシング・アンド・ファイナンシャル・サービス(IL&FS)と、州政府管轄のグジャラート都市開発公社との50%折半の合弁会社GIFTシティーCo.により進められているが、IL&FSは多額の負債を抱え、債務不履行が表面化している。インド政府は2018年10月1日、「IL&FSの経営陣を全て入れ替える」と発表し、問題解決に向けて取り組んでいる最中だ。同紙によると、入居する地場金融機関などからは本プロジェクトの将来性を不安視する声も上がっているという。そうした中、インド重大不正捜査局(SFIO)は4月1日、ハリ・サンカラン前IL&FS社長を信用性のない、または、不良債権を持つIL&FSグループ子会社への貸し付け容疑で逮捕した。GIFTシティーCo.のアジャイ・パンデイ社長兼グループ最高経営責任者(CEO)は3年の任期を終え、3月31日付で退任したが、後任は決まっていない。州政府高官によると、「州政府はIL&FS社がGIFTシティー関連プロジェクトで保有する株を買い取る意向がある」とし、第三者評価機関による審査中とのことだ(「タイムズ・オブ・インディア」紙、4月4日付)。本プロジェクトの課題解決に向けた州政府の対応が今後も注目される。


オフィスビルなどの建設が進むGIFTシティー(3月24日、ジェトロ撮影)

注:
アメリカの民間団体(UPTIME INSTITUTE)が作成したデータセンターのクオリティーを判断するために設けられた基準で、1~4の4段階で評価されており、各評価項目の全てが「4」のデータセンターをティア4相当のセンターと呼ぶ。
執筆者紹介
ジェトロ・アーメダバード事務所
丸崎 健仁(まるさき けんじ)
2010年、ジェトロ入構。ジェトロ・チェンナイ事務所で実務研修(2014年~2015年)、ビジネス展開支援部、企画部海外地域戦略班(南西アジア)を経て、2018年3月よりジェトロ・アーメダバード事務所勤務。

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