中東・アフリカにおける物流とインフラプロジェクトの動向を探る他国との鉄道連携の強化
2025年のイランを振り返る(2)

2026年3月26日

イランの国内報道を基に2025年(注)のイランの動向を概説する本連載の前編では、イスラエルとの衝突など厳しい状況下で、他国との連携強化を図るイランの国内外の情勢を概説した。

後編となる本稿では、イランの鉄道分野に焦点を当てる。イランのイスラーム共和国通信(IRNA)では2025年、同国の鉄道分野での他国との連携拡大や、国内の鉄道輸送拡大についての報道が多く見られた。

(本連載は2025年末までの情報に基づき執筆されています。イラン情勢に関する情報はビジネス短信特集「イスラエル・米国とイランの衝突に関する中東情勢、各国の反応」もご参照ください。)

鉄道の接続による他国との連携強化

11月28日付IRNAは、独立国家共同体(CIS)運輸評議会第83回会議で、イランはロシア、アゼルバイジャンと、南北輸送回廊の西ルートにおける貨物輸送の固定価格設定、物流サービスの開発における長期的な協力を行うことを目的とした覚書に署名したことを報じた。さらに、中国、カザフスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、トルコとの間でも、中国からイラン経由で欧州へ貨物を輸送することを促進する協定を締結している。この鉄道輸送は海上輸送に比べ、輸送時間を約3分の1に短縮できると報じられている(11月30日付IRNA)。11月26日付IRNAによると、イラン鉄道当局は、南北輸送回廊の目標をインドと東南アジアをロシア・東欧に結ぶこととし、イランはこのルートの主軸となると強調しているという。また、カザフスタン大統領は、ロシア、カザフスタン、トルクメニスタン、イランを結ぶ鉄道の貨物輸送能力が今後5年間で年間2,000万トンに増加すると予測しているという(11月12日付IRNA)。

図:イランの周辺国、国内各都市、空港、港湾などの位置
イランは周辺国との鉄道による連携強化と国内の鉄道プロジェクトの進捗を図っている。

注:地図上の国や都市、空港、港湾などはおおよその位置を指す。
出所:GlobalDataを基にジェトロ作成

こうした取り組みの中、11月8日にロシアから初めての定期貨物列車がテヘラン南西部にあるアプリンドライポートに到着した(5月24日付IRNA)。アプリンドライポートはテヘラン市内とイマーム・ホメイニー国際空港の間に位置し、テヘランから20キロメートル、イマーム・ホメイニー国際空港から40キロメートルの距離にある(図参照)。今回の定期貨物列車では、イランとイラク向けの紙、パルプなどを積んだ40フィートのコンテナ62個が、ロシアからカザフスタンとトルクメニスタンを通過し、12日間でアプリンドライポートに到着した。IRNAによると、ロシアからは既に47本の貨物列車がイランに入ってきている(11月17日付IRNA)。加えて、12月1日にはイランから初めてウズベキスタンへ貨物列車が出発したことも報じられている(12月1日付IRNA)。

さらに、同年6月にも中国から初めて同ドライポートに貨物列車が到着した。前イブラーヒーム・ライーシー政権下(2021年8月~2024年5月)では中国からの貨物車両は7本であったのに対し、現ペゼシュキヤーン政権では既に30本以上の列車が到着しており(11月8日付IRNA)、年間の中国からの到着数は過去最高を記録しているという(11月26日付IRNA)。中国からは、例えば太陽光パネルを積んだ列車がアプリンドライポートに到着していることが報じられている(5月24日付のIRNA)。

アプリンドライポートは700ヘクタールの敷地に、1日あたり30本の車両、18線、1,000台の貨車を受け入れる能力がある(5月23日付IRNA)。IRNAによると、今後さらに同ドライポートに関する投資契約が締結される予定で、1日1本のペースで列車が入港できる体制を目指すという(11月7日付IRNA)。

また、アプリンドライポートについては、国内物流ハブとしての役割も見込まれている。2025年10月にイマーム・ホメイニー国際空港都市会社とイラン鉄道会社の間で「テヘラン・ロジスティクス・シティー」開設に関する覚書が締結された。この覚書は、アプリンドライポートとイマーム・ホメイニー国際空港を首都圏の物流都市として位置付け、需給市場を支援し、輸送コストを削減することを目的としている。輸送量は2,000万トンまで増加可能とされ、そのうち鉄道が250万トン、道路が1,750万トン、一部は航空輸送で対応する計画だ。IRNAは、覚書の締結の場にペゼシュキヤーン大統領が出席したことは、鉄道輸送、特に国際輸送の発展に対する強い関心の表れだと報じている(10月30日付、11月1日付IRNA)。

さらに、12月28日付のIRNAは、アプリンドライポートが、輸入自動車の通関が可能な指定税関として認定されたことも報じている。

鉄道輸送拡大に向けた国内戦略

こうした国際協力の進展は、イラン国内の鉄道輸送拡大にもつながっており、国内では輸送シェアの引き上げや投資誘致を目指す取り組みが加速している。国際鉄道連合(UIC)の「Railway Statistics Synopsis 2024」によると、世界各地域の鉄道貨物輸送量の中東地域のシェアは約1%で、その大半がイランだ(2024年10月28日付地域・分析レポート参照)。12月30日付のIRNAによると、鉄道分野では合計9つの回廊が設定されており、その内訳は、南から北へ延びる方向を基本とする回廊が6本、東から西へ延びる方向を基本とする回廊が3本となっている。各回廊には複数の路線や区間が含まれており、総延長は約1万7,800キロメートルに達する。このうち、約1万2,600キロメートルは既に完成・供用されており、残りも現在建設中だという。

同国では鉄道輸送の拡大に向けた取り組みが加速している。イラン政府の中期的な経済・社会政策の指針となる第7次経済開発5カ年計画(2024年度~2028年度)では、鉄道輸送に関して主に以下の目標を掲げている。

  • 年間の鉄道輸送量4,000万トン
  • 国全体の輸送における鉄道輸送シェアを30%へ引き上げ
  • 港湾における鉄道輸送のシェアを25%へ引き上げ
  • 鉄道車両550台の調達

イラン暦1403年(2024年3月20日~2025年3月20日)の国内貨物輸送2,000万トンのうち、道路輸送が1,760万トンであったのに対して、鉄道はわずか240万トン(12%)にとどまった。一方、イラン暦1404年上半期でのイランの鉄道による貨物輸送量はイラン暦で前年同期比20%増(11月17日付IRNA)、イラン暦1404年最初の8カ月間では185万トンで、イラン暦で前年同期(55万トン)比40%増加した。また、11月17日付のIRNAによる報道時点での列車の稼働状況もイラン暦での前年比で17%増加しているという。同月27日付のIRNAは、イラン鉄道会社の副社長が「(イスラエルとの)12日間の衝突や制裁下にもかかわらず、鉄道外交の推進と近隣諸国とのさまざまな協定締結により、成長を記録した」と述べたことを報じている。

鉄道貨物輸送能力の拡大に向け、イランでは複数の投資契約が進展している。鉄道貨物輸送能力の拡大、物流インフラの整備、車両の近代化、民間部門との連携強化を目的として、2件の覚書と3件の投資・運営契約が締結された。その中には貨物用列車200両の調達・購入も含まれている(12月14日付IRNA)。鉄道業界への民間投資には64億ドルを誘致することが計画されており、77%が車両部門、23%がインフラ部門に充てられる予定だという。IRNAによると、第7次経済開発5カ年計画の達成のためには170億ドル以上の資金調達が必要になるという(11月13日付IRNA)。そうした中、鉄道車両開発の発展のために150兆リアル(約143億円、1万リアル=約0.95円)の債券が発行されたほか、民間資本からの鉄道インフラへの投資も9兆リアルに達したという(11月16日付IRNA)。

11月30日付のIRNAによると、イラン鉄道会社の最高経営責任者(CEO)は「政府からの支援と民間部門での投資拡大により、貨物輸送における鉄道シェアを最大30%まで高められる」と述べたという。また、IRNAはイラン鉄道会社が、イラン暦1403年の鉄道貨物輸送量がイラン暦前年比12%増で、事故減少や燃料消費・環境汚染の削減による節約額が15億ドルにのぼると発表したことを報じている。

鉄道プロジェクトの進展

鉄道輸送の拡大方針は、複数のプロジェクトの進展に表れている。

同国の道路・都市開発省は、プロジェクトの完成により、国内の貨物・旅客輸送能力が大きく増加し、イランを地域輸送の重要拠点の1つにできるとしている(9月2日付IRNA)。

2025年1月11日付のIRNAは南部のチャーバハールと南東部のザヘダンを結ぶ鉄道のレール敷設が2年ぶりに再開したことを報じた。634キロメートルにおよぶ鉄道は、10月の1カ月間で50キロメートルが敷設され、進捗(しんちょく)率は84%を超えているという(10月25日付IRNA)。11月5日付のIRNAによると同鉄道は6カ月以内に完成が見込まれている。また、IRNAはイラン鉄道会社のCEOが、チャーバハール港を経由したインド、アフガニスタンとの鉄道開通を目指すとした発言も報じた。同CEOによると、鉄道の開通により、輸送距離と時間が大幅に短縮されるという。

他にも、イランの主要な鉄道プロジェクトの1つであるテヘラン北西にあるアルダビールとミヤーネを結ぶ鉄道の95%が完成(11月15日付IRNA)。同じくテヘラン北西に位置するザンジャーンとカズヴィーン間の路線も敷設が完了し、技術面および安全面の確認も完了したため、2025年末までに貨物と旅客の輸送が可能になるという(12月4日付IRNA)。また、テヘラン南部のコムと中部のイスファハーンを結ぶ区間も路盤工事が75%進展しているという。245キロメートルにおよぶ同区間はテヘランとも接続が予定されており、南北輸送回廊の一部であると報じられている。同区間の接続は道路輸送需要の最大30%を鉄道へ転換できる可能性があるという(12月25日付IRNA)。さらに、イラン北東部では、ユンシーとビルジャンドの区間の路盤工事が34%進展していることが報じられた。IRNAによると同区間を通る南ホラーサーン州は約55種類の鉱物資源を有する地域であるという。チャーバハールとも接続する鉄道プロジェクトが計画されており、幹線鉄道網に接続する重要な段階と報じられている(12月18日付IRNA)。

情勢の安定化と制裁解除後には、日本企業にも可能性

これまで2025年のイランの経済動向や同国の鉄道による他国との連携強化、国内での鉄道輸送の拡大の取り組みについて概説した。イスラエルとの衝突や制裁の逆風下にありながら、鉄道による他国との連携強化とインフラ整備が進み、地政学的要衝としての地位を維持している。第7次経済開発5カ年計画における投資誘致や各国との覚書締結などにより、輸送コストの削減や輸送時間の短縮といった具体的な成果も期待されている。

2025年12月時点で、欧米からの制裁の影響で、日本企業によるイラン・ビジネスの環境は厳しい状況となっている。一方、12月21日にテヘラン商工会議所とジェトロとの間で協力覚書が締結された。経済制裁の解除を見据えた日・イラン間の経済パートナーシップ強化を目的としている。非制裁分野および新興分野における協力拡大などを柱とし、ビジネスミッションの派遣やビジネスマッチング、セミナーの開催などを相互に支援するという内容を含んでいる(2025年12月25日付ビジネス短信参照)。

人口8,600万人を超える中東の大国の1つであり、歴史的にも「親日国」であるイラン。2025年末からイランを巡る国内外の情勢は一段と流動的で先行きは見通しにくいものの、情勢が安定化し、将来的に制裁が解除されれば、イランは、物流・インフラ分野で重要な拠点になり、日本企業にとって新たな市場機会が広がる可能性もある。


注:
本稿での年表記は、「イラン暦」と記載のない限り、西暦とする。また、本文で参照したIRNAの日付も全て西暦。 本文に戻る

2025年のイランを振り返る

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(1)イランの国内外情勢

執筆者紹介
ジェトロ調査部中東アフリカ課
加藤 皓人(かとう あきと)
2024年2月、都市銀行から経験者採用で入構し、現職。