中東・アフリカにおける物流とインフラプロジェクトの動向を探る空を制する者はアフリカビジネスを制する
アフリカの物流事情(2)

2026年1月26日

ネクスト・フロンティアとして注目されるアフリカ市場だが、日本企業が本格的に市場獲得に取り組むにあたり、物流面が大きな課題となる(「アフリカの物流事情(1)物流が日本のアフリカビジネス拡大の壁に」参照)。内陸の消費地にいかに早く、安定的にモノを届けるかという点では、航空便の活用も一案だ。エチオピア航空は域内60都市以上に就航する域内最大のネットワークを有する。本稿では、エチオピア航空の戦略的な活用を視野に入れた、新しいアフリカ市場開拓のアプローチを探る。

エチオピア航空の活用に勝機

前稿でアフリカ向けの貨物の物流に係る数多くの課題について述べてきたが、ジェトロでは航空便の効率的な活用により、これらの問題の多くが解決できるのではないかと考えている。ジェトロは2025年8月にエチオピア航空と戦略的物流ハブ構想に係る協力覚書を調印した(2025年8月19日付ビジネス短信参照)。エチオピア航空の広範なアフリカネットワークを活用し、新たな航空物流ルートの確立を通じて、日本‐アフリカ間のビジネス関係の強化を目指すものだ(「アフリカビジネスにおけるエチオピア航空利用の可能性」参照PDFファイル(2.12MB))。

エチオピア航空は世界160都市以上に就航するアフリカ最大の航空会社だ。同社は日本の成田空港に週6便、韓国の仁川空港をワンストップで経由する準直行便を持ち、アフリカ60都市以上に就航し、日本とアフリカをつなぐ重要な役割を担っている。同社は近年、積極的に航空機の保有数を増やし、急速に路線を拡張している。2024/25年度は8%成長となる76億ドルの売り上げを記録した。2029年までに年間1億1,000万人規模のキャパシティーを持つ新空港をアディスアベバに建設する計画も発表するなど、急成長するアフリカのビジネスチャンピオンだ(2025年6月25日付地域・分析レポート参照)。

航空便活用の最大のメリットはリードタイムの短さだ。船便では数カ月かかるところ、成田から順調にいけば、アフリカの主要な60都市以上に数日~10日間程度で輸送できる。成田に限らず、中国や東南アジア、インドなどにも直行便が就航しているため、日本企業の工場の所在地から、アディスアベバを経て、アフリカの内陸都市まで貨物を届けられる。航空便ゆえに、輸送の小回りが利き、小ロットから輸送ができる。陸路輸送のコスト節減や国境通過手続きによる遅延、盗難などのリスクも少ない。海上コンテナを埋めるために最小ロットを高く設定する必要や、補修部品を最初から抱き合わせで販売する必要もなく、メリットは大きい。

実際、中国企業のエチオピア航空の利用は増えているのか、同社は積極的に中国路線を拡張している。2025年4月にマカオ、6月にウルムチに路線を拡張し、現在、旅客路線は5大都市に週35便以上、貨物路線は11都市以上に就航している。中国製品のアフリカ市場開拓を空から支えているといっても過言ではない。

また、エチオピア航空は韓国の仁川空港にも貨物専用機を飛ばしている。韓国のエチオピアへの輸出額は日本の約3倍の1億4,800万ドルにも及び、これには貨物専用機の有無が大きく影響していると考えられる。日本企業によるエチオピア航空活用は今のところ極めて限定的にとどまっている。「鶏とたまご」の関係にあるが、日本便の旅客と貨物需要が十分に育っていないがゆえに、成田への準直行便は週6便で、貨物便は飛んでおらず旅客便のみのため、貨物に使用できるスペースが限られている。エチオピア航空のレンマ・ヤデチャ最高商務責任者は、できるだけ速やかに週6便を7便に増やし、仁川を経由しない成田への直行便の就航を検討したいと意欲を示している。

中国企業は積極的にエチオピア航空を活用

当然ながら、品目的に航空便の活用が向かないものは、これまでどおり船便で輸送するしかない。また、航空便ゆえに輸送コストは決して安くはない。フォワーダーにエチオピア航空を活用した場合の航空貨物料金の開示を依頼したが、フォワーダーごとにタリフが異なる上、運賃は常に変動することや、同航空活用の経験が浅いことなどから、船便との正確なコストの比較は難しかった。また、エチオピア航空を活用した経験が浅く、少し昔の経験を踏まえ、輸送の安定性について不安があるとするフォワーダーも多かった。しかしながら、エチオピア航空の成長のペースは目覚ましく、サービスも改善しつつある。陸送や通関のコスト、リードタイムの短さなどを総合的に加味すれば、航空便のメリットは大きく、検討に値するのではないだろうか。

アディスアベバ空港での貨物のトランジットについては、アフリカ便の貨物スペースの有無に左右されることから、仕向け地によってはトランジットに時間を要することもある点について注意が必要だ。空港内に専用スペースがあることもあり、エチオピア航空はコールドチェーンにも自信を示しているが、結局のところ、最終仕向け地にコールドチェーンがあるかといった問題は残る。最初は少量からスタートさせるなど、実現可能性を確認していく必要はあるだろう。

中国企業はどのようにエチオピア航空を活用しているのか。同航空会社によると、例えば物量が大きいバルクの貨物は、初めから航空便で出すのではなく、ジブチ港まで船で輸送し、そこにエチオピア航空が貨物専用機で迎えに行っているとのことだ。そして、アディスアベバまで輸送、そこで輸送品を仕分けののち、アフリカ各地に輸送するというようなことも行われているという。アディスアベバの空港内が一種の保税倉庫のように機能している。また、エチオピア航空は2024年3月にアディスアベバの空港内にEコマース専用施設を設置した。同じタイミングで中国のアリババもエチオピア進出を発表するなど、中国の越境ECが同施設を積極的に活用しているようだ。他にも、物流大手DHLも空港内に専用のファシリティーを持つなど、エチオピアをハブとした物流インフラの構築は確実に進んでいる。

広がるビジネスの可能性

日本企業はアフリカビジネス拡大のために、どのようにエチオピア航空を活用できるだろうか。日本のアフリカ向け主要輸出品目を見ると、自動車や鉄鋼など、航空便での輸送に向かない品目も多い。しかし、現状、コールドチェーンの問題や需要不足により、輸出できていない日本食や医薬品、雑貨類、補修部品などは少量を高頻度で仕入れたいという輸入業者も多く、航空便の活用により、アフリカの高所得者向けのニッチ市場を開拓できるようになる。また、現状はアフリカ沿岸部にしか売り先が確保できていない日本企業が、内陸部の主要都市で新たな市場を開拓できる可能性もある。

さらに、エチオピアをハブにすれば、一定の在庫をアディスアベバに持ちつつ、アフリカ各地に日本から送るより機動的に、安く安定的にモノを届けることも可能だ。現状、エチオピアは保税制度関連法の整備が不十分だが、エチオピア航空によればアディスアベバの空港敷地内であれば、DHLやアリババのように、トランジット貨物(事実上の保税状態)で貨物を入れ、仕分けして各地に送ることができる。自動車のアフターパーツや医薬品、医療機器、農業機械や光学機器の補修部品などで、エチオピアをハブにできればデリバリーのスピードなどで、日本企業の競争力は大きく向上するはずだ。

医薬品については、エチオピア航空は空港内に医薬品・ヘルスケアハブを有し、国際的に認められている医薬品の航空輸送品質認証である「CEIV Pharma」を既に取得し、専用コンテナや専用スペースなど必要な温度管理を実施できる体制を整備している。医薬品の輸送ネットワークとして、韓国や中国(北京、上海、香港)、欧州(ベルギー、オランダ、フランス)、米国(シカゴ)に、アフリカ域内ではアディスアベバ、ナイジェリア・ラゴス、ザンビア・ルサカ、南アフリカ共和国・ヨハネスブルクが挙げられている。例えば、日本からエチオピアへの医薬品の輸出額(2024年)は4万ドル弱にとどまるが、中国は4,802万ドル、韓国は1,485万ドル、ベルギーは9,075万ドル、オランダが4,285万ドル、フランスが425万ドルにも及んでいる。エチオピア航空を活用することにより、日本からアフリカへの医薬品の輸出も拡大の可能性があるのではないだろうか。

また、中東経由でアフリカに機械類を輸出する日本のメーカーによると、アフリカ市場は大きなニーズがあり、今後ビジネスが伸びると考えているが、価格競争が厳しいとのこと。中東からでは輸送コストが高く、機械に一部プログラミング作業が必要で、その人件費も高くつくという。できれば将来的にはエチオピアに在庫を持ち、人件費の安いエチオピアでプログラミングなどの簡単な工程を実施した上でアフリカ各地に輸出することも検討していると述べた。エチオピア航空幹部によると、現在、計画中の新空港に隣接する、経済特区を作る計画もあるという。将来的にはアフリカ大陸の顧客から集めた精密機器の修理や、プログラムのアップデート、医療機器のリファービッシュ(整備済製品)、電気電子機器、パーツの再生工場の設置、再輸出のようなこともできるようになるかもしれない。

日本と同じく地理的にアフリカから遠く離れている中国や韓国企業はエチオピア航空の活用を増やしている。メリットが大きいことは明らかだ。エチオピア航空の活用が、新たな商品を新たな市場に販売を広げる「ゲームチェンジャー」となる可能性がある。また、既述のとおりエチオピア航空のネットワークはアジアや欧州にも広がっており、日本企業の工場や拠点からの輸送でも活用が可能だ。主要な市場が分断されるアフリカでは、「空を制する者はアフリカ市場を制する」といっても過言ではない。日本企業も船便の活用にあわせて、航空便も積極的に活用し、アフリカで広く市場獲得に取り組んでいくべきだろう。

アフリカの物流事情