中東・アフリカにおける物流とインフラプロジェクトの動向を探る港から国境まで、西アフリカ物流競争におけるトーゴの戦略
PIA工業団地とロメ―シンカッセ鉄道計画
2026年4月30日
西アフリカのトーゴにあるロメ港は、取り扱い貨物量240万TEU(1TEUは20フィートコンテナ換算)と、アフリカではモロッコのタンジェMED港、エジプトのポートサイード港、南アフリカ共和国(南ア)のダーバン港に次ぐ取り扱い貨物量だ(2024年8月19日付地域・分析レポート参照)。取り扱い貨物量が多い背景には、大型コンテナ船が入港可能な水深(最大水深16.6メートル)を備えている点と、海運大手のMSCグループがアジア~西アフリカの物流をロメ港に集約し、戦略拠点化を進めている点がある。こうした点を背景に、ロメ港は大型コンテナ船からフィーダー船への積み替え需要と、ブルキナファソ、マリ、ニジェールといったサヘル地域の内陸国向け貨物の荷揚げ需要に対応している。ブルキナファソ、マリ、ニジェールの3カ国はクーデター後、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)を脱退するなど政治的には不安定だが、外洋との接続はギニア湾沿岸国の港に頼らざるを得ない。国内市場が小さいトーゴにとっても、ロメ港の取り扱い貨物量増加にはサヘル3カ国の貨物需要を取り込んでいくことが重要だ。
本稿では、ロメ港が西アフリカトップの港へと成長した背景について、内陸国への接続と物流インフラの両面から整理する。
なお、ロメ港については、2026年3月6日付地域・分析レポート「積み替え需要で伸びる西アフリカの主要物流拠点、トーゴのロメ港」も参照。
港から工業団地、そしてブルキナファソ国境へ
ロメ港で荷揚げされた貨物のうち、ブルキナファソ、マリ、ニジェール向けの貨物は、ロメ港から車で30分ほどのPIA(Adétikopé Industrial Platform)工業団地へトラックで運ばれる。
工業団地内には、製造業向けの区画やテキスタイル専門エリアのほか、冷蔵コンテナも受け入れ可能な内陸港、トラック駐車場、倉庫など物流施設が整備され、物流ハブとしての機能も備えている。工業団地の関係者によると、主力はブルキナファソ、マリ、ニジェール向けの綿花を保管するための倉庫であり、テキスタイルは専門エリアがある点が強みだという。また、法人税や配当税など税制上のインセンティブも設定されている。例えば、法人税率は通常課税対象利益の27%のところ、工業団地内の企業であれば最初の5年間は0%、6~10年目は8%、11~20年目は10%、21年目以降は20%が適用される。さらに、敷地内には投資に係る手続きを一貫して行うためのワンストップ窓口が設置されている。手続きの入り口としてワンストップ窓口が設置されているだけでなく、税関やロメ港を管理する港湾当局、各種検査や許可を管轄する25の行政機関の窓口オフィスが集約されており、通関や各種手続きに関する手間とコストが削減できるよう工夫されている。PIA工業団地へ運び込まれた貨物は、一時保管や仕分けなどが行われた後、各国へ輸送される。

PIA工業団地自体は、2つの工業団地エリアを約9キロメートルの道路でつなぐ計画で、本稿執筆時点では1つ目の工業団地エリアの建設が完了し、20社ほどが入居して稼働していた。20社のうち最も多いのはトーゴ企業で、そのほかは中国、アラブ首長国連邦、ロシア、ベナン企業などが入居している。業種は電気機器、大豆油、二輪車、セメント、アルミニウムなど幅広い。今後、工業団地エリアを結ぶ道路の整備と2つ目の工業団地エリアの建設を進め、最終的には3万5,000人を雇用する目標だ。
また、関係者によると、最終的には太陽光発電所や労働者向けの住宅地エリアなどの建設も構想されている。
マスタープランについてはPIA工業団地のウェブサイト
を参照。
ブルキナファソ、マリ、ニジェール向けの貨物は、PIA工業団地で一時保管と仕分けが行われた後、国道1号(RN1)を通ってブルキナファソ国境のシンカッセへ運ばれる。RN1はトーゴ国内を南北に大きく通る主要な国道で、ロメ港からシンカッセまで接続している。
トーゴ政府はサヘル3カ国への物流を拡大するため、内陸コンテナデポなどの物流拠点をシンカッセに設置するほか、RN1に沿って全長約670キロメートルの鉄道路線建設を計画している(図参照)。ロメ-シンカッセ鉄道はPIA工業団地とも接続することで、ロメ港から工業団地を経由してシンカッセまで至る物流を一貫して効率化する計画だ。建設開始は2027年を予定している。この計画により、現在ロメからブルキナファソの首都ワガドゥグまで最大5日かかっている輸送時間が、1日に短縮される見込みだ。
また、トーゴ政府は道路の混雑と交通事故のリスクを緩和するため、RN1自体も整備し直す予定だ。
詳細やそのほかの物流・インフラプロジェクトについては、調査レポート「サブサハラ・アフリカ地域における物流・インフラプロジェクトの動向(主要7カ国の総合分析)」を参照。
注1:図はおおよその位置を示す。
注2:変更や中止となる場合もあるため、詳細・最新状況については、個別に確認する必要がある。
出所:GlobalData を基にジェトロ作成
西アフリカの港湾競争におけるトーゴの戦略
トーゴ政府が上記のプロジェクトに取り組む背景には、西アフリカ地域の港湾事情とトーゴの国内事情がある。
西アフリカは、コートジボワールのアビジャンからナイジェリアのラゴスまでの約1,000キロメートルの海岸線に、200万TEU規模の港が並んでいる。2023年には、ナイジェリアのラゴスから東に約20キロメートルのレッキに、最大水深16.5メートルの深海港が開港した。コートジボワール、ガーナ、トーゴ、ベナン、ナイジェリアの沿岸国は、西アフリカの物流において自国の優位性を確保しようと港湾を拡張し、競争が起きている。
ナイジェリアは人口2億人を超えるが、コートジボワールとガーナは3,000万人台、ベナンは約1,000万人、トーゴは神奈川県とほぼ同じ約930万人だ。サヘル諸国の人口もそれぞれ2,000万人規模だが、貨物需要が伸び続けていることから、ギニア湾沿岸諸国はブルキナファソ、マリ、ニジェールへの積み替え需要を捉えようとしている。
国内市場が小さく、西アフリカ沿岸で港湾の競争が起きている中、トーゴ政府は単にロメ港を拡張するだけではなく、貨物を国境まで運ぶ鉄道・道路インフラと、中継する物流施設を含めた物流網全体を強化することで、西アフリカにおける優位性を確保しようとしている。他国の港湾拡張例を見ると、コートジボワールのアビジャン港は拡張によりコンテナ取扱量が2022年から2024年に倍増している(2025年3月17日付ビジネス短信参照)が、港周辺は渋滞がありタイムロスの要因となっている。その点、トーゴのロメ港やPIA工業団地周辺は渋滞がほぼなく、ロメ港のハブ機能を強化する上では有利に働く可能性がある。また、フランス語圏の物流業者や輸入業者は、英語圏のガーナやナイジェリアの港ではなくロメ港を使用する傾向があり、港湾使用料が比較的安い点も、トーゴの戦略を後押しする可能性がある。
サヘル諸国のECOWAS脱退の影響や、トーゴの資金調達の持続性など不確実性は残るものの、トーゴ政府はロメ港を起点に物流機能の強化を進めていく方針だ。港湾の拡張が相次ぐ西アフリカで、今後物流事情がどのように変化していくのか注目される。
トーゴの税制や関税体系などについては、調査レポート「トーゴにおける会社設立マニュアル(2026年3月)」も参照。
- 執筆者紹介
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ジェトロ調査部中東アフリカ課
坂根 咲花(さかね さきか) - 2024年、ジェトロ入構。中東アフリカ課で主にアフリカ関係の調査を担当。





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