中東・アフリカにおける物流とインフラプロジェクトの動向を探る物流が日本のアフリカビジネス拡大の壁に
アフリカの物流事情(1)

2026年1月26日

ネクスト・フロンティアとして注目されるアフリカ市場だが、日本企業がこれまで経験してきた東南アジアや欧米の市場などとは多くの点で事情が異なる。違いの1つは物流だ。地理的に日本から遠く離れたアフリカは貨物の輸送に多くの時間とコストがかかる。ケニアのナイロビや南アフリカ共和国のヨハネスブルク、エチオピアのアディスアベバなど、主要な消費地の多くが沿岸部ではなく内陸部にあり、港から消費地までの陸送にかかる費用と時間も考慮する必要がある。物流の問題を攻略できなければ、競争に勝てず、アフリカでの市場獲得は見込めない。前編となる本稿ではアフリカの物流の課題について述べる。

東南アジアの数倍の輸送コストと時間が必要

日本とアフリカは、直線距離にして東京とナイロビで約1万1,000キロメートル、ヨハネスブルクやナイジェリアのラゴスで1万3,500キロメートルほど離れている。東京とバンコクが約4,600キロメートルなので、アフリカは2~3倍の距離にある。海上輸送の際は赤道を何度もまたぎ、基本的にはアジアや中東、時には欧州で積み替えられるため、それ以上の距離がある。ナイロビへの輸送であれば、モンバサ港から約500キロメートルの距離にあるため、トラックで8~10時間かかる。隣国の内陸国ウガンダの首都カンパラまでであればモンバサ港から約1,100キロメートル、20時間の距離だ。ヨハネスブルクも最寄りのダーバン港から約570キロメートル離れている。当然ながらこれらは全てコストに跳ね返る。加えて、昨今の中東情勢の悪化による世界的な物流コストの高騰を受け、アフリカ向けの海上運賃も高騰している。特にアフリカ西部や中部など大西洋側に面する国々への輸送は紅海ルートが使えないため、全量が喜望峰ルートで輸送され、コストもリードタイムも大幅に増加している。

ジェトロの投資関連コスト調査(2025年度)によると、横浜港からバンコク市内まで輸送する費用は、40ftコンテナ1本あたり1,383ドルで、対するアフリカ向けは、横浜港からケニアのモンバサ港を経てナイロビまで同量を輸送すると船賃だけで6,800ドル、通関や陸送を加えると8,200ドルにまで膨らむ。ヨハネスブルクまで運ぶと4,550ドル(ただし、陸送費を含まず)、コートジボワールのアビジャンまでが5,488ドル(陸送費含む)となっている。海上輸送費も物量や頻度、輸送ルートなど細かい条件の違いで大きく変動し、単純比較は難しいが、いずれにせよ、東南アジアの数倍のコストと時間を覚悟しなければならない。

アフリカ特有の事情も多々あり

輸送費がこれだけ高いのは、地理的な遠さや中東情勢だけが理由ではない。アフリカ特有の事情も存在する。アフリカの港湾では、エジプトのポート・サイード港やモロッコのタンジェMED港など効率性で上位に評価される港湾もある一方で、サブサハラ・アフリカは地域別で最も効率性が低いとされている(2025年10月23日付地域・分析レポート「紅海情勢はコンテナ港の効率性にも影響」の章を参照)。道路・港湾などインフラの未整備や行政手続きの非効率性、深海港が少ないことなどにより、アフリカに貨物が着いてからも時間を要する。また、国境をまたぐ場合は国境の混雑、越境手続きの煩雑さも問題だ。通関で貨物が滞留しているという話はアフリカでは日常茶飯事だ。

アフリカは国の数が多く、地形も国境も複雑に入り組んでいる。例えばコンゴ民主共和国(DRC)の南部の中核都市ルブンバシに貨物を運ぶとなれば、タンザニアのダルエスサラーム港から入れ、トラックでザンビアを通り、コンゴ民主共和国南部国境から貨物を入れる。ダルエスサラームからの陸送距離は約2,500キロメートルにも及び、国境を2度通過する必要がある。南アフリカ共和国のダーバン港から入れば約3,000キロメートル、国境を3度通過する。特にコンゴ民主共和国南部のザンビアとの国境カスンバレサは混雑が激しく通関に1週間以上を要するなどさらに時間がかかる。しかし、これだけ厳しい状況にあっても、コンゴ民主共和国南部では銅・コバルトやタンタルなど、大規模な鉱山開発が進み、都市の拡大による爆発的な内需を生み出している。コンゴ民主共和国へ向かう貨物は増える一方だ(2024年3月22日付地域・分析レポート参照)。

また、「鶏とたまご」だが、アフリカ向けやアフリカ域内を移動する貨物の物量が他の地域と比べてまだ少ないことも輸送費が高い理由の1つとなっている。アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の試験運用が開始された2022年10月に、ケニアからガーナに向けて紅茶の試験的な輸出が行われた際には輸送に5カ月を要したとされる(2024年3月7日付ビジネス短信参照)。なんと貨物はケニアから一度シンガポールまで運ばれ、そこから西アフリカのガーナまで輸送されたという。これは極端な例だが、アフリカの現実だ。例えば、隣国同士だが、ケニアからエチオピアにも貨物の輸送に耐えうる十分な道路の接続はない。ナイロビからアディスアベバにモノを運ぼうとすれば、モンバサ港まで運び、船でジブチ港まで輸送、ジブチ港からアディスアベバに鉄道ないしトラックで陸送するしかない。その間、各所にて遅延が発生、盗難などのリスクも高まる。

一方、多くの貨物が動く中国からアフリカ向けの海上輸送は日本からと比べ頻度も高く、かなりコストが安くなっているようだ。アフリカ域内よりも、むしろアラブ首長国連邦(UAE)のドバイや中国など、物量の多い国、ルートから入れる方が貨物輸送はスムーズだったりする。ナイロビとダルエスサラームのように、東アフリカ共同体(EAC)加盟国間であっても、頻繁な国境封鎖や陸送コストの高さを鑑みれば、それぞれドバイから入れるというのも一案だ。

残念ながら、日本製品のアフリカ向け輸出量はいまだ限定的で、日本からアフリカ向けの直行便がなく、必ず中継となる。船便の頻度も少なく、コストも高いのが現状だ。販売量も少量にとどまっていることから、物量が伸びず輸入業者はコンテナを埋めるのにも苦労している状況だ。輸送のリードタイムが非常に長く、ビジネスの先が読めないことや、コールドチェーンを要する貨物が送れないことなども、アフリカ経済の成長にもかかわらず、日本からの物流の需要が伸びず、コストが高くなってしまっている要因となっている。

日本のアフリカビジネスの大きな壁に

この輸送コストやリードタイムなどの物流の問題を全て価格に転嫁できるだろうか。もちろん、販売コストに転嫁することはもちろん可能だが、これだけの価格差を正当化することはなかなか難しい。価格が高ければ、販売量は減少するし、アフリカビジネス自体が高リスクのためマージンを高く設定したくとも、物流コストがマージンを圧迫してしまう。

日本から医療機器を輸入するケニアの代理店によると、船で数カ月かけて日本から輸送する際、本体機器に加えて、故障に備え、高額な補修部品も十分な数を抱き合わせで販売しているという。ゆえに、日本製品の需要は高いが、価格が高額となってしまい、多くの病院ではなかなか手が届かなくなってしまっているという。

また、世界的な日本食人気の高まりは、アフリカでも拡大しつつあり、日本酒や抹茶などが主要国の高所得者層向けに輸出されるようになった。しかし、コールドチェーンが十分に確立されていない中では輸出できる食品は限られ、限定的な量にとどまらざるを得ないし、高所得者層が欲するような鮮度の高い高品質食材は輸送できない。西アフリカの日本食輸入業者によると、日本から西アフリカへの輸送のリードタイムは3カ月程度で、バッファーを含めて4カ月かかるという。日本食需要は拡大しつつあるものの、販売量が十分に育っていない中で、さまざまな商品を1つのコンテナに詰めて輸送しているが、商品ごとに販売のペースが異なるため、毎度の発注の際にコンテナを埋めるのが難しいという。商品によっては、長期の海上輸送により劣化するほか、賞味期限が大幅に減少し、到着後の販売期間が非常に短くなってしまうこともあるという。物流の問題を解決しなければ、日本のアフリカ市場開拓は見込めないのだ。

アフリカの物流事情