高度外国人材を輩出する大学、その最前線に迫るラオス大卒者、技人国への道筋
高度人材形成の現状と可能性(2)
2026年7月24日
後編では、ラオス国立大学(NUOL)をはじめとする大学卒業生の就職実態と、ラオス人労働者の特性を整理する。その上で、日本就労を志向するラオス人大学卒業生が、技能実習や特定技能だけでなく、専門性を生かして在留資格「技術・人文知識・国際業務(技人国)」(注1)へ進む上での課題を明らかにする。また、日本企業がラオス人高度人材を確保・活用するために求められる対応や留意点について考察する。
ラオス人材の就職活動と日本への渡航ルート
近年、ラオスにおける就職活動は、知人からの紹介やジョブフェアに加え、企業ウェブサイトやLinkedIn、Facebookなどのオンライン・プラットフォームを通じた情報取得が主流となっている。特に若年層の約9割はFacebookを主要な情報取得手段としている(注2)。
ジェトロがNUOLおよびサワンナケート大学の教員を対象に実施したヒアリング(2026年1~2月)によると、日本語専攻学生のキャリア形成には以下の特徴がみられる。
- 卒業生の多くは、日本語を使用する、あるいは日本と関連のあるラオス国内の企業・機関に就職する(例:日系現地進出企業、日系政府関連機関、日本語教育機関など)。
- 日本での就労を志向する学生の一部は、卒業後すぐに日本企業への就職や日本渡航の機会が得られない場合、まずはラオス国内で就労しながら渡航資金を確保する。その後、技能実習(注3)や特定技能(注4)などの在留資格を通じて日本へ渡航する。
実際、ラオス国籍者の日本への新規入国者数を見ると、技人国と比較して、技能実習や特定技能による入国者数が多い(表参照)。
| 年 |
技術・人文知識・ 国際業務(技人国) |
特定技能1号 |
技能実習1号 (イ・ロ合計) |
|---|---|---|---|
| 2020年 | 1 | 14 | 115 |
| 2021年 | 0 | 0 | 4 |
| 2022年 | 12 | 16 | 521 |
| 2023年 | 11 | 26 | 627 |
| 2024年 | 17 | 65 | 582 |
注:技能実習1号の「イ」は企業単独型、「ロ」は団体監理型を指し、両者の違いは技能レベルではなく受け入れ方式(監理団体の関与の有無)。
出所:出入国在留管理庁統計を基にジェトロ作成
こうした傾向の背景には、日本企業への技人国による就職に必要な情報や準備の機会に、ラオスの学生が十分にアクセスできていないという課題がある。特に、日本とラオスでは就職活動の時期や進め方が大きく異なる。ラオスでは、日本のように在学中から内定獲得を目的とした企業研究や就職活動を行う慣行は一般的ではなく、多くの学生が大学卒業後に就職活動を開始する。NUOL日本語学科の教職員によると、多くの学生は日本への留学経験者であっても、留学中に初めて日本の就職活動の仕組みを知る。そのため、大学在籍時に十分な準備ができず、日本企業への就職機会を逃して帰国するケースも少なくない。
日本とラオスの就職活動の違いについて、NUOL日本語学科在学中に文部科学省の奨学金で来日し、日本の大学を卒業したケーンオーン・サイソンポーン(Khenone Xaysomphone)氏によると、日本の就職活動は「卒業後に就活を始める」ラオスの慣行とは大きく異なり、当初は戸惑いがあったと振り返る。しかし、同氏は大学の先輩ネットワークを通じて事前に日本の就職活動の進め方に関する情報を収集し、準備を進めることで、この壁を克服したと語る。同氏は技人国ビザで日本の建設会社や建設コンサルタント向けに測量サービスを提供する企業への就職を実現し、現在も日本で勤務している。
同氏のように、留学を機に日本特有の就職プロセス(業界研究、エントリーシート、インターンシップなど)へ早期にアクセスできた学生は、そのまま日本企業へ就職するキャリアパターンもみられる。
「技人国」という選択肢の周知と渡航支援が課題
ラオスの大卒人材が技人国による日本就労につながりづらい要因は、就職活動プロセスの違いだけではない。日本で高度外国人材として渡航するための仕組みに関する情報が、現地に十分に浸透していないことも挙げられる。
ジェトロは2026年3月27日、NUOL工学部学生(注5)を対象としたジョブフェアで、ジェトロブースを訪問した学生60人を対象に、技人国としての日本就労に関するヒアリング調査(注6)を行った。その結果、半数を超える37人が「将来的に日本での就労を希望する」と回答した。一方で、学生側からは以下のような課題が多数聞かれた。
- 高度外国人材というビザ制度があること自体を知らなかった。
- 日本で大卒として働くための具体的な手続きや、どのような就職活動ルートがあるのか分からない。
- 日系企業から求められる日本語・英語能力の具体的な基準が分からない。
このように、工学分野などの専門性を備えた非日本語学習者の間でも、日本就労への関心は高い。しかし、こうした情報不足が、学生の技人国ビザによる日本就労を選択肢として認知しにくくする要因の1つと考えられる。また、キャリアセンターがごく一部の学部にしか設置されていないことなどもボトルネックとなり、キャリアの選択肢が狭められている。この結果、現地で比較的情報が多く(注7)、手続きや教育などの渡航支援体制も整備されている技能実習や特定技能を選択する人材の増加につながっている可能性がある。
裏を返せば、適切な情報提供や大学の就職支援機能の強化が進めば、これら大卒の若手人材を高度外国人材候補として育成できる余地はあると考えられる。

協調性とタイ語理解が強みとなるラオス人材
ラオス人の日本就労を仲介する認定送り出し機関(注8)や、実際にラオス人材を登用している企業へのヒアリングによると、ラオス人材には以下のような特徴があるといった評価が聞かれた。
- 一般的にラオス人労働者は穏やかで協調性が高いとされており、職場では上司や同僚との関係を重視しながら業務に取り組んでいる報告事例が、受け入れ企業から多数聞かれている。
- 多国籍な職場関係においても、周囲と良好な関係を築きながら業務に従事している事例が見られる。
- 地理的・文化的背景から、多くのラオス人がタイ語を高度に理解できる(注9)。これに加えて日本語や英語を習得することで、3カ国語以上を話すことができるポテンシャルを有する。
とりわけ、タイ語の理解力について、メコン地域における「タイ・プラスワン」(注10)の動向とも高い親和性を持つ。タイの商習慣とラオスの労働力をつなぐ人材(タイ語理解者)の需要があり、ラオス国内の日系工場では、タイ人マネージャーとラオス人ワーカーが協働する事例が一般的だ。
一方、ラオス人材の登用にあたっては、労働観や職場コミュニケーションに関する日本人との姿勢の違いに留意が必要だ。前述のケーンオーン氏は「時間を守ること、報連相(報告・連絡・相談)の徹底、不明点を早めに上司に確認する姿勢が重要。しかし、こうした考え方は、ラオスでは必ずしも広く共有されていない」と語る。
メコン地域におけるラオス高度人材の将来性
ケーンオーン氏の事例は、日本のビジネスカルチャーや就職活動の仕組みに早期に触れ、適応していくことが、高度外国人材としてのキャリア形成に極めて有効であることを示している。しかし現状では、多くの国内大卒人材が潜在的な日本就労意向を持ちながらも、制度理解の遅れや大学側の支援体制の不足などに課題があり、技人国が選択肢となりにくい状況にある。
一方で、ラオスではNUOLを中心に、将来的に日本就労や日系ビジネスを志向する大卒人材の基盤が形成されつつある。また、彼らが持つ高い協調性やタイ語の理解力は、メコン地域をまたぐ多国籍ビジネスにおいて一定の適性を有している。したがって、ラオス高度人材の採用を検討する日系企業にとっては、これら大卒層を、高度外国人材への転換可能な層と位置付け、現地大学などへアプローチしていくことが重要となる。
また、前述のとおり、多くのラオス人はタイ語を理解でき、タイとの人的交流も活発だ。このため、既にタイにおいて高度人材の採用実績を有する企業であれば、その採用ネットワークや選考ノウハウをラオスにも展開しやすい。ラオス人材はタイ語への理解度が高く、タイとの人的・経済的な結び付きも強いため、これまでタイを中心に構築してきた採用活動の対象地域をラオスへ広げることで、新たな高度人材の確保につながる可能性がある。
- 注1:
-
「技人国」とは、日本での就労を目的とした在留資格の一種で、自然科学(理系)や人文科学(文系)の専門知識、または外国文化・言語・習慣を生かす業務へ従事できる。受け入れ企業での業務内容と大学での専攻分野の一致などが認可要件とされる。本稿では、大学卒業資格を有し、専門分野で就労する外国人材という位置付けとする。
- 注2:
-
以下の文献を参照のこと。
- Sisavath, S. (2023). Journey from higher education to employment among returnee graduates in Laos. In International Student Employability: Narratives of Strengths, Challenges, and Strategies from Global South Students (Knowledge Studies in Higher Education, Vol. 12). Springer.
- United Nations Development Programme (UNDP). (2021). Youth unemployment issues in Lao PDR
.
- 注3:
-
技能実習1号とは、技能実習制度における初期段階の在留資格。入国後の講習を経て実務に従事し、期間は原則1年以内。技能実習2号へ移行するためには、技能評価試験への合格、良好な勤務態度評価を得ることなどが必要。
- 注4:
-
特定技能1号とは、人手不足分野において一定の専門性・技能を有する外国人が就労できる在留資格。18歳以上で、技能評価試験および日本語試験(JLPT N4相当以上またはJFT-Basic)に合格するか、技能実習2号を良好に修了していることなどが要件。在留期間は通算5年までで、家族帯同は原則不可。
- 注5:
-
NUOL工学部は、日本のJICA(国際協力機構)による技術協力・人材育成支援の対象となっており、同機構の奨学金制度(JDSなど)を通じて教員や学生の日本留学機会が提供されている。
- 注6:
-
ヒアリングを行ったのは、ジェトロブースを訪れたNUOL工学部の1年生4人、2年生4人、3年生8人、4年生35人、その他所属の9人の計60人。
- 注7:
-
外国人技能実習機構
によれば、ラオス政府が認定する日本向け技能実習生の送り出し機関は、現在30カ所に広がっている。 - 注8:
-
NMS Lao Co, Ltd.に取材を行った。同社は、2017年にラオス国内で設立し、日本への技能実習生の送り出しや、タイへの労働者の送り出し、ラオス国内での人材紹介事業を実施している。2022年から総勢で826人の技能実習生を送り出しており、ラオスでは最大の日本への送り出し規模を誇る。
- 注9:
-
ラオス語とタイ語は、ともにタイ・カダイ語族に属しており、歴史的に同一の起源を持つため、方言程度の差異に近いほど言語的な親近性が極めて高いという文化的背景がある。また、現代では、ラオス人がタイ語を高度に習得する最大の要因として、タイのテレビやラジオ、インターネットといったマスメディアの影響が大きい〔Vatthana, P.(2006). Laos, From Buffer State to Crossroads?
, Mekong Press.〕。 - 注10:
-
タイ・プラスワンとは、タイ国内の人件費上昇や高齢化を背景に、製造業を中心に生産工程の一部を近隣のラオスへ分散する動きを指す。
高度人材形成の現状と可能性
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- 執筆者紹介
-
ジェトロ・ビエンチャン事務所
武井 浩人(たけい ひろと) - 2023年、ジェトロ入構。本部海外ビジネス人材育成課を経て、2025年8月から現職。





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