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特集:2021年アフリカビジネスの注目ポイント経済の回復が見込まれるも、多額の債務や安全保障に課題(ケニア)
FTA交渉に積極姿勢

2021年2月5日

観光業など打撃も、2021年の経済は回復見込まれる

2020年のケニア経済は、新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)で打撃を受けた。2020年の実質GDP成長率は、前年の5.4%から4.3ポイント減の1.1%と見込まれる(IMF、2020年10月、図1参照)。

図1:ケニアの名目GDPと実質GDP成長率の推移
IMFによる2012~2023年のケニアの名目GDP、実質GDP成長率の実績と予測値。名目GDPは2012年から2018年にかけて2倍近くまで増加し、2019年以降も拡大が見込まれる。実質GDP成長率は、おおむね4~6%台で推移しているが、2020年は1.1%と大きく落ち込む見込み。

出所:IMFエコノミック・アクトルック(2020年10月)

ケニア政府はパンデミック対策として、国内・国際定期航空便の停止、学校の閉鎖、夜間外出の禁止など規制を強化した(注1)。これらの措置は、特に観光業、教育、運輸・倉庫業などに大きな打撃をもたらした。ケニア統計局によると、2020年第2四半期(4~6月)のGDP成長率は、観光業が前年同期比マイナス83.3%、教育マイナス56.2%、運輸・倉庫業マイナス11.6%だった。産業全体では前年同期比マイナス5.7%と大きく下振れし、四半期別のマイナス成長は2008年第3四半期以来12年ぶりだ(2020年10月28日付ビジネス短信参照)。

一方、2020年には潤沢な降雨があり、農業が好調だった。第2四半期のGDP成長率は、天候不順に悩んだ前年同期比で3.5ポイント増の6.4%だった。ケニアにとって主要な外貨収入源である園芸作物、特に切り花の輸出は、4月を底に6月まで停滞した。しかし、7月以降は欧州での需要回復や航空便の回復などの後押しを受け、10月には輸出額が前年を上回るまでに回復している(図2参照)。

図2:ケニア切り花の輸出額推移
2020年2月に約7,000万ドル近くを記録した後、4月には約3,000万ドル弱まで落ち込んだが、その後は徐々に回復し、10月には約5,000万ドル強となった。

出所:グローバル・トレード・アトラスおよびケニア統計局

IMFは、2021年にはケニアのGDP成長率が4.7%に回復すると予想する。打撃を受けた観光業の回復に向けては、ワクチンの普及がカギだ。ケニア保健省は、オックスフォード大学と英国大手製薬会社のアストラ・ゼネカが開発するワクチンの臨床試験への参加を公表した。最初のワクチン到着は2月ごろを見込んでいる。

多額の債務、財政は難局

2020年において、短期間に多額の融資を受け入れたことで、ケニア財政は難局を迎えている。2020年5月には、IMFがケニアの過剰債務(Debt Destress)リスク評価を「中」から「高」に変更。米国格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスも、「B2安定」から「B2ネガティブ」に格下げした。ケニアの公的債務は、現在公表されているものを含めると、8兆4,000億ケニア・シリング(以下Ksh)、GDP比率は76%に達する見込みだ(2020年12月31日付「ザ・スタンダード」紙)。2020年1月に1ドル=100~102Kshを推移していた現地通貨は、2020年12月17日には111.59Kshまで下落した(図3参照)。外貨収入の減少や債務の返済が重なり、外貨建て融資を受け入れた2020年7月以降は外貨準備高も減少傾向だ(図4参照)。主要20カ国・地域(G20)は2020年10月14日、財政難に陥る最貧国の債務返済の猶予期限を延長することで合意した。さらなる格下げを懸念し、受け入れを躊躇していたケニアも、2021年1月11日に、返済猶予期限の延長を受け入れた。

税収を強化、FTAなど積極的に取り組み

税収の強化に向けては、コロナ禍での経済刺激策として減免措置を講じていた税率の一部を、2021年1月1日から通常の税率に戻している(表参照)。

図3:ケニア・シリングのインターバンクレート仲値の推移
2020年1月までは1ドルあたり100~104Kshを推移していたが、2020年12月には111.59Kshまで下落した。

出所:ケニア中央銀行

図4:ケニアの外貨準備高の推移
7月以降は減少傾向、12月には約80億ドルまで減少。

出所:ケニア中央銀行

表:1月1日に施行した「2020年税法(改正)(第2版)」まとめ
2020年12月31日までの緩和措置 2021年1月1日以降
付加価値税(VAT)の標準税率を16%から14%に引下げ(4月1日から) 16%(本来の税率)
法人税率を30%から25%に引き下げ 30%(本来の税率)
源泉徴収税(PAYE)の最も高い区分の税率を30%から25%に引下げ 源泉徴収税(PAYE)の最も高い区分の税率は30%(本来の税率)

出所:Tax Laws (Amendment) (No.2) Act, 2020

また、ケニアは、経済連携や自由貿易関係の強化に積極的だ。2020年12月8日には、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)を踏襲する形で、英国とのEPAが署名された(2020年12月16日付ビジネス短信参照)。また、2020年7月には、米国との自由貿易協定(FTA)交渉を開始した(2020年7月13日付ビジネス短信参照)。交渉はバイデン次期政権下でも続く見込みだ。

2022年大統領選を見据えた政局に注目、2021年に国民投票の可能性も

内政については、2022年8月に予定されている大統領選挙・総選挙も見据え、憲法改正に向けた国民投票が2021年6月にも実施されるとの観測が広がっている。2020年10月26日、ウフル・ケニヤッタ大統領と野党・オレンジ民主運動(ODM)のライラ・オディンガ代表は共同で、「かけ橋(Building Bridge)イニシアティブ・レポート」を発表した(2020年11月2日付ビジネス短信参照)。首相制の導入や国会議員の定数増など、主要な提案を実現するためには憲法の改正が必要だ(注2)。地元メディアは既に、2022年の選挙を巡る勢力争いの模様を連日、報じている。ビジネス界では、選挙に伴う混乱で経済が停滞することへの懸念の声も上がっている。

安全保障問題への対応も急務

ケニアは2021年、安全保障に関する複数の課題に直面する見込みだ。地元メディアは2020年12月15日、「ケニアによる度重なる内政干渉」を理由に、隣国ソマリアがケニアとの断交を発表したと報じた(12月15日付「ビジネスデイリー」紙)。ソマリアとの海上境界問題は継続中で、延期されている国際司法裁判が2021年5月15日に開廷予定だ。また周辺国では、2021年1月14日には隣国のウガンダで、6月5日にはエチオピアで総選挙が予定されており、地域情勢への影響にも留意が必要だ。ケニアは、国連安全保障理事会の非常任理事国に選出されており、2021年1月1日から2年間の任期だ。ケニアは2021年、国内外における安全保障への対応を進めていくことになる。


注1:
旅客定期便の停止措置は、国内便については 2020年3月25日から7月15日まで、国際便については7月31日まで、約4カ月停止となった。貨物便は運航。
注2:
実際に憲法が改正されると、2010年以来となる。
執筆者紹介
ジェトロ・ナイロビ事務所 調査・事業担当ディレクター
久保 唯香(くぼ ゆいか)
2014年4月、ジェトロ入構。進出企業支援課、ビジネス展開支援課、ジェトロ福井を経て現職。2017年通関士資格取得。

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