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特集:2021年アフリカビジネスの注目ポイント 投資規制を緩和、経済多角化を図る(アルジェリア)
油価変動に左右される炭化水素依存からの脱却目指す

2021年2月10日

アルジェリアのGDP成長率について、IMFは2020年をマイナス5.5%、2021年をプラス3.2%と予想している。2020年の経済低迷の最大の要因は、原油価格の下落だった。政府は国家計画で経済多角化を掲げるが、輸出額の約90%を占める炭化水素に依存する経済構造は変わっていない。

2020年は原油価格の下落で経済低迷

原油価格は2021年1月中旬時点で、1バレル50ドル台で緩やかな上昇傾向を見せている。しかし、2020年上半期には20ドル以下の水準にまで大きく下落していた。これが、経済低迷の大きな要因となった。

新型コロナ禍対策としてアルジェリア政府は、2020年3月18日に外出禁止令を発出。早期に国境を封鎖するなどの対応を講じた。2021年1月現在、外出禁止の対象地域と時間帯、移動規制は緩和しているが、国境再開のめどは立っていない。周辺国と異なってインバウンドによる観光業の経済貢献度は低く、この面では影響が比較的少なかった。

アブデルマジッド・テブン大統領は、新型コロナウイルスに感染し、2020年10月28日からドイツの病院に入院していた。12月29日に帰国したが、不在2カ月の間に制定された各種法律(憲法改正法や2021年財政法を含む)や大統領令が官報に掲載できない状態となった。12月中旬に現地ビジネス関係者にヒアリングしたところ、こうした政治的空白とも言うべき事態に、「政治・経済の先行きが見えず、各種投資計画を一時停止せざるを得ない」との声がきかれた。

輸入抑制策を重ねて導入

統計局(ONS)によると、2020年1~6月の輸入額は2兆1,284億アルジェリア・ディナール(約160億ドル、DA、1DA=約0.0075ドル)で、前年同期比20%減。輸出額は1兆3,650億DAで、同35%減となった。貿易赤字は7,634億DAで同43%増と急拡大した。

こうした中、政府は、2021年財政法に貿易赤字の解消を狙った輸入規制の強化を導入。同法第118条の規定により、食料品や国営公社の輸入品などを除き、原則として全ての完成品輸入取引を対象に、出荷45日後の為替手形決済「paiement à terme」の利用を義務付け、完成品を対象とする非関税障壁を追加した。さらに、同法第139条の規定により、完成品の輸入・販売業を行っている外資系法人は外資比率を最高49%に制限される。既存法人にも、この措置は遡及(そきゅう)適用されることになっている。

また、一時的追徴課税(DAPS)が2021年も継続されることになっている。DAPSは、国内産業の保護と貿易赤字の解消を目的に2018年に導入され、一部の輸入完成品に対する高関税率を課すものだ。また、輸入品を対象に2018年に導入された連帯貢献税(TCS)は、2020年の財政法により1%から2%に引き上げられた。TCSも、DAPS同様に2021年も継続する。

完成品を対象とした近年の輸入規制の強化により、2014年から輸入は縮小傾向が続く。2021年財政法に基づいて見込まれる2021年の輸入額は282億ドルで前年比マイナス14%。2014年比ではマイナス51%だ。アルジェリアはアフリカ大陸で第5の市場だが(注)、輸出して売るだけという形態での市場参入は難しくなりつつある。

投資規制緩和とセクター別政策で広がるビジネスの可能性

一方で、政府は2020年に投資規制の緩和に乗り出した。2020年財政法と2020年補正財政法により、外資の出資比率を最高49%に制限する51/49措置を製造業全般で廃止した。2021年財政法でも、第139条でこの緩和措置を維持した。完成品輸入・販売業と戦略的産業部門(エネルギー、鉱業、製薬など)は外資の出資比率制限がかかるが、これら以外の部門に関しては規制緩和の対象となっている。さらに、経済の多角化を加速したい政府は各セクターで新たな政策を導入し、新たなビジネス展開の基盤を整備していく考えだ。その概要は以下の通り。

農業:
アルジェリアで、農業はGDPの12.4%を占める。2019年の成長率は4%に達した。
2020年7月には、「農業政策ロードマップ」が策定された。牧畜や植物油脂、トウモロコシ、砂糖、蜂蜜などの生産強化によって自給率を高め、輸出を拡大する計画が現政権の政策の柱の1つだ。
農業と食品産業の発展により、機械などの需要が高まることが見込める。
再生可能エネルギー:
政府は2020年2月、新たな再生可能エネルギー国家計画を公表した。2024年をめどに4,000メガワット(MW)、2035年をめどに1万6,000MWの太陽光発電量を目指す。
再生可能エネルギーの利用促進によって、近年増加傾向にある炭化水素の国内消費を減少させ、輸出能力を強化する狙いがあるとみられる。政府は、2019年10月に再生可能エネルギー・省エネ庁(CEREFE)を、2020年6月にエネルギー転換・再生可能エネルギー省を、それぞれ設置した。
エネルギー:
外貨収入につながる炭化水素の輸出能力を維持するため、ソナトラック国営公社は400億ドルの5カ年投資計画を2021年から開始する。従来のエネルギー部門も引き続きビジネス機会がありそうだ。
電力設備:
人口増加と製造業の拡大に伴う電力の需要増加を見込み、ソネルガス国営電力公社は現在の発電能力2万1,000MWを今後10年間で倍増させる計画を立てている。電力関連設備の需要が高まると見込まれる。同社は、Sediver(フランス)、Vijai Electricals(インド)、BHI(韓国)など外国企業とのパートナーシップにより、電力関連設備を現地で生産する企業でもある。今後、現地製造戦略をさらに加速するという。
米国ゼネラル・エレクトリック(GE)との合弁会社、GEATは2020年10月、ガス・蒸気タービン製造拠点を開所した。アフリカ大陸で初のガス・蒸気タービン製造拠点となる。投資額は1億6,800万ドル。
鉱業:
2020年6月の内閣改造に伴って産業・鉱業省が分割され、鉱業部門に特化した省が新設された。レアアースやリン鉱石、金、ダイヤモンド、ウラン、銅などの鉱業部門を対象とした投資を促進するため、新たな法的枠組みも準備中だ。鉱物資源の開発と同分野への投資を積極的に促進する。アルカブ鉱業相は、中国企業など外国企業の参入に期待していることを表明。
水:
国内の海水淡水化プラント数は既に11基ある。これらに加えて、政府は2020年5月、アルジェ県、アンナバ県、スキクダ県で3基の建設を近日開始すると発表した。アルジェ県プラントの生産能力は日量30万立方メートルの予定。
今後、沿岸部都市での上水供給は、灌漑と海水淡水化プラントで行う方針とされる。そのため、海水淡水化事業は増加する見込み。なお、内陸部都市については灌漑とダムで供給される見込みだ。
自動車産業:
政府は2020年8月、自動車の現地製造に関する政令と細則(仕様書)を公布した。
ドイツのフォルクスワーゲン(VW)グループをはじめとした自動車メーカー13社は、新仕様書による規制下での製造拠点の維持または新設の可能性について検討。そのうち、乗用車製造1次申請を既に行った外資系企業は5社ある。メーカーは稼働時点で30%以上の部品の現地調達率条件を満たす義務がある。そのため(2020年8月28日付ビジネス短信参照)、これらの計画が承認されると、自動車部品メーカーの進出にもつながるとみられる。
電化製品産業:
産業省は電化製品組み立て産業を規制する政令と細則(仕様書)を2020年10月に公布した。組み立て用部品を対象とした輸入税・VAT減税措置を適用するためには、品目によって10%~80%の現地調達率に達しなければならない。
製薬産業:
政府は製薬産業に特化した省を新設するなど、同セクターにも戦略的に取り組む。国内製薬産業を保護する目的で、政府は輸入規制や製薬登録などの規制を強化する政令を公布した。保護策の導入により、国内製造医薬品の市場シェアを現在の50%から70%に引き上げる予定だ。
現時点で国内には、医薬品製造拠点が95カ所ある。この拠点数は、今後増加すると見込まれる。並行して、最近、外国企業の参入に関する発表が相次いでいる(米国ファイザー社、韓国企業、インドネシア企業など)。
イノベーション:
政府は2020年9月15日付20-254号政令に基づき、スタートアップ認定取得条件を設定。申請用デジタル・プラットフォームを公開した。また、2021年財政法では、スタートアップ認定取得後4年間の企業の法人税(IBS)、職業税(TAP)などの免税措置を導入した。スタートアップの資金調達を支援する政府系公共ファンド「Algerian Start-up Fund」の設立によりエコシステムを整備し、スタートアップの展開を後押しする。
デジタル:
アルジェリア・テレコムによると、2020年上半期の電子決済件数は40万件。前年同期比約4.5倍を記録した。2020年財政法第111条では、カード決済促進のため、国内の小売店を対象に2020年中に電子決済用端末など必要な機器の調達・設置が義務付けられた。新型コロナ危機の影響で実施は遅れているが、アルジェリアでも経済のデジタル化が進んでいる。今後は通信・電子決済関連設備とサービスのニーズが高まるとみられる。

注:
UNCTADは、アルジェリアは、アフリカ大陸で南アフリカ共和国、エジプト、ナイジェリア、モロッコに続く市場とした(2019年時点)。
執筆者紹介
ジェトロ ・パリ事務所
ピエリック・グルニエ
ジェトロ・パリ事務所に2009年から勤務。アフリカデスク事業担当として、フランス語圏アフリカ・マグレブ諸国に関する各種事業、調査・情報発信を行う。

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