特集:2021年アフリカビジネスの注目ポイント2021年は緩やかな回復の見通し(アフリカ)
日本企業はウィズ・コロナ時代のアフリカビジネスを模索
2021年2月5日
2020年末に新型コロナ第2波が到来、各国政府は対策を強化
アフリカでの新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の累計感染者数は、2021年1月24日時点で343万8,133人に達した。各国が比較的迅速に感染予防対策に取り組んだこともあり、1日当たりの新規感染者数は2020年7月25日の2万650人をピークに、その後は徐々に減少していた。しかし、10月以降は欧州の感染第2波の影響も受け、アフリカでも感染が第1波を超えるペースで拡大し、2020年末には第2波を迎えている(図1参照)。
国別では、南アフリカ共和国(以下、南ア)が最大で、累計感染者数が141万2,986人に及んだ。南アでは2020年12月18日、新型コロナの変異株「501.V2」が確認された。感染第2波の主たる原因は、この変異株と見られている。目下、併存疾患のない若年層で重症化例が増加。2021年1月中旬には1日当たり新規感染者数が過去最多の1万9,042人を超えた。1月下旬現在は政府の対策強化もあり、ピークを超えたようにも見えるが、いまだ予断を許さない状況だ。
また、ナイジェリアでも、12月24日にアフリカ疾病管理予防センター(CDC)が新たな変異株を発見したと発表した。12月には初めて1日当たり1,000人超の新規感染者を記録するなど、右肩上がりの状況になっている(図2参照)。
一方、累計感染者数がアフリカ2位のモロッコ、4位のエジプトでは、2020年末以降、感染者数が減少傾向にある。夜間外出禁止やマスクの着用義務などの政府の規制措置の結果、一定の成果が表れ始めたと見ることができる。
ワクチン接種の準備も、各国で進んでいる。ケニアは、オックスフォード大学と英国大手製薬会社のアストラゼネカが開発するワクチンの臨床試験への参加を公表した。最初のワクチン到着は2月ごろを見込んでいる。エジプトでは、1月2日に中国シノファーム製ワクチンを緊急承認し、24日から医療従事者を対象に接種を開始した。エチオピアは、世界保健機関(WHO)などのCOVAXファシリティを通じてワクチンを調達し、2021年内にまず国民の20%に接種を実施する考えだ。一方、脆弱(ぜいじゃく)なインフラなどの問題から、先進諸国と比べ、アフリカではワクチン接種はそう急速には進まないことが予想される。
2021年のアフリカ経済は緩やかな回復にとどまる見通し
世界銀行は、1月5日に発表した「世界経済見通し」で、2021年のサブサハラ・アフリカ(以下、サブサハラ)の実質GDP成長率見通しを2.7%とした。2020年6月の前回発表の3.1%から下方修正したかたちだ(表参照)。2020年の成長率についても、前回発表より0.9ポイント低いマイナス3.7%とした。
2020年7月以降、長期にわたるロックダウンや観光収入の減少などによる深刻な経済的打撃に耐え切れず、多くの国が早期に経済再開に踏み切った。しかし、各国政府は新型コロナ対策の支出で逼迫する財政や債務問題で依然として苦境に立たされている。アフリカ経済の回復は緩やかなものになると見通されている。
国名 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | ||
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2021年1月発表 | 2020年6月発表 | 2021年1月発表 | 2020年6月発表 | 2021年1月発表 | 2021年1月発表 | |
サブサハラ | n/a | △ 2.8 | △ 3.7 | 3.1 | 2.7 | 3.3 |
エチオピア | 9.0 | 3.2 | 6.1 | 3.6 | 0.0 | 8.7 |
コートジボワール | 6.9 | 2.7 | 1.8 | 8.7 | 5.5 | 5.8 |
ナイジェリア | 2.2 | △ 3.2 | △ 4.1 | 1.7 | 1.1 | 1.8 |
ガーナ | 6.5 | 1.5 | 1.1 | 3.4 | 1.4 | 2.4 |
モザンビーク | 2.2 | 1.3 | △ 0.8 | 3.6 | 2.8 | 4.4 |
ケニア | 5.4 | 1.5 | △ 1.0 | 5.2 | 6.9 | 5.7 |
南ア | 0.2 | △ 7.1 | △ 7.8 | 2.9 | 3.3 | 1.7 |
スーダン | △ 2.5 | △ 4.0 | △ 8.4 | 0.5 | 2.5 | 3.1 |
エジプト | 5.6 | 3.0 | 3.6 | 2.1 | 2.7 | 5.8 |
モロッコ | 2.5 | △ 4.0 | △ 6.3 | 3.4 | 4.0 | 3.7 |
チュニジア | 1.0 | △ 4.0 | △ 9.1 | 4.2 | 5.8 | 2.0 |
アルジェリア | 0.8 | △ 6.4 | △ 6.5 | 1.9 | 3.8 | 2.1 |
注:2019年は推計値、2020、2021年は予測値。エチオピアとエジプトは会計年度ベースの数値。
出所:世界銀行「世界経済見通し」2020年6月版、2021年1月版
日本企業は感染対策を講じつつビジネスを継続
新型コロナは、世界中で猛威を振るう。アフリカ進出日系企業は、そうした中で感染予防を講じながらビジネスを継続している。過去に類を見ない厳しい状況に直面していると言えそうだ。
ジェトロがアフリカに進出する日系企業282社を対象に2020年9月に実施したアンケート調査によると、営業利益見込みが「黒字」と回答した企業の割合は2020年にかなり低下した。この割合は近年5割前後で推移してきた。しかし、2020年には36.5%だった(前年比で13.8ポイント減)。そのため、今後の事業展開の拡大を検討する企業は4割程度にとどまった。いまだ感染収束のめどが立たない中で様子見の姿勢がうかがえる。
一方で、2021年の営業利益見込みについては、約半数の企業が「改善する」と回答した。「アフリカの投資環境面には改善傾向が見られる」など、プラス面の結果も出た。また特に、2021年1月から運用が開始したアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)に期待する声も高まっている。加盟国数では世界最大級の自由貿易協定(FTA)となるAfCFTAの運用開始により、域内貿易コストの削減とバリューチェーンの強化が可能となる。日本企業も4割近い企業が利用を検討するとした。
また、アフリカ各国で、2020年後半から一時退避した日本人駐在員が任地へ再渡航する動きが進んでいる。最近は、域外からの出張者を受け入れる事例も出てきた。ジェトロが2020年9月から4回にわたり実施しているアフリカ向けWEB商談会には、医療機器・環境機械・農業資機材分野など日本企業113社が参加。コロナ禍で現地に渡航できなくとも、新たなビジネスを模索しようという動きは衰えていない。今回の商談会を通じて、新たな販路開拓に成功した企業もある。
感染対策を講じながらも果敢にフロンティア市場に挑戦していく日本企業にとって、2021年はウィズ・コロナのアフリカビジネスを模索する年になると言えるだろう。
- 執筆者紹介
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ジェトロ海外調査部中東アフリカ課
馬場 安里紗(ばば ありさ) - 2016年、ジェトロ入構。ビジネス展開支援部、ビジネス展開・人材支援部を経て現職。