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特集:高度人材の宝庫ロシア:魅力と課題高い技術力と豊富なアイデアが魅力(ロシア、日本)
日本のスタートアップがロシア展開・高度人材活用

2021年3月12日

日本の厳しい規制や保守的な企業文化に限界を感じ、海外でさまざまな挑戦に取り組もうというスタートアップが増えている。注目を集める国の1つがロシアだ。ソ連時代からの優れた科学技術があり、またハイレベルのITエンジニアを多数輩出している(2020年12月4日付地域・分析レポート参照)。ロシアのスタートアップと協業を試み、また自社でロシア人高度人材の雇用経験のあるチームAIBOD外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 最高経営責任者(CEO)の松尾久人氏に話を聞いた(2021年1月28日)。


チームAIBOD CEO松尾久人氏(同社提供)
質問:
会社の概要および事業内容について。
答え:
当社の設立は2016年。福岡市に拠点を置く。従業員は14人で、うちほとんどがエンジニア。あるビジネス上の課題を解決するために必要な機能をそろえたパッケージシステムや、顧客の抱えるビジネス上の課題解決に合わせてオーダーメイドで構築するシステムを開発する。前者については、AI(人工知能)による電力需要の予測システムが挙げられる。後者は、画像認識技術を活用した自動車の電子基板の劣化認識システムの開発といった実績がある。ターゲットとしているのは製造業およびエネルギー産業で、主な顧客は日本の大手家電メーカーや大手システムインテグレーターなど。
質問:
創業の経緯は。
答え:
大学卒業後、日本IBMに開発エンジニアおよびコンサルタントとして勤務していた。その後2014年に、リサーチフェローとして九州大学へ転職。大学で情報技術研究室の教授(トルヴェ・アントワン取締役CTO)と出会ったことが創業のきっかけ。教授は福岡市内の別の研究所で企業との共同研究にも従事し、そのコネクションを生かしてビジネスをしたいという思いを持っていた。
質問:
貴社の海外展開の概要や背景は。
答え:
海外企業との共同プロジェクトには積極的に参加している。福岡市が海外スタートアップとの交流に積極的なため、海外企業と接する機会が多いことや、私自身、海外志向であるためだ。
日本国内だけでは事業展開に限界があることも関係している。例えばエネルギー分野では、国内の規制の厳しさや保守的な姿勢から新規プロジェクトが立ち上がりにくい。一方で、他国・地域の先行事例を日本に輸入する方が国内でスムーズに展開できているケースがみられる。日本市場で新しいビジネスをするためには、むしろ海外で積極的に事例をつくっていく必要があると感じる。その意味でも、海外での事業展開は非常に重要だ。
質問:
ロシアとのビジネスに興味を持ったきっかけは何か。また、サンクトペテルブルクのクリーンテッククラスター(注)に入会した経緯は。
答え:
2018年11月に行われた総務省主催の海外視察プログラムに参加したのを契機に、ロシアビジネスに関心を持った。モスクワとサンクトペテルブルクを訪問し、現地企業と意見交換した。その際、ロシア企業の技術力の高さに驚き、興味を抱いた。その後もロシアでのビジネス関連イベントへの招待を複数回受け、これまで3回訪問している。 クリーンテッククラスターへの入会は、3回目の訪問時(2019年11月)に現地の日本人コーディネーターより紹介があったことがきっかけ。同クラスターに入居している企業とエネルギー分野でのAIの活用プロジェクトを進めている。

会議風景(同社提供)
質問:
ロシア以外の国・地域の企業との協業経験はあるか。また、そのような企業とロシア企業の違いは。
答え:
ルワンダのスタートアップと覚書(MOU)を締結している。その企業は農家向けに虫害や天災を予測するスマホアプリを提供している。当社の画像認識技術に関心を持っていたためMOUを締結するに至った。
ロシアとルワンダの企業との交流を通じて感じたのは、ロシア人の感性は日本人に近いということ。また、ロシア人は大まかな形を作るのが得意だが、日本人は細かい部分を詰めることにたけている。そのため、ビジネス上のよきパートナーとなりうると捉えている。アフリカ人はハングリー精神が強い一方で、事業計画を具体的なレベルに落とし込むのに時間がかかることがある。彼らとすぐにビジネスするのは難しいと感じている。
質問:
ロシアのスタートアップ企業とのマッチングにあたり、日本企業が心掛けるべきことは。
答え:
協業の目的を明確にし、しっかりと準備すること。具体的な計画なしに展示会や商談などに臨んでも、成果は出せない。自社の欲しい技術や製品・サービスを、相手に詳細に伝えることが重要。
質問:
ロシア人ITエンジニアの技術レベルをどう評価するか。
答え:
ハイレベルな理数系教育を基盤とした高い技術力を有していることと、技術をビジネスに応用するアイデアが豊富であることに、魅力を感じている。九州大学に留学していたロシア人学生をインターンとして一時期受け入れたことがあるが、非常に優秀だった。デザインと情報工学のバックグラウンドを持つ学生で、データ分析業務を担ってもらった。
質問:
前述のロシア人のような高度な技術やスキルを持つ外国人材(以下、高度外国人材)を、雇用やインターンで受け入れる理由と留意点は。
答え:
学生インターンを受け入れる理由は、最新のIT技術に詳しいため。また、最新技術に関する情報は英語で発信されていることが多い。そのため、英語が堪能な人材は、そうでない人より新しい技術をいち早く知ることができることもある。
留意点は、日本語を伴う顧客対応ができないことや文化的な違いなどだ。日本人にとって当たり前であることも、外国人にとっては常識ではない。そのため、特に社内ルールは明確にする必要がある。
質問:
ロシア以外の国・地域の高度人材を、雇用あるいはインターンとして受け入れているか。また、どのように接触するのか。
答え:
現在、中国人留学生2人をインターンとして受け入れている。主に九州大学の留学生コミュニティや人材サービス会社などを使って、高度外国人材とコンタクトをとっている。
質問:
今後の高度外国人材の採用方針は。
答え:
即戦力という観点で、採用を続ける予定。採用の際の切り口は、日本人でも外国人でも変わらない。日本の顧客への対応が必要な場合は、日本語能力も必要になる。

注:
自治体や企業が集積した特定の地域が一体となり、再生可能エネルギーや省エネルギーの技術を開発し、導入を促進していくことを目的とした団体。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部欧州ロシアCIS課
宮下 恵輔(みやした けいすけ)
2019年4月、ジェトロ入構。海外調査企画課を経て現職。

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