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特集:現地発!アジア・オセアニア進出日系企業の今-20202019年の在ニュージーランド日系企業、黒字が全体の6割を占めるも景況感はマイナス

2020年3月31日

ジェトロが2019年8月から9月にかけて実施した「2019年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」(以下、本調査)によると、在ニュージーランド日系企業において、2019年の営業利益見込みを「黒字」と回答した企業は約6割を占めたものの、同年の景況感を示すDI値(注)は、マイナス6.7ポイントとなった。近年、黒字企業の割合も減少傾向がみられている。

過去10年に設立された企業は農産品食品関連や自動車関連が主流

本調査の回答数は94社で、回答した企業のうち、過去10年(2009~2018年)に設立された企業は31社だった。その業種をみると、農産品食品関連(木材を含む)が42%、自動車関連が32%だった(図1参照)。また、日本からの渡航者が年間約10万人あり観光ビジネスが盛んなことから、旅行・ホテル・外食の進出も10%と多い。

図1:過去10年(2009~2018年)に設立された進出日系企業の主な業種(n=31)
本調査の回答数は94社で、回答した企業のうち、過去10年(2009年~2018年)に設立された企業は31社だった。その業種をみると、農林水産食品関連(木材含む)が42%、自動車関連が32%だった。また、日本からの渡航者が年間約10万人あり観光ビジネスが盛んなことから、旅行会社・ホテル・外食の進出も10%と多い。

出所:ジェトロ「2019年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」

2019年度の営業利益見込み、「黒字」企業の割合は減少傾向

2019年度の営業利益見込みを「黒字」と回答した企業は62.1%だった(図2参照)。直近10年で最高だったのは2016年度の76.9%だが、年々その割合は減少している。業種別にみると、「黒字」と回答した割合は、製造業で70.3%、非製造業で58.3%だった。

図2:営業利益見込みの推移
2019年の営業利益見込みを「黒字」と回答した企業は62.1%だった。直近10年で最高だったのは2016年の76.9%だが、年々その割合は縮小している。

出所:ジェトロ「2019年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」

2019年の景況感を示すDI値は、全体でマイナス6.7ポイントと低かった。これは、営業利益が前年より悪化している企業の方が多いということを示すが、その根本的な要因として考えられるのは、賃金上昇と調達コストの増加だ。

2018年の国勢調査によれば、ニュージーランドの人口は年率2.1%で増加しており、移民の増加が牽引してきた。しかし、現アーダーン政権の発足以来、移民の増加率が減速傾向にあり、同国内での人材確保が懸念されている。国内失業率が低水準に収まっている中で移民抑制が進んだため、労働需給が逼迫し、賃金上昇率は2.4%と上昇傾向にある。最低賃金は、時給17.7ニュージーランド・ドル(約1,133円、NZドル、1NZドル=約64円)から2020年4月に18.9NZドル、2021年4月には20NZドルに引き上げられる予定だ。

また2019年中は、米中貿易摩擦に起因する世界経済の減退などが影響しNZドル安の懸念が強かった。NZドル安は本来、輸出には望ましいが、米ドル建て取引企業にとっては、調達コスト増加の懸念材料になる(2020年1月16日付地域・分析レポート参照)。2020年3月時点では、新型コロナウイルスの影響による大幅なNZドル安が確認されており、企業業績に強い悪影響を与えるとみられる。

DI値を業種別にみると、製造業はゼロで均衡したものの、非製造業はマイナス9.8%となり、国内市場向けを主なターゲットとする非製造業の方が厳しい状況にあった。非製造業における競争相手としては、地場企業と進出日系企業が約5割(複数回答あり)と拮抗(きっこう)し、中国企業が2割弱と続いている。特に自動車販売業は、近年では同業者が多数進出しているということもあり、日系企業間での競争が厳しくなっている。

経営上の問題点、コスト上昇が上位に

本調査によると、進出企業が抱える経営上の問題として上位に挙がったのは、「調達コストの上昇」「従業員の賃金上昇」「主要販売市場の低迷(消費低迷)」「原材料・部品の現地調達の難しさ」などだ(表参照)。前述のとおり、近年では賃金上昇が続いているほか、通貨安による調達コスト増加の懸念がある。また2018年から、日本からの自動車・機械類の輸入に際して、カメムシなどの農業害虫に対する新たな防除措置が必要となったことで経費がかさみ、調達コストの上昇につながっている。

そのほか、複数の木材・木製品製造企業が、現地調達の難しさを挙げている。ある企業は「近年、ニュージーランド産の木材が、未加工のまま(丸太)での輸出が増えており、同国内で、木材の加工工程で発生する端材を安価に調達しづらくなっている」と話す。また2019年11月、気候変動対応修正法(ゼロカーボン法)が同国国会で可決され、2050年までに温室効果ガスの排出量の実質ゼロを目指す中で、新規石油ガス田開発の国内認可が一部を除いて禁止されるなど、同国への投資の見直しを図る日系企業も見受けられ、環境政策を進める政府の施策に影響を受ける企業もあった。

表:ニュージーランドにおける経営上の問題点(上位5項目)(単位:%)
順位 問題点 2019年度 2018年度
1 調達コストの上昇 60.0 61.5
2 従業員の賃金上昇 51.7 48.3
3 主要販売市場の低迷(消費低迷) 37.4 32.5
4 原材料・部品の現地調達の難しさ 32.0 34.6
5 競合相手の台頭(コスト面で競合) 30.8 32.5
5 人材(一般ワーカー) の採用難 30.8 22.2
5 人材(技術者) の採用難 30.8 44.4

出所:ジェトロ「2019年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」

今後の事業展開の方向性、国内政治動向に注視が必要

ニュージーランドにおける投資環境面のメリットで最上位に挙がったのは、「安定した政治・社会情勢(79.3%)」だった。続いて、「市場規模/成長性(44.8%)」「インフラの充実(26.4%)」が続いている。今後1~2年の事業展開の方向性については、現状維持が65.6%を占め、拡大は3割弱だった(図3参照)。

図3:ニュージーランドでの今後の事業展開の方向性
今後の1~2年の事業展開の方向性は、現状維持が65.6%と大半となり、拡大は3割弱であった。

出所:ジェトロ「2019年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」

本調査によれば、調査時点での2020年の景況感(DI値)見通しは14.8ポイントと、2019年よりもポジティブな結果になっているが、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大による影響は大きいとみられ、さらに業績が悪化する可能性もある。2020年は同国で総選挙が予定されており、世界経済情勢はもとより、国内政治動向や政府の地球温暖化対策への対応や移民政策も注視していく必要がある。


注:
DI値とは、Diffusion Indexの略で、営業利益が「改善」すると回答した企業の割合から「悪化」すると回答した企業の割合を差し引いた数値。景況感がどのように変化していくかを数値で示す指標。
執筆者紹介
ジェトロ・オークランド事務所長
奥 貴史(おく たかし)
1996年、ジェトロ入構。海外はジェトロ・ダルエスサラーム事務所、国内は本部の他、ジェトロ盛岡、ジェトロ青森などを経て、2018年より現職。

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