韓国企業の海外展開の今と新たな挑戦米国の重要鉱物供給網に加わる韓国企業
韓国企業の対米投資(5)
2026年8月20日
本連載では、最近の韓国の対米直接投資動向について紹介している。1回目は米韓通商交渉で表明・合意された韓国側の対米投資計画について、2回目は韓国側統計に基づいた対米直接投資の推移と最近の特徴について、それぞれ概観した。3回目以降は第2次トランプ政権が発足した2025年1月以降に明らかになった韓国企業の対米投資案件について業種別に見ている。5回目の本稿は、対米投資が先行している半導体をはじめ、エレクトロニクス、鉱物、医薬品・医療機器、食品・飲食チェーン、投資会社、IT・ゲーム、物流、その他業種について取り上げる。
対米投資が進行中の半導体
半導体については、韓国企業が人工知能(AI)需要の拡大や米国政府のCHIPSプラス法(2022年8月成立)による補助金支給を契機に、バイデン前政権時から大型の対米投資プロジェクトを進めている。
サムスン電子は2021年11月、170億ドルを投じ、テキサス州テイラーにファウンドリ工場を新設する計画を発表した。新工場では5G(第5世代移動通信システム)、HPC(ハイパフォーマンス‧コンピューティング)、AIなどのさまざまな分野向けの先端システム半導体を生産するとした。さらに、その後、各種韓国メディアは、(1)同社はファウンドリ工場を増設するとともに、先端パッケージング施設や研究開発施設を構築する方針で、投資額は370億ドルまたは、440億ドルに達する見通しであり、500億ドルを超える可能性もある、(2)同工場は2027年に量産を開始する予定と報じている。
一方、SKハイニックスも2024年4月、38億7,000万ドルを投じ、最新のHBM(広帯域メモリー)やDRAM向けの先端パッケージング製造・研究開発施設をインディアナ州ウェストラファイエットに建設することを発表した。同社では、2028年下半期から次世代HBMなどのAIメモリー製品を量産する予定としている。半導体専業の同社にとって、米国事業の重要性は年々高まっている。同社の事業報告書によると、全社売上高に占める米国売上高の割合は2020年の39.8%から2025年には68.8%に上昇している。エヌビディア、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)、グーグル、メタといった主要顧客が米国に集中しているためだ。さらに、同社は2026年7月、米国ナスダック市場に米国預託証券(ADR)を上場した。上場に際して訪米した崔泰源(チェ・テウォン)SKグループ会長は、米国メディアとのインタビューで「インディアナ州の最先端パッケージング施設以外にも追加投資を検討している」「電力・用水・人材・サプライチェーンなどの条件が整えば、メモリー生産工場の建設も可能だ」と述べた。仮にそうなった場合、SKハイニックスの米国での投資額は飛躍的に増加することになる。
韓国の半導体企業の米国投資を契機に、半導体部品・材料企業も米国進出に向けて動いている。例えば、「聯合ニュース」(2025年11月9日)は、「サムスン電子の部品・材料協力会社である東進セミケムやソルブレインなども米国テキサス州に新工場を建設しており、追加投資を通じて生産施設を拡大する計画だ」と報じている。
さらに、半導体製造装置やエレクトロニクス関連では米国企業への出資事例がみられた(表1参照)。
なお、米国の関税政策を受けて、2025年初頭から夏ごろにかけて、韓国企業が米国で販売するエレクトロニクス製品の生産拠点を第三国から米国に移管する計画だとする報道が相次いだ。例えば、「聯合ニュース」(2025年4月24日)はLG電子関係者の話として、「洗濯機、乾燥機の生産の一部を米国テネシー工場に移管し、米国での生産を拡大することを計画中」「今後、米国内で生産する製品や設備を増やすかどうかは、米国の通商政策の変化によって柔軟に対応できるように検討中」と報じた。また、「韓国経済新聞」(同年7月9日、電子版)は、「サムスン電子とLG電子は米国の家電生産を拡大することとした。LG電子は米国テネシー工場で洗濯機と乾燥機の生産を増やし、そのための倉庫増設を進めている。サムスン電子も米国サウスカロライナ工場の洗濯機生産能力の拡大を計画中」と報じた。いずれも米国での生産能力を拡大し、関税などの状況に応じて、米国生産拠点を含む世界の複数の生産拠点の間で生産量を柔軟に調整できる体制を築く狙いだ。ただし、韓国メディアでは2025年後半以降、関連報道がみられないようで、計画がどこまで進展したのかはっきりしない。
| 年・月 | 韓国企業名 | 投資額 | 概要 |
|---|---|---|---|
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2025年 3月 |
現代モービス | — | 世界の半導体企業との協業強化と海外の優秀な人材確保のため、シリコンバレーに専門研究拠点を新設。韓国の研究拠点と「2トラック」で運営する予定。市場特性に合わせた車両用半導体設計技術を開発する計画。 |
| 5月 | サムスン電子 | 3億5,000万ドル | 米国子会社ハーマンインターナショナルを通じ、医療機器大手マシモのオーディオ事業部を買収する契約を締結。ハーマンインターナショナルとのシナジー効果に加え、サムスン電子の携帯電話・テレビ・家電事業とのシナジー効果を期待。(本件は同年9月に買収が完了) |
| 7月 | サムスン電子 | — | デジタルヘルスケア企業のゼルスを買収する契約を同社と締結。ウエアラブル機器を活用したデジタルヘルスケア事業を拡大する狙い。今後、ゼルスのプラットフォームを活用し、「コネクテッドケア」サービスを提供する計画。 |
| 11月 | 亜進電子部品 | 15億ウォン | 電装品生産の米国現地法人に追加出資。現地法人の財務構造改善などのため。 |
| 12月 | ユジンテク | 125億ウォン | 半導体製造装置生産の同社は、財務構造改善などを目的に米国生産法人に追加出資。 |
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2026年 6月 |
韓美半導体 | 500億ウォン | 半導体製造装置企業の同社は、スペースXへの出資を発表。マスク氏の次世代半導体製造プロジェクト「テラファブ」への参画や、スペースXの成長性を見越した投資。 |
| 7月 | LG電子 | — | マサチューセッツ州ボストンに、プレミアム・ビルトイン家電ブランド「SKS」の体験型ショールーム「SKSテクニキュリオン・センター」を開設。 |
注:1ウォン=約0.11円。
出所:各社プレスリリース、韓国メディア報道を基にジェトロ作成
米国の重要鉱物サプライチェーンへの食い込みを目指す韓国企業
鉱物分野でも韓国企業の対米投資案件が相次いでいる(表2参照)。米国のサプライチェーン強靭(きょうじん)化に貢献する一方で、韓国企業にとっても規模の大きな米国市場でシェアを獲得できることから、双方にとってメリットが大きい。
こうした案件の象徴が、2025年12月に高麗亜鉛が発表した米国での統合製錬所建設計画だ。これは、米国政府との協力のもと、テネシー州に13品目の非鉄金属を生産する製錬所を建設するもので、2029年から段階的に商業生産を開始する予定だ。
同社のプレスリリース(2025年12月15日)は、非鉄金属製品13品目には米国政府指定の11品目の重要鉱物が含まれることに言及した上で、「主要鉱物の持続的かつ安定的な供給を保証する」「世界各国で資源の武器化傾向が深刻化し、一部の国々によるグローバル重要鉱物サプライチェーンへの影響力が強まる中、今回のプロジェクトは米韓間の経済安全保障協力を強化すると同時に、グローバルサプライチェーンの多様化にも大きく寄与することが期待される」と、その意義を強調している。さらに、同社にとってのメリットについても言及している。具体的には、「投資や規制、政策の予測性が高い米国に生産拠点を構築することで、地政学的変動性や輸出規制、物流の支障といったリスクを事実上、機会へと転換する効果が期待できる」「米国は世界最大の重要鉱物需要地の1つだ。それだけに、積極的な市場拡大が可能となる。また、米国の重要鉱物サプライチェーンにおける信頼できるパートナーとして組み込まれる効果も、肯定的な要素だ」と述べ、精錬所建設による米国市場開拓効果を強調している。
ポスコグループの商社であるポスコインターナショナルも米国での鉱物事業に注力している。この事情について「ヘラルド経済」(2026年3月4日、電子版)は、「米国は中国依存の構図を打破し、「脱中国レアアース供給網」を構築しようとしている。(中略)このため、パートナーが切実に求められている状況だ。ポスコインターナショナルは、こうした米国と手を組み、事業機会を模索する方針だ」「ポスコインターナショナルは、米国で希土類の採掘および永久磁石の生産事業を拡大し、これを輸出する計画だ。さらに、精製技術を通じて廃棄された永久磁石をリサイクルし、再び原料として活用する循環型経済も模索している」「初期投資とパートナーシップは既に具体化している」と紹介している。
さらに、表2には記載していないが、LS電線がバージニア州で1兆ウォンを投じ、希土類永久磁石工場を建設することを検討していると、各種韓国メディアがしばしば報じている。
| 年・月 | 韓国企業名 | 投資額 | 概要 |
|---|---|---|---|
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2025年 9月 |
ジェイエス・リンク | 2億2,300万ドル以上 | 永久磁石生産の同社は、ジョージア州コロンバスにレアアース永久磁石生産拠点を建設すると発表。レアアースの調達から永久磁石の最終生産までのサプライチェーン全体を米国内でカバーする狙い。 |
| 12月 | 高麗亜鉛 | 74億3,200万ドル | 精錬・非鉄金属大手の同社は、テネシー州に統合製錬所を建設すると発表。2029年の生産開始を目指す。生産品目は計13品目で、亜鉛・鉛・銅などの産業用基礎金属をはじめ、金・銀などの貴金属、アンチモン、インジウム、ビスマス、テルル、カドミウム、パラジウム、ガリウム、ゲルマニウムなどの重要鉱物が含まれる。さらに、半導体用硫酸も生産する。投資総額のうち、同社は5億8,500万ドルを出資し、残りは米国政府主導で投資家が拠出するか、米国政府が補助金を支出する。 |
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2026年 1月 |
高麗亜鉛 | — | 精錬・非鉄金属の同社は、スタートアップのアルタ・リソース・テクノロジーズと戦略的パートナーシップを締結。両社は米国に合弁会社を設立し、2027年稼働を目標に、高純度レアアース酸化物処理・生産施設を設ける。 |
| 5月 | ポスコインターナショナル | 2億ドル | リエレメント・テクノロジーズ(インディアナ州)と合弁会社設立に向けた協約を締結。米国内に年産6,000トン規模のレアアース分離精製・工場を新設し、将来的には永久磁石まで一貫生産する計画。ポスコインターナショナルが合弁会社の経営を主導し、リエレメントは分離・精製のコア技術を提供する。米国政府の重要鉱物サプライチェーン強靭化政策、米韓両国の産業協力の流れに対応。 |
米国で生産拠点構築を進める韓国バイオ医薬品企業
医薬品・医療機器分野ではバイオ医薬品を中心に、韓国企業による生産拠点確保の投資が活発だ(表3参照)。狙いは、米国市場での受注拡大、事業ノウハウの取得、通商リスクへの対応などだ。
例えば、世界的な開発製造受託機関(CDMO)に成長したサムスンバイオロジクスは、2025年12月、英国グラクソ・スミスクライン(GSK)の米国メリーランド州ロックビル所在の工場の買収を発表した(買収手続きは2026年3月に完了)。サムスンバイオロジクスは2025年9月、米国の製薬企業(企業名は非公開)と約13億ドルの製造受託機関(CMO)契約を締結するなど、米国での受注拡大に注力している。従来、同社の生産拠点は韓国のみだった。同社はプレスリリース(2025年12月22日)で、「今回の買収を通じて、韓国の仁川市松島(ソンド)と米国のロックビルを結ぶ二元化生産体制を構築し、世界の顧客に柔軟かつ安定した生産オプションを提供する。これにより、北米の顧客との協業基盤を拡大すると同時に、地域ごとの供給環境の変化に対する対応能力を強化し、CDMOの競争力をさらに高める計画」「中長期的な需要と稼働状況を考慮し、生産能力の拡大など追加投資も検討する方針」と述べている。
他方、ロッテバイオロジクスはプレスリリース(2026年1月27日)で、米国拠点の役割について、「2022年の当社設立直後、米国ニューヨーク州シラキュースのバイオキャンパスを買収し、CDMO事業に進出した」「2027年の松島(ソンド)バイオキャンパス第1工場の稼働を控え、シラキュース・キャンパスを中心にCDMOの受注拡大に拍車をかけている。世界の製薬・バイオ企業の最大の需要先であり、最も厳しい規制への対応が求められる米国市場で先制的に実績を確保し、今後大規模な商業生産が行われる松島工場の早期定着と迅速な受注拡大を狙っている」と紹介している。
| 年・月 | 韓国企業名 | 投資額 | 概要 |
|---|---|---|---|
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2025年 4月 |
ユユ製薬 | 12億4,000万ウォン | 動物用新薬開発のVetmab Biosciences(カリフォルニア州)とともに、ペット専用コミュニケーションサービスのDog PPL(同州)に出資。市場拡大が見込まれるペット産業への進出の足掛かりとする狙い。 |
| ロッテバイオロジクス | 1億ドル | 抗体薬物複合体(ADC)臨床試験用候補物質の医薬品の開発製造受託(CDMO)契約をアジアのバイオ企業と締結。これを受けて、2023年以降に増設したニューヨーク州シラキュース工場のADC生産施設が本格稼働へ。輸入医薬品に対する関税課税の可能性がある中、米国生産拠点拡充でADC受託生産事業拡大を目指す。 | |
| 10月 | サムスン物産、サムスン電子 | 1億1,000万ドル | 血液検査によるがん診断技術 を持つバイオテクノロジー企業のグレイルに出資すると発表。韓国でグレイルの血液検査を独占的に流通できる権利を確保。今後、「サムスンヘルス」プラットフォームとの連携のための戦略的協力を模索。 |
| 12月 | サムスンバイオロジクス | 2億8,000万ドル | 英国グラクソ・スミスクライン(GSK)のメリーランド州所在の生産施設を買収する契約を同社と締結。これによりサムスンバイオロジクスは初の米国生産拠点を確保。北米の顧客との協業を拡大すると同時に、北米供給網を強化し、医薬品開発製造受託機関(CDMO)としての競争力を高める狙い。 |
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2026年 1月 |
メディポスト | 220億ウォン | 幹細胞などを利用した医療製品の開発・製造を行う同社は、米国法人に追加出資。膝関節炎幹細胞治療薬の米国での商業化に向けた第III相臨床試験費用と運転資金確保のため。 |
| 6月 | サムスン電子 | 1億7,500万ドル | 遺伝子分析装置企業のエレメント・バイオサイエンシズに追加出資し、最大株主に。サムスン電子のAI、医療機器、デジタルヘルス技術とエレメント・バイオサイエンシズのゲノム分析技術とのシナジー効果を発揮し、医療機器・デジタルヘルス分野の事業強化を目指す。 |
韓国食品への関心の高まりを受け、食品・飲食チェーンが米国に進出
韓国の食品・飲食チェーン企業の米国進出も相次いでいる(表4参照)。特に、飲食チェーンについては以下のとおり。
農林畜産食品部「2025年外食企業の海外進出実態調査概要」(2026年2月5日)によると、韓国の外食企業の海外店舗数は2020年の3,722店から2025年には4,644店に増加している。これを国・地域別に見ると、米国は528店(国別で2位)から1,106店(1位)に倍増し、好調だ。同じ時期に店舗数が1,368店(1位)から830店(2位)に4割減少した中国とは対照的だ。
韓国の飲食チェーンが米国で増加している理由としては、(1)初期の段階では在米韓国人を主なターゲットにしていたが、近年は米国人全体をターゲットとしていること、(2)K-POPや韓国ドラマの影響で韓国食品に対する米国人の関心が高まっていること、(3)韓国の食品をそのまま持ち込むのではなく、米国の既存の食品に韓国的な要素を加え、先行企業に対する差別化戦略を取っていることなどが挙げられる。(3)については、例えば、ハンバーガーチェーンであればメニューに「プルコギバーガー」を加えるといったケースが当てはまる。
特に積極的なのがベーカリーチェーン「パリバゲット」を展開するSPCグループだ。同社は2030年までに北米で1,000店を開設する目標を掲げている。こうしたチェーン展開を供給網の面で支えるため、テキサス州に製パン工場を建設している。
| 年・月 | 韓国企業名 | 投資額 | 概要 |
|---|---|---|---|
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2025年 2月 |
SPCグループ | 1億6,000万ドル | テキサス州ジョンソン郡で製パン工場を建設する計画を確定。米国・カナダで展開するベーカリーチェーン「パリバゲット」に新工場からパンを供給する計画で、2027年下半期の完成を目指す。北米におけるベーカリーチェーン「パリバゲット」を現行の200店強から2030年までに1,000店に拡大するSPCグループの計画を下支えする。米国市場の高い成長性を見込む。 |
| プルムウォン | — | 米国豆腐市場での好調な販売を受けて、マサチューセッツ州の豆腐工場を増設。 | |
| 5月 | オットゥギ | 565億ウォン | 食品企業の同社は、米国の持ち株会社に追加出資。米国市場での販売拡大に備える狙い。 |
| 7月 | サラディ | — | サラダ専門チェーンの同社は、コロラド州デンバーに米国1号店を開設。韓国色を前面に出し、健康に良いイメージを訴求することで差別化を図る。 |
| 8月 | ロッテGRS | — | カリフォルニア州にロッテリア米国1号店を開店。 |
| 10月 | CJフードビル | 500億ウォン | ジョージア州で建設していた新工場が12月に試験操業へ。本稼働時の生産能力は冷凍生地・ケーキなど年間1億個以上。同社のベーカリーチェーン「トゥレジュール」の米国内店舗数は、現在の170店強から2026年に300店以上に拡大する見込み。また、従来の委託生産に代えて米国で自社工場を持つことにより、物流の効率性が高まり、新メニュー開発から製品投入までの時間が短縮する見通し。 |
| 11月 | トゥーサムプレイス | — | コーヒーチェーンの同社は、2026年に米国で直営のコーヒー店を開設する方針を発表。 |
米国企業の保有技術獲得などを目指す韓国の投資会社
ベンチャーキャピタルなど、韓国の投資会社は米国に積極的に投資を行っている(表5参照)。投資の目的は、投資収益の獲得にとどまらず、米国企業の先進技術の獲得、米国市場へのアクセス確保、ネットワーク獲得などだ。これに関連して、例えば「ソウル経済新聞」(2026年2月1日、電子版)は、「韓国のベンチャーキャピタルが世界最先端の技術の確保のため、米国などの海外攻略を加速している。単純な投資を超え、現地ネットワーク構築による『技術の先取り』に注力している。将来の有望技術を早期に押さえ、『成長動力』を確保する戦略だ」と紹介している。対米投資の主体の多くは、サムスングループなど大手企業グループの投資会社だ。投資先も、ロボティックス、AI、バイオ医薬品など、各企業グループが次世代の主力事業として育成を急いでいる分野が中心だ。
| 年・月 | 韓国企業名 | 投資額 | 概要 |
|---|---|---|---|
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2025年 3月 |
サムスンベンチャー投資など | 1,000万ドル | サムスン物産、サムスンバイオロジクス、サムスンバイオエピス、サムスンベンチャー投資がファンド経由でC2Nダイアグノスティクス(アルツハイマー病血液検査サービス)に出資。 |
| 4月 | SKスクエアなど | — | SKグループの投資会社のSKスクエアは、dマトリックス(AI半導体)、テトラメム(次世代AIチップ)の米国スタートアップ2社に出資。本件にはSKハイニックス、新韓金融グループ、LIGネクスワンも共同出資。 |
| 5月 | サムスンネクスト | 500万ドル | サムスン電子の子会社でベンチャーキャピタルの同社は、他の投資会社とともに、サンフランシスコ所在のAIベースの自己免疫疾患治療スタートアップのウェルセオリーに出資。戦略的な投資領域をAIベースのヘルスケア分野に拡大。 |
| 韓国投資証券 | 3,711億ウォン | 事業拡大のため米国子会社に追加出資。 | |
| 6月 | カカオベンチャーズ | — | IT大手カカオのベンチャー投資子会社の同社は、人工衛星設計自動化技術を開発するOligo Spaceと、AIエージェントを開発するのTzafonのスタートアップ2社に出資。 |
| サムスンネクスト | 1,000万ドル | ヒト型ロボット・ソフトウエア開発のスタートアップのスキルドAIに出資。 | |
| 7月 | ハンファ生命 | — | 証券会社ベロシティの株式75%の買収手続きが終了したと発表。ハンファ生命では、「本買収は韓国の保険会社が米国証券市場に進出した初の事例」「保険中心の事業領域を超え、北米資本市場への進出を本格化する」と発表している。 |
| 8月 | LG | — | LGグループの持ち株会社の同社は、グループ傘下のベンチャーキャピタルのLGテクノロジーベンチャーズ(シリコンバレー)経由で、mRNA治療薬開発のストランド・セラピューティクス(マサチューセッツ州)に出資。 同グループは「ABC(AI、バイオ、クリーンテクノロジー)分野」の事業を強化している。本出資はその一環。 |
| 9月 | LGグループ | — | グループ各社が出資するベンチャーキャピタルのLGテクノロジーベンチャーズ(シリコンバレー)が、AIロボット・スタートアップのフィギュアAI(カリフォルニア州サンノゼ)に追加出資。前回の出資は2024年2月。同グループが強化中の「ABC(AI、バイオ、クリーンテクノロジー)戦略」の一環。 |
| サムスンネクスト | 5,800万ドル | ステーブルコイン決済インフラ関連のスタートアップのレインに出資。 | |
| DB損害保険 | 16億5,000万ドル | 特殊保険などを扱うフォルテグラグループ(フロリダ州)の買収契約を締結。DB損害保険では、「韓国の保険会社として初の米国保険会社買収」「フォルテグラグループの専門性とDB損害保険の全世界のネットワーク・資本力を結び付け、競争力を高める狙い」と発表。 | |
| 10月 | ネイバー | — | 同社のCV(コーポレートベンチャリング)組織のネイバーD2SFは、スタートアップのサマーロボティクス(カリフォルニア州)に新規に出資。ネイバーD2SFはロボティクス分野への投資に注力しており、本件はその一環。ネイバーは、特にサマーロボティクスの3次元ビジョンセンサー技術を評価。 |
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2026年 1月 |
SKハイニックス | 100億ドル | SKグループのAI関連投資を行う法人を米国に設立すると発表。グループ各社のAI関連投資を一元化し、意思決定速度を速める狙い。投資分野はAI半導体を軸に、AIインフラストラクチャー、エネルギー、ソフトウエア、データセンターなどになる見込み。なお、その後、SKテレコムをはじめとするSKグループ各社が同米国法人に順次出資している。 |
| 2月 | カカオベンチャーズ | — | ロボット・シミュレーションのスタートアップのパララックス・ワールズ(カリフォルニア州)に出資。 |
| 6月 | ネイバー | — | シリコンバレーに投資法人ネイバーベンチャーズを設立し、第1号の投資先としてバイオAIスタートアップのトゥエルブ・ラブズへの投資を決定。 |
技術獲得目的などで米国に進出する韓国のIT、ゲーム企業
IT・ゲーム企業も米国に進出している(表6参照)。米国進出の目的は、市場開拓よりも先進技術の獲得や米国企業との協力関係の強化にある。 なお、表6とは別に、前述の表5に記載したように、SKハイニックスは、米国にAI関連企業への投資を行う現地法人を設立し、SKグループ各社のAI関連投資を一元化することなどを狙っている。SKテレコムなどのグループ会社は、この現地法人に順次出資をしているところだ。
| 年・月 | 韓国企業名 | 投資額 | 概要 |
|---|---|---|---|
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2025年 3月 |
SKテレコム | — | AI最適化専門スタートアップのトゥギャザーAI(カリフォルニア州)に出資。AIプラットフォーム構築に向けた開発協力を強化。 |
| 7月 | クラフトン | 1,324億ウォン | ゲーム開発企業のイレブンスアワーゲームズを買収。買収により、ゲーム開発力の強化や既存の海外事業とのシナジー効果の創出を狙う。 |
| 9月 | メタネットグループ | — | AIとクラウドをベースとするITサービス企業の同社は、アプリケーション性能自動化プラットフォーム企業のCast AI(フロリダ州)に出資。同社との戦略的パートナーシップを強化する狙い。 |
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2026年 4月 |
ディアユー | 147億ウォン | モバイルアプリケーション開発などを手がける同社は、運転資金確保のために現地法人に追加出資。 |
| 5月 | サムスン電子・SKハイニックス | — | アンソロピックが実施したシリーズHの資金調達ラウンドに参加。サムスン電子・SKハイニックスにとって、AIハードウエア・半導体分野からAIエージェント分野へ協業領域を拡大する機会に。 |
| 7月 | ハンファ証券 | 300億ウォン | ブロックチェーン「カントン・ネットワーク」を運営するデジタルアセットに出資。目的は同社とのパートナーシップ強化。 |
米国市場での韓国製品販売を支える物流企業・小売り企業
物流企業の米国進出も相次いでいる(表7参照)。韓国市場が成熟化し、海外事業の強化が求められる中、韓国企業にとって市場規模の大きい米国市場への進出が不可欠となっている。また、米国で韓国ブランドの消費財へのニーズが高まり、韓国の対米輸出や韓国企業の米国進出が相次いでいることや、eコマースが拡大していることも、韓国物流企業にとって米国事業を強化する誘因になっている。
CJ大韓通運は2018年に食品など消費財物流に強みのあるDSCロジスティクスを買収し、2020年にCJ大韓通運米国法人と合併した。合併についてCJ大韓通運では、「統合法人の発足を通じて、海外に進出した韓国企業を中心としていた営業方式から脱却し、多国籍企業を対象としたグローバル営業が可能になると期待している」「北米市場で実績を積み重ねてきたDSCロジスティックの営業網と人的ネットワークに、CJ大韓通運が持つ先端物流能力を組み合わせ、M&Aの本格的なシナジー効果を生み出す戦略だ」(同社プレスリリース、2020年2月4日)とした。さらに、同社は「シカゴやニューヨークなどの物流・流通の中心地に保有する3カ所の敷地に、大規模な物流センターを順次建設する計画」(同、同年10月14日)を進めている。また、2025年9月にはカンザス州にコールドチェーン物流センターを開設した(同、2025年9月26日)。
小売り分野でも韓国企業の米国進出が続いている。韓流ブームを契機に、米国で韓国ブランドの消費財に対する関心が高まっていることを受け、小売り拠点を整備する動きがみられる。
| 年・月 | 韓国企業名 | 投資額 | 概要 |
|---|---|---|---|
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2025年 2月 |
CJオリーブヤング | — | カリフォルニア州ロサンゼルスに現地法人CJオリーブヤングUSAを設立。商品マーケティング物流システムなど、事業拡大に必要なコア機能の現地化を進める。物流についてはCJ大韓通運の米国法人との協業で物流網を構築する。合わせて、2026年予定の米国1号店(カリフォルニア州)の開設準備を進める。 |
| LXパントス | — | 日系コンテナ船事業会社オーシャンネットワークエクスプレス(ONE。本社シンガポール)と合弁で「ボックスリンクス」を設立。出資比率はLXパントス51%、ONE49%。鉄道やトラックを組み合わせた複合輸送サービス市場に本格進出する。港湾経由で内陸に輸送されるONEのコンテナを合弁会社が確保し、空きコンテナを利用した鉄道・トラック輸送事業を行う予定。 | |
| 3月 | LXパントス、韓国海洋振興公社 | 約1,700億ウォン | ジョージア州ダルトン所在の大型物流センターを買収。韓国メーカーの進出に合わせて物流インフラを確保する狙い。LG電子やハンファソリューションズQセル部門(ハンファQセルズ)などの主要顧客の物流効率を高めるとともに、新規顧客の開拓も図る。 |
| 4月 | LG生活健康 | 1,865億ウォン | 化粧品・生活用品販売の現地法人LG H&H USA(ニューヨーク州)に追加出資。運営資金支援と財務構造改善が目的。マーケティング投資の強化やブランド認知度の向上を図る。 |
| 8月 | テドン | — | 農業機械企業の同社は、ワシントン州タコマに大規模物流倉庫を建設。ノースカロライナ州、テキサス州、カナダ・オンタリオ州に次ぐ北米4カ所目の拠点となる。事業領域を北米全域に拡大する狙い。 |
さらに、今までで取り上げなかったその他の業種でも対米投資事例が幅広くみられる(表8参照)。
| 年・月 | 韓国企業名 | 投資額 | 概要 |
|---|---|---|---|
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2025年 3月 |
第一企画 | 767億ウォン | ニューヨーク州のメディアマーケティング企業のロッカード&ウェクスラーを買収。同社のデータ分析ノウハウを活用したマーケティング・サービスを提供。 |
| 8月 | KRM | 69億ウォン | ロボット・システム半導体メーカーの同社は、ドローン開発・製造のホバーフライテクノロジーズ(HTI、フロリダ州)に出資。出資比率は7.4%。HTIとの協力を強化し、米国ドローン市場への進出を目指す。 |
| 10月 | 世亜商易 | — | 衣料メーカーのSwisstexのエルサルバドルにある2工場と米国営業法人を買収。北米のスポーツ・機能性衣料市場での競争力強化を目指す。 |
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2026年 2月 |
三千里 | 508億ウォン | 都市ガス供給業・自動車販売・海外ホテル運営などを手がける同社は、カリフォルニア州のホテル事業子会社に追加出資。同子会社による他社への出資に必要な資金を確保するため。 |
| 3月 | 三益楽器 | 151億ウォン | 事業拡大を目的に、米国の楽器販売現地法人に追加出資。 |
| ハイブ | 1,508億ウォン | エンターテインメント企業の同社は、電子商取引を手がける米国子会社に追加出資。 | |
| 4月 | アイマーケットコリア | — | 産業資材BtoB企業の同社は、テキサス州に韓国企業向け工業団地を造成する契約をテイラー経済開発公社(TEDC)と締結。韓国企業の米国進出に伴うリスクを軽減し、米国事業に必要なインフラ環境を支援。 |
| 5月 | HS暁星先端素材 | 1,300万ドル | バイオディーゼル生産過程の副産物からアクリロニトリルを生産するスタートアップのトリリウム・レニューアブル・ケミカルズ(テネシー州)に追加出資。実証プラントの運営や技術開発、商用化に向けた大規模プラントの設計などを支援。 |
- 執筆者紹介
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ジェトロ調査部中国北アジア課
百本 和弘(もももと かずひろ) - ジェトロ・ソウル事務所次長、海外調査部主査などを経て、2023年3月末に定年退職、4月から非常勤嘱託員として、韓国経済・通商政策・企業動向などをウォッチ。





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