韓国企業の海外展開の今と新たな挑戦対米投資を拡大する現代自動車グループ
韓国企業の対米投資(3)

2026年8月17日

本連載では、最近の韓国の対米直接投資動向について紹介している。1回目は米韓通商交渉で表明・合意された韓国側の対米投資計画について、2回目は韓国側統計に基づく対米直接投資の推移と最近の特徴について、それぞれ概観した。3回目以降は、第2次トランプ政権が発足した2025年1月以降に明らかになった韓国企業の対米投資案件について、業種別に見ていく。3回目の本稿では、従来の最大の対米輸出品目・貿易黒字品目で対米投資圧力が掛かる自動車をはじめ、自動車部品、鉄鋼、ロボティクス、造船について取り上げる。

現代自動車グループが自動車の米国生産を拡大

製造業の中で特に注目されるのが自動車・同部品企業の動向だろう。自動車は、従来、韓国にとって最大の対米輸出品目であり、最大の対米貿易黒字額を計上してきた品目(韓国独自コードのMTI3桁ベース。ただし、2026年1月~6月は対米輸出額、対米貿易黒字額のいずれも半導体に次ぐ2位)であるだけに、通商圧力にさらされやすい。ちなみに、トランプ政権発足前の2024年の韓国側貿易統計によると、対米輸出総額に占める自動車輸出額の割合は27.2%、対米貿易黒字総額に対する対米自動車貿易黒字額の割合は58.5%だった。このような中、トランプ政権は自動車・同部品関税(当初25%、2025年11月以降は15%に引き下げ)を発動している。そのため、韓国の自動車メーカーにとって、対米輸出を米国生産に代替していくことが切実な課題となっている。

韓国自動車業界を代表する現代自動車グループ(現代自動車、起亜、現代モービス、現代製鉄など)は、2025年3月25日に2028年までの4年間で総額210億ドルを米国に投資する計画を発表した。さらに、同グループは同年8月25日に、投資総額を50億ドル上積みし、260億ドルとする新たな対米投資計画を発表した(表1参照)。

主力の自動車事業については、同年3月26日、グループとして米国で3番目の生産拠点となる「現代自動車グループ・メタプラント・アメリカ(HMGMA)」(ジョージア州所在)の竣工(しゅんこう)式を開催した。同工場はバイデン政権時の2022年10月に着工し、竣工式に先立つ2024年10月に生産を開始している。2025年3月の発表では、当初、年産30万台予定していた生産能力を20万台上積みした。生産モデルは、生産開始時の現代自動車のEVのほか、同社のハイブリッド車、起亜ブランド車、高級車ブランド「ジェネシス」へと拡大する構想で、2026年6月に新たに起亜のハイブリッドSUVの生産を開始した。同グループは従来、現代自動車アラバマ工場(年産36万台)、起亜ジョージア工場(同34万台)を運営してきたが、これらにHMGMAを加えると、米国での生産能力は年産120万台となる。米国生産の拡大により、韓国からの対米完成車輸出のかなりが米国生産に代替される見込みだ。「ヘラルド経済」(2026年3月25日、電子版)は「(同グループは)現在、約43%の米国販売に占める米国生産の割合を2030年までに約80%に引き上げることを目標としている」と報じている。

同グループの対米投資は自動車事業に限らず、自動車部品・物流・鉄鋼、「未来産業」・エネルギーなど広範囲にわたっている。同グループはプレスリリース(2025年3月25日)で、「米国は、現代自動車グループにとって最大の海外投資国であり事業国であると同時に、未来分野において世界最高の技術力を有する国だ。今回の投資を通じて、米国の製造業再建などトランプ政権の政策に対応するとともに、さまざまな分野で事業機会を拡大する」「特に、多角的な米国現地事業基盤の拡大を通じて、モビリティーをはじめとする未来事業の競争力を高め、企業としての信頼性を向上させ、持続可能な企業として確固たる地位を築く構想だ」と述べている。つまり、トランプ政権の政策に対応し、米国市場での地位を高めるとともに、人工知能(AI)、ロボティクス、自動運転などの新技術を獲得し、成長事業の基盤を強化する狙いが込められている。

同グループはさらに2025年8月25日に、投資総額を50億ドル上積みする計画を発表し、米国経済への貢献をあらためてアピールした。現代自動車の対米投資額について、同グループの鄭義宣(チョン・ウィソン)会長は「現代自動車グループは40年余り前に米国に進出してから205億ドルを投資した」(2026年4月12日)と述べている。これと比較しても、2028年までに260億ドルを投資する計画の規模の大きさがうかがえる。

また、同グループは自動車部品についてプレスリリース(2025年3月25日)で、「HMGMAの生産能力拡大に合わせて設備を増設し、部品の現地調達率を高めるとともに、バッテリーパックなどEVのコア部品の現地調達を推進する」と述べ、現地調達率を引き上げていく方針を明らかにしている。

表1:現代自動車グループの対米投資計画(2025年~2028年)
プレスリリース年月日 分野 内容
2025年3月25日 全体
(投資総額:210億ドル)
「現代自動車グループ・メタプラント・アメリカ(HMGMA)」の生産能力を拡大する一方、ルイジアナ州に電炉式一貫製鉄所の建設を推進する。ロボティクス、AIなどの未来産業分野において米国企業との協力を拡大し、エネルギー関連インフラへの投資も実施する計画。2028年までの4年間に総額210億ドルを投資する。
自動車
(投資額:86億ドル)
現在、現代自動車・アラバマ工場(生産能力36万台、2004年完工)、2010年に起亜・ジョージア工場(生産能力34万台、2010年完工)、HMGMA(生産能力30万台、2025年完工)の合計100万台の生産能力を米国に有している。今後、HMGMAの生産能力を20万台拡大し、50万台とする。これにより、現代自動車グループの米国生産能力を100万台から120万台に拡大する。 また、アラバマ工場、ジョージア工場などの既存の工場の生産設備の更新、効率化など投資を行う。
部品・物流・鉄鋼
(投資額:61億ドル)
  • HMGMAの生産能力拡大に合わせ、部品の現地調達率を高める。バッテリーパック  などEVのコア部品の現地調達を進める。
  • 完成車メーカー・部品メーカー間のサプライチェーンを強化する。
  • ルイジアナ州に270万トン規模の電炉製鉄所を建設する。生産品は低炭素自動車用鋼板に特化する。高品質の自動車用鋼板の現地生産化により、関税などのリスクへの対応力を高める。
未来産業・エネルギー
(投資額:63億ドル)
  • 自動運転、ロボット、人工知能(AI)、空飛ぶクルマ(AAM)など未来新技術に関連する米国の有力企業との協力を拡大し、現代自動車グループの米国現地法人であるボストン・ダイナミクス、スーパーナル、モーショナルの事業スピードを速める。
  • 未来新技術関連の有望なスタートアップを発掘し、先行投資する。
  • 現代建設が米国ホルテックインターナショナルと協業し、2025年末にミシガン州で小型原発モジュール(SMR)を着工する。
  • 現代エンジニアリングが2027年上半期にテキサス州で太陽光発電所商業運転を開始する。
  • 米国内でのEV充電スタンド設置を拡大する。
2025年8月25日 全体 3月25日発表の投資計画に50億ドルを追加し、2028年までの投資総額を260億ドルとする。米国で約2万5,000人の新たな雇用機会を創出し、米国経済活性化に貢献する。
鉄鋼 ルイジアナ州に新たな製鉄所を建設し、自動車生産など米国の戦略産業を支援し、地域サプライチェーン強化、産業競争力向上を図る。
自動車 現代自動車・起亜を含む自動車関連企業は米国国内の生産能力を大幅に拡大する。
ロボティクス 生産能力年間3万台の最先端ロボット工場を建設し、設計・製造・試験などを行う拠点とする。これにより、現代自動車グループは世界のロボティクス・エコシステムの最前線を目指す。
米国企業との協業拡大 ボストン・ダイナミクス、モーショナルなどの米国国内の関連会社を通じ、技術の商用化を加速し、AI、ロボティクス、自動運転などの分野で米国企業との協業を拡大する。

出所:現代自動車グループ・プレスリリースを基にジェトロ作成

米国生産を重視する戦略は現代自動車グループに限らず、米国市場で販売する世界の多くの自動車メーカーに共通するものだろう。そのため、独立系の自動車部品メーカーを含め、多くの韓国の自動車部品メーカーが米国生産を拡大している(表2参照)。例えば、ハンコックタイヤはテネシー州のタイヤ工場の生産能力を年550万本から1,200万本に拡張する工事を行い、2025年12月に増設工事を完了した。工場増設自体の計画は、トランプ政権発足前の2022年に発表されたものだった。同社はプレスリリース(2022年8月30日)で「テネシー工場拡大は、増加する北米市場の需要に対応し、バランスの取れた生産基地ポートフォリオを構築するために決定した。また、海上輸送コスト上昇に起因した販売地の近くでの生産の必要性、関税障壁なども考慮した」と述べている。

表2:韓国企業の主な対米直接投資事例(自動車・同部品、2025年1月~2026年7月中旬)(ーは記載なし)注1:「表1 現代自動車グループの米国投資計画(2025年~2028年)」に記載した内容を除く。 注2:1ウォン=約0.11円。
年・月 韓国企業名 投資額 概要
2025年
4月
ハンセモビリティ 自動車駆動システム・インフォテインメント・自動走行システムなどを生産する同社は、米国での生産規模を3倍に拡大する計画を発表。既存のミシガン州の工場を、最大顧客のステランティスのデトロイト工場近くに移転し、拡張する。第2次トランプ政権の米国現地生産化の流れを受けたもの。
8月 SNTグループ ルイジアナ州の10万坪規模の工場を買収。グループ傘下のSNTモーティブがモーターなどの自動車部品を、SNTエナジーがLNGプロジェクトに必要なエアクーラーと発電所向け部品を生産する予定。
10月 現代自動車グループ カリフォルニア州エルセグンドに高級車ブランド「ジェネシス」用のデザインセンターを設立。既にある韓国・ドイツのデザインスタジオとの協力体制を強化し、次世代空モビリティー(AAM)、ロボティクスなどの分野のデザイン事業を進める。
亜進産業 358億ウォン 自動車部品企業の同社は、ジョージア州の現地法人に追加出資。自動車部品生産ラインの増設と自動車部品開発の強化のため。
12月 ハンコックタイヤ&テクノロジー 15億7,500万ドル テネシー工場の増設を完了。これにより、乗用車・軽トラックタイヤの年産規模は550万本から1,100万本に倍増し、北米販売分の現地生産比率が25%から50%に上昇する。工場増設により関税リスク軽減、物流費削減、注文から納期までのリードタイム短縮が可能に。
アルコ 1億3,000万ドル アルミニウムメーカーの同社は、テキサス州ローダーデール郡でアルミニウム複合工場の起工式を開催。溶解・鋳造・押し出し・表面処理加工など、アルミニウムの生産に関する全工程を1カ所で行えるのが特徴。なお、同社は2025年3月に、テネシー州マディソン郡ジャクソンで3,630万ドルを投じたEV用アルミニウムバッテリーモジュール部品工場を竣工している。

注1:「表1 現代自動車グループの米国投資計画(2025年~2028年)」に記載した内容を除く。
注2:1ウォン=約0.11円。

出所:各社プレスリリース、韓国メディア報道を基にジェトロ作成

韓国の2大鉄鋼メーカーが米国生産で協調

韓国では、1968年に国有高炉メーカーとして設立されたポスコ(2000年に完全民営化)と、2001年に現代自動車グループ入りし、2010年に高炉事業に参入した現代製鉄の2社が高炉事業を行っている。両社は基本的に競合関係にあるが、米国事業では協業を進めている。

対米投資を先に発表したのは、現代製鉄が属する現代自動車グループだ。同グループはプレスリリース(2025年3月25日)で、「米国ルイジアナ州に270万トン規模の電炉製鉄所を建設する。低炭素自動車用鋼板に特化し、高品質な自動車用鋼板の現地供給を通じて、関税など不確実な対外リスクへの対応力を高める。また、堅調な鉄鋼需要を基盤に安定した収益を創出し、鉄鋼分野における新たな成長エンジンを確保することが期待される」と発表した。

その後、同年4月21日、ポスコグループと現代自動車グループは「鉄鋼および2次電池分野における相互協力のための業務協約書」に調印した。狙いは「世界経済のブロック化および急変する通商環境の下、低炭素鉄鋼および2次電池市場において両グループの競争力を基盤に持続可能なシナジーを創出すること」(ポスコグループの同日付プレスリリース)としている。

このうち、鉄鋼に関する協力の第1弾が、現代自動車グループの米国電炉製鉄所に対するポスコグループの出資だ。ポスコグループは「鉄鋼事業における完結型現地化戦略の一環として、最近、現代自動車グループが発表した対米鉄鋼投資に参加する。これにより、ポスコグループは過去10年余りにわたり保護貿易障壁によって制限されていた北米鉄鋼市場への進出の足掛かりを確保できる。鉄鋼事業会社のポスコは、米国ルイジアナ製鉄所への合弁投資を通じて、米国・メキシコに円滑に素材を供給できるようになり、柔軟なグローバル生産・販売体制を構築できるようになる」(同日付プレスリリース)と、その意義を述べている。

高関税が課せられている米国市場での販売拡大に向け、鉄鋼の米国生産が課題となる中、両グループは協業が投資負担の軽減や供給網の安定化につながると判断した。その後の韓国メディア報道によると、投資額58億ドルの内訳は資本金29億ドル、借入金29億ドルで、資本金の構成比は現代製鉄50%、ポスコ20%、現代自動車15%、起亜15%となった。

なお、ポスコグループは、現代自動車グループの米国電炉製鉄所への出資とは別に、2025年9月に戦略的業務協約を締結した米国のクリーブランド・クリフスへの出資交渉を行っていると、韓国メディアは報じている。報道が集中したのは同年10月末から11月初めにかけてで、出資比率は10%以上、出資額は1兆ウォン以上とされている。ただ、この件は現時点でも交渉がまとまっていないようだ。

米国企業への出資が相次ぐロボティクス

韓国政府や韓国の主要企業グループはロボティクス事業の強化に注力している。政府の取り組み姿勢について、日刊経済紙の「アジア経済」(2026年6月25日、電子版)は、「李在明(イ・ジェミョン)大統領は、ロボット、宇宙航空、バイオ、防衛産業などを半導体産業に次ぐ新たな成長産業として積極的に育成すべきと強調している」と紹介している。実際、韓国政府が2026年7月14日に発表した「2026年下半期経済成長戦略」の中でも、「AIロボット、世界3強へ跳躍」が政策目標として掲げられている。このような政府の動きに歩調を合わせるように、韓国の主要企業グループもロボティクス事業の育成に注力している。その一環として対米投資を拡大している(表3参照)。

ロボティクス事業に注力している代表的な企業グループとして、現代自動車グループが挙げられよう。同グループは2021年6月に米国のボストン・ダイナミクスをソフトバンクグループから買収するなど、ロボティクス事業に注力してきた。最近も、ヒト型ロボットの米国での量産決定やボストン・ダイナミクスの100%子会社化など、対米投資を続けている。

同グループ以外にも、LG電子や斗山ロボティクスが米国企業に出資し、ロボティクス事業の強化を図っている。

表3:韓国企業の主な対米直接投資事例(ロボティクス分野、2025年1月~2026年7月中旬)(ーは記載なし)注:「表1 現代自動車グループの米国投資計画(2025年~2028年)」に記載した内容を除く。
年・月 韓国企業名 投資額 概要
2025年
1月
LG電子 同社は2024年にシリコンバレーのベアロボティクス(事業内容は配膳ロボット、搬送ロボットなど)の株式21%を取得していたが、さらに30%を取得し、持ち株比率を51%にすることを取締役会で議決。病院用・配送用などの商業用ロボット事業の強化を目指す。
5月 トゥナム 92億ウォン ブロックチェーン企業の同社の子会社で、投資会社のトゥナム&パートナーズが米国の飲料自動化ロボット・スタートアップのボトリスタ(カリフォルニア州)に出資。
7月 斗山ロボティクス 356億ウォン ロボット・ソリューション企業ワンエクシアの持ち分89.59%を買収すると発表。自社の人工知能(AI)プロジェクトのノウハウと、ワンエクシアのロボット関連の技術・ノウハウを組み合わせることで、ロボット開発やソリューション事業を推進する狙い。
2026年
2月
現代自動車グループ 数100万ドル ロボティクス・スタートアップのフィールドAI(カリフォルニア州)に出資。
RLWRLD(リアルワールド) 2024年創業のフィジカルAI分野のスタートアップである同社は、本社を韓国から米国カリフォルニア州に移転。米国が世界のフィジカルAIビジネスを主導していることや、米国のベンチャーキャピタルの層が厚いことなどが移転の理由。
3月 LG CNS LGグループ傘下のシステム開発企業である同社は、LGテクノロジーベンチャーズ経由で、ロボット企業のデックスメイト(カリフォルニア州)に出資。ヒト型ロボットハードウエアの競争力強化を目指す。
斗山ロボティクス 239億ウォン ロボット・ソリューション開発・販売を手掛ける米国子会社に追加出資。受注残の増加に伴う工場拡張資金確保のため。
4月 ブリルス ロボット自動化ソリューション専門企業の同社は、ミシガン州に現地法人を設立。米国企業のロボット・モジュール化ソリューション需要に迅速に対応する狙い。自動車、医療機器、2次電池などの分野での現地市場開拓に注力する考え。
5月 現代自動車グループ ヒト型ロボット「アトラス」の量産工場をジョージア州に建設することを決定。「需要地の近くに生産拠点を置く」という原則に基づく決定。2028年までに年産3万台の生産体制を構築し、このうち2万5,000台を「現代自動車グループ・メタプラント・アメリカ(HMGMA)」(ジョージア州)に納品する計画。
7月 現代自動車グループ 3億2,500万ドル ソフトバンクグループが保有するボストン・ダイナミクスの全株式(発行株式の9.65%)を買収し、ボストン・ダイナミクスを100%子会社化。

注:「表1 現代自動車グループの米国投資計画(2025年~2028年)」に記載した内容を除く。

出所:各社プレスリリース、韓国メディア報道を基にジェトロ作成

米国造船業の競争力強化に協力して米国市場の獲得を目指す韓国造船企業

造船業では「MASGAプロジェクト」を契機に米国市場に参入する動きが広がっている。「MASGA」は「Make America Shipbuilding Great Again」の略で、「MASGAプロジェクト」とは、2025年7月の米韓関税交渉合意の一環として、韓国側が提案・約束した造船分野における総額1,500億ドルの対米協力を指す。

韓国の大手造船グループ・企業(HD現代、ハンファグループ、サムスン重工業)のうち、ハンファグループが対米投資に特に積極的だ(表4参照)。

ハンファグループは2024年6月21日、フィラデルフィアのフィリー造船所の買収を発表した。買収額は1億ドル、出資比率はハンファオーシャン(旧・大宇造船海洋)60%、ハンファシステム40%で、買収の目的は米国の商戦市場・防衛市場への本格進出だった。ハンファオーシャンはその後、同年8月29日に韓国造船企業として初めて米国海軍艦艇の整備・修理・オーバーホール(MRO)事業の受注を発表するなど、成果を上げ始めている。さらに、ハンファグループは2025年8月、建造能力の拡大に向け、米韓政府が合意した1,500億ドルの「造船産業協力投資ファンド」を活用し、買収した造船所に50億ドルを追加出資すると発表した。

他方、HD現代(グループ持ち株会社)は、2025年8月26日、サーベラス・キャピタル・マネジメント、韓国産業銀行とともに「韓米造船産業共同投資プログラム構築に向けた了解覚書(MOU)」を締結した。投資プログラムの規模は50億ドルで、米国造船所の買収および近代化、サプライチェーン強化のための舶用メーカーへの出資などが目的だ。これに関連して、「韓国経済新聞」(同年11月17日、電子版)は、「2026年から米国の造船所の買収と改善、先端船舶の開発・建造、舶用機器のサプライチェーン拡充などの事業を推進する計画」「米国最大の防衛造船所であるハンティントン・インガルス・インダストリーズと提携し、米国海軍の次世代軍需支援艦の共同建造を推進する計画」とするHD現代会長の発言を紹介している。

さらに、サムスン重工業は、2025年12月にカリフォルニア州のジェネラル・ダイナミクス・ナスコ造船所などと了解覚書(MOU)を締結し、米海軍次世代補給艦事業の共同入札を検討する予定だ。

表4:韓国企業の主な対米直接投資事例(造船業、2025年1月~2026年7月中旬)(ーは記載なし)
年・月 韓国企業名 投資額 概要
2025年
2月
ハンファオーシャン 1,532億ウォン 投資財源の確保のため、米国持ち株会社に追加出資。
8月 HD現代 50億ドル 米国のサーベラス・キャピタル・マネジメントなどと共同で、米国造船業を対象とした共同ファンドの造成に向けた了解覚書(MOU)を締結。
ハンファグループ 50億ドル フィラデルフィアのハンファフィリー造船所に追加出資。同グループは2024年にフィリー造船所(当時)を買収していた。追加出資の財源として、米韓両政府が合意した1,500億ドルの「造船産業協力投資ファンド」を利用する。追加出資後に同造船所にドック2カ所、岸壁施設3カ所、12万坪のブロック製造施設を新設する予定。
2026年
3月
サムスン重工業 カリフォルニア州のサンディエゴ州立大学と共同で設立した「サムスン重工業SDSU先端海洋センター」の開所式を開催。また、同地の造船会社ナスコとの技術協力関係を構築する計画。AIベースの生産自動化、ロボティクス、環境対応分野でサンディエゴ州立大学、ナスコと協力策を模索する予定。

出所:各社プレスリリース、韓国メディア報道を基にジェトロ作成

執筆者紹介
ジェトロ調査部中国北アジア課
百本 和弘(もももと かずひろ)
ジェトロ・ソウル事務所次長、海外調査部主査などを経て、2023年3月末に定年退職、4月から非常勤嘱託員として、韓国経済・通商政策・企業動向などをウォッチ。

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