韓国企業の海外展開の今と新たな挑戦 多様化する韓国企業のサウジアラビア進出
韓国企業の中東進出(1)

2026年4月15日

韓国の輸出が曲がり角に差し掛かっている。2025年の輸出は前年比3.8%増の7,094億ドルと増加を記録した。しかし、これは最大品目の半導体の輸出が価格上昇などで大幅に増加したことが寄与したもので、半導体を除くと輸出は前年割れだった。また、2大輸出先の米国・中国ともに、同年の輸出は減少している。両国向け輸出の本格的な回復は決して容易でない。

こうした中、韓国政府が模索しているのが米中以外の輸出市場の開拓だ。これに関連し、産業通商部(日本の経済産業省に相当)は、2026年の政策などを盛り込んだ「産業通商部業務報告」(2025年12月17日発表)の中で、「新通商戦略を通じた世界市場開拓」を掲げた。具体的には、「韓国・アラブ首長国連邦(UAE)協力モデルを基にした原発新市場進出、食品、防衛産業、電力用資機材(中略)などの輸出品目多角化」「大統領歴訪の後続措置としての、政府横断的なタスクフォースなどを通じた新興国への輸出市場多角化」などを列挙した。こうした取り組みの一環として、韓国政府や主要企業は中東諸国向け輸出の拡大に関心を寄せている。

そこで、中東諸国の中でも特に経済関係が緊密なサウジアラビアとUAEについて、2回に分けて、韓国との外交関係、貿易、韓国企業の進出状況などを見ることとする。第1回の本稿ではサウジアラビアを取り上げる。(第2回は「暗号資産関連企業の進出が相次ぐUAE」参照。)

なお、韓国企業の進出状況については、現地での拠点構築事例を中心に概観し、拠点構築を含まないプラント建設プロジェクト受注などは含まないこととする。また、本稿は2026年2月の中東情勢悪化以前の状況を中心とし、中東情勢悪化の影響については第2回で執筆時点の状況に言及したい。

深化する韓国・サウジアラビア関係

かつてエネルギー分野が中心だった韓国・サウジアラビアの協力関係は、近年、非エネルギー部門や安全保障、文化など、さまざまな分野に拡大している。2022年のムハンマド・ビン・サルマン皇太子兼首相の韓国訪問、2023年の尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領のサウジアラビア訪問といった首脳の相互訪問が協力関係の深化につながった。特に経済分野では、サウジアラビア政府が推進している「サウジ・ビジョン2030」や、同じく「NEOM」などのギガプロジェクトでの協力関係が深まっている。「サウジ・ビジョン2030」は脱「石油依存経済」、雇用創出、行政の効率化などを進め、持続可能な経済成長を目指す将来計画で、韓国企業は人工知能(AI)、自動車、造船、ロボット、バイオヘルス、データセンターなど、さまざまな分野で事業を行っている。他方、「NEOM」は同国北西部で建設中の計画都市で、韓国企業はThe Lineプロジェクトの工事受注、スマートシティ・IT・デジタルインフラの構築などに参画している。

韓国のサウジアラビア向け輸出の3割弱が自動車

まず、韓国のサウジアラビア向け輸出入の推移を見ることとする(図1参照)。輸出は2015年に94億8,187万ドルをピークに反転し、2020年は33億190万ドルに減少した。その後、輸出は持ち直し、2025年は48億5,942万ドルを記録した。半面、輸入は原油相場の影響を受け、変動を繰り返している。貿易収支は構造的に韓国の赤字だ。

図1:韓国のサウジアラビア向け輸出入の推移
韓国のサウジアラビア向け輸出入の推移は次のとおり(単位:100万ドル)。輸出:2000年1,262、2001年1,274、2002年1,259、2003年1,409、2004年1,708、2005年2,093、2006年2,978、2007年4,026、2008年5,253、2009年3,857、2010年4,557、2011年6,964、2012年9,112、2013年8,828、2014年8,288、2015年9,482、2016年5,644、2017年5,147、2018年3,952、2019年3,697、2020年3,302、2021年3,325、2022年4,865、2023年5,325、2024年5,235、2025年4,859。輸入:2000年9,641、2001年8,058、2002年7,551、2003年9,268、2004年11,800、2005年16,106、2006年20,552、2007年21,164、2008年33,781、2009年19,737、2010年26,820、2011年36,973、2012年39,707、2013年37,665、2014年36,695、2015年19,561、2016年15,742、2017年19,590、2018年26,336、2019年21,841、2020年15,980、2021年24,271、2022年41,640、2023年32,763、2024年31,450、2025年27,398。貿易収支:2000年△8,379、2001年△6,783、2002年△6,292、2003年△7,859、2004年△10,091、2005年△14,013、2006年△17,574、2007年△17,138、2008年△28,528、2009年△15,880、2010年△22,263、2011年△30,008、2012年△30,595、2013年△28,837、2014年△28,407、2015年△10,080、2016年△10,098、2017年△14,443、2018年△22,384、2019年△18,143、2020年△12,678、2021年△20,947、2022年△36,775、2023年△27,438、2024年△26,215、2025年△22,539。

出所:韓国貿易協会データベース

次いで、2025年の輸出入額を主要品目別に見ると、次のとおり(表1参照)。

輸出を見ると、自動車が輸出全体の3割弱と圧倒的に多く、輸出の主力品目になっている。中心は排気量1,500cc超2,500cc以下の内燃機関搭載の乗用車だ。ちなみに、同年の自動車輸出額を国・地域別に見ると、サウジアラビアは9位、中東地域ではトップの輸出先となっており、同国は韓国自動車企業にとって主要な輸出先の一角を占めているといえる。自動車に次いで、高圧開閉器・遮断器を中心とした電力用機器、空気調整器・冷暖房機の輸出が多い。

他方、輸入は原油が輸入全体の9割超と、圧倒的に多い。原油に次いで、石油製品、LPG(液化石油ガス)などが多いが、輸入額は原油に比べ格段に少ない。

表1:韓国の主要品目別サウジアラビア向け輸出入(2025年)

(単位:100万ドル、%)(ーは値なし)
輸出注:品目区分は韓国独自コードのMTI 3桁ベース。
順位 品目名 金額 構成比
1 自動車 1,329 27.3
2 電力用機器 389 8.0
3 空気調整器・冷暖房機 382 7.9
4 鋳・鍛造品 190 3.9
5 原動機・ポンプ 182 3.7
6 武器類 155 3.2
7 合成樹脂 148 3.1
8 ゴム製品 140 2.9
9 鉄鋼板 133 2.7
10 その他重電機器 114 2.3
11位以下小計 1,698 34.9
合計 4,859 100.0
輸入注:品目区分は韓国独自コードのMTI 3桁ベース。
順位 品目名 金額 構成比
1 原油 25,708 93.8
2 石油製品 378 1.4
3 LPG 341 1.2
4 精密化学原料 210 0.8
5 銅製品 200 0.7
6 その他石油化学製品 116 0.4
7 アルミニウム 108 0.4
8 石油化学合繊原料 105 0.4
9 合成樹脂 59 0.2
10 亜鉛鉱 54 0.2
11位以下小計 120 0.4
合計 27,398 100.0

注:品目区分は韓国独自コードのMTI 3桁ベース。
出所:韓国貿易協会データベース

武器類の輸出が増加基調に

輸出品目のうち、特に注目すべき品目の1つが武器類(注)だ。サウジアラビア向けの武器類の輸出は2010年代半ばに立ち上がり、2020年代に入ってから急増している(ただし、大型契約の有無により、輸出額は年ごとに比較的大きく変動する。2025年は前年に比べ大幅減となった)。

実際、韓国政府は防衛産業の輸出に注力しているところだ(2025年12月2日付地域・分析レポート「韓国の防衛産業輸出の現状を探る」参照)。2025年6月に発足した李在明(イ・ジェミョン)政権は同年9月、「李在明政府の123大の国政課題」を発表した。その113番目の課題として、「防衛産業育成(中略)などによる防衛産業4大強国入り」との目標を掲げた。内容を見ると、冒頭に防衛産業の輸出を挙げている。「防衛産業輸出に対し、財政・金融・税制支援、産業協力などのパッケージ支援を大幅に強化し、防衛産業輸出のコントロールタワー構築を通じ、政府を挙げて総力支援を行う」と述べ、防衛産業の輸出拡大に強い意欲を示している。また、国防部傘下の防衛事業庁(日本の防衛装備庁に相当)はプレスリリース(2025年12月18日)で、「2030年200億ドル輸出の基盤構築」との目標を掲げた(輸出実績は2024年95億ドル、2025年154億ドル)。その実現に向けて「北米・中東・欧州などの重要地域を中心に国家別に防衛産業協力のフレームワークを強化する」とした上で、中東地域については「技術移転・共同生産・共同開発などの現地での協業を通じ、大型の戦力増強事業の受注を進め、コアのパートナー国としての地位を構築する」と述べている。さらに、産業通商部は「産業通商部業務報告」(2025年12月17日)の中で、防衛産業をバイオ産業、ロボット産業とともに「未来新産業」と位置付け、重点的に育成するとした上で、防衛産業の輸出拡大のための金融支援などを行うとしている。

ちなみに、2025年の韓国の武器類の輸出を国別に見ると、サウジアラビアは4位となっている。さらに、エジプトが2位、UAEが3位、トルコが5位に入るなど、韓国にとって中東・北アフリカ諸国が主要な武器類輸出先の1つになっている(表2参照)。ただし、現状ではポーランドへの集中度が高い。そのため、今後は中東・北アフリカ諸国などへのさらなる輸出拡大が課題だ。「ヘラルド経済」(2026年3月1日、電子版)は、「韓国の防衛産業企業が追加受注獲得のために輸出国の多様化を進めている。今までの輸出契約がポーランドに集中しているだけに、他の国からの受注拡大を模索し、売上高と営業利益を拡大する計画だ」と報じている。

表2:武器類(MTI 970)の国別輸出額
(2025年)(単位:100万ドル、%)注:MTIは韓国独自の品目コード。武器類(MTI 970)はおおよそHS93類に相当すると考えられる。
順位 国名 輸出額 構成比
1 ポーランド 3,213 65.7
2 エジプト 493 10.1
3 UAE 218 4.5
4 サウジアラビア 155 3.2
5 トルコ 154 3.1
6 米国 138 2.8
7 インドネシア 110 2.3
8 スウェーデン 64 1.3
9 英国 51 1.0
10 イラク 49 1.0
合計(その他を含む) 4,891 100.0

注:MTIは韓国独自の品目コード。武器類(MTI 970)はおおよそHS93類に相当すると考えられる。

出所:韓国貿易協会データベース

韓国のサウジアラビア向け直接投資は分野が多様化

次に、韓国のサウジアラビア向け直接投資を見ると、投資金額は2010年代に大幅に増加した後、減少し、2020年代は5,000万ドルから1億ドル程度で推移している(図2参照)。他方、新規法人数は2010年代末以降、増加している。ここから、2010年代は大型投資がサウジアラビア向け投資全体を牽引した半面、近年は相対的に少額の投資が増加しているといえる。

図2:韓国のサウジアラビア向け直接投資の推移
新規法人数(単位:社):2000年2、2001年2、2002年2、2003年1、2004年1、2005年4、2006年8、2007年19、2008年12、2009年21、2010年19、2011年33、2012年20、2013年12、2014年10、2015年10、2016年1、2017年9、2018年3、2019年4、2020年7、2021年4、2022年7、2023年13、2024年14、2025年1~9月31。投資額(単位:1,000ドル):2000年1,444、2001年305、2002年1,466、2003年172、2004年170、2005年402、2006年6,752、2007年5,497、2008年6,977、2009年49,423、2010年77,193、2011年115,137、2012年180,186、2013年260,016、2014年926,733、2015年1,380,096、2016年921,184、2017年410,801、2018年738,745、2019年170,931、2020年69,331、2021年51,182、2022年112,360、2023年49,738、2024年109,734、2025年1~9月47,708。

注1:2025年は同年1~9月の合計。
注2:本統計は、新しい統計値の発表時に、過去に発表した統計値も遡(さかのぼ)って更新される傾向にある点に留意が必要。
出所:韓国輸出入銀行データベースから作成(2026年3月4日アクセス)

韓国のサウジアラビア向け直接投資を業種別に見ると、2010年代は建設業が中心だった。ちなみに、直接投資額が最も多かった2015年は、建設業がサウジアラビア向け直接投資全体の98.9%と、ほぼ全てを占めた。建設業への投資は、石油精製・石油化学などの生産施設建設関連で、工事の受注にとどまらず、プロジェクトに出資するケースがあったことによるものだ。例えば、サムスン物産はプレスリリース(2013年12月2日)で、サウジアラビア・ラービグの天然ガス複合火力発電所建設プロジェクトの受注を発表した。同社はその中で、「当社はEPC(設計、調達、施工)の実施はもちろん、資本出資を通じて事業計画・開発・将来の管理運営まで行うことで、多様な収益モデルを確保する」と紹介している。

他方、近年のサウジアラビア向け直接投資は、投資先の分野が多様化しているのが特徴だ。2021年以降の累計投資金額を見ると、かつては圧倒的に多かった建設業の比率が低下した半面、製造業を中心にさまざまな産業で投資が実行されている(表3参照)。ちなみに、韓国政府系機関の大韓貿易投資振興公社(KOTRA)は、「韓国の投資は、かつては製造業一辺倒だったが、最近は製造業、金融、不動産など、多様な分野に広がっている」(同公社「2024サウジアラビア進出戦略」)と述べている。

表3:韓国の業種別サウジアラビア向け直接投資の推移(2021年1月~2025年9月)

(単位:社、100万ドル、%)
2021年~2024年注1:「-」は該当データが存在しないことを、「0.0」は実績があるものの、四捨五入の結果、「0.0」になることをそれぞれ示す。 注2:本統計は、新しい統計値の発表時に、過去に発表した統計値も遡(さかのぼ)って更新される傾向にある点に留意が必要。
項目 2021年 2022年 2023年 2024年
新規
法人数
投資
金額
新規
法人数
投資
金額
新規
法人数
投資
金額
新規
法人数
投資
金額
製造業 2 38.0 4 82.6 2 38.6 5 79.5
電気・ガス・蒸気・空気調節供給業 2 2.6 3 0.0
水道・下水・廃棄物処理・原料再生業 0.0 0.1 0.0
建設業 1 2.5 1 14.2 4 2.6 1 8.2
卸売り・小売り 1 10.0 1 0.1
運輸・倉庫業 1 0.0 1 3.5
宿泊・飲食店業 2.6 5.1
情報通信業 2 0.8
金融・保険業
不動産業 7.7 0 0.5 13.8
専門・科学・技術サービス業 1 0.3 1 0.4 4 5.3 1 3.8
事業施設管理・事業支援・賃貸サービス業
不明
合計 4 51.2 7 112.4 13 49.7 14 109.7
2025年1~9月、2021年1月~2025年9月累計注1:「-」は該当データが存在しないことを、「0.0」は実績があるものの、四捨五入の結果、「0.0」になることをそれぞれ示す。 注2:本統計は、新しい統計値の発表時に、過去に発表した統計値も遡(さかのぼ)って更新される傾向にある点に留意が必要。
項目 2025年1~9月 2021年1月~2025年9月累計
新規
法人数
投資
金額
新規法人数 投資金額
構成比 金額 構成比
製造業 6 22.9 19 27.5 261.7 70.6
電気・ガス・蒸気・空気調節供給業 0.0 5 7.2 2.6 0.7
水道・下水・廃棄物処理・原料再生業 0.0 0.1 0.0
建設業 9 6.5 16 23.2 34.0 9.2
卸売り・小売り 4 0.4 6 8.7 10.5 2.8
運輸・倉庫業 2 0.8 4 5.8 4.3 1.2
宿泊・飲食店業 7.8 2.1
情報通信業 3 3.9 5 7.2 4.7 1.3
金融・保険業 1 0.1 1 1.4 0.1 0.0
不動産業 0.8 22.7 6.1
専門・科学・技術サービス業 2 8.6 9 13.0 18.4 5.0
事業施設管理・事業支援・賃貸サービス業 2 0.2 2 2.9 0.2 0.1
不明 2 3.5 3.5 0.9
合計 31 47.7 69 100.0 370.7 100.0

注1:「-」は該当データが存在しないことを、「0.0」は実績があるものの、四捨五入の結果、「0.0」になることをそれぞれ示す。
注2:本統計は、新しい統計値の発表時に、過去に発表した統計値も遡(さかのぼ)って更新される傾向にある点に留意が必要。

出所:韓国輸出入銀行データベースから作成(2026年3月4日アクセス)

製造業、地域統括会社、防衛産業、IT関連などの韓国企業が相次ぎサウジアラビアに進出

次いで、韓国企業のサウジアラビア進出事例をみてみよう。韓国輸出入銀行のデータベースでは企業情報を捕捉できない。そこで、韓国メディアの情報や各社のプレスリリースを基に、2024年から2025年にかけての主な進出事例を整理した(表4参照)。

表4:最近の主な韓国企業のサウジアラビア進出事例(2024~2025年)注:直接投資以外の進出事例も含む。ただし、拠点構築を伴わないプラント建設プロジェクト受注案件は含まない。企業名は報道当時。
年月 企業名 概要
2024年
4月
タタ大宇商用車 サウジディーゼル(SDEC)、パーフェクトアラビア(PAF)と、サウジアラビアでのトラック生産に関する了解覚書(MOU)を締結。タタ大宇商用車の技術支援を基に、同社のトラックをSDECとPAFが協力して、組み立て生産する内容。
5月 LG化学 RO膜(海水を淡水化する際などに使用する素材)生産拠点を構築する内容の契約をAlkhorayef Groupと締結。サウジアラビア市場、中東市場の開拓を目指す。
7月 新永 自動車部品メーカーの同社は、キングアブドラ経済都市(KAEC)に工場を建設し、現地電気自動車(EV)ブランド「Ceer」に部品を供給する計画を発表。
10月 アンラボ セキュリティー・ソリューション・プロバイダの同社は、リヤドで現地企業のサイトとサイバーセキュリティーの合弁会社を設立。出資比率はアンラボ25%、サイト75%。サイバーセキュリティー需要の急増を見越し、サウジアラビアやその他中東・北アフリカ諸国での事業拡大を目指す。なお、サイトは、サウジアラビア政府系のパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)が全株式を所有。
11月 煕林綜合建築社事務所 サウジアラビアに現地法人を設立。エンジニアリング需要・工事管理需要が増加する同国市場の獲得を目指す。
ネイバー サウジアラビア政府系の不動産開発公社NHCと合弁会社設立のための了解覚書(MOU)を締結。合弁会社は、デジタルツインプラットフォームの運営・事業化などを行う予定。
2025年
1月
ネイバー リヤドに中東地域統括会社(RHQ)を設立。現地政府と緊密に協力しつつ事業機会を模索するとともに、中東地域のその他の国でソブリンAIなどの先端技術を活用した事業を拡大する考え。
3月 サムスン電子 「2024年事業報告書」(2025年3月)の中で、2024年にリヤドに中東・北アフリカ統括法人を新設したことに言及。
4月 農心 リヤド近隣でスマートファーム施設としての試験温室を着工。広さは約2,000平方メートル。将来、生産した農産品を現地パートナー企業の流通網経由で販売するほか、現地大型小売店や電子商取引で販売する予定。
5月 現代自動車 現地法人のHMMMEが年産5万台規模の電気自動車(EV)・ガソリン自動車工場を着工。HMMMEの出資比率は現代自動車30%、サウジアラビア政府系のパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)70%。2026年第4四半期(10~12月)の稼働を目指す。
7月 CJ ENM エンターテインメント企業の同社は、リヤドに現地法人を設立。音楽・テレビ番組・映画など多様な分野で韓国カルチャー事業を展開する計画。
8月 LIGネクスワン リヤド所在の事務所を拡大移転。それに合わせ、現地拠点の機能と役割を強化する方針。サウジアラビアをはじめとする中東地域での事業拡大を狙う。
リベリオンズ AI半導体スタートアップの同社は、リヤドに100%出資の現地法人を設立。サウジアラムコのAIデータセンターへのNPU(ニューラルプロセッシングユニット)供給などを目指す。
9月 ネクセンタイヤ サウジアラビアに現地法人を設立する方針を発表。同法人設立により、カタール、バーレーン、イエメンなどの周辺国も含めた供給体制を構築し、販売網を拡大する。
ハンファエアロスペースなど リヤドに中東・北アフリカ地域統括会社(RHQ)を設立。サウジアラビアの「ビジョン2030」に関連し、同国の軍の現代化事業・現地化による産業エコシステムの形成などの役割を担う。また、ハンファグループの防衛産業3社(ハンファエアロスペース、ハンファシステム、ハンファオーシャン)は陸海空・宇宙をまたぐ統合ソリューションを提供し、中東・北アフリカ地域の市場開拓を目指す。
10月 LG電子 2006年にシェーカーグループと設立した合弁会社において、空調システムの中核設備のエアハンドリングユニットの量産を開始。現地生産により、サウジアラビア政府の発注事業に参画できる資格を確保。

注:直接投資以外の進出事例も含む。ただし、拠点構築を伴わないプラント建設プロジェクト受注案件は含まない。企業名は報道当時。

出所:韓国メディア報道、各社プレスリリースを基に作成

韓国企業のサウジアラビア進出事例に基づくと、近年の主な進出分野として、(1)製造業、(2)IT関連、(3)防衛産業、(4)地域統括会社が挙げられよう。

(1)製造業

前掲表3の2021年以降の直接投資の累計額を見ると、製造業は全体の7割を占めており、かつての建設業に代わって投資の主役に躍り出ている。その代表事例の1つが現代自動車の完成車工場建設だ。

現代自動車は2023年10月、サウジアラビア政府系のパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)と完成車工場設立の合弁契約に調印した。新工場は2025年5月に着工、2026年中の稼働を予定している。合弁事業の狙いについて、現代自動車は、約80万台(2024年の販売台数は乗用車70万5,527台、商用車9万9,507台)のサウジアラビア市場や、周辺の中東諸国市場での事業基盤強化を目指している。他方、サウジアラビア政府は、自国を世界的な自動車生産国に育成し、モビリティーのエコシステムを発展させる考えだ。韓国メディアは、特に、同国のムハンマド・ビン・サルマン皇太子兼首相が国内でのEV生産に強い関心を示していると報じている。現代自動車は着工時のプレスリリース(2025年5月15日)で、「合弁会社のHMMMEは、サウジアラビア政府の『サウジ・ビジョン2030』に対応し、モビリティー技術開発の実力を備えた人材育成などに寄与していく」「今回の協力事業は、同ビジョンの主役のPIFが自動車産業強化を目標に行っている主力事業の1つ」と説明している。

また、現地法人設立が2024年以前だったために表4に記載していないが、HD現代重工業はインターナショナル・マリタイム・インダストリーズ(IMI)を合弁で設立し、サウジアラビア初の大型造船所の建設を進めている。合弁会社の出資比率は、サウジアラムコ40.1%、バーリ(国営海運会社)20.0%、HD韓国造船海洋(HD現代グループの持ち株会社で、傘下にHD現代重工業などを有する)20.0%、ラムプレル(UAEの掘削プラットフォーム建設企業)19.9%だ。韓国メディアの報道によると同造船所は2026年に稼働予定で、稼働すると中東・北アフリカ地域で最大規模になる。なお、同造船所では商船建造だけでなく、艦船建造も視野に入れているようだ。「聯合ニュース」(2026年2月8日)は、「HD現代重工業は、現地生産を要請するサウジアラビア政府の政策に合わせる方針」「護衛艦受注時には、現地建造比率を段階的に高めていく方向で検討中」と報じている。

(2)IT関連

IT関連企業のサウジアラビア進出も活発だ。表4ではアンラボ、ネイバー、リベリオンといった企業が該当する。

IT関連企業のサウジアラビア進出の大きな理由の1つとして、サウジアラビア政府の産業政策が挙げられる。経済専門のオンラインメディア「ビジネスポスト」(2024年9月25日)は、「(サウジアラビア政府は)『サウジ・ビジョン2030』発表以降、AIをはじめとしたデジタル分野に多大な資金を投入している。IT企業誘致を巡って、米国・中国のビッグテック企業に従属しないための代案として、韓国IT企業が浮上している」「(韓国IT企業にとって)競争が激化する前に現地で確固たる市場地位を築くことが重要だ」と報じている。

(3)防衛産業

前述のとおり、韓国にとってサウジアラビアは武器類の主要輸出先の1つで、サウジアラビア向け武器類輸出も増加傾向にある。韓国政府・企業は防衛産業の輸出拡大に注力しているが、その主要ターゲットの1つがサウジアラビアだ。実際、韓国の防衛企業はサウジアラビアへの進出を進めている。表4では、LIGディフェンス&エアロスペース(2026年3月31日にLIGネクスワンから社名変更)やハンファエアロスペースといった大手防衛企業の事例が該当する。

例えば、LIGディフェンス&エアロスペースはリヤド事務所の拡大・移転に関するプレスリリース(2025年8月14日)で、「当社はサウジアラビアなど中東の各国で事業領域を着実に拡大している。輸出専門の研究組織などを整え、現地の状況に合わせたソリューションを提供している」「中東では、長距離地対空誘導兵器などの先端製品に対する関心が高い。当社は、中東市場で競争力をさらに強化し、成長の基盤確保に総力を尽くす方針だ」と述べている。同社は中東地域で受注実績を積み上げているようだ。ちなみに、「ヘラルド経済新聞」(2025年8月20日)は、「LIGネクスワンは2022年から2024年にかけ、UAE、サウジアラビア、イラクと、兆ウォン(約1,000億円単位、1ウォン=約0.1円)単位の中距離地対空誘導兵器の供給契約を相次いで締結している」と紹介している。

(4)地域統括会社(RHQ)

サウジアラビア政府は2024年1月、地域統括会社(RHQ)を優遇する政府調達制度を導入した(2025年8月7日付地域・分析レポート「地域統括会社誘致が成長局面に突入」参照)。これを機に、RHQライセンスを取得する外国企業が着実に増加している。この流れは韓国企業も同様だ。表4でも、ネイバー、ハンファエアロスペースの事例が該当する。


注:
「武器類」(MTI 970)に該当するHSコードは公表されていない。しかし、2025年のサウジアラビア向け「武器類」輸出額(1億5,518万ドル)は、HS93類(武器、銃砲弾、これらの部分品・附属品)の輸出額(1億5,517万ドル)に極めて近いことから、「武器類」はHS93類にほぼ相当するものと考えられる。
ところで、「武器類(MTI 970)」の輸出総額は、2024年40億5,167万ドル、2025年48億9,064万ドルだった。他方、韓国政府は「K-防衛産業」という用語をしばしば使用しているが、「K-防衛産業」輸出額は2024年95億ドル(2025年12月26日付の韓国政府発表資料)、2025年154億ドル(2026年4月8日付のKOTRA資料)だったことから、「武器類(MTI 970)」輸出は「K-防衛産業」輸出全体の3~4割を占めるものと考えられる。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ調査部中国北アジア課
百本 和弘(もももと かずひろ)
ジェトロ・ソウル事務所次長、海外調査部主査などを経て、2023年3月末に定年退職、4月から非常勤嘱託員として、韓国経済・通商政策・企業動向などをウォッチ。