高度外国人材と創出する日本企業のイノベーティブな未来出雲に新風、インド人女性社員の挑戦
島根の事例からみる(3)
2026年9月7日
林産業(本社:島根県出雲市)は、水処理施設を中心に各種プラントの設計施工を担う企業だ。従業員数は32人で、地元に密着し、地域のインフラを支えてきた。現在、同社ではインド出身の女性社員ディシャ・プラブ氏が勤務している。代表取締役社長の林和弘氏とディシャ氏に話を聞いた(取材日:2026年4月17日、7月3日)。
きっかけとなったフィリピン進出検討と予期せぬ出会い
- 質問:
- ディシャ氏の採用に至った経緯は。
- 答え:
- (林氏)とある日系製造業のフィリピンでの生産拡大に伴い、当社の取引先企業からフィリピンへの拠点設立の誘いがあったことがきっかけだ。当初は既存の日本人社員をトレーニングした後、現地責任者として派遣するプランも検討したが、フィリピン人エンジニアを採用して育成した方が近道であるとの結論に至った。そこで、フィリピン人エンジニアの採用を目指し、ジェトロ主催の合同企業説明会に参加した。同説明会ではフィリピン人材の応募が少なく採用には至らなかったが、その中で応募してきたのがインド出身のディシャだ。文系出身で、フィリピン出身でもなかったが、英語が堪能であり、日本語能力も一定の水準に達していたこと、そして何よりも、面接でディシャと話した印象から「この人であれば当社の発展に貢献してくれる」と直感し、採用を決めた。
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インタビューを受ける林社長(右)とディシャ氏(ジェトロ撮影)
日本は地方でも生活インフラが充実
- 質問:
- ディシャ氏のバックグラウンドについて。
- 答え:
- (ディシャ氏)インドのマハーラーシュトラ州プネ出身。父が柔道の選手であったことから、日本の漫画やアニメに興味を持った。日本文化への関心を深め、進学したティラク・マハーラーシュトラ大学では日本語を専攻した。 大学卒業後、大手日系企業の現地拠点に就職し、日本語能力を生かして日本本社と現地拠点をつなぐ海外業務サポートに従事していた。しかし、元々日本文化への関心が高かったことから、実際に日本で働き、日本人と同じ生活を経験したいと考え、日本での就労を決意した。
- 質問:
- 林産業を選んだ決め手は。
- 答え:
- (ディシャ氏)面接の際、林社長をはじめ社員の方が親しみやすいと感じた点に加え、自分の趣味である絵を描くことにも関心を持ってもらえたことが印象的であった。また、担当予定の業務がチャレンジングであり、スキルアップにつながると感じたことも大きな決め手の1つだ。
- 質問:
- 現在はどのような業務を担っているか。また、やりがいは何か。
- 答え:
- (ディシャ氏)フィリピン進出に向けて、現地の法制度の調査など情報収集業務を担当している。そのほか、広報や社内のAI(人工知能)活用推進など、経営企画に関わる業務にも従事している。フィリピン進出に関する業務は初めてのことが多く、日々新しい知識を習得できる点にやりがいを感じている。
- 質問:
- 出雲での生活はどうか。
- 答え:
- (ディシャ氏)来日前は地方での生活に不安もあったが、インドの地方とは全く異なり、実際には地方であってもインフラが充実しており、不便は感じていない。自身は絵を描いたり菓子を作ったりといったインドアの趣味が多いため、娯楽施設や同郷の友人が少ないことにも不満はない。また、地域のボランティアが主催する日本語教室に定期的に通っており、そこで知り合った方々と交流を深めている。その出会いをきっかけに、野菜を分けてもらうなど地域とのつながりも生まれている。
女性社員同士で相談できる環境を整備
- 質問:
- 会社として、受け入れに際して工夫した点は。
- 答え:
- (林氏)ディシャ氏が女性であることを踏まえ、女性社員同士で相談できる環境を整備した点だ。内定から入社までの期間にもオンラインで女性社員との交流機会を設けた。また、入社後は私の直轄ポジションに配置し、業務面で密に関わるとともに、東京観光に連れて行くなど、業務以外の面でもケアを行っている。
- 質問:
- ディシャ氏の入社は会社にどのような効果をもたらしているか。
- 答え:
- (林氏)業務面では、英語力を生かしてフィリピンの法制度を原文で理解してもらえるため、大きな助けとなっている。また、社内では日本人社員が自主的にサポートする場面が増加し、職場の雰囲気の向上にもつながっていると感じる。
- 質問:
- ディシャ氏は今後どのような仕事にトライしたいか。
- 答え:
- (ディシャ氏)まだ経験したことのない仕事は自らの成長につながるため、何でも意欲的に取り組んでいきたい、というのが根本的な思いだ。現在、当社ではさらなるインド人材の採用を検討しており、その担当を任せてもらっている。採用業務も初めての経験だが、同じインド出身者として、自らの経験と人脈を生かして前向きに取り組んでいきたい。
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同社の看板の前に立つ両氏(ジェトロ撮影)
- 執筆者紹介
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ジェトロ企画部企画課
薄木 裕也(うすき ゆうや) - 2020年、ジェトロ入構。市場開拓・展示事業部海外市場開拓課、ジェトロ・ダッカ事務所(実務研修生)を経て、2023年から約3年間ジェトロ島根で勤務。2026年7月から現職。





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