高度外国人材と創出する日本企業のイノベーティブな未来中山間地域から有機産品を世界へ
島根の事例からみる(5)
2026年9月7日
中国地方最大の河川である江の川沿いの山間に位置する、島根県江津市桜江町。同町に所在するしまね有機ファームは、有機原料の販売、健康食品のOEM企画・販売などを手掛ける。同じグループ内には主に農作物の生産・加工を行う「有機の美郷」と「桜江町桑茶生産組合」があり、しまね有機ファームが総合監理というかたちでグループ内での商社機能を担う。同社では、近年、海外出身の海外営業人材が活躍している。古野利路代表取締役社長と海外営業担当で米国出身のシャーマン・サムエル氏に話を聞いた(取材日:2026年6月23日)。
働いてくれる人材は国籍を問わず貴重、一人として取りこぼしたくない
- 質問:
- 高度外国人材の採用に関する背景、基本的な考え方は。
- 答え:
- (古野氏)江津市桜江町という山間に位置していることもあり、とにかく働いてくれる人材は非常に貴重だ。そのため、日本人であろうが外国人であろうが、当社で働くことに興味を持ってくれる方を一人として取りこぼしたくない、出会いを大切にしたいというのが根底にある考え方だ。そのような考え方を軸に、当社ではコロナ前から高度外国人材の採用を行ってきた。例えば、最初に入社したのは島根大学の博士課程を卒業したバングラデシュ出身の人材だった。専門性を生かして、当社グループの農業部門において、単収(単位面積当たりの収量)の増加を目的とした研究に従事してもらっていた。
-

インタビューを受ける古野社長(ジェトロ撮影)
来日のきっかけは妻の仕事、海外営業や有機認証関連業務で活躍
- 質問:
- サムエル氏が日本に移住し、しまね有機ファームに入社したきっかけは。
- 答え:
- (サムエル氏)米国出身で、元々米国の大手物流会社で勤務していたが、同じく米国人の妻が島根県川本町(桜江町の隣町)でALT(外国語指導助手)として勤務を始めたことに伴い、妻に帯同するかたちで来日。川本町内の英語教室で出会った生徒の方からしまね有機ファームの紹介を受けたことをきっかけに、入社を決意した。
- 質問:
- 入社当初は日本語もあまりできなかったとのことだが、どのように上達したのか。
- 答え:
- (サムエル氏)当初は日本語学習アプリで勉強していたが、より自然な日本語を身につけたいという思いから、途中でアプリ学習をやめ、日本人が相手のオンラインレッスンを週1回程度受けるようになり、現在に至るまで継続している。またOJTで身につけている部分も大きい。入社した当初は先輩にロシア人の社員がいたため、仕事で使う言語は日本語2対英語8程度の割合だった。その先輩社員が退職した後は、業務で使用するのは完全に日本語のみとなったため、その環境が自分の日本語レベルを大きく向上させたと考えている。
- 質問:
- 現在の業務内容とやりがいは。
- 答え:
- (サムエル氏)現在は海外営業を中心に、国内向けの営業も一部担当する。また、海外向けの有機認証関係の申請業務にも従事する。自身の日本語能力はまだまだ不十分であると感じているため、展示会や商談会に参加した際などに、日本語で顧客と意思疎通が図れた際に喜びややりがいを感じる。
- 質問:
- 社長から見て、サムエル氏はどのように会社に貢献しているか。
- 答え:
- (古野氏)私自身もある程度英語でのコミュニケーションは行えるものの、サムエルは英語ネイティブであるという点で、海外顧客とのコミュニケーションの面で安心感が大きい。また、有機原料やそれを使った商品を輸出する上では、海外向けの有機認証関連の申請があるが、こうした非常に手間がかかり、他社がやりたがらない業務について、いかに労を惜しまず確実に行うかがポイントとなる。この点においても、英文での難易度の高い申請業務に抵抗感のないサムエルの存在は貴重だ。また、当社は国内大手メーカーからのOEMの引き合いも多いが、近年ではそういった国内大手メーカーの開発担当者も外国人材であることが多く、当社にも外国人材がいることでむしろスムーズに仕事ができるケースもある。
豊かな自然と、家族とゆとりをもって過ごせる環境が魅力
- 質問:
- 桜江町という環境で働くことについて、どのように考えているか。
- 答え:
- (サムエル氏)大型スーパーがないなど、買い物面でやや不便さがあることに加え、妻の出産の際には、病院への通院にあたり苦労する場面もあった。一方で、都会に比べて自然が豊かで景色が美しく、人も優しいため、生活環境として大変気に入っている。また、労働環境についても、米国時代の前職と比較して、大切な家族との時間を優先できるため、満足している。
- 質問:
- 会社として高度外国人材に関する今後のプランは。
- 答え:
- (古野氏)まずはサムエルの下で働く人材を1人採用したいと考えている。現在、当社の輸出額は年間1億円程度まで成長してきたが、将来的には現在の2倍程度の規模まで拡大を目指していきたい。
-

東京での輸出向け展示会のブースで対応するサムエル氏(ジェトロ撮影)
- 執筆者紹介
-
ジェトロ企画部企画課
薄木 裕也(うすき ゆうや) - 2020年、ジェトロ入構。市場開拓・展示事業部海外市場開拓課、ジェトロ・ダッカ事務所(実務研修生)を経て、2023年から約3年間ジェトロ島根で勤務。2026年7月から現職。





閉じる





