高度外国人材と創出する日本企業のイノベーティブな未来空調設備会社、人材起点でのベトナム進出
島根の事例からみる(2)

2026年9月7日

山陰設備工業(本社:島根県出雲市)は、空調設備の設計・施工を担う企業であり、島根県内における外国人材活躍のフロントランナーとして、セミナー、講演などにも積極的に取り組んできた。2024年にはベトナム・ホーチミン市に現地法人を設立し、2025年7月に工場の稼働を開始した。外国人材採用の取り組みや今後の展望について、代表取締役社長の原真士氏に話を聞いた(取材日:2026年6月15日)。

きっかけは採用難

質問:
高度外国人材採用の経緯は。
答え:
当社では、2017年から技能実習生としてベトナム人材の採用を行っていた。そうした中、設計や施工管理といった大卒レベルの専門人材が求められる職種でも、国内人材の採用難が続いていた。当社のような地方の中小企業が日本人の大卒人材を採用することは容易ではない一方、海外に目を向ければ、日本での就業に関心の高い現地のトップレベル人材を確保できる可能性があると考え、2023年に人材紹介会社を通じてベトナム出身の高度外国人材2人を採用した。

清掃活動への参加で地域との共生を目指す

質問:
採用後に工夫した点や反省点は。
答え:
採用した2人のうち、1人は主に設計を、もう1人は施工管理を中心に担当してもらった。設計を担当した1人は、残念ながらすでに退社してしまったが、もう1人は今では会社にとって必要不可欠な人材に成長している。高度人材に限らず技能実習生も同様だが、地域の清掃活動などに参加してもらったことは、ベトナム人材の受け入れにあたって工夫したことの1つだ。高齢化により、こうした活動に参加する若者が少ない中、当社のベトナム人社員が貴重な戦力となり、地域住民からの理解促進にもつながったと感じている。
一方で反省点として、採用時に寮を用意した際、ルームシェア形式としたことが挙げられる。初めての日本生活で孤独を感じないよう配慮したつもりだったが、結果としてストレスの要因となってしまった可能性がある。やはりプライベート空間の確保は重要であり、個室対応とすべきだったと考えている。

原真士社長(右)と原真千絵総務部長(ジェトロ撮影)

帰国後の技能実習生の活躍の場をつくる

質問:
2024年にはベトナムに現地法人を設立したとのこと、その狙いは。
答え:
現地法人設立のきっかけは、技能実習生として当社で働いた人材が在留期間満了後に帰国すると、日本で習得した技術を十分に生かせなくなってしまうことに課題を感じていたためだ。現地法人で帰国後の人材を雇用することで、習得した技術を継続的に生かしてもらえると考えた。
また、ベトナム法人と日本本社の間で人材を循環させることで、採用・育成の面でも好循環が生まれることを期待した。
質問:
ベトナム法人の状況は。
答え:
設立当初は、期待していた日系企業からの案件受注が思うように進まず苦戦したが、その後発想を転換し、現地営業人材のネットワークを生かしたローカル向け営業に切り替えたことで、現地案件の受注が増え始めた。
価格は現地企業の水準に合わせながらも、日系企業としての高品質なブランド力を強みとして、着実に事業を拡大している。
なお、現時点ではベトナム法人の社員は現地採用のメンバーが中心であり、当初想定していた「技能実習生が帰国後に現地法人で働く」というケースはまだ実現していないが、今後そのような展開が生まれることを期待している。

人材起点で広がるグローバル戦略

質問:
今後の展望について。
答え:
現在の当社の売り上げは日本・ベトナム合わせて5億円程度だが、5年後に倍の10億円、10年後にさらに10倍の100億円規模まで成長させるという野心的な目標を掲げている。その実現のためには、社長である自分1人で事業を全てマネジメントすることには限界があるため、経営マインドをもった人材を複数人育成する必要がある。そのためには、国籍を問わず、優秀な高度外国人材を採用することが、当社のような地方の中小企業においては必須であるというのが私の考えだ。ベトナム以外の海外への展開も検討しているが、進出国ありきでその国の人材を採用するのではなく、まずは、優秀だと思う人材を国籍にとらわれずに採用し、その人材のスキルや意向に応じて、出身国へのビジネス展開を模索するという考え方で進めていく方針だ。

ベトナム現地法人の社員と原社長(同社提供)
執筆者紹介
ジェトロ企画部企画課
薄木 裕也(うすき ゆうや)
2020年、ジェトロ入構。市場開拓・展示事業部海外市場開拓課、ジェトロ・ダッカ事務所(実務研修生)を経て、2023年から約3年間ジェトロ島根で勤務。2026年7月から現職。

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