高度外国人材と創出する日本企業のイノベーティブな未来データで読み解く高度外国人材の雇用状況
島根の事例からみる(1)
2026年9月7日
近年、日本における外国人材の受け入れは拡大を続けており、労働力不足への対応にとどまらず、企業の競争力強化やイノベーション創出の観点からもその重要性が高まっている。とりわけ、「技術・人文知識・国際業務」(以下、「技人国」)などの在留資格に代表される高度外国人材は、専門的知識や国際的な視点を有する人材として、主に都市部を中心に活躍の場を広げてきた。
一方で、人口減少や生産年齢人口の縮小が先行する地方においても、高度外国人材の活躍に対する期待は年々高まっている。本稿では、地方の1事例として島根県に着目し、その実態を明らかにする。
本稿では、全国および島根県の統計データを基に、外国人材および高度外国人材の雇用状況について概観し、地方における特徴と課題を整理する。なお、本稿ではデータの制約上、「高度外国人材」をその中核を成す技人国の在留資格保有者に限定して分析する。
高度外国人材は増加も、全外国人材に占める比率は全国水準を下回る
図1は、全国および島根県における外国人労働者数(高度外国人材に限定しない外国人労働者数)の推移ならびに、技人国の労働者数の推移を示したものだ。外国人労働者総数について、全国に占める島根県の割合は約0.2%と小さいものの、その増加の軌跡は全国とほぼ同様の傾向を示しており、島根においても外国人材の受け入れが着実に進展していることが確認できる。また、他の都道府県の動向をみても、都市圏と地方で増加傾向に大きな差はなく、外国人材の活用は一部地域に限った動きではなく、全国的な動向として広がっているといえる。さらに、技人国労働者数についても全国と同様の増加傾向を示しており、島根県においても高度外国人材の受け入れが着実に進んでいることが分かる。2023年から2024年の増加率が、全国が12.3%に対し、島根は23.2%となるなど、近年では増加幅が全国を上回る年もあり、高度外国人材に対する需要が島根においても高まっていることが読み取れる。
図1:全国および島根県における外国人労働者総数および技人国労働者数の推移
(2019~2025年)
注:届出対象は事業主に雇用される外国人労働者で、特別永住者および在留資格「外交」「公用」の者を含まない。数値は事業主から提出された届出件数であり、就労する外国人労働者全数とは必ずしも一致しない。
出所:厚生労働省 「外国人雇用状況」の届出状況まとめからジェトロ作成
一方で、図2に示すとおり、全外国人労働者数に占める技人国の割合(以下、技人国比率)でみると、島根県は微増傾向ではあるものの、全国平均を大きく下回る水準で推移している。直近では全国が約18%程度であるのに対し、島根県は6%台にとどまっている。
全外国人労働者に占める技人国の割合
注:届出対象は事業主に雇用される外国人労働者で、特別永住者および在留資格「外交」「公用」の者を含まない。数値は事業主から提出された届出件数であり、就労する外国人労働者全数とは必ずしも一致しない。
出所:厚生労働省 「外国人雇用状況」の届出状況まとめからジェトロ作成
この傾向は、島根県に限った話ではなく、図3で示すとおり、一般に東京や大阪などの大都市圏と比較して、地方では技人国比率が低く、技能実習の比率が高い傾向がある。こうした差異の背景としては、産業構造の違いが考えられる。一般に、東京や大阪といった都市部では、本社機能やサービス業、情報通信業などの集積により、専門・技術職など、いわゆるホワイトカラー業務の比重が高い。一方、地方では製造業、建設業、農業、介護といった現場仕事中心の産業の割合が高い。こうした産業構造の違いが、在留資格別の構成にも影響している可能性がある。その結果、技能実習や特定技能といった在留資格の外国人材が多くを占め、高度外国人材の比率が大都市圏と比べて相対的に低くなる傾向があると考えられる。
注:届出対象は事業主に雇用される外国人労働者で、特別永住者および在留資格「外交」「公用」の者を含まない。数値は事業主から提出された届出件数であり、就労する外国人労働者全数とは必ずしも一致しない。
出所:厚生労働省 「外国人雇用状況」の届出状況まとめから、Start Pointにてジェトロ作成
元留学生の流入が少ない島根の受け入れ構造
図4は日本人・外国人を含む全就業者数に占める管理的職業従事者、専門的技術的職業従事者、事務従事者(≒ホワイトカラー職種従事者)の割合(以下、ホワイトカラー比率)と、技人国比率の関係を都道府県ごとにみたものだ。実際、その関係には正の相関があることが分かる。もっとも、その中でも一定のばらつきはあり、関西地域や北海道、山梨、新潟、岡山、沖縄などでは、同程度のホワイトカラー比率を有する都道府県と比較して、技人国比率が高い傾向がある。これには、産業的な特徴などさまざまな要因が考えられるが、大学に在籍する留学生の集積や流動性が、技人国比率に影響している可能性も考えられる。一方の島根県では、県内で留学生の在籍する大学は島根大学と島根県立大学の2校に限定される。加えて、そのうち一定の規模の留学生数のいる島根大学への聞き取りによると、留学生の卒業後の県内就職率は限定的だという。
注:全就業者数に占める管理的職業従事者、専門的技術的職業従事者、事務従事者の合計の比率をホワイトカラー比率とした。
出所:令和2年国勢調査 就業状態等基本集計および厚生労働省 「外国人雇用状況」の届出状況まとめからジェトロ作成
図5に示すとおり、技人国の国籍別の割合をみると、島根県はベトナム人の比率が全国と比較して突出して高いことが分かる。県内企業や人材紹介会社への聞き取りによると、これらのベトナム人材は、日本国内の大学を卒業した元留学生ではなく、ベトナム現地の大学を卒業後、人材紹介会社経由などで島根県内に就職したケースが多い。こういった点も地方における高度外国人材の就労状況に関する特徴の1つといえる。
図5:全国と島根県における技人国の国籍別割合(2025年)
注:届出対象は事業主に雇用される外国人労働者で、特別永住者および在留資格「外交」「公用」の者を含まない。数値は事業主から提出された届出件数であり、就労する外国人労働者全数とは必ずしも一致しない。
出所:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめからジェトロ作成
需要拡大の背景には人手不足と業務高度化
前述のとおり、図1および図2に示されるように、島根県においても技人国人材は絶対数・割合のいずれにおいても増加傾向にあることは事実だ。この背景としては、主に2つの要因が考えられる。第1に、製造業や建設業などにおいて設計・開発やDXなどの需要が高まり、業務が高度化しているとともに、輸出やインバウンドなど、国際ビジネスを志向する企業も増加しているという「需要の増加」だ。第2に、現場労働者に限らず、専門職分野においても人手不足が深刻化しているという「人材供給の不足」だ。
ここであらためて、島根の人材不足の状況を確認すべく、図6に全国および島根県の有効求人倍率の推移を示す。この有効求人倍率は全職種が対象であるため、技人国が対象となる職種に絞ったものではないが、全体像をつかむ上では参考になる。これによると、全国、島根県とも2015年以降に1を上回る水準で推移しており、とりわけ島根県では全国平均を上回る高水準が続いている。これは、地域における人手不足の深刻さを示すものであり、高度外国人材を含む外国人材への需要拡大の背景の1つになっていると考えられる。
注:届出対象は事業主に雇用される外国人労働者で、特別永住者および在留資格「外交」「公用」の者を含まない。数値は事業主から提出された届出件数であり、就労する外国人労働者全数とは必ずしも一致しない。
出所:厚生労働省「職業安定業務統計」からジェトロ作成
以上のように、島根県における外国人材の受け入れは量的には全国と同様に拡大している一方で、高度外国人材の比率については依然として都市部との乖離がみられる。しかし、島根県においても技人国人材の数・比率は増加傾向にあり、高度外国人材の受け入れは徐々に拡大していることが確認された。その背景としては、産業構造の違いに加え、留学生の集積や人材供給構造の違いなどが影響している可能性が示唆された。
こうした状況の中で、島根県の企業において、高度外国人材はどのように活躍しているのか。以降は、具体的な企業事例を通じて、その実態と課題、さらには今後の可能性について検討していく。
- 執筆者紹介
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ジェトロ企画部企画課
薄木 裕也(うすき ゆうや) - 2020年、ジェトロ入構。市場開拓・展示事業部海外市場開拓課、ジェトロ・ダッカ事務所(実務研修生)を経て、2023年から約3年間ジェトロ島根で勤務。2026年7月から現職。





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