高度外国人材と創出する日本企業のイノベーティブな未来技術者8名一括採用、受入体制整備に尽力
島根の事例からみる(4)
2026年9月7日
島根電工(本社:島根県松江市)は電気工事業を主力とし、グループ全体で700名弱の従業員を抱える島根県内でも有数の建設企業だ。同社では、いずれの在留資格においてもこれまで外国人材の採用実績がなかったが、2025年5月にベトナム出身の高度外国人材を一度に8人採用し、県内外でも注目を集めている。
同社の高度外国人材採用の背景や、社内制度の構築方法などについて、国際人財開発室長の村上祐司氏と前室長を務め現参与の井上祐一氏にインタビューした内容を基に紹介する(取材日:2026年6月15日)。
本社全社員および配属先社員向け研修で社内理解を醸成、メンター役も活躍
- 質問:
- 昨年度、8人のベトナム人技術者の採用に至った経緯は。
- 答え:
- まず、当社ではこれまで新卒採用は地元の同業他社と比べて順調だったと認識していたが、それでも、理系人材に関しては年々採用難易度が上がっていることを肌で感じていた。それに加えて、「日本人若手社員の意識改革と職場活性化」の課題もあった。そこで、採用活動を通じ、自ら設定した目標をやり抜く力や勤勉さを備えた候補者が多いと感じたベトナムの高度外国人材を組織に迎え入れることで、彼らの存在が刺激となり、日本人若手社員の成長と組織全体の自律的な文化や風土形成につながることを期待し、会社方針として高度外国人材の採用を進めた。
- この方針の下、2023年に国際人財開発室を立ち上げ、人材紹介会社を通じて採用活動を進めた。実は、当初は4人採用の予定であったが、想定以上の応募があったことなどさまざまな要因が重なり、最終的に8人を一括採用するに至った。
- 質問:
- 外国人社員の受け入れに当たり、工夫した点は。
- 答え:
- 工夫をしたことは大きく分けて2つある。1つ目は受け入れ側への研修、2つ目はメンター役の採用だ。まず、会社として初の外国人材を受け入れる体制をマインド面も含めて整えることを目的に、彼らの入社する約7カ月前から、社長を含む本社の全社員および配属先責任者を対象に、全13回の講座を開催した。この講座ではベトナム人講師から同国の歴史や文化、簡単なベトナム語を学んだほか、日本人講師による『やさしい日本語』の研修も実施し、入社直前には復習研修も行った。
- また、8人に入社後1日でも早く日本の日常生活や会社生活全般に慣れてもらうためには、言葉の違いが生活や業務への適応における課題となる。そこで、彼らのメンター役として、同じく高度外国人材のベトナム人女性社員チャン・ティ・ゴック・フエさんを採用した。フエさんは山口県内の携帯ショップで直近まで勤務していたため日本語も堪能だ。持ち前の明るさを生かし、日本人社員とベトナム人社員の橋渡し役として、また、当社における外国人材活躍推進の取り組みの顔として貢献している。
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ベトナム人社員のメンターを務めるチャン・ティ・ゴック・フエ氏(ジェトロ撮影)
ベトナム人材向けに特化した研修を整備、島根になじんでもらうことを最優先に
- 質問:
- 入社後のベトナム人社員向けの研修制度はどのように組み立てたのか。
- 答え:
- 研修プログラムは、従来の日本人社員向けの座学中心のものとは大きく異なり、ベトナム人社員専用に新たに設計した。
- 当初は半年から1年程度の本社研修後に配属先で勤務する考えであったが、配属先の責任者の意見を踏まえ、研修期間を2カ月に短縮し、当社グループでの業務ならびに島根での生活への適応を重視した内容とした。
- 具体的には、行政手続きの説明や配属予定先の見学、地域理解の促進に加え、県内でベトナム人材を受け入れている企業との交流会などを実施した。加えて、島根電工グループの経営理念や、そこで勤務する社員に求める行動も時間をかけて学んでもらった。
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日本語教育については、公益財団法人しまね国際センター
に講師派遣を依頼し、一般日本語(90分×20回)と電気工事用語などの専門日本語(90分×20回)を組み込んでいる。
- なお、2026年度に新たに採用した2人に対しては、前年度の経験を踏まえ、コンピューター支援設計(CAD)研修など専門性向上のプログラムを強化した。特に、前年入社したベトナム人材のうちの1人が講師となり、ベトナム語で指導を行っている点も特徴だ。
既存制度を応用し、公平性に配慮した生活支援を整備
- 質問:
- 福利厚生制度はどのように整備したのか。
- 答え:
- 国籍にかかわらず公平な制度設計とするため、既存制度をベースにした。既存制度で対応できない支援については、労働組合との協議・合意を経て新たに制度化した。例えば、自動車や自動二輪の免許がない彼らには、坂の上に位置している配属先の事業所への通勤手段として、電動アシスト自転車を貸与することで通勤の負担軽減を図り、その制度を8人全員に適用した。また、普通運転免許の早期取得に向け、元々3年間無事故の社員に対して中型免許取得費用を補助していたが、この制度を応用し、ベトナム人社員向けに普通運転免許取得費用を無利子で貸し付け、1年間で返済する制度を整備した。
- また、単身赴任、あるいは採用地や実家から離れて生活する社員を対象としている帰省交通費補助制度を応用し、母国に生活基盤を持つ外国人社員を対象に、年1回の帰国費用補助と3日間の特別休暇を付与している。
ベトナムからの継続的な採用に向けた仕組みづくりを目指す
- 質問:
- 現在の課題と今後の展望は。
- 答え:
- 配属先によって日本語を使う機会や職場環境が異なることもあり、入社から約1年を経て、日本語の習熟度に差がみられることが課題だ。例えば、日本人の友人と積極的に交流している社員や、毎週金曜日の朝礼でスピーチする機会を設けている事業所に配属された社員は上達が早い傾向にある。将来的には1級電気工事施工管理技士などの資格取得も見据えているが、そのためには専門知識に加えて日本語力も必須となる。あらためて会社としても、日本語教育プログラムを見直し、社員全体の日本語力向上を図っていきたい。
- また、将来的にはベトナム人材を継続的に採用するための仕組みづくりも進める必要がある。その一環として、現地の大学と連携し、日本語教育と採用を一体化したスキームの構築も検討している。
- さらに、ベトナムに加えインド人材の採用も視野に入れており、高度外国人材の活躍という観点で島根・鳥取の建設業界をリードしていきたい。
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村上氏(左)と井上氏(ジェトロ撮影)
- 執筆者紹介
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ジェトロ企画部企画課
薄木 裕也(うすき ゆうや) - 2020年、ジェトロ入構。市場開拓・展示事業部海外市場開拓課、ジェトロ・ダッカ事務所(実務研修生)を経て、2023年から約3年間ジェトロ島根で勤務。2026年7月から現職。





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