中東・アフリカのグリーンビジネスの今最新のAI技術で気候変動リスクに対応(ケニア)

2023年11月17日

世界の温室効果ガス排出量に占めるアフリカの割合はわずか4%程度にとどまる一方で、アフリカは気候変動の影響を大きく受けている。干ばつや洪水など異常気象や海面上昇などは、人的にも経済的にもアフリカに深刻な被害をもたらしている。一方で、急増する人口に対応するべく、アフリカ諸国は気候変動リスクをマネージしつつ、食料供給を増大させなければならないという難題に直面している。コーヒーや紅茶、スパイス類など多くの農産物についてアフリカから輸入している日本を含む先進国にとっても、こうした問題は他人事ではない。

気候変動や新型コロナウィルスの感染拡大、米中対立といった数々のサプライチェーンリスクをいかに管理していくかはビジネス上も重要な課題だ。ジェトロは、農業や気候などで人工知能(AI)によるデータ解析サービスを提供するグロー・インテリジェンス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(以下、グロー)のローレンス・リー氏とアラン・ホン氏に聞いた(取材日:2023年9月27日)。

質問:
ビジネスの概要は。
答え:
グローは2014年にサラ・メンカー氏と、ソーイット・アーデロム氏という2人の女性により、ケニアの首都ナイロビに創設された。メンカー氏はニューヨークの石油ガスのトレーダーであり、アーデロム氏はシティ・グループに勤めていた。2人は、エネルギー業界で得た知識を生かして、透明性の高い、より良いデータ、そしてより良い分析を使い、企業や公的セクターの意思決定の改善を目指している。
現在は、ナイロビに加え、ニューヨークとシンガポールに拠点を有する。設立から9年経っているので、スタートアップとしては創業から時間が経過している。2年前にシリーズBを終え、8,500万ドルを調達した。特に農業分野では非常に高い評価を得ている。
グローは「農業」「気候」「経済」の3つの分野に特化した調査会社だ。特にこの3つの分野が交わるポイントに力を入れて取り組んでいる。顧客は農産物の生産・販売を行う伝統的なアグリビジネスを行う会社が中心だが、最近では急速に金融機関、ヘッジファンドが増えている。また、政府や政府系機関からもデータの問い合わせが増えている。グローはデータのクリーニングを行い、システムに取り込み、適切に整理する専門家集団を有する。企業はデータ収集や処理に時間を割くべきではなく、ビジネスの判断に注力するべき、と我々は考えている。
質問:
御社のサービスはアフリカにおいてどのように役立つのか。
答え:
グローは、衛星や気象データなどあらゆる機関から集めたデータについて、AIを用いて解析し、ビジネス上の判断に役立つ情報を提供する。例えば、食品産業に対してはサプライチェーンの最適化、種子・肥料会社に対しては変化する条件の中で最適な販売戦略の立案にかかる情報、金融機関に対してはリスク管理、公的セクターに対しては食料安全保障や気候変動のリスクモニターなど様々なサービスを提供している。
我々のデータ解析技術を用いれば、世界全体の供給の不足と余剰を簡単に分析できる。例えば、アフリカ大陸はパーム油の世界最大の輸入者で、民間企業レベルでも政府レベルでも、その在庫と調達について、売買の判断や、食料安全保障の観点などで、より正確な判断を行うための情報を提供できる。2023年後半はエルニーニョ現象が予測されており、我々が各地の干ばつリスクを指標化して提供している「ドラウト・インデックス」はリスクのレベルや適切なアクションをとる上で役立つはずだ。
質問:
日本企業との協業の可能性は。
答え:
日本企業との協業に期待している。日本は主要な農産物輸入国で、高齢化ゆえに国内の生産が問題だ。日本企業は海外に投資することが重要になるが、グローはデータを用いて、その投資判断を支援できる。また、気候変動は日に日に重要性が増しているが、農業に限らず、産業全体に大きな影響を与える。グローは創業してから5年間ほど、ビジネスの方向性が見えない時期があったが、米中対立や、深刻な自然災害などが起こって、大きく環境が変化し、急速な成長を遂げた。
執筆者紹介
ジェトロ・ナイロビ事務所長
佐藤 丈治(さとう じょうじ)
2001年、ジェトロ入構。展示事業部、ジェトロ・ヨハネスブルク事務所、企画部企画課、ジェトロ・ラゴス事務所、ジェトロ・ロンドン事務所、展示事業部、調査部中東アフリカ課を経て、2023年5月から現職。

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