中東・アフリカのグリーンビジネスの今民間は太陽光発電技術に関心、COP29に向けても意欲(イラン)

2024年3月5日

イラン政府は高い再生可能エネルギーの導入目標を設定し、特に民間部門は太陽光発電設備の設置に高い関心を持っている(2023年9月22日付地域・分析レポート参照)。前回インタビューしたイランの再生可能エネルギー製品・サービス製造および販売業者協会のハミドレザ・サレヒ会長に、イランの取り組みの進捗状況などについて再度インタビューした(取材日:2024年1月26日)。

同協会は、再生可能エネルギー分野の製品やサービスを提供しているイラン商工会議所のメンバー200社以上で設立した協会で、再生可能エネルギー分野の問題点などについて意見交換などを行い、必要があれば政府に申し入れを行う。サレヒ会長は、2023年11月30日~12月13日にアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催された国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)(2024年2月5日付地域・分析レポート参照)にイランからのデレゲーションメンバーとして、サイドイベントを視察した。

質問:
COP28の視察と成果について。
答え:
イランからは、政府・民間合わせて15人のデレゲーションがCOP28に派遣され、当協会からは私を含めて5人が参加した。
今回、サイドイベントの展示会に出展していた日本企業とコンタクトでき、スマートビルディングやカーボンニュートラルの技術について説明を受けるとともに、意見交換ができた。日本企業とのコンタクトは元々期待していたが、今回、技術やコンセプトの詳細について、説明を会場で受けることができたのは大きな成果だ。また、連絡先の交換ができたことは、今後のコミュニケーションの上でも大きな前進と考えている。
さらに、日本以外の国の企業関係者からも情報収集、意見交換ができ、再生可能エネルギー分野におけるイランと他国の進捗の差を痛感し、今後、どれだけ頑張らないといけないか把握できたのも成果と考えている。
こうした情報収集や他国の関係者との意見交換は非常に重要であると認識しており、2024年11月11~22日にアゼルバイジャンで開催予定のCOP29(2023年12月15日付ビジネス短信参照)にも、政府と民間企業からなる大規模なデレゲーションを派遣する予定だ。
ただ、今回のCOP28への視察では、各国関係者と非常に興味深い話ができたものの、米国による経済制裁の影響もあり、ビジネス面での成果がなかったのは残念な点だった。
質問:
前回のインタビューで、太陽光発電において、特に、製鉄所の冷却水用のため池にフローティング型の太陽光発電設備を設置したいと言っていたが、その後の進捗は。
答え:
フローティング型の太陽光発電施設の建設については、中国企業と交渉をしている段階で、すでに稼働しているプロジェクトはない。
ソーラーパネル単体については、中国から輸入しているが、フローティング部分の原材料は、イラン国内で十分に調達可能である。一方で、生産技術面での弱さがあるので、他の国、特に日本からの製品輸入、もしくは生産技術の輸入を検討したい。
質問:
COP28の視察以降、日本企業への期待などに変化はあったか。
答え:
日本企業には、特に、現在われわれが取り組んでいるフローティング型の太陽光発電設備分野での技術協力をお願いしたい。また、イランでは再生可能エネルギー分野全体としての取り組みがあまり進んでおらず、成長余力は極めて高いので、太陽光発電に限らず注目してほしい。
米国による経済制裁によって、今すぐにイランと新たなビジネスをすることが難しいのは理解しているが、コミュニケーションだけでも取れればと考えている。是非、われわれにコンタクトしてほしい。

原稿執筆時点でジェトロが報道などで確認した限り、イラン国会で審議中の第7次経済開発5カ年計画(2024~2028年度)の法案では、再生可能エネルギーの発電容量を2028年度までに2022年度実績の約10倍の1万メガワット(MW)に引き上げるとしている。

また、同計画とは別に、政府は、4,500MW容量の太陽光発電所を建設する計画を発表している。政府は入札を実施済みで、民間企業5社が同発電所の建設を落札し、2023年12月11日から7カ月間で同発電所を設置する予定としている(2023年12月11日付イラン政府広報局(ペルシア語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。今後も、再生可能エネルギーへのイランの取り組みについて、引き続き注目したい。

執筆者紹介
ジェトロ・テヘラン事務所長
鈴木 隆之(すずき たかゆき)
1997年、ジェトロ入構。展示事業部、産業技術部、アジア経済研究所、ジェトロ高知、ジェトロ愛媛などを経て2020年から現職。海外はラゴス(ナイジェリア)、ロンドンに駐在。
執筆者紹介
ジェトロ・テヘラン事務所
マティン・バリネジャド
2018年からジェトロ・テヘラン事務所勤務。ビジネス短信や各種調査、展示会などを担当。

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