中東・アフリカのグリーンビジネスの今クリーンな都市を目指し、廃棄物回収をビジネスに(ナイジェリア)

2023年10月20日

ナイジェリアが直面している課題の1つに、廃棄物処理の問題があげられる。汚水や廃棄物がそのまま投棄されている現状は、洪水を引き起こし、伝染病の原因にもなり得る。また、廃棄物回収の遅れによって満杯となった廃棄物容器の蓄積や、廃棄物管理のエコシステムを運営するためのコストの回収も課題だ。特に、2,500万人が生活するといわれるラゴス州では、喫緊の課題となっている。

ジェトロは、こうした課題にビジネスとして取り組む同国の廃棄物処理のスタートアップである、パカム・ウェイスト・マネジメント(以下、パカム)の、アデレイ・オデブンミ社長に聞いた(取材日:2023年7月17日)。


パカムのアデレイ・オデブンミ社長(左から二番目)とジェトロ・ラゴス事務所職員(ジェトロ撮影)
質問:
ビジネスの概要は。
答え:
私は大学で社会学を専攻したこともあり、社会問題に関心があった。社会問題の解決に貢献したいと考え、パカムを創業したのは2021年だ。私には共同経営者がおり、彼女には持続可能性やエンジニアリング、リサイクリングのバックグラウンドがあるので、当社は環境エコシステムを専門としている。2022年には、廃棄物リサイクルのデジタルマーケットプレイスを開設した。現在、当社には25人のスタッフが勤務している。
当社は、一般消費者と廃棄物収集業者とをプラットフォーム上でリアルタイムにつなぎ、個人がリサイクルで収入を得るサービスを開発した。当社のモバイルアプリケーション、アーン・アズ・ユー・ウェイスト(Earn-as-You Waste)では、ユーザーはリサイクル可能な廃棄物を簡単に分類し、回収のスケジュールを立て、収集業者が廃棄物を回収することで、廃棄物の対価をeウォレット上で受け取ることができる。また、エンド・ツー・エンドのデータ集約とサービス認知度向上のための廃棄物リサイクル方法を利害関係者に提供している。廃棄物の処理方法に関する情報を提供することで、よりクリーンな環境を確保するための廃棄物処理業者向け学習プラットフォームも提供している。
また、廃棄物回収の際に、三輪車やスマートカート(写真参照)を利用することで、二酸化炭素(CO2)排出量の削減にも努めている。廃棄物処理で生計をたてる世帯やインフォーマルな廃棄物収集業者に対し、国の最低賃金を上回る適正報酬を提供している。廃棄物リサイクル事業の幅を広げるために、ラゴス州政府とも提携し、関係者の能力開発を行う予定だ。

スマートカート(ジェトロ撮影)
質問:
進行中のプロジェクトはどのようなものがあるか。
答え:
2023年から200万ドル相当の廃棄物管理プロジェクトを、ラゴス州政府と共同で実施する。また、米国とドイツから約63万5,000ドルの助成金も受けた。持続可能なグリーンエネルギーに関して、国連工業開発機関(UNIDO)のプロジェクトにも協力している。当社は、中国の技術を活用し、太陽光も利用している、
質問:
今後のビジョンは。
答え:
当社は、世界の廃棄物問題に対応する廃棄物テクノロジーサービスのリーディングプロバイダーになりたい。デジタルツールによって、廃棄物に希少性という価値を付加し、持続可能で強固な循環型経済を構築したい。
質問:
今後のプロジェクトについて。
答え:
ナイジェリアのアナンブラ州政府とアビア州政府から、リサイクルインフラを導入したいとの要望を受けている。先行して取り組んでいるラゴス州では、廃棄物収集のエコシステムを作り出している。ラゴス州内には87の廃棄物リサイクル会社が登記されているが、現在も活動し業績を上げているのは当社を含めて3社だけだ。今後は中国の技術を活用し、太陽光利用による二酸化炭素排出量の削減にも取り組む予定だ。
また当社は、ドイツ国際協力公社(GIZ)の協力のもと、約45カ所にストリートキオスク(収集センター)を設置し、廃棄物を搬出するためのスマートカート95台を組み立てた。このほか、英国とインドネシアの大使館が当社の廃棄物管理技術に興味を示している。ラゴス州では、当社は州内の3つの地方自治区で三輪車やスマートカートを販売しており、そのための倉庫を保有している。スマートカートの原材料の90%は、廃棄物の最終処分埋め立て地から調達している。
さらに、ナイジェリア・アラブ商工会議所は、当社のサービスに約20億ドルを投資する予定だ。ラゴス州では、アルミニウム廃材、缶、段ボールなどの回収プロジェクトも始動する。
質問:
ナイジェリアの課題は。
答え:
ナイジェリアは消費大国でありながら、廃棄物処理の適切なインフラが十分ではない。投資家と連携しながら、インフラを整備したり、利害関係者とのエコシステム構築やリサイクルの多角化を図っていく必要がある。

回収した建材置き場(ジェトロ撮影)

回収物置き場(ジェトロ撮影)
質問:
日本企業との連携可能性について。
答え:
廃棄物処理のための焼却炉や、医療廃棄物処理プラント、発電用プラントを扱う日本企業と提携したい。ただし、これらのプラントは低コストで運営できることが重要だ。
パカムは、ナイジェリアでのプロジェクトにおいて、日本企業とのパートナーシップ構築を歓迎している。
執筆者紹介
ジェトロ・ラゴス事務所
馬場 安里紗(ばば ありさ)
2016年、ジェトロ入構。ビジネス展開支援部、ビジネス展開・人材支援部、海外調査部を経て現職。

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