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特集:中小企業の海外ビジネス、成功の秘訣水分計でアフリカ市場への回帰目指す/ケツト科学研究所(東京都)

2021年3月12日

農業用の水分計などの測定機器を国内外で展開するケツト科学研究所(東京都大田区)。1950年代から海外ビジネスに取り組み始め、1970~80年代にはアフリカでも大規模に展開していた。しかし、現地政情不安などから1990年代に撤退を余儀なくされ、その後はアジアでのビジネスが中心となった。

今、あらためてアフリカに注目し、オンライン商談会を活用するなど、積極的に市場開拓に取り組んでいるという。海外ビジネスの経緯や取り組みについて、同社海外営業部の部門長の吉田典広氏と高橋亮輔氏に聞いた(2021年1月15日)。


ケツト科学研究所の海外営業部スタッフ(同社提供)

アジア中心の海外複数国に代理店経由で製品販売

質問:
会社と製品の概要、海外展開について。
答え:
創業は1946年。農業用の測定機器や分析測定機器、物性測定機器などを研究・開発し、販売する。従業員数75人のうち、海外営業チームは5人と少数精鋭だ。海外で取扱量が多いのは中国や韓国、タイ、ベトナム、インド、パキスタン、バングラデシュなど、アジアが中心だ。
図:代理店設置済みの国・地域(同社提供)
日本の他に、代理店設置済み国は次のとおり。アメリカ、韓国、中国、台湾、ベトナム、フィリピン、インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュ、オーストラリア、ウクライナ、トルコ、エジプト、スロベニア、スコットランド、イタリア、スペイン
東南アジアでは当社の主力製品の穀物水分計が多く流通しているが、アフリカなどでは、欧米製の水分計が多く流通している。当社の穀類水分計は、操作が簡単で、1台でさまざまな品目の水分と容積重の検査ができる。また、穀物水分計の測定精度にかかる技術支援を日本、東南アジアで展開し、各国から高く評価されている。購入後1年間の保証期間を設け、10年間は保守・アフターサービスに応じる。5万円程度の機械は日本国内では約7年間の使用が一般的なのに対し、海外では10~20年間と長期間使用されることが多く、保守・アフターサービスはとても重要だ。海外では、代理店経由の販売が基本で、原則として1カ国に1代理店を設置している。もっとも、取扱台数が多いタイなどでは複数の代理店と契約することもある。

同社の穀類水分計(同社提供)

水分計でアフリカ市場への回帰を目指す

質問:
アフリカでのビジネスに取り組み始めたきっかけは。
答え:
当社がアフリカでのビジネスに取り組み始めたのは、1975年前後で40年以上前までさかのぼる。当時、アフリカからコーヒーやカカオ用の水分計の引き合いがあり、対応したのがきっかけだった。その後も西アフリカを中心にアフリカ諸国を訪問し、売り歩いたという。1980年代には販売量が増し、ピーク時にはコーヒーやコメ用の水分計をコートジボワール、カメルーン、エチオピア、ケニア、ジプチなどに、2,000台程度販売していたころもあった。
しかし1990年代以降、アフリカ諸国の内戦などの政情不安を理由に、取引は低迷した。現在は、インドの代理店を通じて販売しているが、その詳細を把握できていない。また最近では、国際協力機構(JICA)の現地活動などで穀物水分計を使っていただいている。しかし、それ以外はアフリカ向けに出ていない。
そのような中、2020年12月にジェトロが主催した「アフリカ農業資機材オンライン商談会」に参加。コートジボワールのバイヤーと想定以上のスピード感で商談が進んだ。その結果、当社のコメ用とコーヒー・カカオ豆用(注1)の水分計のデモ機を購入してもらった。デモ機購入まで、通常であれば数カ月~1年以上の期間がかかるところ、オンラインの商談やメールでのやり取りだけで約1カ月で成約に至った。恐らく、農作物の収穫シーズン(注2)に合わせて水分計の需要が高く、それに合わせた購入希望だったと思われる。また、コートジボワールでは当社の製品が今も使われているようだ。当社の製品を知っていたことも成約の要因になった。
アフリカでは、農作物の乾燥は天日干しがほとんどだ。しかしそれでは、穀物の水分量にばらつきが出てしまうなど、品質に大きく影響が出てしまう。水分計自体の理解がまだ低い国も多いと思われる。精度の高い当社の水分計で、収穫時期前後における穀物の水分量を計測し調整することで、穀物が腐るなどのフードロスの削減に貢献できると考える。デモ機を購入してもらったコートジボワールのバイヤー向けには、今後、カタログや取り扱い説明書、さらに技術資料のフランス語訳や、操作方法を記録した動画の作成も検討している。水分計導入後も、さらなる販路拡大を目指し、バイヤーのサポートやトレーニングを継続しながら、水分計を使う習慣を現地に定着させていくことも重要と考えている。

新型コロナ禍で代理店発掘に苦戦するも、ビジネスは堅調

質問:
新型コロナウイルス禍による海外ビジネスへの影響は。
答え:
当社の農業向けの製品には影響は特に出ていないと感じる。2020年4月ごろは発注が減ると予想して生産を控えたが、実際はバングラデシュ向けの特需などもあり発注量が一昨年よりも増加した。そのため、現在は品切れ状態が続いている。
一方、海外出張や海外展示会への出展が難しい中、当社の製品を取り扱ってもらう新規代理店を独自で発掘することには、非常に苦労している。マンパワー不足も一因だ。当社のような中小企業は海外部門に十分な人員を配置できず、少人数で全地域をカバーしなければならない。
将来的には海外売上高比率を全体の50%に上げることを目標にしている。2021年はコロナ禍でも、オンラインツールを活用した新規代理店の発掘など、新たな手法を積極的に試していきたい。その上で、下期にはより具体的な海外展開の目標を立てていきたいと考えている。

注1:
コートジボワールでは、食生活の変化と人口増加により、コメの国内消費量が増加しており、コメ需要が伸びている。一方、国内生産が追いつかず、輸入に依存しているため、自給率の改善に向けて政府も取り組んでいる(2019年6月3日付ビジネス短信参照)。
また、コートジボワールのカカオ生産は世界生産の約4割を占める。
注2:
コートジボワールのカカオ収穫シーズンは2期に分かれており、10月~翌年3月が本収穫シーズン、4月~9月は中間収穫シーズン。国連食糧農業機関(FAO)によると、コートジボワールでのコメの主な収穫シーズンは9月~12月とされる。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部中東アフリカ課
馬場 安里紗(ばば ありさ)
2016年、ジェトロ入構。ビジネス展開支援部、ビジネス展開・人材支援部を経て現職。

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