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特集:中小企業の海外ビジネス、成功の秘訣新たな輸出モデルへの挑戦、クラウドファンディングで米国輸出/水生活製作所(岐阜県)

2020年7月22日

水生活製作所(本社:岐阜県山県市)は、給水栓、浄水器類、節水器など、水回り製品の開発・製造・販売企業だ。2020年5月、米国のクラウドファンディングサイト「Indiegogo」に自社商品を出展した。掲載開始から5日で、調達額(=売上額)が1,000万円を突破。7月1日までに、約2,069万円の調達に成功した。ジェトロの展示会出展支援を足掛かりとして米国市場に進出した同社は、販売チャンネルとしてなぜクラウドファンディングを選んだのか。そして、どのようにして成功を勝ち取ったのか。同社の早川徹代表取締役社長に聞いた(2020年5月21日)。

米国での展示会出展が挑戦の第一歩

質問:
企業概要と海外事業について。
答え:
当社は、1954年に水栓バルブ発祥の地である岐阜県山県市で創業した水回り製品メーカーだ。給水栓、浄水器類、節水器などの開発・製造・販売を行っている。売り上げの多くを受託生産(OEM)が占める。しかし直近では、輸出が約3割を占めるまでになった。海外事業の本格的な開始は2009年だ。中国に販売子会社として現地法人を設立した後、複数の代理店を通して、浄水器製品を中心に展開していった。現在では、台湾、ベトナム、米国に、販売代理店を置いている。
海外事業に挑戦した理由は、国内市場の需要縮小だ。当初は中国を中心にアジア地域をターゲットとしていた。しかし、5年ほど前から米国市場に本格的に関心を持ちはじめた。ジェトロが主催した米国販路開拓セミナーを聴講するなど、情報収集を始めた。2016年に、「International Home Housewares Show(IHHS、現IHA)」のジャパン・パビリオンに初出展した。IHHSは北米最大規模の生活・家庭用品見本市で、シカゴで開催される。出展中に、当社取引先の米国展開コンサルタントから紹介を受けたA社と、米国での販売代理店契約を結ぶことができた。

早川代表取締役社長(左)と米国輸出担当の太田氏(ジェトロ撮影)

現地販売代理店とタッグ、クラウドファンディングへ挑戦

質問:
海外市場の開拓手法として、クラウドファンディングに挑戦した経緯は。
答え:
IHHSには、浄水シャワーを主力製品に2019年まで4年連続で出展した。展示会への出展は、初期段階の情報収集やコネクション形成の場として有効だった。一方で、新規顧客の獲得が課題であると感じていた。ある時、A社との面談で、「マイクロナノバブルシャワーで米国市場に挑戦してみたい」と提案した。何度かのやりとりの後、A社から「(販売手段として)クラウドファンディングを検討してはどうか」と提案があり、利用を決めた。マイクロナノバブルシャワーは、1μm(マイクロメートル)未満の気泡を放出する。洗浄効果が高いのが特長で、日本では既にはやりはじめていた。一方で、米国ではあまり知られていなかった。しかしクラウドファンディングでは、テストマーケティングの場として、不特定多数の消費者に商品を訴求することもできる。そのため、この手法が適している、と考えた。
米国のクラウドファンディング市場(注1)に関するA社の調査では、2つの巨大なクラウドファンディングサイトがあるとのこと。一方で、巨大すぎるために、それらサイトにただ単純に商品を掲載するだけでは消費者に見向きもされないことが分かった。そこで、クラウドファンディング専門の現地コンサルタントに、商品の掲載ページ作成などの支援を依頼した。
なお、当社には英語が堪能な社員がいる。しかし、現地のことは現地に任せるという方針の下、現地コンサルタントとのやりとりはA社に依頼した。このほかA社には、マイクロナノバブルシャワーの仕様を現地化するための情報収集や商品発送のための現地倉庫会社との契約、売上代金の受け取りでも協力してもらっている。

ローコスト・ハイリターンだったクラウドファンディング

質問:
クラウドファンディングのメリットは。
答え:
まずは、費用が低く抑えられるところだ。もちろん、コンサルタントへの委託費などそれなりに出費はある。それにしても、展示会への出展費用や従業員の渡航費などを考えると、総じて展示会出展よりローコストだった。結果的に、世界中の消費者から約1,500万円の調達(注2)に成功しているので、今回の取り組みは成功を収めたといえるだろう。新型コロナウイルスの影響もあり、今後はリアルの展示会への出展は控えるつもりだ。従来、展示会の出展にかかっていた費用は今後、米国で開設する自社ウェブサイトでの販売促進のための営業・宣伝・広告費に回す予定だ。
次に、顧客情報の取得が挙げられる。一般的に、オンラインのBtoC販売で外部のプラットフォームを利用すると、購入者情報を直接入手するのは難しい。一方で、クラウドファンディングでは購入者=出資者であるため、「どの国・地域の人がどれだけ買ったか」を自社で確認することができる。それにより、ロイヤルカスタマーのリストが手に入るので、今後の海外販売戦略に生かすことができる。
また、副次的効果として、海外営業用コンテンツを作成できたこともよかった。今回、現地コンサルタントには、ウェブページ閲覧者への訴求力の高い商品説明動画などの作成も依頼した。PR画像や動画の作成を社外に依頼した場合、依頼目的以外での利用が許可されないことが多い。しかし、今回は、これらコンテンツの目的外使用を許可してくれた。例えば、他のウェブサイトでの掲載やリアルの展示会で使用しても構わないことにしてもらえた。この結果、クラウドファンディングへの掲載をきっかけに、海外用営業資料として広範に利用可能なデジタルコンテンツを整備することができた。

オンライン販売は戦略的に

質問:
インターネットでの販売戦略について。
答え:
これからの販売チャンネルとして、インターネットは欠かせないだろう。自社オリジナル、または米国アマゾンなどの電子商取引(EC)サイトの活用は、今後ますます重要度を増していく。ただし、大手ECサイトではどうしても価格競争に陥ってしまう。自社のブランドイメージや製品価格の維持のため、対策を講じる必要がある。当社はオンライン販売を希望する代理店には、専用の代理店契約を用意している。このほか、大手ECサイトに出品することを許可する場合には、当社製品を大切に扱ってくれる一部の代理店だけに限っている。また、商品名や型番を変えたEC専用商品も用意している。
インターネットと一口に言っても、ECサイトとは異なる。クラウドファンディングでは、価格競争に陥ることはない。高付加価値製品であるマイクロナノバブルシャワーの販売チャネルとしてクラウドファンディングを選んだのも、そうした理由が大きい。企業は、販売チャンネルが自社のブランドイメージと製品価格に合致しているのかをしっかりと見極めて、インターネット販売を活用していくことが大事だ。

注1:
クラウドファンディングの概要、米国のクラウドファンディング関連情報についてはジェトロ調査レポート参照
注2:
ヒアリングした5月21日時点。クラウドファンディングでの「調達額」は、「売上額」に等しい。つまり、ここでは「約1,500万円の受注獲得に成功した」ことを意味する。
執筆者紹介
ジェトロ岐阜
渡邉 敬士(わたなべ たかし)
2017年、ジェトロ入構。海外調査部アジア大洋州課(2017年~2019年)にて東南アジア・南西アジアの調査業務に従事。
専門はフィリピン・スリランカ。 2019年7月より現職。

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