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特集:中小企業の海外ビジネス、成功の秘訣農家が連携して自ら輸出へ/ブレンドファーム(京都)

2020年1月14日

日本の青果物の輸出額は2018年に290億円を超え、この5年で約80%増加した。しかし、輸出に取り組んでいるのは農業協同組合(JA)や仲卸業者、商社などがメインで、経営規模の小さい農家が自ら海外に売り込むには限界があるのが実状だ。そのような中、京都にあるブレンドファームは、府内の複数の農家が連携し、ブドウやイチゴなどをアジアの高級小売店やレストラン向けに輸出している。各農家は小規模だが、連携することで販路を開拓し、継続的に輸出を伸ばしている。自身も北部の京丹後でブドウや日本ナシなどを生産する同社専務の白岩千尋氏に、輸出ビジネスの成功の秘訣(ひけつ)を聞いた(2019年10月17日)。

自分たちで作ったものを自分たちで売る

ブレンドファームを設立したのは2016年。きっかけは「自分たちで作ったものを自分たちで売ろう」という意識だった。卸売市場は通さずに自ら販路を開拓し、小売店やレストランなどの販売先の件数や売り上げを常に「見える化」することで、経営を自分たちの手でコントロールすることを重視している。現在、社内に4人の生産者がいるほか、仕入れ先農家は約30軒に及ぶ。

輸出の効果を実感

京都は果物の生産量は多くないが、農家自ら輸出に取り組む例は珍しかったため、「国内でのブランド化」を目的に輸出にチャレンジし始めた。沖縄で開催された海外バイヤーとの商談会に初めて参加した時は、輸出に関するノウハウはなかったものの、その翌週には商談したバイヤーのいる香港へ向かった。開始1年で香港への輸出を実現すると、高い品質や輸出に耐えられる梱包(こんぽう)などが評価され、日本国内のギフト商品バイヤーからも発注が来るようになった。今では、タイやマレーシア、香港、シンガポールに加え、米国やカナダにも富裕層をターゲットに輸出している。

利益率は輸出も国内販売もほぼ変わらないが、輸出の効果は国内でのブランド価値の向上だけではないと実感している。例えば、輸出には特定原産地証明書といった手続き書類を事前に準備することから、早めに受注量やスケジュールを検討する必要がある。そのため、生産や販売に計画性を意識するようになり、今では1年後の受注に向けた商談を行うほか、5カ月後の受注が決まっている。輸出をきっかけに、国内の人的ネットワークも広がった。これにより、海外の商談会などで他の参加事業者と情報交換ができる。輸出に取り組む事業者は商品やビジネスのやり方などへのこだわりが強く、裁量権を持っているケースも多いが、国内取引だけではこのような事業者となかなか出会えない。今では、知り合った事業者と互いの日本の販売先を紹介し合うことで、国内の販売先が増え、国内売り上げの拡大にもつながっている。


商談会の様子(ジェトロ撮影)

小規模農家が輸出に成功するためには

一般的に、小規模農家は生産量が少なくて輸出用の出荷量を確保できず、資金不足や人手不足から、海外へ渡航して市場調査や営業を行うなどの動きが取りづらいため、輸出ビジネスを軌道に乗せるのは難しい。同社は、複数の農家が集まることでこの課題を解決した。スケールメリットを生かして出荷量を確保し、ブドウやナシ、イチゴなど旬の異なる商品をそれぞれが生産することで通年供給を可能にしている。また、特に販路開拓に力を入れるタイには年間3~4回渡航し、現地での営業を欠かさない。

輸出に取り組み始めてから最初の1~2年は、思うように売り上げが伸びない一方、出張費といった経費がかさむ、いわば「我慢の時期」だ。実際、この時期に輸出事業を断念するケースも多い。この期間を耐えられるか、いかに短縮できるかが、小規模農家が輸出に成功するポイントになる。当社でも、輸出ビジネスが軌道に乗ったのは、取り組み始めてから3年後だった。さらに当社では、信頼できる現地パートナーを各国1社ずつ確保している。8月にジェトロが開催した「バンコク日本産青果物輸出商談会2019」に参加した時、現地パートナー(輸入業者)とともに小売店やレストランなどとの商談に臨んだ。その後の詳細な取引条件を詰めるための再商談は現地パートナーに任せることで、より効率的に輸出を伸ばすことができている。

執筆者紹介
ジェトロ農林水産食品部農林産品支援課
村上 雄哉(むらかみ ゆうや)
2013年、ジェトロ入構。ジェトロ高知などを経て、2019年5月から現職。

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