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特集:中小企業の海外ビジネス、成功の秘訣市場の変化を読み、抹茶を米国へ/池田製茶(鹿児島県)

2020年11月18日

ご縁とタイミングにつきる。ご縁を得るために、どういうことを発信し、準備しているかが大事なこと。海外展開成功の秘訣(ひけつ)をこのように語るのは、老舗茶商である池田製茶(本社:鹿児島県)代表取締役社長の池田研太氏だ。同社は現在、米国を中心に抹茶を輸出し、米国には現地パートナー法人も有する。同氏へのインタビュー(10月5日)を通して、同社の海外展開の歩みを振り返りながら、池田氏の冒頭の言葉の意味を探り、今後の展望を聞く。


池田製茶の池田研太社長(ジェトロ撮影)

米国の展示会出展を通して、市場参入を模索

質問:
まず、会社の概要について。
答え:
当社は1948年創業の茶商だ(社員は24人)。茶商は、(1)お茶を目利きして仕入れ、(2)そのお茶を組み合わせてブレンドし、(3)焙煎(ロースト)することが主な業務で、それを手掛けるのが茶師としての仕事だ(池田氏は日本に十数人しかいない茶審査鑑定技術最高位の「茶師十段」の資格を持つ)。当社は鹿児島県のバリエーション豊富な茶葉を扱い、香り高く、のど越しの良い茶に仕上げている。
質問:
海外展開の状況は。
答え:
売り上げで見れば、まだ大半は国内向けの販売。海外向けは徐々に増えている状況で、その多くを米国が占めている。一部、台湾などへも輸出している。2017年に米国に現地パートナー法人を設立。本社から抹茶を原料としてバルクで米国へ輸出し、現地パートナー法人が輸入販売、マーケティングを手掛けている。米国では、主に抹茶を健康補助食品的な飲料として販売する。そのほか、菓子メーカーなどに原料として販売している。また、2020年3月には本社向かいに抹茶工場を設立し、同工場でパウダーにした抹茶を製造している。
質問:
海外展開のきっかけは。
答え:
最初は、7~8年前にジェトロがロサンゼルスで展示ブースを出したときに、鹿児島県の茶業界として視察・出展したことがきっかけ。その後、しばしば米国へ行くようになり、年に1~2回、出展するようになった。しかし、何度か出展するうちに、他社とまとまって出展しているだけでは、個性も出せないと思うようになり、個別にブースを出展するようになった。さまざまな展示会に出展する中で、米国のバイヤーから抹茶の反応の良さを感じるようになり、今、提案するのは煎茶より抹茶だと思うようになっていた。
質問:
米国での市場の変化を感じたのか。
答え:
2015年から2017年ごろに、米国のミレニアム世代の人たち(2000年代以降に成人・社会人になった世代、20~30歳代)が抹茶に気付き始めた。仕事が終わって、ジムに行って、身体をつくっているような人は、食へのこだわりがある。そのような人たちが、抹茶をスーパーフードとして捉えるようになった。プロテインと抹茶を組み合わせ、ジムに併設されたスタンドバーで飲むようになり、エナジードリンクとして捉えられるようになった。街中でも、抹茶カフェなどが登場するようになった。こうしたトレンドに合わせて抹茶が売れることを、商談会のブースで発信するようになった。そのような発信を続けていると、抹茶に対して同じ可能性や方向性を感じる企業や人に、目を向けてもらえるようになった。そして、よいご縁に恵まれ、引き合いが増え、米国パートナー法人設立までつながった。
質問:
展示会への出展は、輸出する上で重要な機会になったようだが、貴社は展示会をどう捉えているか。
答え:
展示会は、その時、その国の顧客から何を求められているかという声を拾う場所だ。ブースを出していても、そこで間違っていることが分かれば、(展示、演出の仕方を)修正するようにしている。現在は、現地パートナー法人が年に7~8回は展示会に出展している。ブランディング/マーケティングはパートナーに任せている。今は日本人の感覚ではなく、パートナーが、現地の感覚で出展しているところがポイントだ。また、(ブランディング/マーケティングの関連で)英語版のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますもパートナーが現地の感覚で作成している。英語のサイトがあればいいわけではない。現地の事情に合った内容、ニュアンスになっているかどうかが大事だ。

市場や顧客のニーズに沿うように国際認証を取得、それが強みに

質問:
貴社は多くの国際認証を取っているが、その理由は。
答え:
当社は、日本の有機JAS認定に加え、米国農務省の有機食品基準USDA Organicも取得した。米国のバイヤーの求めに応じて、米国で通用するお茶に対応するようになったことがきっかけだ。米国で規制される残留農薬に配慮したお茶を、農家と作り始めた。また、コーシャ認証(ユダヤ教の戒律に基づく食規定)は、米国の富裕層に提案・販売していくなら必要と思い、取得した。また、グルテンフリーのGFCO認証もとっている。抹茶ならグルテンフリーであることは明らかだが、あえて取得した。さらに、遺伝子組み換え食品ではないことを明確にするためNon-GMO認証も取得。これらは現地からの要望で、マーケティングの観点から取得しているもの。当社の強みになっている。
質問:
貴社がブランディング/マーケティングを重視していることがわかった。印象的な写真、カタログなどを使用しているのもそのためか。
答え:
ブランディング/マーケティングは、試行錯誤だ。良いご縁のある方々のおかげ。集中して取り組んでいると、良い人が集まってきてくれる。自分はお茶の専門だ。自分はお茶に専念し、味と品質管理は担保するのが当社の役割。海外での販売は、現地の市場を知るパートナーに任せている。ブランディング/マーケティングに使う写真も大事だ。これも、プロにお願いしている。引き合いは、お客様側から問い合わせをいただくもの。そのためにどれだけ発信できているか、ということ。最近は、自分の発信がお客様に届くようになってきたという実感がある。こういう茶師がいる、と知ってもらえるようになってきた。

池田製茶のマーケティング材料から(池田製茶提供)

新型コロナを受け、米国では家庭向け販売が伸長

質問:
新型コロナ禍の影響はあったか。
答え:
(最初に日本で感染拡大が起きた)4月は、新茶がでる大事な時期で、そこで緊急事態が宣言された影響は大きかった。国内外のバイヤーが茶の買い付けに来られない。試飲販売できない。デパート、空港などの土産店はしまっており、新茶イベントは中止。4月の売り上げに影響が出た。一方、米国向けでは、飲食系、カフェがクローズしたが、家庭向けの抹茶が売れ、バランスが取れた。抹茶は、イメージとして体に良いと理解されている。米国の家庭では、抹茶をたてるわけではなく、スムージー/シェイクとして飲む。プロテイン、ソイミルク、抹茶を入れ、手軽にタンパク質やビタミンを取る。健康補助食品という認識も増えている。

国ごとのニーズに合わせた発信、機を逃さず縁を大切に

質問:
今後の海外展開の計画は。
答え:
東南アジアの国々に興味を持っている。ブランディングの観点からも、米国市場に入っている方が、東南アジアにも入りやすいと考えている。現在はブランディングをしているところなので、米国を主軸に、徐々に東南アジア市場にも入っていくつもりだ。また、東南アジアの国々といっても、一緒くたに議論できない。国ごとに違うので、ターゲットを絞っている。海外展開では、ニーズをつかんで、その国の市場に合わせて発信していくことが大事と考えている。そして単発ではなく、継続しないと実績にはつながらない。時が来た時にすぐに乗っかれるか、気付かず乗れないか、常にアンテナを張り巡らせていきたい。
質問:
そもそもなぜ海外展開を始めたのか。
答え:
創業して、私で3代目(2015年就任)。先代、先々代のやり方を踏襲しているだけではうまくはいかない。かつては、国内のお茶の贈答用市場だけでも相当大きかった。時代の変化にのみ込まれないようにしないといけない。海外展開を始めたことで、国内での取引も広がってきている。その国内販売の仕方も変えているところで、店頭販売の小売りはこの3月に縮小し、製造業者として卸売りに注力する。小売りは、創業の地の鹿児島市内にある天文館の店舗を例外的に残しているのみで、これから再度、リブランディングしながらオンライン販売を強化していく。
質問:
海外展開を成功させる秘訣は。
答え:
ご縁とタイミングが大きな要素になるのではないか。類似した商品は数多く存在する。その中から人や企業からの良い縁を得るために、どういうことを発信し、準備しているかが大事なこと。醸し出している雰囲気が商品などを通してイメージとして伝わり、よいタイミングに出合ったときに物事は前に進む。多くの皆さんに支えられているということ。継続し、持続することも大事だ。(海外市場向けであっても)人とのつながりで商売が成り立っている。双方にメリットがあり、長く継続していけるかが重要だと思う。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部アジア大洋州課長
小島 英太郎(こじま えいたろう)
1997年、ジェトロ入構。ジェトロ・ヤンゴン事務所長(2007~2011年)、海外調査部アジア大洋州課(ミャンマー、メコン担当:2011~2014年)、ジェトロ・シンガポール事務所次長(2014~2018年)を経て現職。 編著に「ASEAN・南西アジアのビジネス環境」(ジェトロ、2014年)がある。

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