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東洋ワーク、日本で培った教育ノウハウを武器にアジアで外国人材を育成
中小企業の海外ビジネス、成功の秘訣

2019年6月14日

仙台市に本社を構え、人材派遣・教育サービスを手掛ける東洋ワーク株式会社(資本金:5,000万円)は、2012年のネパール進出を皮切りに、アジア、特に東南アジア諸国連合(ASEAN)の国々でのビジネスを積極的に展開している。狙いは、自社の教育ノウハウを使ってアジア各国で育てた外国人材を、人手不足の日本へ供給することだが、インドネシアでは企業買収を行い、同国内需要の取り込み・拡大も目指している。同社で海外ビジネスを推進する国際事業部部長の里見誠氏に、海外展開の経緯、海外ビジネスの運営のポイント、また、外国人材の生かし方などについて聞いた(2019年5月21日)。


東洋ワークで海外展開を積極的に進める里見氏(ジェトロ撮影)

海外で知られていない「仙台」の企業だからこそ海外へ

質問:
まず、海外展開の背景と経緯についてうかがいたい。
答え:
国内のビジネスは、「人材」を扱うもので、日本社会が直面する少子高齢化問題の影響を直接受けているため、海外へ活路を見いだそうと、海外展開をこの数年、本格化させてきた。当社の国内での主要顧客は製造業だが、これまで培ってきた「人を教育し、作業現場にすぐに入れるようにする」という教育ノウハウがある。これを42年間やってきた実績があり、そのノウハウを海外へ展開している。当社の海外展開は、2012年にネパールで現地法人を設立したことから始まった。
質問:
ネパール進出後、ASEANでも展開を進めているが、現状はいかがか。
答え:
2017年11月、ベトナムで駐在員事務所を設立、市場調査ならびに業務提携先(人材系会社や職業訓練校など)の発掘などを主な業務としている(現在の提携先は4社)。また、2018年2月にはインドネシアにおいて、進出や労務などに関するコンサルティングサービスを提供する会社とその子会社で人材紹介や研修などを手掛ける会社の2社を買収した。さらに、自社の拠点はないが、タイ、フィリピン、カンボジアには現地の業務提携先がある。
質問:
海外拠点でのビジネスについて教えてほしい。
答え:
基本的には、自社の海外拠点、または各国での業務提携先で教育した外国人材を、人手不足の日本へ紹介し、来てもらうことだ。仙台に本社がある当社が、「地方から海外へ」展開することには、ここに意味がある。労働力不足の東北、仙台にある東洋ワークが海外へ展開している。「仙台」という地名は海外では知られていないが、だからこそ、当社が進出する意味がある。

各地で教育した外国人材を日本へ、業務提携先とのWin-Winのモデルを構築

質問:
各国の業務提携先を含めたビジネスモデルについて説明してほしい。
答え:
東洋ワークは、無料で教育ノウハウを現地の業務提携先に提供し、その代わりに、業務提携先から東洋ワークへ人材を紹介してもらうというモデルを構築した(東洋ワークは、日本国内でその外国人材を顧客に紹介、派遣する)。業務提携先が、習得した教育ノウハウを活用して育てた人材を地場企業などへ派遣することは自由だ。適切な教育ノウハウのなかった業務提携先は、当社がそのノウハウを提供すると、水を得た魚のように人材を教育し、積極的に紹介してくれる。Win-Winのモデルを作ることができた。なお、インドネシアについては、買収した2社を通じ、日本への外国人材の紹介に加え、現地での人材関連の需要に対応したビジネスも展開している。
図:東洋ワークと海外の業務提携先との関係
東洋ワークは、無料で教育ノウハウを現地の業務提携先に提供、業務提携先はその代わりに東洋ワークへ人材を紹介してもらうというモデルを構築。東洋ワークは、日本国内でその外国人材を顧客に紹介、派遣する。なお、海外の業務提携先への教育ノウハウ提供は、ネパール、ベトナム、インドネシアについては自社の現地法人・駐在員事務所から、タイ、カンボジア・フィリピンについては、日本から行う。

出所:インタビューに基づき筆者作成

質問:
具体的に外国人材とは。
答え:
当社が対象としている外国人材とは、技能実習生と高度人材(CAD、ITオペレーターなどのエンジニア)だ。どちらも近年、日本企業からニーズが高まっている。技能実習生については、日本での受け入れ企業に技能実習生を受け入れるためのコンサルティングサービスを提供している。その対価として、マネージメント・コンサルティング料を得ているが、紹介については料金をとらない。直接、海外の派遣元(業務提携先)と契約していただく。現地業務提携先への教育ノウハウを東洋ワークが提供することで、派遣前の現地での研修時間が380時間から240時間に短縮できた。さらにこの5月、入国後に研修を行うことができる施設を岐阜県に開設したところだ。後者の高度人材については、東洋ワークとして雇用し、就労ビザを手配、日本でIT企業や建設会社へ人材派遣を行っている。今後は、2019年4月に新設された在留資格である「特定技能」分野も対象としていく予定だ。

ASEAN市場の取り込みに向け、インドネシアでM&Aを実施

質問:
海外進出にあたって、インドネシアでは買収という手段をとっているが、その経緯は。
答え:
当社は、(日本への外国人材紹介だけでなく)ASEANの市場においてビジネスを展開するにあたり、約2億6000万人というASEANでは最大の人口を抱えるインドネシアで始めることにした。現地市場に入るためには、「新規で現地法人を設立し、単独進出していくのは難しい」と考えていた。ただ、最初からM&A(企業合併・買収)をしようと思っていたわけではなく、自分たちにはソフト系の教育ノウハウしかないため、一緒に組んでもらえる業務提携先を探し始めた。人材系の会社をリストアップし、自分たちで現地調査を行った。その際、インドネシアの工場から、「始業時間に遅れてくる」「作業習熟が遅い」などの人材に関する課題を聞いていたため、それらの課題を自社の教育ノウハウなら解消できると、業務提携の候補先に説明していった。そのような中で、結果的に買収することになった日系100%の現地法人と、「一緒にやろう」ということになり、提携方法を模索する中で、買収するに至った。
質問:
買収で苦労した点は。
答え:
2社買収したうちの1社は、コンサルティングサービスを提供する日系100%の現地法人(フジ・スタッフ・インドネシア)であったので、もともと外資規制がクリアされており、買収上の規制面での障害はなかった。また、もう1社はそのフジ・スタッフ・インドネシアが49%出資し、地場資本が51%出資する合弁企業(フジ・ビジャック・プレスタシ)であった。人材紹介、研修などのサービスをするためには外資規制上の問題があるが、もともと地場資本マジョリティーの企業であるため問題はなかった。規制面での問題はなく、買収することが決まってから、5カ月で完了した。このうち3カ月以上は、現地銀行による与信を得るための手続きであったが、もともと日系100%の会社でもあり大きな問題はなかった。また、買収価格を決めるにあたって、不動産価値を算定することが難しかった。境界線も定かではないなど課題が多い。

日本語の共通語化は第1の海外ビジネスの秘訣

質問:
これだけの海外拠点を管理、運営していく秘訣は。
答え:
主に3つある。1つ目は、日本語を共通言語にしていることだ。基本的に、各国には日本人または日本語を理解するローカル人材がマネージメント層におり、本社への報告は日本語で行ってもらう。本社の社長は日本人であり、情報統制を利かせていくためにも日本語を共通言語にしておく必要がある。小さい会社がグローバル展開するための秘訣(ひけつ)だ。
2つ目は、海外拠点への権限移譲だ。銀行口座の管理は、ネットワークで遠隔管理しているが、それ以外の責任は原則、現地側にある。これにより決裁時間も早くなっている。ただし、(里見氏が)各国拠点に月1回程度行くようにしている。各国拠点では所定のことができているか、定期的に確認作業をするだけでよいようにしている。
3つ目は、海外展開をする際に、「時差」を気にしていることだ。ネパールとの時差が3時間15分あるが、これを上限としており、その範囲に収まる国での事業しかしないことにしている。また、時差が本社と海外拠点の業務の障壁にならないようにしている。つまり、インターネットを介したスカイプによる会議など、時差を気にしないといけないような時間的な拘束をすることはやめた。管理する側の自分たちも、時間に拘束されるのはつらい。現在は、メールベースで、モバイルに情報が届く状況。現地は現地の時間で動けるようにしている。最近では、ネットワークのつながらない国がなくなって助かっている。

無理に異文化を取り除かないことが肝要

質問:
外国人材を日本の顧客へ紹介しているが、外国人材を活用する際にアドバイスしていることはあるか。
答え:
実は、当社でも、3年前から5人の外国人を雇っており、会議資料の翻訳や海外拠点とのやり取りなどの業務をしてもらっている。彼らは1期生だが、インドネシア、ベトナム、インド、中国、米国から来ており、国籍もバラバラだ。自分たちの経験も踏まえると、外国人材活用において最も大事だと感じることは「異文化を取り除かない」ことだろう。彼らの文化、私たち日本人にとっての異文化を縛ることはしない。例えば、イスラム教を信仰するインドネシア人はラマダン(断食)があるが、そのときは配慮する。また、当社の外国人スタッフは日本語もできるが、英語の方が便利なら、負荷のかからないようにスタッフ間では英語で話してもよいことにしている。
また、技能実習生を雇っている顧客(受け入れ先)に対しては、実習生の集団生活を勧めている。安全性、労災リスクなども勘案しているが、この集団生活により、日本で働く集団としての意識を持ってもらうようにすることが大事だ。加えて、受け入れ企業には、母国語を話せる人がいるとよい。必要に応じて、当社が通訳者を紹介している。
一方、高度人材のエンジニアを受け入れている顧客は、日本語を話せなくても英語が話せればよいという会社も多い。高度人材は、労働者として接するのではなく、プロという認識をもっている人材として対応する必要があるとアドバイスしている。

現地ニーズをつかみ、インドネシアからオーストラリアへ

質問:
今後のさらなる海外展開の計画は。
答え:
インドネシアでの買収は、現地でのビジネスをすることを目的としたもので、事業拡大も現地を主体に考えている。現在、インドネシアからオーストラリアへ進出することを検討している。インドネシアの学卒者の3割強は、オーストラリアへ留学するという実態があり、現地では日本へ行くよりも、オーストラリアへ行く方が人気であることが分かった。インドネシアからオーストラリアは時差もほとんどなく、距離的にも近い。オーストラリアへ行くインドネシア人をターゲットに事業をしたい。また、オーストラリアでは人材派遣事業ができるため、本業のノウハウも提供していければと思っている。
さらに、将来的には、米国への進出も視野に入れている。当社の顧客のメインは製造業だが、米国で進んでいる技術を持つ高度人材に対するニーズがある。アジアをビジネスの中心に据えつつ、米国事業も考えていく。
質問:
海外展開においてのジェトロの活用は。
答え:
海外へ行く場合は、ジェトロ仙台事務所経由で海外ブリーフィングサービスを申し込むようにしている。例えば、インドネシアへの進出前には、ジェトロ・ジャカルタ事務所を訪問し、外資規制などについて説明を受けた。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部アジア大洋州課長
小島 英太郎(こじま えいたろう)
1997年、ジェトロ入構。ジェトロ・ヤンゴン事務所長(2007~2011年)、海外調査部アジア大洋州課(ミャンマー、メコン担当:2011~2014年)、ジェトロ・シンガポール事務所次長(2014~2018年)を経て現職。 編著に「ASEAN・南西アジアのビジネス環境」(ジェトロ、2014年)がある。

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