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特集:世界の知日家の眼インドは日本から企業文化など多くを学ぶ必要
タルン・ダス氏:元インド工業連盟最高顧問

2018年6月11日


タルン・ダス氏(ジェトロ撮影)

日印の友好関係は非常に緊密

質問:
近年の日本および日印関係をどう見ているか。
答え:
政治・経済における日本のアプローチはこれまで非常に慎重で、特に防衛、軍事面などでは消極的な反応が多かった。しかし安倍晋三首相はオープンな姿勢を示しており、段階的に政策の変化が見られることは1つの契機とみている。
前マンモハン・シン政権は当時、インドとの協力関係構築における日本の反応は良くないとしており、米国との関係強化に動いていた。その時期と比較すると、近年の日印関係は大きく変化している。モディ首相は日本に対して非常にポジティブな印象を持っており、安倍首相とも強い友好関係を築いている。ムンバイ~アーメダバード間の新幹線事業は両国の関係強化の大きな後押しとなるだろう。またモディ政権は、2019年に総選挙を控え、2018年が最後の1年であることから、日本からの要望を打ち込むには、今が絶好の機会となろう。

インドは多くを日本から学ぶべき

質問:
インドは日本をどう見ているか。
答え:
日本が嫌いなインド人はいないと言っても過言ではない。インドのどの国内政党も日本びいきであることは、2国間関係の大きなアドバンテージである。一方、インドは中国との間に国境問題や貿易不均衡など、さまざまな問題を抱えている。
インドは日本の企業文化を学ぶべきだと考えている。日本とインドでは社会、経済、商習慣などが異なる。筑波大学の司馬正次名誉教授が、日本のものづくりの神髄を伝えるために国際協力機構(JICA)の事業で実施してきた、インド製造業の経営幹部育成は素晴らしい。こうした取り組みが広がり、日本式のものづくりや企業精神、ビジネスの手法がインドでも広がっていくことを望む。
2014年9月にモディ首相が訪日した際に在日インド人に向けたメッセージは、「インドの友人5人を日本に呼び、日本のきれいさを見てもらうことで、インドをきれいにする「クリーン・インディア」活動を推進してほしい」というものだった。日本から学ぶべき点は多い。

日本への人材呼び込みは工夫を

質問:
日本の少子高齢化に伴い、インドの技能人材を日本に呼び込もうとする動きが起きている。これについてどう考えるか。
答え:
高度人材受け入れに関しては、どの国からの移民を受け入れるのか、政策を検討する必要がある。欧州諸国は受け入れを引き締めたが、逆に自分たちの首を絞める結果となったと見ている。
日本により多くのインド人を呼び込むには、より多くのインド人に日本語を学ぶ機会を提供することが重要である。またベジタリアンの多いインド人に対し、食文化の違いに対する配慮の工夫も重要であると考える。
質問:
日本企業のインドへの進出拡大には何が必要か。
答え:
インドは価格競争が厳しい。日本企業はインドでの生産を開始ないし拡大し、コスト削減を図ることが重要であろう。そして日本企業の集積を広げていくべきだ。インドは必ずしもハイテクを求めておらず、一世代前の手法であっても日本の技術やシステムを持ち込み、現地化しながらより良い販路を探る必要がある。インドを熟知しているインド人の人材を要職として活用することも有益と言えよう。
インドビジネスを進める上で、インドで良いパートナーを見つけることも重要だ。パートナー選定は困難だが、さまざまな観点から調査を重ねる必要がある。こうしたパートナー探しにおいて、インド工業連盟(CII)が日本企業の役に立てると考える。CIIはインド国内60カ所に拠点があり、各地で日本企業の進出支援が可能だ。パートナー選定は企業規模が合わない場合があるが、CIIには中小規模のメンバー企業もいる。
日本企業によるインドビジネスの良い事例が、ラジャスタン州に州政府が開発し、ジェトロが企業の入居支援をする「ニムラナ日本企業専用工業団地」だ。日本企業が集まって入居することで、電力、水といったハードインフラのみならず、生活環境などのソフトインフラの整備も進んでおり、日本企業が自国のビジネススタイルや生活環境を保ちながらビジネスをしている。多くの日本人駐在員が暮らすハリヤナ州のグルガオンには、日本人向けホテル、日本食レストランなどがあり、日本人がインドで暮らすためのエコシステムができている。スウェーデン企業やドイツ企業なども、同様の集積づくりをマハラシュトラ州のプネーやカルナータカ州のベンガルールで続けてきた。居心地良く事業を進められる環境を整備することが重要だ。

ステークホールダーの交流強化を望む

質問:
新たな日印経済協力について、どう考えるか。
答え:
日印協力におけるアフリカビジネス展開は良いアイデアと考える。インド政府は通商政策において保護主義的な姿勢を取ることが多いが、これは主に中国を想定したものであり、インドで製造した製品をアフリカに輸出することに関しては問題ないのではないか。
政府やビジネス界のリーダーたちが集まり、政治経済の課題や関心事項について率直に意見交換をする場があると良いと考える。現在、米国との間ではそのような枠組みを設けており、これを日本との間でも設けることができればと考えている。
略歴
タルン・ダス(Tarun Das)
元インド工業連盟(CII)最高顧問。アナンタ・アスペン・センター創設理事、インド笹川ハンセン病財団会長、日印戦略対話共同議長(トラック2)。
1939年、西ベンガル州出身。インドの経団連的位置付けであるビジネス団体CIIで事務局長および最高責任者として30年以上従事。また、日印の国会議員交流などを通じ、日印間の関係強化と相互理解の促進に寄与。こうした貢献が評価され、2006年にはインド政府から「パドマ・ブーシャン」勲章を受章。日本政府からも、平成30年(2018年)春の叙勲で旭日中綬章を受章した。
執筆者紹介
ジェトロ・ニューデリー事務所
古屋 礼子(ふるや れいこ)
2009年、ジェトロ入構。在外企業支援課、ジェトロ・ニューデリー事務所実務研修(2012~2013年)、海外調査部アジア大洋州課を経て、2015年7月からジェトロ・ニューデリー事務所勤務。

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