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特集:世界の知日家の眼信頼構築で、日本のサービス精神の浸透を(シンガポールその2)
ライ・アーキョウ氏:シンガポール日本文化協会会長(横河電機アジア元社長・会長)

2018年6月11日

「日本企業が海外ビジネスで成功するには、地元との信頼を構築した上で、日本人が持つサービス精神や美感をローカル社員に浸透させることだ」と語るのは、ライ・アーキョウ氏。ライ氏は長年、在シンガポールの日本企業で勤務し、現地社長も務め、現在はシンガポール日本文化協会の会長を務める。地元の大学で日本の経営についての講義もしている同氏に話を聞いた。


ライ・アーキョウ氏(ジェトロ撮影)
質問:
ご自身の経歴は。
答え:
日本の大学に留学した後、1975年に横河電機アジアに入社した。同社で41年間勤務する中で、人事、経理、製造、企画などさまざまな部署を経験し、社長に就任した。現在は、同社の名誉メンターを務めるほか、シンガポール日本文化協会の会長をしている。同協会は、1963年にシンガポールで設立され、日本語教室を開講している。日本人教師が毎年1,500人規模の学生に日本語を教えており、シンガポール人と日本人の相互理解を促進している。
質問:
大学での講義内容は。
答え:
1980年代からシンガポール国立大学(NUS)や南洋理工大学(NTU)で講義をしている。講義内容は渋沢栄一、松下幸之助、本田宗一郎など日本の著名な経営者の経営哲学やトヨタの生産方式など。なぜ日本企業の中には100年企業が多いのか。シンガポールなどアジアの企業経営者は、成功した日本人経営者の哲学を熱心に学ぶべきだ。それを実践し、社風に反映させることが、企業が長く成功する要因だ。
質問:
日本に関わり深いが、近年の日本経済や日本企業についてはどのようにみているか。
答え:
近年の日本をみると、20世紀と比べて他国での影響力が弱まったと感じる。現在は、アジア全体を見通しても、日本から学ぼうとする指導者を見掛けない。日本にも指導者となる存在がいないと感じている。また、日本企業は日本製に対して自信過剰ではないだろうか。近年の資料改ざんの問題により、日本製品への信頼は揺らいでいる。日本製のハードや機械・生産システムは欧州とも差はなく、最新のテクノロジーでは中国が上回る分野もある。
質問:
では、日本企業が持つ強みは何か。
答え:
日本の強みは、「絶対に良い製品しか顧客に提供しないという精神」と「美感」だ。例えば、日本のデパートで商品を購入すると、店員は商品を包装紙にきれいに包み込んでくれる。このようなサービス精神は、日本人にとっては当たり前かもしれないが、他のアジア諸国にない部分だ。
工場の現場も同じだ。製品に対していかに付加価値をつけるか。単に一製品とみなすか、一つ一つ心をこめて製造し、芸術品と呼べるレベルにまで品質を追求するか。日本の風土が育ててきた日本の「美感」が海外のエンジニアに浸透すれば、日本の影響力は復活するだろう。
質問:
横河電機がシンガポールで成功した背景は。
答え:
横河電機本社からのシンガポールへの投入資金は大きくなかった。それでも成功した理由は、当時の本社社長が他の日本人経営者と感覚が異なり、国際感覚を持ち合わせていたためだ。日本の経営者が日本の感覚のまま海外でビジネスをしているような会社は、海外での成功は期待できない。国際感覚とは、現地で採用した地元の社員を信用し、ビジネスを任せることだ。現地で成功するためには、最初から会社を育てていくという強い意志が必要で、地元社員との信頼関係があって初めて大きく成功できる。
質問:
海外進出を目指す日本企業へアドバイスを。
答え:
日本国内は人材不足なので、海外の経営は日本人を派遣せず、最初から地元社員を信頼して任せてみてはどうか。経営は日本人でないといけないという感覚では海外で成功しない。横河電機アジアのインドネシア・バタム工場はインドネシア人を社長にしている。これは地元の社員を信頼し、誇りを持って仕事してもらうためだ。
経営側と地元社員の間に信頼関係があること、日本人の持つサービス精神や美感を現地社員にも浸透させること、つまり、どの国で作るか(Made in)だけでなく、どう誇りをもって(Made by)製品・サービスを提供するか(例:Made in Indonesia by Yokogawa)が海外で成功する秘訣(ひけつ)だ。
略歴
ライ・アーキョウ(Lai Ah Keow)
1945年生まれ。1966年4月に日本に留学。1967年、一橋大学へ入学し、その後、一橋大学大学院、東京大学大学院を経て、1975年に横河電機アジアに入社。複数部署を経験し、2012年から2014年まで社長、その後、2016年まで会長を歴任。現在は同社名誉メンターに加え、シンガポール日本文化協会会長も努める。また1980年代から、シンガポール国立大学(NUS)、南洋理工大学(NTU)で日本の経営に関して教鞭(きょうべん)を執っている。
執筆者紹介
ジェトロ・シンガポール事務所 次長
小島 英太郎(こじま えいたろう)
1997年、ジェトロ入構。ジェトロ・ヤンゴン事務所長として勤務(2007~2011年)。ジェトロ海外調査部アジア大洋州課(2011~2014年)を経て現職。 編著に「ASEAN・南西アジアのビジネス環境」(ジェトロ、2014年)がある。
執筆者紹介
ジェトロ・シンガポール事務所
源 卓也(みなもと たくや)
2013年に富山県庁入庁後、商工企画課にて各課取りまとめ、管理業務に従事。2015年より公立大学法人富山県立大学へ出向。知的財産や環境教育、附属施設の運営を担当。2017年4月よりジェトロへ出向。海外調査部アジア大洋州課を経て2018年4月よりシンガポール事務所にて、シンガポールの調査・情報提供に従事。

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