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特集:世界の知日家の眼相手国への関心を喚起し、双方向の交流を促進すべき(アラブ首長国連邦)
アハメッド・ビン・シャビブ氏:カルチュラル・エンジニアリング創立者
アハメッド・ブカシュ氏:アーキデンティティー建築設計事務所設計チーフ・創立者

2019年1月29日

シャビブ氏はこれまで、図書館やパブリック・アート・ギャラリーなど文化関連施設の設計等を手掛けてきた建築家。父親の影響で日本への関心が高く、日本文化への造詣も深いため、アラブ首長国連邦(UAE)外務・国際協力省のアドバイザーも務めている。一方、ブカシュ氏は京都工芸繊維大学修了、日本の設計会社でのインターンなどの経験から日本への造詣が深い。両氏に日UAE関係について、文化、慣習、ビジネスなど様々な側面から意見を聞いた。


質問に応えるアハメッド・ブカシュ氏(ジェトロ撮影)
質問:
日本との関係は。
答え:
(シャビブ氏)
最初の接点は、1980年代から父親が日本の医療品メーカーや金融機関と密接に仕事をしていたため、日本の話を聞きながら育ったこと。家の中にも日本の製品や伝統産品が多くあり、私の家庭には日本の文化が生きていた。また、10年ほど前から親しく付き合っている日本人がおり、彼は東京都の文化振興の仕事や哲学教師として働いていた人物であり、彼や彼の家族からもいろいろ学んだ。
(ブカシュ氏)
私は若い頃に日本に魅了され、成長につれて情熱が進化した。ボストンで学士号の勉強していたとき、何人かの日本の学生に会い、安藤忠雄氏の余計な装飾のないシンプルな構造の作品に魅了され、目が開かれた私はシンプルなデザインがリラックスにつながると感じた。日本の建築やデザインを探求したいと思ったので、奨学金を申し込み、京都工芸繊維大学で建築学修士号を取得した。京都での在学中は、鴨川、金閣寺、銀閣寺など、今まで見たことがない美しいものを見ることができ、非常に幸運だった。日本とUAEの建築を比較しながら、日本で学んだことを今の仕事に生かしている。
質問:
日本や日本人についてどう思うか。
答え:
(シャビブ氏)
UAEの根幹的な価値観は、日本と同じだと思う。敬意や道義心、価値観がよく似ている。私の専門である建築分野では、両国の伝統的な建築物はシンプルで自然の美しさを生かそうとしている点がよく似ていると思う。日本には興味深い文化的な場所が多く、そうした点からも、今も昔も非常に魅力を感じる。
こうした背景があるため、ある課題に日本がどのように対処したかを知ることは、UAEで同様の課題が起きたときに参考になると思っている。例えば、日本の地方の村で過疎化が進み、歴史的な価値のある伝統家屋の多くが空き家になったとき、それを美術館やレストランなどとして再生し、観光資源として活用していると聞いた。UAEのハッタ地域などでも、人が都会に移り、家屋の維持が問題になっているので、同様のことができないかと思っている。こうしたことができるのは、われわれが同じ価値観を有しているからだ。
(ブカシュ氏)
一般的に日本人は、どれほど違うかにかかわらず、異文化を尊重、理解する文化を持っており、満足できるようにしてくれる。例えば、場所は狭かったが、私は留学中にイスラム教のお祈りをすることができた。留学中の日本人の友人たちは差異を理解し、違いを尊重しつつ、日本語の翻訳等で研究を手伝ってくれた。
しかし、特に言語の面で、大学は留学生に対して厳しい面もある。私は文部科学省の留学生であったため、初年度に日本語の基礎を全て学びつつ、希望のプログラムへの試験をクリアしなければならず、最初の1年は厳しかった。建築プログラム修了中も、教授の中には英語をあまり推奨せず、留学生が日本語を学ぶべきと考えているように感じてしまう人もいた。
質問:
最近の日本とUAEの関係については。
答え:
(シャビブ氏)
UAEはヨーロッパやアジアのさまざまな国々と密接な関係を築いているが、その中で1971年の独立以前から関係が深かったのは、宗主国だった英国と、日本であった。1970年の大阪万博にはUAE建国前のアブダビ首長国が単独で出展していたし、アブダビの都市計画マスタープランを作ったのは、ザーイド前大統領の土木技術アドバイザーだった日本人の建築家だった。
しかし、UAEにとって、英国との関係は強固で特別な一方で、アジアの中で歴史的に最も関係が古い日本とは、英国ほどの特別な関係ではないと思う。だからこそ、私はUAE人にはもっと日本を訪問し、日本の価値観を学び、UAEに持ち帰ってくることを期待している。
(ブカシュ氏)
私はUAEと日本は非常に強い関係を持ち、大きな可能性を有していると思うが、懸念もしている。例えば、日本と韓国を比べてみると、韓国人は日本人より遅くUAEに来たにも拘わらず、観光地としてのプロモーションやUAEへの企業進出を急速に進め、韓国文化センターもUAEに設立した。UAEはどんな国とのどのような連携も尊重するが、日本は他の東アジアの国に比べてより強い関係を有しているにも拘わらず、その機会を最大限活用できていないように感じる。
質問:
今後、日本とUAEはどのような分野で協力していくことができると思うか。
答え:
(シャビブ氏)
UAEの市場規模は、周辺の湾岸諸国を含めても、日本の製造業にとっては小さく、私は、UAEで日本製品の販売をどのように拡大するかは問題ではないと思う。それよりも、日本企業はUAEのハブ機能をもっと重視すべきであり、UAEを地域の消費市場へのエントリーポイントとして、もっと重視すべきだと思う。
また、日本の文化はUAEでも知られているが、UAEの文化が日本で十分認知されていないことも気に掛かっている。例えば、デーツやラクダミルクなどUAEの伝統産品を日本へ輸出することなどにより、日本でUAEへの関心を喚起し、双方向の文化交流を促進していくべきである。UAE人と日本人の若者は、欧米人に比べ少しシャイなところがよく似ており、近しい友人として関係を築いていけるだろう。
(ブカシュ氏)
日UAE双方の中小企業同士の交流が有効であると私は信じている。UAE側が進めても日本の大企業がUAEへの進出をちゅうちょしもっと人口の多い国をターゲットにした事例をいくつか知っており、中小企業の方が大企業よりも柔軟性があると思う。
最近、タイに訪問した際、日本の店舗が非常に多くて驚いた。それに比べて、UAEでは、日本式ベーカリーを最近いくつか見かけるようになったが、まだ日本の店舗は限られている。UAE人はさまざまな日本食を知り始めており、和牛は今非常に人気が高まり、ラーメンが何かも知っている。UAE人の好みも変化しており、日本の食べ物、飲み物、お菓子、ファッション、デザインなどが社会に浸透してきている。また、日本はもっとUAEで観光プロモーションを行うべき。UAE人の日本へのビザなし渡航が認められ、日本はUAE人にとって人気のある観光地になりつつあるが、彼らにアドバイスする観光局の事務所がUAEにはない。
質問:
日本企業がUAEとの関係を深めるためにアドバイスやリクエストは。
答え:
(ブカシュ氏)
私はこれまで何社かの企業とUAEでの事業展開について話をしたことがあるが、日本企業は地元市場の価格を研究せず、地元市場の3倍の価格を提案してくることがある。品質がどれほど良くても地元市場を理解しなければ売れない。
また、日本企業には多くのビジネスチャンスがあると思うが、ビジネスがあるときにしか来ないので、それを持続させることができない。日本企業はここの文化や慣習を理解する必要がある。

インタビュー実施日
アハメッド・ビン・シャビブ氏(2018年11月25日)
アハメッド・ブカシュ氏(2018年12月20日)

略歴

アハメッド・ビン・シャビブ(Eng. Ahmed Bin Shabib)
カルチュラル・エンジニアリング創立者
都市設計者。オックスフォード大学 St Catherine's Collegeにて持続可能な都市開発の修士号を取得。兄弟のラーシド氏とともに、現代湾岸諸国の都市アイデンティティーを促進するための組織としてカルチュラル・エンジニアリングを立ち上げた。

アハメッド・ブカシュ(Ahmed Bukhash)
アーキデンティティー建築設計事務所 設計チーフ・創立者
2002年ボストンの Wentworth Institute of Technologyで学位取得(建築学)。
2006年に京都工芸繊維大学修了(建築学)。2007年~14年にかけてドバイの大手デベロッパーで都市計画・開発を担当。2009年にアーキデンティティー設立。Dubai Creative Clusters Authorityの都市計画担当ディレクターでもあり、ドバイ政府の長期計画ドバイプラン2021の一環で設立されたDubai Design Districtなどのマスタープランの審査・調整等を担う。
執筆者紹介
ジェトロ・ドバイ事務所
ガーダ・アシュラフ
カイロ大学卒業後、6年間の調査会社での勤務等を経て2016年4月ジェトロ・ドバイ事務所入所。大学ではマーケティングを専攻。

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