1. サイトトップ
  2. 海外ビジネス情報
  3. 地域・分析レポート
  4. 特集
  5. 世界の知日家の眼
  6. 変革こそグローバル競争で勝ち残るカギ(シンガポールその1)

特集:世界の知日家の眼変革こそグローバル競争で勝ち残るカギ(シンガポールその1)
チュア・テック・ヒム氏:エンタープライズ・シンガポール シニアアドバイザー

2018年6月11日

『日本がグローバル競争で生き残るには、大企業がいかに「トランスフォーメーション(変革)」していくかが重要だ』と語るのは、チュア・テック・ヒム氏。日本経済のポテンシャルは地方経済にあるとし、地方と世界とが直接つながることの重要性を指摘する。シンガポールきっての日本通の1人として知られ、現在はシンガポール国際企業庁(2018年4月からシンガポール企業庁:エンタープライズ・シンガポールに改称)シニアアドバイザーを務めるチュア氏に話を聞いた。


チュア・テック・ヒム氏(ジェトロ撮影)

両国企業の協業で第三国進出

質問:
日本とシンガポールの2国関係と今後の協力について。
答え:
日本とシンガポールの相互の貿易・投資関係は深い。シンガポールは1970年代から2000年代まで、石油化学や半導体などあらゆる産業が、日本からの直接投資で成長した。一方、日本へのシンガポールの投資残高はアジアでトップを誇る、2国間の貿易も安定している。貿易と投資の延長線で、今後は、両国企業の協業による第三国進出が伸びていくだろう。
質問:
2国間パートナーシップを具体的に。
答え:
シンガポールのインフラは世界的に評価が高い。しかし、実際に港や空港を整備しているのは、日本の建築会社やエンジニアだ。シンガポールは、基本構想(マスタープラン)作成や、整備後の運営が得意だ。こうした2国間の得意分野を組み合わせば、素晴らしいシステムができあがる。大型インフラ開発では、両国がこれから関係を深めていく上で多くのチャンスがある。
質問:
長年にわたり日本経済を見てきて、現在の日本企業についてどのような見方をしているか。
答え:
これまでの日本にはハードウエアやエンジニアリングなど、ものづくりの強みがあった。しかし、今のデジタル、コネクティビティーの社会ではこの強みが弱みになるケースもある。ハードだけが強くても、サービスやソフトウエアを含めたソリューションとしてのビジネスモデルを提案できないと、グローバル社会での競争は弱まってしまう。
一方、日本にはソフトの強さもある。日本の消費者は非常に洗練されているため、その消費者を納得させるレベルの品質、デリバリーの良さ、サービスレベルの高さを日本企業は持っている。
日本企業はハードもソフトも両方持ち合わせている。あとは、この2つをうまく組み合わせ、ソリューションとして市場に提案できるかどうかだ。注意すべきは、スピードだ。日本企業は綿密で細かい計画を作るが、これは強みであり、弱みでもある。

スタートアップや中小企業を活用

質問:
日本企業がグローバル競争で生き残るためには、どのようにすればよいか。
答え:
日本の経済を支えている大企業が、考え方を変え、いかにトランスフォーメーション(変革)していくかが重要だ。変革のカギとなるのは、スタートアップ、中小企業の活用ではないか。必要なイノベーション技術を企業内で持つ自前主義である必要はない。海外企業も含めた外部とのパートナーシップ戦略が求められる。新しい破壊的な技術が入って来ることを認められるか、というマインドセットの問題がある。
質問:
変革が必要と分かっていても、できる企業とそうでない企業がある。どこに違いがあるか。
答え:
企業内部の複雑さによって異なるが、共通して言えることは、変革しなければ既存の産業は破壊されるという意識があるかどうかの違いだ。新たなビジネスモデルの企業が世界各国で生まれ、今までにない激しい競争が起きている。例えば、シンガポールの場合では、タクシー業界がシェアリング・配車サービスを提供するスタートアップのグラブによって、数年で完全に変化した。また、欧米、中国のインターネット企業は東南アジアにすごい勢いで進出しており、これから3~5年の間に業界地図は塗り替えられるだろう。
質問:
早急に変革が必要な日本の産業分野は。
答え:
自動車産業だ。日本の自動車産業は世界最大だが、この強みゆえに電気自動車(EV)や自動運転といったトレンドに思い切ってシフトできていない。グローバル企業はEVや自動運転の研究開発に注力している。もし、EVや自動運転が完成してしまえば、自動車市場は1~2年で塗り替わるだろう。
質問:
日本経済をより活性化していくためのヒントはあるか。
答え:
日本経済のポテンシャルは地方経済にあるはずだ。例えば、あれほど地方に多くの観光資源がある国は日本以外にない。東京一極集中だと、日本が世界とつながるルートは東京だけだが、地方と直接つながるルートが多数生まれると、日本が世界とつながる機会が増加する。ただ、つながった地方だけで完結するのではなく、そこからさらに多くの地方へつながるネットワークが重要だ。
略歴
チュア・テック・ヒム(Chua Taik Him)
1955年生まれ。1977年に東京大学工学部電子工学科を卒業。さらに、1999年ハーバードビジネススクールにてAMP修了。1985~1992年に駐日シンガポール大使館経済参事官として日本に駐在。1998年シンガポール経済開発庁(EDB)産業開発局局長に就任。2002年~2007同庁副長官を務めた。その後、シンガポール国際企業庁(2018年4月からシンガポール企業庁:エンタープライズ・シンガポールに改称)の副長官に就任し、現在はエンタープライズ・シンガポールのシニアアドバイザーを務めている。
執筆者紹介
ジェトロ・シンガポール事務所 次長
小島 英太郎(こじま えいたろう)
1997年、ジェトロ入構。ジェトロ・ヤンゴン事務所長として勤務(2007~2011年)。ジェトロ海外調査部アジア大洋州課(2011~2014年)を経て現職。 編著に「ASEAN・南西アジアのビジネス環境」(ジェトロ、2014年)がある。
執筆者紹介
ジェトロ・シンガポール事務所
源 卓也(みなもと たくや)
2013年に富山県庁入庁後、商工企画課にて各課取りまとめ、管理業務に従事。2015年より公立大学法人富山県立大学へ出向。知的財産や環境教育、附属施設の運営を担当。2017年4月よりジェトロへ出向。海外調査部アジア大洋州課を経て2018年4月よりシンガポール事務所にて、シンガポールの調査・情報提供に従事。

この情報はお役に立ちましたか?

役立った

役立たなかった

この特集の記事

※随時記事を追加していきます。

ご質問・お問い合わせ