2024年の新車販売は35万台、EV普及も政策に変化(ウズベキスタン)
2025年6月17日
ウズベキスタンの経済研究改革センターによると、2024年に乗用車新車(内燃機関車)の販売台数は35万1,007台で、2023年比で7.5%の減少となった。シェアの多くはウズベキスタン国内で生産された国産車であり、89.2%(約31万3,100台、前年比6%減)を占めた。外国製新車の販売台数は、約3万7,800台(前年比17%減)だった。2023年には外国製新車の販売台数は2022年比2.4倍を記録したが、2024年に減少に転じた(「Gazeta.uz」2025年3月19日、「Review.uz」2025年1月6日)。
2024年の新車販売が全体的に低調だった背景には、2023年に本格的に始まった自動車ローンの普及や並行輸入の解禁に伴う需要(2024年2月21日付ビジネス短信参照)が一服したことがあると考えられる。
2024年の販売市場について、特筆すべき点は2点ある。1点目は、内燃機関車の販売は低調だったが、電気自動車(EV)の伸びは著しかったことだ。2024年のEV新車の販売は、前年比43%増の3万100台を記録した。ウズベキスタン政府の主導により2023年からEVの普及が進んでおり、EV市場は2029年までに少なくとも2倍の伸びを記録するという予測もある(2024年12月17日付地域・分析レポート参照)。EVの販売は自動車全体の10%にも満たず、現時点でも自動車市場の主役は内燃機関車であるが、EVの普及が急速に進み、存在感を高めていることは間違いない。
もう1つの特徴は、2024年の乗用車輸入台数のうち、EVおよびハイブリッド車の輸入台数がガソリン車の輸入台数を初めて上回ったことだ。「Gazeta.uz」(2025年1月10日)によると、2024年の輸入台数のうち、ガソリン車の輸入台数は3万2,928台だったのに対し、ハイブリッド車およびEVを合わせた輸入台数は4万1,575台となった。
内燃機関車も含めた乗用車の輸入を相手国別でみると、中国の存在感が際立つ。ウズベキスタン大統領府付属統計庁の発表によると、中国からの輸入台数は6万1,000台に上る(表1参照)。特に、輸入が近年急増しているEV、プラグインハイブリッド車(PHV)のほぼ全てが中国からの輸入とみられる。後述するようにEVの輸入には若干の政策変更が入ったものの、今後もEV市場が成長するとすれば中国製EV、PHVの更なる拡大が見込まれる。なお、日本からの乗用車輸入台数は168台で5位に位置している。
国名 | 輸入台数 |
---|---|
中国 | 61,000 |
韓国 | 11,900 |
米国 | 639 |
インド | 577 |
日本 | 168 |
その他 | 374 |
出所:ウズベキスタン大統領府付属統計庁
生産は国営ウズオートが8割、BYDも生産を開始
ウズベキスタンの自動車生産の現状はどうか。統計庁によると、2024年に国内で生産された乗用車(一部の商用車を含む)は42万4,808台だった。特に、ブランド別では、シボレー車が36万7,215台生産され、全体の86.4%を占めた(表2参照)。シボレーをモデル別にみると、コバルト(全体のシェア38.8%)やダマス(同24.0%)、トラッカー(同10.8%)といったシボレーブランドの人気車種を生産する国営ウズオート・モータースが生産の8割を超えるシェアを占め、例年通り強い存在感を示している。メーカー・ブランド別の販売台数は一般公表されていないが、国産車の販売が約9割を占めることを考えると、販売シェアもウズオートがその大半を握っているとみられる。
2024年の生産面のトピックとしては、中国EV大手のBYDがウズベキスタン工場で生産を開始したことだろう(2024年7月4日付ビジネス短信参照)。2024年は5万台の生産を目指すとしていたが、結果として生産台数は4,004台にとどまった。後述の通り、政府としても国内生産を強化する意向であるため、本格的な稼働が始まる2025年以降には生産台数を大幅に伸ばしていく可能性がある。同社は最終的には50万台の生産を目指すとされているほか、BYDウズベキスタン工場は近隣国への輸出にも挑戦していく構えだ。
ブランド | 2023年 | 2024年 | ||
---|---|---|---|---|
台数 | 台数 | シェア | 前年比伸び率 | |
シボレー | 368,111 | 367,215 | 86.4 | △ 0.2 |
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118,159 | 164,887 | 38.8 | 39.5 |
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89,141 | 101,912 | 24.0 | 14.3 |
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48,082 | 45,918 | 10.8 | △ 4.5 |
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30,596 | 41,661 | 9.8 | 36.2 |
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82,133 | 12,837 | 3.0 | △ 84.4 |
起亜 | — | 19,328 | 4.5 | — |
チェリー | 9,829 | 6,301 | 1.5 | △ 35.9 |
BYD | — | 4,004 | 0.9 | — |
ハバル | 134 | 2,473 | 0.6 | 1745.5 |
ラーダ | — | 6 | 0.0 | — |
特殊目的車両 | 25,599 | 25,481 | 6.0 | △ 0.5 |
合計 | 378,074 | 424,808 | 100.0 | 12.4 |
注:一部の商用車を含む。
出所:ウズベキスタン大統領府付属統計庁発表からジェトロ作成
EV普及政策の微修正、輸入促進から国内生産強化へ
EVに対する関税撤廃措置、インフラ整備、生産誘致など、EVの普及に向けた政策を近年、矢継ぎ早に進めてきたウズベキスタン政府だが、2025年に入り、軌道の微修正がみられる。ウズベキスタン政府はバッテリー式電気自動車(BEV)の廃車料金、いわゆる廃車税を2020年8月1日から導入しているが、2025年5月1日からその料金を大幅に引き上げたのだ(2025年1月31日付閣僚会議決定第52号)(表3参照)。当然、これらは最終小売価格に反映されるためEVの販売にブレーキをかけることとなる。
項目 | 旧料金 | 新料金(2025年5月1日以降) |
---|---|---|
製造から3年未満 | 30BRV(約870ドル) | 120BRV(約3,480ドル) |
製造から3年以上 | 90BRV(約2,610ドル) | 210BRV(約6,090ドル) |
注:BRVは基準計算指標の略。各種税金や手数料の計算に利用される。
2025年5月時点では1BRVあたり37万5,000スム(約29ドル)。
出所:2025年1月31日付閣僚会議決定第52号および「スポット」(2025年2月4日)を基に作成
政府の目的は、環境保護と国内自動車産業の育成だ。投資産業貿易省のイノムジョン・アブドゥラフモノフ対外貿易局長は2025年2月11日、自身のSNSにおいて、この廃棄料金の引き上げの狙いを「使用済み車両による環境汚染の防止、および国内の産業分野の支援」と語っている。EV輸入の急速な増加に伴い、使用済みバッテリーが2035年までに1万トンに上るという試算もある。また、EVへの輸入優遇措置に対して、既存の自動車業界から危機感や不満の声が示されていたことも無関係ではないだろう。
EVの廃車料金については、ウズベキスタン国内で生産されたEVおよびハイブリッド車は2029年末まで免除されている(2022年12月19日付大統領決定第PP-443号)。したがって当面は、輸入されるBEVのみが廃車料金の引き上げ対象となる。
ウズベキスタンのEV輸入の大半を占めるBYDからは、政府による廃車料金の引き上げ政策について公式な反応は特にない。現時点では、ウズベキスタンのEV市場が大きくないことや、同社自身がウズベキスタン国内で生産を始めていることが背景にあるとみられる。ただ、政府方針の微修正を受けて、BYDウズベキスタンは国内生産を加速せざるを得なくなるだろう。
さらに、アブドゥラフモノフ対外貿易局長は、政府が導入しているEVへの関税撤廃措置にネガティブな見解を示している。同局長は、EVの関税撤廃措置が中期的には「製造業の危機、失業率の上昇、国家経済の弱体化」の要因になると指摘した。その上で、EVの関税撤廃措置の見直しと、ウズベキスタン国内での自動車生産の誘致に向け、国内生産を優遇する措置の必要性を主張した。
政府の公式見解ではないとみられるが、対外貿易の実務責任者の主張であることは見逃せない。アブドゥラフモノフ局長の主張を踏まえると、政府としてはEVを含めた自動車産業の国内生産に向けた誘致を一層進め、競争を促していく方針を検討しているものとみられる。諸外国、特にBYD以外の中国EVメーカーがウズベキスタンでの生産を検討していることは従前から報じられており、今後はウズベキスタン国内での生産の動きが活発化する可能性がある。

- 執筆者紹介
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ジェトロ・タシケント事務所長
一瀬 友太(いちのせ ゆうた) - 2008年、ジェトロ入構。ジェトロ熊本、展示事業部アスタナ博覧会チーム、ジェトロ・サンクトペテルブルク事務所長などを経て2024年7月から現職。