特集:対内直接投資に見る中国の動向(2018年上半期)日本からの投資は58.5%の大幅増(湖北省)

2018年11月9日

2018年上半期における湖北省の対内直接投資額(実行ベース)は、63億3,285万ドル(前年同期比7.8%増)と高い伸びを維持した。日本からの投資(実行ベース)は6億3,102万ドル(58.5%増)となり、国・地域別で香港に次ぐ2位だった。

武漢市は2桁台の伸びに

2018年上半期の湖北省の対内直接投資額(実行ベース)は、前年同期比7.8%増の63億3,285万ドルで、契約金額は0.3%増の46億3,436万ドル、契約件数は51.5%増の197件だった(表1参照)。主要都市別にみると、対内直接投資額(実行ベース)で武漢市が前年同期比14.7%増、襄陽市が8.0%減、宜昌市が70.8%減となった。

表1:湖北省の対内直接投資 (単位:件、%、100万ドル)(△はマイナス値、―は値なし)
省・市 契約ベース 実行ベース
件数 構成比 前年(同期)比 金額 前年(同期)比 金額 構成比 前年(同期)比
湖北省 2016年 235 100.0 △14.23 3,341 △ 19.7 10,129 100.0 13.2
2017年 272 100.0 15.7 8,607 157.6 10,994 100.0 8.5
2018年 上半期 197 100.0 51.5 4,634 0.3 6,333 100.0 7.8
武漢市 2016年 142 60.4 0.0 n.a. 6,833 67.5 14.1
2017年 161 59.2 13.4 n.a. 7,956 72.4 16.4
2018年 上半期 121 61 49.4 n.a. 4,933 77.9 14.7
襄陽市 2016年 6 2.6 △50 n.a. 824 8.3 13.3
2017年 17 6.3 183.3 n.a. 916 8.3 11.1
2018年 上半期 8 4.1 △ 11.1 n.a. 421 6.6 △ 8.0
宜昌市 2016年 12 5.1 20.0 n.a. 391 3.8 15.0
2017年 7 2.6 △41.7 n.a. 256 2.3 △34.5
2018年 上半期 10 5.1 233.3 n.a. 69 1.1 △ 70.8
注:
n.a.は数字が公表されていないことを示す。
出所:
湖北省商務経済指標(2018年6月号)

2018年上半期の湖北省における対内直接投資の状況と特徴としては、主に以下の点が挙げられる。

(1)「武漢都市圏」(武漢市と周辺8都市)のへの対内直接投資(実行ベース)が全体の84%を占めた(表2参照)。

表2:武漢都市圏の対内直接投資(実行ベース、2018年上半期) (単位:100万ドル、%)
(△はマイナス値、―は値なし)
都市名 金額 構成比
武漢市 4,933 77.9
孝感市 135 2.1
黄石市 90 1.4
仙桃市 80 1.3
鄂州市 29 0.5
咸寧市 27 0.4
黄岡市 17 0.3
潜江市 8 0.1
天門市 0.5 0.01
全省(その他を含む) 6,333 100.0
前述の9都市が全省に占める割合 84.0
出所:
湖北省商務経済指標(2018年6月号)

(2)産業別(実行ベース)にみると、第一次産業の投資金額は1億2,589万ドル(表3参照)。第二次産業、第三次産業がそれぞれ33億2,487万ドル、28億8,209万ドルで、前年に引き続き、第二次産業への投資が最大となった。

表3:湖北省の産業別対内直接投資 (単位:件、%、100万ドル)(△はマイナス値)
産業 契約ベース 実行ベース
件数 構成比 前年(同期)比 金額 構成比 前年(同期)比 金額 構成比 前年(同期)比
第一次産業 2016年 13 5.5 △23.5 1,133 33.9 376.7 94 0.9 △43.6
2017年 10 3.7 △ 23.1 292 3.4 △ 74.2 193 1.8 105.7
2018年 上半期 5 2.5 n.a. 15 0.3 n.a. 126 2.0 n.a.
第二次産業 2016年 54 23.0 △47.6 1,375 41.1 △18.2 5,960 58.8 37.9
2017年 104 38.2 92.6 2,337 27.2 70.0 5,972 54.3 0.2
2018年 上半期 68 34.5 n.a. 1,687 36.4 n.a. 3,325 52.5 n.a.
第三次産業 2016年 168 71.5 9.1 833 24.9 △64.4 4,075 40.2 △8.6
2017年 158 58.0 △ 6.0 5,978 69.5 617.6 4,829 43.9 18.5
2018年 上半期 124 62.9 n.a. 2,932 63.3 n.a. 2,882 45.5 n.a.
注:
n.a.は数字が公表されていないことを示す。
出所:
湖北省商務経済指標(2018年6月号)

(3)業種別(実行ベース)では、情報伝達・コンピュータサービス・ソフト開発が約10倍の2億9,623万ドル、金融が約215倍の2億3,246万ドルと伸び率が高かった(表4参照)。構成比が最大の製造は30億8,161万ドルで9.4%増となった一方で、構成比が2番目の不動産は5.2%減の13億4,729万ドルだった。

表4:湖北省の業種別対内直接投資(2018年上半期)(単位:件、%、100万ドル)(△はマイナス値、―は値なし)
業種 契約ベース 実行ベース
件数 前年同期比 金額 構成比 前年同期比 金額 構成比 前年同期比
農業・林業・畜産・水産 5 25.0 15 0.3 △ 60.2 126 2.0 6.7
鉱業 0 0 0.0 △ 96.0 0 0.0 n.a.
製造 62 82.4 1,571 33.9 297.2 3,082 48.7 9.4
電力・ガス・水の生産および供給 4 △ 33.3 89 1.9 △ 21.0 188 3.0 △ 23.1
建築 2 0.0 26 0.6 △ 83.3 55 0.9 616.6
卸・小売り 34 36.0 320 6.9 49.9 217 3.4 △ 34.7
交通・運輸・倉庫・郵便 2 △ 33.3 40 0.9 △ 29.9 176 2.8 △ 40.3
宿泊・飲食 6 100.0 107 2.3 4,671.4 62 1.0 23.1
情報伝達・コンピュータサービス・ソフト開発 19 280.0 465 10.0 3,980.0 296 4.7 967.5
金融 4 33.3 690 14.9 2,650.2 232 3.7 21,424.1
不動産 5 25.0 460 9.9 533.2 1,347 21.3 △ 5.2
賃貸・ビジネスサービス 24 9.1 132 2.8 △ 94.8 82 1.3 △ 79.2
科学研究・技術サービス 15 15.4 163 3.5 36.4 131 2.1 90.3
水利・環境・公共施設サービス 2 0.0 305 6.6 2,085.0 290 4.6 242.1
住民サービス・修理・その他サービス 0 0 0.0 32 0.5 439.7
教育 7 n.a. 168 3.6 n.a. 0 0.0 n.a.
衛生・社会事業 2 n.a. 83 1.8 n.a. 16 0.3 n.a.
文化・体育・娯楽 4 300.0 1 0.0 △ 99.8 0 0.0
総計 197 51.5 4,634 100.0 0.3 6,333 100.0 7.8
注:
n.a.は数字が公表されていないことを示す。
出所:
湖北省商務経済指標(2018年6月号)

(4)国・地域別の直接投資額(実行ベース)では、香港が28億6,399万ドル(前年同期比3.7%減)で全体の半分近くを占めた(表5参照)。日本は58.5%増の6億3,102万ドルで、香港に次いで2位となった。

表5:湖北省の国・地域別対内直接投資(2018年上半期) (単位:件、%、100万ドル)(△はマイナス値)
順位 国・地域 契約ベース 実行ベース
件数 構成比 前年同期比 金額 構成比 前年同期比 金額 構成比 前年同期比
1 香港 70 35.5 62.8 3,227 69.6 115.8 2,864 45.2 △ 3.7
2 日本 7 3.6 133.3 23 0.5 △ 86.3 631 10.0 58.5
3 台湾 32 16.2 146.2 135 2.9 △ 57.7 292 4.6 314.1
4 シンガポール 4 2.0 100.0 690 14.9 556.0 208 3.3 △ 41.4
5 オランダ 1 0.5 0.0 2 0.0 △ 79.0 191 3.0 105.1
6 フランス 1 0.5 0.0 0 0.0 n.a. 159 2.5 △ 47.8
7 スウェーデン 1 0.5 n.a. 1 0.0 2083.3 121 1.9 △ 23.6
8 メキシコ n.a. n.a. n.a. n.a. n.a. n.a. 101 1.6 n.a.
9 韓国 8 n.a. 300.0 △ 8 n.a. △ 270.2 92 1.4 △ 68.5
10 英国 3 1.5 0.0 15 0.3 795.8 87 1.4 1,519.7
総計(その他を含む) 197 100.0 54.5 4,634 100.0 0.3 6,333 100.0 7.8
注1:
順位は実行金額の上位10カ国・地域。
注2:
n.a.は数字が公表されていないことを示す。
出所:
湖北省商務経済指標(2018年6月号)

17年に引き続き自動車関連での投資が好調

2018年上半期の湖北省では、2017年に引き続き、製造業、サービス業ともに投資が拡大した。特に、本田技研工業と中国自動車メーカー東風汽車の合弁会社である東風ホンダ(武漢市)の新工場稼働を控え、自動車関連の投資拡大が続いている。

ホンダ系自動車部品メーカーの八千代工業は、武漢工場の生産ラインを増強する。投資総額は約25億円。2019年前半の稼働予定で、サンルーフと燃料タンクの生産能力がそれぞれ5割高まる。これによって、販売が好調な東風ホンダへの製品供給が強化される。

また、自動車部品メーカーのファルテックは、中国生産子会社の湖北ファルテックの塗装工程を増強した。投資金額は約5億円で、新設ラインの広さは約3,000平方メートル。2018年9月の本格稼働を予定しており、塗装ラインの能力が5割高まる。

自動車以外の製造業では、昭和電工が中国における電子材料用高純度ガス事業強化のため、2月11日に同社の中国子会社である上海昭和化学品の分公司を武漢市に設立した。3月から営業を開始しており、電子材料用高純度ガスおよび化学品などの販売を行っていく。

サービス業では、澁澤倉庫が4月1日に中国子会社の澁澤物流(上海)の分公司を武漢市に開設した。これにより、同社は華中地域での営業を拡大し、物流ネットワークの強化を図るほか、中国-日本間のみならず、中国-第三国間の輸送ニーズにも対応していく。

また、温泉レジャー施設大手の極楽湯は4月に、武漢市の既存施設内の3階部分を改築した宿泊施設を開業した(2018年7月9日記事参照)。客室はシングルルームを中心に60部屋以上あり、連休シーズンには満室になる日もあるなど、人気を集めている。

執筆者紹介
ジェトロ・武漢事務所
片小田 廣大(かたおだ こうだい)
2014年、ジェトロ入構。進出企業支援・知的財産部進出企業支援課(2014~2015年)、ビジネス展開支援部ビジネス展開支援課(2015~2016年)を経て現職。
執筆者紹介
ジェトロ・武漢事務所
李 成一(り なるひ)
2017年、ジェトロ・武漢事務所入所。事業・調査部門において、日系企業の内販拡大支援および調査、対日投資等を担当。