特集:対内直接投資に見る中国の動向(2018年上半期)製造業の倍増で46.8%増と大幅回復(韓国)

2018年11月9日

2018年上半期の韓国の対中国直接投資額(実行ベース)は、製造業が大幅に増加し、前年同期比46.8%増の15億9,600万ドルとなった。省・市別では江蘇省、広東省、山東省などの沿海部向けの投資が上位を占めた。

対外直接投資に占める中国の構成比は7.0%

韓国の2018年上半期の対外直接投資は、前年同期比4.3%減の226億8,600万ドルだった。このうち、対中直接投資は46.8%増の15億9,600万ドルで、対外直接投資に占める中国の構成比は7.0%となった(図参照)。韓国の対外直接投資先トップは米国(46億1,700万ドル)、2位はケイマン諸島(39億6,600万ドル)、3位はベトナム(19億7,100万ドル)、4位は香港(18億2,700万ドル)で、中国は5位となった。韓国の各種メディアは、高高度防衛ミサイル(THAAD)配備に対し、中国が報復措置として行っていた投資規制が緩和されたことで、対中直接投資が回復したと分析した。

図:韓国の対中直接投資の推移
2005年にピークを迎えたが、対外直接投資に占める中国の構成比は、2015年に初の10%割れとなり、2017年にはTHAAD配置問題とあいまって、過去最低となった。2018年はTHAAD配置問題の影響が縮んだため、小幅増となった。
注:
2018年は1~6月の累計。
出所:
韓国輸出入銀行

製造業が前年同期の約2.3倍に

2018年上半期の対中直接投資を業種別でみると、製造業が前年同期の約2.3倍となる14億2,300万ドルで、非製造業(全業種から製造業を除いたもの)が62.4%減の1億7,300万ドルとなり、対中直接投資に占める製造業の割合は89.2%だった(表1参照)。

製造業の内訳をみると、電子部品・コンピュータ・映像・音響・通信装置が前年同期の約3.5倍の6億2,500万ドル、自動車・トレーラーが92.6%増の2億800万ドル、化学物質・化学製品(医薬品を除く)が約4.4倍の2億500万ドルと急増した。他方、非製造業は、保健・社会福祉サービス業、鉱業、専門・科学・技術サービス業などが増加したが、金融・保険業、卸売・小売業などが減少し、全体的に落ち込んだ。

LGディスプレイが広東省に大型投資

2018年上半期の韓国の対中直接投資を省市別でみると、江蘇省が6億5,300万ドルと全体の40.9%を占め、1位だった(表2参照)。次いで、広東省が3億9,100万ドル、山東省が1億6,900万ドルと、沿海部が依然として上位を占めた。特に、広東省は前年同期の約17.8倍と急増した。LGディスプレイのプレスリリースによると、同社は、広州開発区に有機EL(OLED)の合弁法人を設立し、約5兆ウォン(約5,000億円、1ウォン=約0.1円)を投じ、2019年下半期の稼働を目標に工場を建設中である。

表2:韓国の省・市別対中直接投資(実行ベース) (単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
順位 省・市 2016年 2017年通年 2017年上半期 2018年上半期
金額 構成比 金額 構成比 金額 構成比 金額 構成比 前年同期比
1 江蘇省 811 24.1 1,031 34.8 215 19.8 653 40.9 203.7
2 広東省 458 13.6 92 3.1 22 2.0 391 24.5 1,677.3
3 山東省 318 9.4 265 8.9 104 9.6 169 10.6 62.5
4 北京市 621 18.4 464 15.7 220 20.2 60 3.8 △ 72.7
5 上海市 299 8.9 245 8.3 145 13.3 54 3.4 △ 62.8
6 天津市 75 2.2 37 1.2 17 1.6 47 2.9 176.5
7 四川省 174 5.2 73 2.5 21 1.9 46 2.9 119.0
8 遼寧省 38 1.1 29 1.0 17 1.6 36 2.3 111.8
9 浙江省 160 4.8 139 4.7 65 6.0 35 2.2 △ 46.2
10 重慶市 34 1.0 123 4.1 60 5.5 25 1.6 △ 58.3
上位10省・市 2,988 88.7 2,498 84.3 886 81.5 1,516 95.0 71.1
合計 3,368 100.0 2,964 100.0 1,087 100.0 1,596 100.0 46.8
注:
順位は2018年上半期の金額順。
注:
1位から10位までの合計と上位10省・市との数字は四捨五入により一致しないこともある。
出所:
韓国輸出入銀行
執筆者紹介
ジェトロ・ソウル事務所
諸 一(ジェ イル)
2017年、ジェトロ・ソウル事務所入所。経済調査チームにて調査を担当。