特集:対内直接投資に見る中国の動向(2018年上半期)第二次産業が伸びを牽引(遼寧省)

2018年11月9日

2018年上半期の遼寧省の対内直接投資額(実行ベース)は、前年同期比14.1%増の32億1,000万ドルだった。第二次産業への投資増が実行額の伸びを牽引した。都市別では、大連市は19億2,000万ドルと8.8%減少した一方、瀋陽市は自動車や電子機械関連の投資の伸びにより、前年同期の2.7倍の7億6,000万ドルと大幅に増加した。

遼寧省:第二次産業が実行額の7割超に

2018年上半期の遼寧省の対内直接投資額(実行ベース)は前年同期比14.1%増の32億1,000万ドルとなった(表1参照)。中国商務新聞網(注1)が発表した国・地域別の内訳によると、香港は16億9,000万ドル(22.6%増)、日本は1億3,000万ドル(56.6%増)、英領バージン諸島は1億1,000万ドル(5倍)、台湾は1億ドル(94.7%増)と、上位はいずれも前年同期比で増加した。うち、香港の実行額は全体の過半を占めた。

表1:遼寧省の対内直接投資(実行ベース、億ドル) (△はマイナス値)
省・市 金額 前年同期比(%)
遼寧省 2016年 30.0 △42.2
2017年 53.4 77.9
2018年上半期 32.1 14.1
大連市 2016年 30.0 11.1
2017年 32.5 8.2
2018年上半期 19.2 △8.8
瀋陽市 2016年 8.2 △22.6
2017年 10.1 24.1
2018年上半期 7.6 165.3
注:
2016年は遼寧省の統計手法と大連市の統計手法が異なるため、瀋陽市、大連市の対内直接投資額の和が遼寧省の金額を上回っている。
出所:
各省市政府へのヒアリングおよび発表資料を基に作成

産業別では、第二次産業が伸びを牽引した。前出の中国商務新聞網によると、第二次産業は前年同期比69.3%増の23億9,000万ドルとなり、実行額全体の7割超を占めた(表2参照)。うち、第二次産業の中で最も構成比が高いパソコン・通信・その他電子設備製造業が62.4%増の14億5,000万ドルと伸びが大きかったほか、自動車製造業(3.3倍)、電力・熱・ガスおよび水の生産・供給業(4.3倍)、専用設備製造業(13.7倍)などの伸び率も高かった。他方、第三次産業は8億2,000万ドルと41.3%減少した。卸・小売業(49.3%減)、リース・商業サービス業(63.1%減)、交通運送・倉庫・郵政業(84.5%減)の減少幅が大きかったが、不動産業(89.9%増)は増加した。

表2:遼寧省の産業別対内直接投資(実行ベース、億ドル) (△はマイナス値、―は値なし)
産業 金額 構成比(%) 前年同期比(%)
第一次産業 2016年
2017年
2018年上半期
第二次産業 2016年 10.3 △28.8
2017年 30.9 57.9 199.8
2018年上半期 23.9 74.4 69.3
第三次産業 2016年 19.7 65.6 △46.4
2017年 22.2 41.7 13.1
2018年上半期 8.2 25.4 △41.3
出所:
2016年、2017年は遼寧省政府へのヒアリング、2018年上半期は中国商務新聞網

大連市:実行額は減少も日系製造業の進出が目立つ

大連市の対内直接投資額(実行ベース)は、前年同期比8.8%減の19億2,000万ドルだった。国・地域別および産業別の内訳は公表されていないが、大連日報(注2)によると、2018年上半期に新たに設立・登記された外資企業数は208社で、地域別ではアジア、北米、欧州の順に多かった。また、国・地域別では、日本が最多の30社となり、実行額は21.7%増の9,218万ドルであった(注3)。

2018年上半期の大連市への日系企業の新規進出案件は、製造業が中心であった。天龍製鋸(本社:静岡県)は大連市に全額出資子会社となる高新天龍製鋸(大連)を6月に設立(資本金は6億円、投資総額は約12億円)した。住宅資材用の工具に装着するチップソー(超硬刃付き丸のこ)生産を主な事業とし、2019年4月までに稼働する予定。今後、新工場の生産能力を引き上げ、中国でのチップソー生産能力を25%増強する予定。また、富士電機は6月、大連冰山集団(以下、大連冰山)の子会社である大連冰山集団管理コンサルティングと、システムエンジニアリングを行う合弁会社、大連富士冰山スマート制御システム(仮称、資本金は約4億5,000万円、日本側出資は51%)を9月に設立予定であると発表した。大連冰山の空調冷熱技術に富士電機の省エネ技術を組み合わせ、中国の顧客が抱えるエネルギー・環境課題の解決に寄与するシステムの提供を図るとしている。

日系以外の外資系の案件としては、米インテルの大連工場第2期拡張建設プロジェクトの主要部分の建設が完了した。増設した工場では、世界最先端のメモリチップとなる不揮発性メモリを生産する。

生産以外の新規進出案件では、ドイツの製薬・化学大手であるバイエルが2018年初め、大連ハイテクパークにシェアードサービスセンター(注4)を設立した。10月末までの稼働を目指すとしている。同社は上海市で実施している業務を将来的に大連へ統合させ、2年後には従業員を500人まで増やす計画を発表した。また、情報通信業では、英国コルト・グループ(注5)が出資するコルト情報技術サービス(大連)が3月、大連ハイテクパークで開業式を行った。同社は、主にアジア太平洋地域の顧客向けに情報サービスを提供してきたが、将来的に中国市場も開拓する予定としている。

瀋陽市:自動車や電子機械関連の投資が中心

瀋陽市の対内直接投資額(実行ベース)は、前年同期比2.7倍の7億6,000万ドルだった。自動車や電子機械関連の案件が中心となった。自動車関連では、華晨BMWが5月、瀋陽パワーバッテリーセンターの第2工場の建設を開始した。計画投資額は6億7,000万元(約107億2,000万円、1元=約16円)で、2019年3月に完工、同年内に稼働し、2020年に生産を開始する予定である。第2工場で生産するBMW第5世代パワーバッテリーは、BMWメインブランド初の純電動車種となる新型「iX3」の量産車種に搭載される。そのほか、電子機械関連では、安川電機(瀋陽)の第3工場が6月に稼働した。同工場では、サーボモータ、サーボアンプ、工作機械用主軸モータなどを生産する。

遼寧省政府は外資のさらなる誘致に向けた奨励策を発表

遼寧省の経済は回復基調で推移している。遼寧省の2018年上半期の域内総生産(GRP)は前年同期比5.6%増となり、第1四半期(5.1%増)から伸び率が0.5ポイント上昇したほか、上半期の貿易額も6.0%増の3,554億6,000万元と増加した。

遼寧省政府は2018年5月16日、対外開放の拡大によって経済のさらなる活性化を図ることを狙いとして、「新局面開放の構築を加速し、全面開放による全面振興の牽引に関する意見外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 」(遼委発[2018]20号)を発表し、2022年までにハイレベル製造業と現代サービス業を中心に、150億ドルの外資誘致を実現させるとしている(2018年6月1日ビジネス短信記事参照)。


注1:
2018年7月30日付。
注2:
2018年7月27日付。
注3:
大連市政府へのヒアリングに基づく。
注4:
シェアードサービスとは、会社、組織に散在する共通業務を1カ所に集約・標準化して、人件費や諸経費のコスト削減と業務の効率化を図る手法のこと。
注5:
報道によると、コルトグループは2016年、米国フィデリティにより買収された。
執筆者紹介
ジェトロ・大連事務所
李 穎(り えい)
2007年、ジェトロ大連事務所入所。総務・企画部、市場開拓部、経済情報部を経て、現在は、進出企業支援センターおよび経済情報部にて、調査や進出企業支援等を担当。

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