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特集:対内直接投資に見る中国の動向(2018年上半期)日本の対中投資は前年同期比5.2%増、自動車関連の大型投資が続く(総論)

2018年11月9日

2018年上半期(1~6月)の中国における対内直接投資実行額は前年同期比4.1%増(ドルベース)となり、伸び率は2017年通年から0.1ポイント拡大した。業種別にみると、製造業は通信・コンピュータ・その他電気機器や化学などが牽引して8.9%増と好調であった。一方、非製造業はリース・商業サービスや情報通信・コンピュータサービスが不調であったことから、0.3%減となった。国・地域別では全体投資額のうち7割を占める香港が2.0%増となった。なお、日本は5.2%増で6位となった。

契約件数が2倍近くに大幅増加

7月12日の商務部の発表によると、2018年上半期の対内直接投資(銀行・証券・保険分野を含まず)は、契約件数が前年同期比96.6%増の2万9,591件と大幅に増加した(表1参照)。実行ベースの投資額は、4.1%増の683億2,100万ドル[元建てでは1.1%増の4,462億9,000万元(約7兆1,406億円、1元=約16円)]となった。上半期ベースでは、2016年上半期まで4期連続で増加し、2017年上半期は減少に転じていたが、2018年上半期で再び増加に転じた。2018年上半期の投資動向の特徴として、投資額の伸びと比べて契約件数の伸びが著しく大きかったことが挙げられる。これについて、中国商務部研究院外国投資研究所の張菲副主任は「非製造業分野の直接投資は多額の投資を必要としない。技術、ノウハウなどがより重視される『医療』『ヘルスケア』『文化』『教育』といった分野の投資案件が増えている」ことが要因と指摘した。

表1:中国の対内直接投資の推移 (単位:件、%、億ドル、億元) (△はマイナス値)
契約ベース 実行ベース
件数 前年
(同期・同月)比
金額 前年
(同期・同月)比
2016年 27,900 5.0 1,260
(8,132.2)
△0.2
(4.1)
2017年 35,652 27.8 1,310.4
  (8,775.6)
4.0
(7.9)
2018年 1月 5,197 158.6 121 0.6
2月 3,651 97.4 90 3.2
3月 5,492 117.7 134 2.6
1~3月 14,340 124.7 345 2.1
4月 4,662 39.5 91 1.9
5月 5,024 106.5 91 11.7
6月 5,565 92.3 157 5.8
1~6月 29,591 96.6 683 4.1
注1:
かっこ内の数値は元建ての金額および前年(同期・同月)比。
注2:
2015年1月から2017年1月まで前年(同期・同月)比が元建てしか公表されていなかったため、ドル建ての前年(同期・同月)比はCEICデータからジェトロが算出。
出所:
商務部「中国投資指南」ウェブサイト、CEIC

投資実行額は製造業が好調、非製造業は減少

業種別に投資額(実行べース)をみると、製造業は前年同期比8.9%増と好調であった(表2参照)。通信・コンピュータ・その他電気機器(54.3%増、寄与度2.4ポイント)や化学(32.4%増、0.6ポイント)などが牽引した。

一方、非製造業は、0.3%減となった。不動産(33.8%増、4.7ポイント)、金融(32.1%増、2.0ポイント)が好調だったものの、リース・商業サービス(17.0%減、マイナス2.5ポイント)や情報通信・コンピュータサービス(19.5%減、マイナス1.7ポイント)の不調が全体の伸びを押し下げた。

非製造業で投資案件の増加が指摘される「医療」「ヘルスケア」「文化」「教育」といった分野を包含する業種の実行額をみると、ヘルスケア・社会保障・福祉が前年同期比88.3%増、文化・スポーツ・レクリエーションが79.9%増、教育が13.3%増となった。これらは、実行額に占める構成比は小さいものの、いずれも高い伸びであった。

表2:中国の業種別対内直接投資(実行ベース)(単位:100万ドル、%、ポイント)(△はマイナス値)
業種 2017年 2018年1~6月
金額 構成比 前年比 寄与度 金額 構成比 前年同期比 寄与度
農業 1,075 0.8 △ 43.4 △ 0.7 448 0.7 △ 22.5 △ 0.2
鉱業 1,302 1.0 1251.4 1.0 489 0.7 364.4 0.6
製造業 33,506 25.6 △ 5.6 △ 1.6 20,692 30.3 8.9 2.6
階層レベル2の項目 繊維 490 0.4 1.7 0.0 324 0.5 34.5 0.1
階層レベル2の項目 化学 2,384 1.8 6.5 0.1 1,699 2.5 32.4 0.6
階層レベル2の項目 医薬 2,142 1.6 1.8 0.0 754 1.1 △ 41.9 △ 0.8
階層レベル2の項目 一般機器 2,887 2.2 △ 0.6 △ 0.0 1,598 2.3 △ 7.1 △ 0.2
階層レベル2の項目 特殊機器 2,443 1.9 △ 3.3 △ 0.1 1,758 2.6 20.7 0.5
階層レベル2の項目 通信・コンピュータ・その他電気機器 5,898 4.5 2.6 0.1 4,537 6.6 54.3 2.4
非製造業 95,152 72.6 7.5 5.3 45,817 67.1 △ 0.3 △ 0.2
階層レベル2の項目 電気・ガス・水道 3,521 2.7 64.0 1.1 2,548 3.7 26.5 0.8
階層レベル2の項目 建設 2,619 2.0 5.7 0.1 882 1.3 △ 44.7 △ 1.1
階層レベル2の項目 輸送・倉庫・郵便 5,588 4.3 9.8 0.4 2,812 4.1 △ 7.6 △ 0.4
階層レベル2の項目 情報通信・コンピュータサービス 20,919 16.0 147.8 9.9 4,518 6.6 △ 19.5 △ 1.7
階層レベル2の項目 卸・小売り 11,478 8.8 △ 27.7 △ 3.5 5,234 7.7 △ 7.3 △ 0.6
階層レベル2の項目 ホテル・外食 419 0.3 14.8 0.0 538 0.8 85.2 0.4
階層レベル2の項目 金融 7,921 6.0 △ 23.0 △ 1.9 5,345 7.8 32.1 2.0
階層レベル2の項目 不動産 16,856 12.9 △ 14.2 △ 2.2 12,229 17.9 33.8 4.7
階層レベル2の項目 リース・商業サービス 16,739 12.8 3.8 0.5 7,850 11.5 △ 17.0 △ 2.5
階層レベル2の項目 科学研究・工業技術サービス 6,844 5.2 5.0 0.3 3,705 5.4 △ 11.7 △ 0.7
階層レベル2の項目 水利・環境・公共施設管理 570 0.4 35.1 0.1 156 0.2 △ 54.7 △ 0.3
階層レベル2の項目 住居関連サービス 567 0.4 15.7 0.1 329 0.5 39.8 0.1
階層レベル2の項目 教育 77 0.1 △ 17.9 △ 0.0 20 0.0 13.3 0.0
階層レベル2の項目 ヘルスケア・社会保障・福祉 305 0.2 20.1 0.0 188 0.3 88.3 0.1
階層レベル2の項目 文化・スポーツ・レクリエーション 698 0.5 161.3 0.3 337 0.5 79.9 0.2
階層レベル2の項目 公共管理・社会組織 31 0.0 n.a. n.a. 0 0.0 △ 99.6 △ 0.0
合計 131,035 100.0 4.0 4.0 68,321 100.0 4.1 4.1
出所:
国家統計局「中国統計月報」、CEIC

日本からの実行額は中国側統計で5.2%増

国・地域別の実行額では、香港が全投資額のうち72.3%を占め、1位となった(表3参照)。投資額は494億ドルで、前年同期比2.0%増だった。香港からの投資では、主力産業の1つである小売り分野において、中国本土での販売拡大に向け店舗数を拡大する動きがみられたほか、不動産分野では、香港のデベロッパーが本土の主要都市において用地取得を再開する動きがあった。さらに、中国政府が推進している地域発展計画「広東・香港・マカオグレートベイエリア計画」の本格始動を見据え、ベイエリア域内で先行投資を行う企業の動きもみられた。

2位はシンガポールで、31億3,000万ドル(24.7%増)だった。シンガポールからの投資の主な業種はインフラ、不動産、物流・運輸、専業サービス(弁護士、監査法人、コンサルティング、医療)とされる。これら企業は政府の外貨準備高で、中国企業に対する買収、出資を活発化させてきた経緯がある。インフラ分野では、2国間政府プロジェクトとして進めている中国・重慶市とシンガポールを結ぶ新たな海陸複合輸送ルート「南向通道(CCI-STC)」の運用が本格化し、シンガポール企業による投資が進められている。また、新たな分野では、シンガポールの政府系企業がスタートアップを含むテック系企業への投資を拡大させる兆しがみられた。

3位は台湾で28億4,000万ドル(5.3%減)だった。台湾企業の対外直接投資総額に占める中国の構成比については46.7%と、前年上半期(45.3%)から1.4ポイント上昇した。業種別では、電子部品が最大で、卸売り・小売りが続いた。投資先をみると、江蘇省向けが22.0%増の11億9,928万ドルで最大となった。これは、鴻海精密工業による富智康電子科技(南京)や富智康(南京)智能科技の設立などによるものとみられる。

なお、日本は18億2,000万ドル(5.2%増)で6位だった。一方、日本側の国際収支統計(業種別・地域別直接投資)で2018年上半期の投資フローをみると、5,513億円で前年同期比0.2%減であった(注)。うち、製造業では、構成比の高い輸送機械器具が8.0%増(構成比21.9%)、一般機械器具が74.6%増(19.4%)、化学・医薬が2.2倍(12.2%)などと好調であった。非製造業では、卸・小売りが0.1%増(23.9%)、金融・保険が10.0%増(11.2%)となった。

日系企業の投資案件をみると、製造業では、アイシン・エィ・ダブリュが(浙江)吉利羅佑発動機(吉利汽車)との合弁で、オートマチックトランスミッション(AT)の生産会社(資本金は1億1,700万ドル)を設立するなど、自動車関連の生産能力増強を目的とした大型投資が目立った。さらに、NTNがインホイールモータ駆動システムと車両運動制御技術を搭載した新エネ車の開発・量産に向けた技術支援を行うため、中国で自動車の設計・製造を行う長春富晟汽車創新技術とライセンス契約を締結するなど、「乗用車企業の平均燃費と新エネルギー車クレジットの並行管理弁法」に基づき、2019年から乗用車の生産台数の一定割合を新エネ車とする目標が課されることを踏まえた動きがみられた。

また、化学・医薬関連では、小林製薬が上海市に同社が100%出資する統括会社(資本金2,000万ドル)を設立、東ソーが中国での事業展開の拡大とガバナンス企業の強化を目的とした統括会社(資本金1,000万ドル)を設立するなど、事業の拡大や生産能力強化の動きがみられた。

非製造業では、マックスバリュ東海の子会社である永旺美思佰楽(広州)商業(マックスバリュ広州)が広東省広州市の商業施設内に「マックスバリュ聖地新天地店」を開店し、イオンモールが「イオンモール煙台金沙灘」出店で初めて山東省に進出するなど卸・小売りや関連する不動産の動きも持続している。

このほか、オリックスが中国のフィンテック市場を取り込む先鞭(せんべん)として、個人の信用情報を分析・提供するスタートアップである北京閃銀奇異科技(Wecash)に投資(香港現地法人であるORIX Asia Capital Limitedを通じて、Wecashの持ち株会社が新たに発行する議決権付き優先株式および転換社債約64億円引き受け)するなど、中国で活発化するイノベーションを取り込もうとする動きも出ている。

なお、2018年上半期の各地方の対中直接投資動向は、在中国のジェトロ各事務所から報告する。入手可能なデータの範囲が地域によって異なるため、包括的な分析には限界があるが、北京市、河北省、四川省、湖北省などで日本企業の投資が拡大する傾向がみられた一方、山東省では鈍化しており、地域差がみられた。地域差の要因としては、各地方政府が重視する外資誘致分野や、内販型企業と輸出型企業の集積度の差異などが考えられる。

表3:中国の国・地域別対内直接投資

2015年(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
順位 国・地域 金額 構成比 前年比
1 香港 92,670 73.4 8.1
2 シンガポール 6,970 5.5 17.5
3 台湾 4,410 3.5 △ 14.9
4 韓国 4,040 3.2 1.8
5 日本 3,210 2.5 △ 25.9
6 米国 2,590 2.1 △ 3.0
7 ドイツ 1,560 1.2 △ 24.6
8 フランス 1,220 1.0 71.8
9 英国 1,080 0.9 △ 20.0
10 マカオ 890 0.7 53.4
全世界合計 126,270 100.0 5.6
2016年(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
順位 国・地域 金額 構成比 前年比
1 香港 87,180 69.2 △ 5.9
2 シンガポール 6,180 4.9 △ 11.3
3 韓国 4,750 3.8 17.6
4 米国 3,830 3.0 47.9
5 台湾 3,620 2.9 △ 17.9
6 マカオ 3,480 2.8 291.0
7 日本 3,110 2.5 △ 3.1
8 ドイツ 2,710 2.2 73.7
9 英国 2,210 1.8 104.6
10 ルクセンブルク 1,390 1.1 n.a.
全世界合計 126,000 100.0 △ 0.2
2017年(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
順位 国・地域 金額 構成比 前年比
1 香港 98,920 75.5 13.5
2 シンガポール 4,830 3.7 △ 21.8
3 台湾 4,730 3.6 30.7
4 韓国 3,690 2.8 △ 22.3
5 日本 3,270 2.5 5.1
6 米国 3,130 2.4 △ 18.3
7 オランダ 2,170 1.7 n.a.
8 ドイツ 1,540 1.2 △ 43.2
9 英国 1,500 1.1 △ 32.1
10 デンマーク 820 0.6 n.a.
全世界合計 131,040 100.0 4.0
2018年1~6月(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
順位 国・地域 金額 構成比 前年同期比
1 香港 49,400 72.3 2.0
2 シンガポール 3,130 4.6 24.7
3 台湾 2,840 4.2 △ 5.3
4 韓国 2,310 3.4 50.0
5 米国 1,950 2.9 34.5
6 日本 1,820 2.7 5.2
7 英国 1,580 2.3 97.5
8 マカオ 860 1.3 n.a.
9 オランダ 730 1.1 △ 44.7
10 ドイツ 660 1.0 △ 40.0
全世界合計 68,320 100.0 4.1
注1:
全世界合計は実行額の使用ベース、各国・地域は実行額の投入ベース。バージン諸島、ケイマン諸島、サモア、モーリシャス、バルバドスなどの自由貿易港を経由して当該国・地域から投資された金額を含む。国・地域別の対中投資(実行ベース)の発表は2009年の途中から、各国・地域のデータにタックスヘイブン経由の対中投資額が含まれるようになった。
注2:
2015年から前年比が元建てしか公表されなくなったため、ドル建ての前年比は商務部「中国投資指南」ウェブサイト、CEICデータからジェトロが算出。
注3:
2014年以降データは1,000万ドル以上の単位で公表されているため、構成比と前年比は実際の数値と異なる可能性がある。
出所:
商務部「中国投資指南」ウェブサイト、CEICを基に作成

政府は外資への開放政策を継続

2018年3月に開催された「第13期全国人民代表大会第1回会議の政府活動報告」では、2017年10月の共産党第19回全国代表大会時に使用された「全面的開放」という表現を用い、外資に対し、一層広い範囲で高い段階の開放を行う方針を掲げた。さらに習近平国家主席は2018年4月、海南省で開催されたボアオアジアフォーラム年次総会の講演で、(1)大幅な市場参入制限の緩和、(2)投資環境のさらなる整備、(3)知的財産権保護の強化、(4)主体的な輸入の拡大という4つの措置に言及した(2018年4月12日ビジネス短信記事参照)。

このような方針を受け、国家発展改革委員会と商務部は6月に「外商投資参入ネガティブリスト(2018年版)」を発表し、7月28日から施行した(2018年7月2日ビジネス短信記事参照)。この改定により、同リストの制限・禁止条項は現行の63から48に減少した。改定の主なポイントは、サービス業においては、銀行の外資出資比率制限を撤廃すること、証券・基金管理・先物・生命保険の外資出資比率上限を51%に緩和すること、2021年には金融分野の全ての出資比率制限を撤廃することなどとなった。製造業においては、新エネルギー車などは2018年に、商用車は2020年に外資出資比率制限を撤廃すること、2022年には乗用車の外資出資比率制限をなくし、「同一の外国人投資家が同類の完成車製品を生産する合弁企業を中国国内で設立できるのは2社まで」とする制限を取り払うことなどであった。

なお、国家発展改革委員会の担当者は、この改定によるサービス業の大幅な開放拡大を指摘したほか、製造業が基本的に開放されたとの認識を示した。

政府は、2017年に「対外開放を拡大し、外資を積極的に利用するための若干の措置(国発[2017]5号)」と「外資の成長促進に向けた若干の措置に関する通知(国発[2017]39号)」という対外開放を進める重要政策を立て続けに出しており、2018年も上記のネガティブリストの改定など継続的に対外開放を推進する姿勢をみせている。このような政策的背景の下、日系企業においても、中国での事業拡大意欲の高まりがみられた。

ジェトロが中国に進出している日本企業に対して2017年10~11月に実施したアンケート調査によると、今後1~2年の事業展開の方向性について、「拡大」と回答した企業の割合は48.3%、「現状維持」と回答した企業の割合が44.3%となった。中国における事業拡大の意向は、2015年度には38.1%と1998年の調査開始以来、初めて4割を下回っていたが、2016年度は2.0ポイント拡大して40.1%となり、さらに、2017年度は大幅に回復して48.3%となった。中国で製造と消費の高度化が進展する中、優れた商品や技術、ノウハウなどを提供すべく、日本企業が市場開拓を強化し始めている様子がうかがえる。

人件費の上昇などの投資環境の変化が指摘される場面は依然あるものの、日本企業が中国を世界有数の巨大市場と捉えていることに変わりはなく、内販型の企業・業種を中心に、拡大する中国市場の開拓を強化する動きがみられる。

ただし2018年上半期には、米中の貿易摩擦が深刻化しており、外資企業の中国への投資意欲に与える悪影響を懸念する声もある上、2018年9月時点は、一部で影響が出ているとの報告もある。その一例が、中国米国商会と上海米国商会が2018年9月に発表した米中両国の追加関税賦課の中国進出米国企業への影響についてのレポートだ。同レポートでは、追加関税賦課の米中両国に対する事業運営への主な影響(複数回答可)として、「生産コストの上昇(回答比率47.1%)」「製品需要の減少(41.8%)」「製品価格の上昇(37.1%)」などを挙げた。さらに、事業戦略への主な影響については、「投資の取り消しや延期(回答比率31.1%)」「サプライチェーンの調整・部品の調達先変更/米国外での組み立て(30.9%)」を挙げた。

米国企業だけではなく、在中国のEU企業からも同様の声が上がっている。中国米国商会が9月に発表したレポートでは、米中貿易摩擦への対応についての設問に対して、「投資や設備投資の決定を延期(回答比率14.0%)」「事業拡大策の延期(8.3%)」「サプライヤーの見直し(5.2%)」などの回答もみられた。

2018年下半期において、米中貿易摩擦がさらに深刻化する、もしくは長期化する場合には、米国やEU企業だけではなく、その他の国・地域の外資企業にも投資延期などの動きが広がることも想定される。


注:
日本と中国の統計の乖離(かいり)の大きな理由として、統計範囲や作成方法の違いなどが考えられる。日本側の統計では、直接投資は(1)「株式資本」(投資企業の株式、支店の出資持ち分、その他資本拠出金)、(2)「再投資収益」(投資企業の未配分収益のうち、投資家の出資比率に応じた取り分と投資家に未送金の支店収益)、(3)「その他資本」(前述の2項目に含まれない投資家と投資企業または支店との資本取引。例えば、親子間の資金貸借や株式以外の証券の売買など)からなるが、中国側の統計では日本側統計でいう株式資本の部分の比重が高くなっているのが理由とみられる。
執筆者紹介
ジェトロ・北京事務所 経済信息部 副部長
藤原 智生(ふじはら ともき)
2009年、ジェトロ入構。生活・文化産業部生活文化産業企画課(2009~13年)、海外語学研修(2013~14年)、海外調査部海外調査計画課(2015~16年)などを経て現職。

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