特集:アフリカにおける日本食ビジネスの可能性大手スーパーから日本食市場の新規開拓に挑む(ナイジェリア)

2021年5月12日

ナイジェリアの食生活は、伝統的な青空市場やキオスク(露店)で食材を購入し、自宅で調理する「内食」がほとんどだが、路上販売で調理済みのものを購入する「外食」も多く存在する。民族・地域によって食文化の違いはあるものの、全般的に味付けは濃く、パームオイルや香辛料を用いた辛めの料理が多い。一般的に伝統料理を好む保守的な層が多いが、ラゴス中心部にはイタリアンや中華料理など富裕層・外国人向けのレストランも存在し、近年は寿司(すし)を中心とした日本食を取り扱うレストランも12軒と増加傾向にある。ナイジェリア最大手スーパーマーケットチェーンのSpar Market は、2021年2月から日本食材約40品目の取り扱いを開始した。ナイジェリアにおける日本食市場について、Spar Marketの運営会社アルテーグループの海外調達ゼネラルマネージャーである、アルン・トラニ氏に聞いた(2021年3月30日)。

国内5都市で14店舗を展開

質問:
Spar Marketのビジネス概略は。
答え:
ナイジェリアのSpar Marketを運営するアルテーグループは1988年に創業し、店舗数やブランドを拡大してきた。2010年にオランダの小売業者であるSparと提携し、ナイジェリアでブランドを展開している。現在は、ラゴスとアブジャを中心に国内5都市で14店舗を運営し、合計1,000人以上を雇用、年間延べ500万人以上が利用するスーパーマーケットチェーンへと成長した。配送センターをラゴス、アブジャ、ポートハーコートに有する。

2021年2月から日本食材を販売開始

質問:
日本食材の取り扱いを開始したきっかけと販売動向は。
答え:
2019年のラゴス国際見本市に出展していた、日本の食品商社との商談がきっかけとなった。新型コロナウイルス禍で商談を一時中断していたが、ジェトロの支援もあり再開、2021年2月から国内6店舗で日本食材を輸入販売している(表参照)。主な顧客は富裕層を中心とした一般消費者だが、一部のホテルやレストランなど外食業者も購入している。
表:Spar Marketでの人気商品と店頭価格
商品 容量 価格(NGN) 価格(円)※
パン粉 200g 1,220 285
米酢 360ml 2,320 541
料理酒 900ml 3,855 900
マヨネーズ 500g 4,250 992
日本米 5kg 18,600 4,341
醤油 500ml 3,150 735

注:公認両替商(Bureau De Change, BDC) レート(3月30日):1ドル=475NGN、三菱UFJ銀行T.T.Sレート(3月30日):1ドル= 110.86円で計算。
出所:Spar Market提供

質問:
従業員の教育などは。
答え:
従業員教育にも力を入れており、普段から接客サービス、衛生管理、勤務態度に関するトレーニングやテストを行うほか、従業員からのフィードバックを定期的に取り入れている。日本食材販売にあたり、従業員には調理方法や料理の位置づけなどのトレーニングも行った。また、実際に店頭でカレーの試食キャンペーンも実施した。

Spar Marketでの日本食材売り場
(ジェトロ撮影)

試食キャンペーンの様子(ジェトロ撮影)

富裕層向けに継続的かつ効果的なマーケティングを

質問:
日本食材の販売に対する今後の展望は。
答え:
健康食品やオーガニック食品のニーズは、世界的に高まっている。とりわけ健康的なイメージの日本食は、欧米を中心に非常に人気が高い。今後新たに取り扱いたい日本食材として、菓子類など賞味期限が長い商品を考えている。一般消費者にとって日本食材は高額であるため、富裕層がターゲットとなるだろう。Sparのウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます では、ジェトロが作成した動画を掲載し、日本食への理解を促すなどのプロモーションを行っているが、このような顧客への継続的かつ効果的なマーケティング活動が重要となる。

輸入にかかる認証は免除も、輸送費の高騰や物流の遅れは深刻化

質問:
ナイジェリアにおける食品輸入・通関の実情は。
答え:
通常、食品の輸入には食品医薬品管理局(NAFDAC)の認証取得が必要だが(注1)、グローバルリスティング(注2)制度により、当社を含む一部小売業者は免除されている。一方、コロナ禍での世界的なコンテナ不足が海上輸送費を高騰させているほか、ラゴス港では混雑による物流の遅延が深刻化している。輸入通関にかかわる政府機関が多く、通関に3~4週間を要することも課題だ。

注1:
ナイジェリアで食品、医薬品などを販売する際は、国内製造もしくは輸入品かにかかわらず、食品医薬品管理局(NAFDAC)への登録が必要。詳しくは、ナイジェリア貿易管理制度を参照。
注2:
食品や化粧品を大量に輸入する輸入業者またはスーパーマーケットオーナーに対し、品目ごとのNAFDAC取得を免除するもの。詳しくは、NAFDACのウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます を参照。

ナイジェリアの日本食レストラン、日本食材取扱店

(1)日本食レストラン(順不同)
レストラン名 エリア、住所 概要、ウェブサイト
Izanagi ラゴス(Victoria Island地区) すし、天ぷら、焼きうどん、焼きそば、焼き鳥、みそ汁、ラーメンなどを提供。 The Blowfish Groupの傘下。
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KOI ラゴス(Victoria Island地区) すし、天ぷら、ギョーザ、春巻き、みそ汁などを提供。
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Bonzai ラゴス(Victoria Island地区) すし、刺し身、ギョーザなどを提供。
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Sushiholic ラゴス(Lekki地区) すしを中心に、刺し身・天ぷらなどを提供。
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Shogun Sushi Bar ラゴス(Victoria Island地区) すしを中心に、刺し身、みそ汁などを提供。ホテル The Avenue Suites内に展開。
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(2)メニューの一部で日本食を提供するレストラン(順不同)
レストラン名 エリア、住所 概要、ウェブサイト
Fusion ラゴス(Victoria Island地区) すし、ギョーザ、天ぷら、刺し身などを提供。
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Bungalow ラゴス(Victoria Island地区) すし、刺し身、鉄板焼きなどを提供。
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Shiro ラゴス(Victoria Island地区) 鉄板焼き、ギョーザ、焼きうどんなどを提供。
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The Vue アブジャ(Wuse地区) すし、春巻き、焼き鳥などを提供。
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The Sky Restaurant ラゴス(Victoria Island地区) すしなどを提供。Eko Hotel内に展開。
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Oriental Garden Chinese Restaurant ラゴス(Victoria Island地区) Lagos Oriental Hotel内に展開。
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Miso Japanese and Thai Restaurant アブジャ(Maitama地区) すし、みそ汁などを提供。 Summerset Continental Hotel内に展開。
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(3)日本食材取扱店(順不同)
店名 エリア、住所 概要、ウェブサイト
SPAR ラゴス、アブジャ 大手スーパーマーケット。ジェトロ事業をきっかけに、日本のVOXトレーディング(ハウス食品の関連企業)から約40種類の日本食材を購入・陳列。
日本米、カレールー、わさび、みそ汁、天ぷら粉、パン粉、焼きのり、しょうゆ、料理酒、七味唐辛子、麺つゆ、ドレッシング、乾燥シイタケ、「蒟蒻畑」など。
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9 to 7 ラゴス(Victoria Island地区) しょうゆ、インスタントみそ汁、わさび、焼きのりを販売。Izanagiと同じ The Blowfish Groupの傘下。
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L’epicerie ラゴス(Victoria Island地区) 富裕層向けスーパーで、フランスからの輸入品を中心に販売。MIKADO(ポッキー)、日本メーカーのウイスキー、イタリア製の日本米を販売。
Delis ラゴス(Victoria Island地区) すしを販売。
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注:2021年3月31日時点。
出所:公開情報を基にジェトロ作成

執筆者紹介
ジェトロ・ラゴス事務所
馬場 安里紗(ばば ありさ)
2016年、ジェトロ入構。ビジネス展開支援部、ビジネス展開・人材支援部、海外調査部を経て現職。