海外ビジネス人材育成塾・育成塾プラス修了者に聞く「海外市場へのチャレンジ」暮らしを支える生活必需品で世界を目指す丸富製紙(静岡県)

2026年4月28日

丸富製紙外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、静岡県富士市に本社を置く製紙メーカーだ。1955年の創業以来、トイレットペーパーやティッシュペーパーなどの生活必需品を中心に事業を展開してきた。近年は植物由来の「セルロースナノファイバー」を活用した製品開発など、環境配慮型製品にも力を入れている。

同社はジェトロの「新輸出大国コンソーシアム専門家による海外展開支援(以下、ハンズオン支援)」や「中小企業海外ビジネス人材育成塾(以下、育成塾)」を活用しながら海外展開を進めている。海外営業担当の杉山茉依氏に話を聞いた。(取材日:2026年1月26日)


静岡県に所在する丸富製紙本社(同社提供)

文化の壁を超える、トイレットペーパーの海外展開

質問:
「育成塾」受講時の海外ビジネスの状況は?
答え:
受講当時、海外展開はまだ2年目の段階で、主に既存顧客からの紹介を通じてベトナム、タイ、香港といったアジア向けに輸出していた。「育成塾」では中国を対象国として設定し、海外展開戦略の検討や商談資料の作成に臨んだ。中国向け輸出を強化するタイミングでもあった。
質問:
現在はどのような国を対象に海外ビジネスを行っているのか?
答え:
インドを中心に取り組んでいるが、特定国に限定せず、全世界をターゲット市場と捉えている。インドは、今後の人口増加により中長期的に衛生用品の需要拡大が期待できるなど、成長が見込まれる市場だ。また、生活水準の向上に伴い、高品質な紙製品へのニーズも高まると考えられ、製品の展開可能性があると判断した。ただし、トイレットペーパーは慣習やインフラに直結する商材という点で、販路拡大には難しさがある。国・地域によっては「多層タイプの商品が主流」「紙を流せない」「そもそもトイレットペーパーを使用しない」など、前提が大きく異なる。そのため、全世界をターゲット市場と捉えてさまざまな可能性を考慮しながら、自社商品が適合する市場を見極めつつ挑戦を続けている。
2025年12月にインドで実施された、紙・パルプ・紙加工・包装および関連産業に特化した世界最大級の国際展示会・国際会議「Paperex2025」に出展し、300人以上と名刺交換した。展示会では「品質がとても高い」と高評価を得た。現在は成約実現に向けて、具体的な商談を進めている。

多様なラインアップを取りそろえる同社のトイレットペーパー商品(ジェトロ撮影)

初めての挑戦。「育成塾」で得た人脈と基礎が支えに

質問:
「育成塾」を受講した動機は?
答え:
会社からの指示ではなく、自ら申し出て受講した。2024年4月に中途入社したばかりで、BtoB事業も海外営業も初めての経験だった。「育成塾」を受講することで、専門家から助言を得たいと考えたことが動機の1つだ。
質問:
育成塾の受講を通して得られたものや、印象に残ったことは?
答え:
受講前は海外向け商談資料も整っておらず、「何をどう伝えるか」を体系的に学べたことは大きな収穫だった。
最も大きかったのは受講者同士の横のつながりだ。同じコースを修了した受講者とは、今も連絡を取り合っている。また、展示会で会う機会があれば、近況報告や情報交換をしている。
他社の商談方法や準備の工夫を知ることも刺激となった。受講中も「商談資料にもっと画像を増やした方がよい」とのアドバイスを受け、視覚的に伝える工夫をするようになった。他の受講者が画像やイラスト、動画をうまく活用していたことから、商談資料での商材の伝え方を工夫するようになった。「育成塾」で作成した資料はその後も改良を重ね、現在も活用している。
質問:
受講後、ご自身として変わったことは?
答え:
1つは、「自信がついた」ことだ。受講前は既存顧客への提案が中心だったが、他の受講者の話を聞いたことをきっかけに、新規開拓への意識が高まった。他社の挑戦に触れたことが、自身の行動変化につながった。
もう1つは、必ず次のアクションを決めてから商談を終えることを意識するようになったことだ。受講中、講師から「クロージングを大事にする」ということを繰り返し聞いたことをきっかけに、「いつまでにこれを送る」などのネクストステップ、フォローアップをあらためて大事にするようになった。先方からの要求に速やかに応えることで、回答もすぐに得られる。「ビジネスは信頼関係に基づくもの」ということは勉強になり、大切にしようと思っている。
質問:
「ハンズオン支援」と「育成塾」を両立して良かったことは?
答え:
「ハンズオン支援」を受けて3年目になる。初期は米国市場に取り組んだが、関税や物流コストの問題で方向転換し、現在はインドに注力している。
「育成塾」で商談準備の基礎を固め、ハンズオン支援で個別具体の課題を伴走型で解決できている。展示会出展や輸出規制対応など、実務面での支援が大きい。海外ビジネスへの心理的ハードルも下がった。

輸出拡大に向け、チャンスを逃さず前進する

質問:
「育成塾」参加後、ジェトロの他サービス・事業は利用したか?
答え:
受講後から国内外の商談会に3回ほど参加した。「フロンティア市場向けオンライン商談会」や「ラオス市場開拓現地商談会」「Japan Street」などを利用した。海外営業部として試行錯誤を重ねる中で、ジェトロの支援を活用することで費用を抑えて輸出先拡大を目指している。
質問:
今後の海外ビジネスにおける課題は?
答え:
前述のとおり、輸出先の文化的・宗教的背景、インフラに自社製品が適合するかという点が難しさだ。また、輸送コストも課題で、商品よりも輸送代の方が高くなってしまうこともある。トイレットペーパーは自国で生産されたものが流通している国も多く、既に多様な製品が流通しており、市場環境が成熟している。これから発展していく地域の富裕層をターゲットとするとしても、Made in Japanの品質がどこまで通じるのかという課題がある。同社のラインアップは多様だが、何枚重ねか、厚み、価格などの点で、バイヤーから合う・合わないをはっきりと言われる。一方で、インドでは品質を高く評価されたこともあり、前に進むしかないと感じている。興味を持ってくれる企業はいるので、そういったチャンスを逃さないようにしたい。
質問:
今後の海外ビジネスの計画は?
答え:
今後は、成長が見込まれる新興市場を中心に可能性を探っていきたいと考えている。先進国では、自国のトイレットペーパーは自国内で生産されて賄い切れており、「その国の良いもの」が既にある。そのような中で、新興市場は1つのターゲット地域だ。また、全世界の約60~70%の人がトイレットペーパーを使うという捉え方では、チャンスは大いにある。
質問:
輸出を目指す方々へのメッセージ、気づきなどは?
答え:
育成塾の受講によって、「世界に飛び出すにあたって、他の会社がどのような取り組みをしているのか」を知ることが良い勉強になった。他社の取り組みを知ることで、自社の強みや課題を客観的に見つめ直す良い機会となった。また、受講を通じて築かれた横のつながりは、現在も情報交換の場として活用している。

杉山氏の話から、育成塾で築いた多様な受講者とのつながりを生かし、互いに切磋琢磨(せっさたくま)しつつ、新たな市場に果敢に挑戦する姿がうかがえた。インドをはじめとした新興市場への期待はもちろん、同社では新たな産業分野としてセルロースナノファイバーの開発にも取り組んでおり、今後の展開がますます期待される。

執筆者紹介
ジェトロ知的資産部海外ビジネス人材育成課
町田 早弥香(まちだ さやか)
2024年、ジェトロ入構。同年4月から現職。
執筆者紹介
ジェトロ知的資産部戦略企画課兼知的財産課
迫 佳沙音(さこ かさね)
2025年、ジェトロ入構。同年4月から知的資産部戦略企画課。
2026年3月から知的資産部知的財産課兼務。